名前付けは大切に。
とりあえず、通帳残金が現在32円。
幸にして今月の引き落としはすべて終わっている。なので、来月分を確保することが当面の目標である。
さて、自分に残されたのはこの部屋と自分の体と、そしてスマフォである。
なんとなく、自分の置かれた状況を確認しようと全身が映る姿見の前に立った。
ただ冷静になりたかっただけだったのだが、そこには思わぬものが映し出されていた。
「なんじゃこりゃ?」
本日2回目のこの台詞。
余りに驚いたので、ついつい出てしまう独り言なのでしょうがない。
鏡にはずらりと水色の透明窓で枠組みされた中にびっしりと文字が書かれて表示されていた。
それはよくあるゲーム画面のステータス窓であった。
【名前】 大賢者トトナ・マルコシアス
【レベル】 Lv.234
【状態】 貧困 スマフォ依存症 混乱
<習得スキル>
・回復魔法(神聖)
・精霊魔法
・術式魔法
<習得アビリティ>
・杖操作
・術式解読
・自動通訳
<称号>
・異世界からの開拓者
<ギフト>
・創造神からの期待(極小)
となっている。
状態がかなり大きなお世話な気がするが、どうやらおおむねスマフォで廃人プレイしていたキャラのままのステータスが表示されているようだ。
おおむね、と曖昧な言い方をしているのが称号が今まで習得したものがすべてなくなっており、「異世界からの開拓者」となっていることと、謎のギフト表示がついたことである。
それにしても・・・名前に「大賢者」とつけちゃっていることがちょっと人として、自分で言うのもなんだが・・・イタイ。
ゲームだから盛り込んでやれ、とノリノリでつけちゃったことを今になって後悔するとは、なさけない。
幸にして、このゲームにはこれといった職業の枠組みがない自由度の高いゲームであったので、大賢者と自分で言っておきながら、職業バーサーカーとかいうオチはないのでそこは安心とも言えた。
だがしかし、大賢者は混乱している、とか情けない状態ではあるし、貧困でスマフォ依存症とかもなんだか、大賢者として大丈夫か!?というところだが・・・
名前もやっちまったな感が漂うので、直したい。せめて本名に近い名前を・・・っと思ったが、
「あれ?・・・俺の名前ってなんだっけ?」
冗談じゃなく、自分の名前は「大賢者トトナ・マルコシアス」と認識されて、それ以外の自分の名前らしきものが思い浮かばない。
やばいなっと感じ始めて、冷や汗が流れる。
つまり、この異世界がどんな言語の世界観かわからないが、この痛々しいファンタジーな名前が浮かないことを祈るしかない。
そのまえに、話せるような相手がいるかも怪しいことも忘れてはならないんだろうが。
じいさまが通貨があると言っていたと言うことは、文化があると言うことだから、きっと知識生命体もいるはず、とそこは楽観視しておくことにした。
ここであらためて自分の握りしめているスマフォに目を落とした。
ゲームアプリを起動して、自分のキャラのステータス画面をひらく。
このゲームの特徴は・・・
能力を手に入れるのにはレベルアップの時にもらえるポイントをふりわけることで手に入る。
能力によってコストが違うので、強力なスキルほどコストが高くなる。
そのため、俺のキャラはここぞという時のために溜めてあったスキルポイントがあった。
本当はもうすこし溜めてから、どれを選ぶか迷う楽しみのためにとっておいたのだが、緊急事態のため、ここは多少投資として振りたいところ。
俺は数ある能力の中から「召喚魔法」を選んだ。




