第二話
さて、目的が決まったところでこれから何を成さねばならないか書き出していこう。
・まずは王位継承権を返上して兄上を王位に据えること。
・同時に魔王侵攻の要である場所へ領地を貰い赴任すること。
この二つに関しては一応同時にこなせると思うので問題はないと思われる。どうにかしないといけない輩もまとめて葬りさらないといけないしな。
・いまだ発掘されていない優秀な人材を取り込み一緒に引き連れていく。
・ヒロイン(笑)を牽制するもしくは見つけ出し監視下におく。
ぶっちゃけよう物語が始まる前に攻略対象者をできるだけ引っこ抜いておきたい。中には今は手出し不可能な他国の王子とかがいるが無用なイベント乱立を俺がいない間に起こさぬよう憂いを断ちたいからだ。攻略対象者となるのはみんな優秀な人材だってのもあるけどな。それも兼ねてのヒロイン捜索だがこれは正直難しいと諦めている。ヒロインの名前、容姿、はては出身地まで自由に設定可能だったからだ。しかもデフォルトの状態が存在せずランダムな仕様。どんだけフリーダムに作ったのよ製作者と今突っ込みたい。
あとは赴任してから開拓するための資金とかだな。あ、俺ってお金持ってるんだろうか? 確か記憶ではいくつか領地与えられていたはずだがお金の管理とかそういうのがどうなっているか分からんぞ。開拓をスムーズに進めるためにも要確認だな。
ふう。やれやれ、失敗できないから悩むな。
コンコン
部屋の扉がノックされる。
「起きているよ、どうぞ」
「失礼します。お加減はよろしいようですね、ノア様」
彼は俺の御付の執事でセバスチャンである。そう、あの執事オブ執事の由緒ある名前『セバスチャン』である。
大事なことなので二回言いました。
「セバス、これから父上への面会をしたいのだが時間をとってもらえるだろうか?」
王ともなれば常に忙しいであろう。王子とはいえ気軽に会える訳もないはずだ。
「国王様でしたら今か今かと部屋の外で待機しておられますが?」
「は?」
「いえ、ノア様が回復したと報告が入ってから部屋の前でずっと待機しておられました」
おい、親父殿よ! あんた何しとるんじゃぁ!
「いや、だって国王だろう? 政務があるんじゃないのか?」
「ええ、あるんですが全て放り投げてこちらへ来て待機しております」
セバス、それって冷静に言ってるが滅茶苦茶まずいだろうよ。
「す、すぐに会わせてくれというか早く戻ってもらわないと宰相の雷がおちるんじゃないのか?」
「落ちるでしょう、確実に。ではお呼びいたしますので少々お待ちください」
そういい残し音もなくセバスは部屋を出て行く。
執事というよりどこぞの忍じゃないのか、セバスよ?
その直後! 扉を勢いよく開け放ちどう見ても20代にしか見えない男がこちらへと突貫してきた。
「ノア~ん。パパは心配したんじゃぞー。大丈夫か? 大丈夫じゃよな? も~愛していた妻に生き写しのお前になにかあったらと思うと心配で心配で。勿論妻に似ているというだけじゃなくおまえ自身が心配なんじゃぞー」
……俺の親父殿はこんなだだ甘な性格だったか? というかもう40越えてなかったか? なんでこんなに若々しいのさ。
「国王様、ノア様は病み上がりですのであまりびっくりさせてはいけませんよ?」
ひょいと国王を摘み上げて近くにあった椅子へと座らせるセバスチャン。お前さん、執事だけど国王様の扱いひどくない?
