5
「ほら、席につけー。」
若い?んー、若くもないか30代前半って所かな?まぁ、年はそのくらいの男の先生が教室に入ってきた。顔はまぁまぁイケてる感じ?でも髭。もうちょっとお顔の手入れをしようね。特に髭。
「ホームルームを始めるぞー。とりあえず入学おめでとう。このクラスはA組の一部を除いてこの学年の成績優秀者が集まっている。テストによってはC組に落ちるから勉強するように。えー。そうそう、学年10位以内の成績優秀者には特典がついている。朝の出欠確認をすれば授業に出なくて良いとかな。まぁ、それで成績が落ちても知らないけどな。全体の説明は終わり。内部生は帰ってよし。外部生はこの学校の案内をするから残れよ。10分後に案内を始めるぞ。じゃあ、解散。」
あ、内部生は終わりなんだ。帰ろ。柚、もう帰っちゃったかなー?あー、一緒に帰りたい。とりあえず正門で待ってみるか。まだ学校にいるかもしれないし。小学2年生じゃ、まだ携帯は早いかな?って思ってたけどこういう時不便。柚が欲しいって言ったら買ってあげよ。。私とお揃いのやつ。
「ひなちゃーん!私もう帰るねー!また明日ねー。」
「バイバーイ!また明日ー!!」
さ、早く正門に行こ。まだいると良いなー。
私のクラスは終わったのが早かったらしくまだ誰も廊下に出ていない。早歩きで廊下を進む。小学校はもっと早く終わってるかもしれない。我慢できず廊下を全力疾走する。
「廊下は走るなよ。」
誰かが後ろから腕を引っ張り、私は足を止める。聞き覚えのある声だったからだ。この声の持ち主は。
「楓。そっちも終わったの?てか、腕離してよ。」
「あぁ、悪い。とにかく危ないから走るなよ。それよりお前…。」
それより?それよりって何?掴まれた腕ちょっと痛かったんだけど。いきなり腕を引っ張られたりしたら痛いってことわかんないの?私の腕より大事なことなわけ?
「陽人の写真忘れてないよな?」
私の腕より大事なことだったわ。
神宮陽人、楓の弟で柚の友達。小学2年生だ。さすが楓の弟。成長すれば確実にイケメンになるであろう顔を持っている。
そんな弟を持つ楓に頼まれていたことがある。今日、柚は入学式で伴奏をしていた。その指揮者が陽人なのだ。柚の写真を撮ることで頭を埋め尽くされていた私は楓に頼まれていた陽人の写真を撮るのを忘れていたのだ。
「おい、その顔!!まさか、忘れてたんじゃないだろうな!」
ありゃ、顔に出てた?んふふ。でも、こんな時のために私には秘策がある。
「ごめんね。これで許してー。」
「こ、これは!」
そう、その秘策とは中学の文化祭で使ったあるものを頭にかぶって、寝ている陽人の写真だ。そのあるものとは。
「陽人が、陽人が、陽人が、う、うさ耳をつけいるだとぉ!!!」
どうだ、この写真。ちなみに私は柚が猫耳をつけている写真を携帯の待ち受けにしてる。携帯を見るたび癒される最強の携帯なのだ!
「まぁ、今回のことは許してやろう。で、?なんでそんなに走ってたんだ?」
「早く正門に行けば、柚と帰れるかもしれないからだよ!楓のせいで2分も足止めされた!もう行くからね!」
「何!?じゃあ陽人とも柚月といるかもしれない。俺も行くぞ!急げ!!」
「言われなくても、もう走ってる!!」
そうして私は廊下を再び全力疾走することになった。
ちなみにここまでくればもうわかるよね。楓がブラコンで残念なイケメンだという事を。