正直、お引取り願いたいレベルではあるが一応国王なんだしさ。
まぁ、いいや、考えておいたプランでフェードアウト作戦を開始しよう。うまいこと乗ってくれよ、親父殿。
「父上、一生のお願いがあるのですが聞いていただけますか?」
◇◇◇◇◇◇◇
それから一ヶ月後、王の間に俺と兄、そしてリリン嬢や主だった家臣が集められていた。無論、リリン嬢の父君であるアシュタイト公爵も来ている。相変わらずダンディだぜ。あの人みたいな大人になりたいものだ。
「皆のもの、よく集まってくれた。これより国の今後を左右する大事な発表をする。心して聞くように」
リリン嬢がなにやら緊張した面持ちでいる。彼女のこんな顔を見たのは初めてだな。ブロンドの美しい髪に透き通った蒼い瞳、成廉された美術品のような完璧なスタイル。ああ、やっぱり彼女は美しい。だが、俺には似つかわしくない高嶺の華だ。
大丈夫、俺はもうこの盤上から退場するから。君に相応しい舞台を用意してある。だから幸せになってほしい。
「今をもって第二王子ノアの王位継承権を剥奪する。これによりリリン・アシュタイト公爵令嬢との婚約も破棄となる」
……ざわ……ざわわ……
静まり返っていたはずの王の間にざわめきが響く。そらそうだ。いきなり後継者だった俺が廃嫡されてるんだからな。俺の支援者であるグズナー公爵も動揺の色が隠せないようだ。脂ギッシュな顔にだらだらと滝のような汗をながしてこちらを見ている。こっち見んな!
「そして第一王子ルーキスを王位継承者と定め、リリン嬢をその婚約者とする!」
普段滅多に感情を表に出さない兄上もこれにはビックリした顔をしていた。うっはっは、俺の一世一代のドッキリ成功ってか。無論、リリン嬢もこれには驚いたようだ。ちょっとした俺の黒い部分の溜飲が下がった気がする。まぁこれくらいは許して欲しい。
「国王様、一体どのようなことがあってノア様の継承権が剥奪されるというのですか?! ノア様にそのような落ち度があったとは思えませんぞ」
そう声を荒げるのはグズナー公爵であった。ああ、これも予想通り。ありがとう、思ったとおりの行動をしてくれて。
「無論、ノアに非はない。だが、そちには思い当たることがあるのではないかな?」
「な、なにを言っておられるのですか!」
「支援者たるそちが犯した悪行をノアは恥じ入りこのまま王位を継承するわけにはいかないと自ら申してきたのじゃ」
「わ、私にはそんなものございませんぞ!」
「では、この記録精霊石に移されたそちの行いはどういったわけなのか釈明してもらおうか」
そう冷たく言い放っただだ甘親父に俺にむけたあの締まりのない表情は一切なく冷徹な支配者としての顔があった。
記録精霊石とはその景色を記録しておくためのビデオカメラのようなもの。さらにその記録は立体映像として再生できる。ただし、精霊の恩恵によるものなので人の手で改竄することなどは不可能なのだ。それ故にこれの証拠能力は高い。
そして映し出された映像はこの国では禁じられているはずの奴隷売買の様子や阿片の密売、その売り上げと薬を使って力の弱い貴族を落としいれ脅し自分の陣営へと巻き込むといったものだった。
「こ、これは!?」
「そちがノアへぽろりと漏らした一言からノアは悩み高熱を発するまでに苦しんだ。そして思い余って儂に相談し密かに調べ上げたものじゃ。よくもまぁこれほど罪を重ねていたものよの。グズナー公爵よ、領地全てを没収ののち一族あげて処罰することになる! 衛兵よ、元公爵をひったてい」
何かを喚きながらグズナーは衛兵に引っ立てられて王の間よりでていく。
無論、これらは全て俺の仕込である。グズナー公爵は俺の一番の支援者であったがそれと同時に最も権力に汚く、ともすれば俺を傀儡へと仕立て上げようとする存在であった。
いや、ひどいもんだったらしいよ? 一つ選択肢を間違えるとバットエンド一直線だったっぽいね。すっごく苦労したんだからと妹が鼻息荒く説明してきたのをよく覚えている。
「ノアよ。お主に今与えている領地は全て没収。そしてリガライド地方を与えリガライド辺境伯へと封ずることとなる。これよりはノア・リガライドを名乗るが良い。よいな?」
「はい父上、謹んで拝命いたします」
びくんと俺の与えられる領地の名を聞いた途端にリリン嬢が反応する。おや、なんでこれに反応するかね? これに反応ってことはもしかして……。まぁいいや、すでに賽は投げられた後だしな。
「ルーキスよ、ノアに与えられていた領地は全てお主に預ける。未来の王としてうまく切り盛りするのだ。リリン嬢よ。突然のことであろうがこれよりはルーキスを支えてやって欲しい。良いかな?」
「はっ、謹んで拝命いたします」
「はい、身に余る光栄に存じます」
よしよし、万事うまくいったようだ。宰相は第一王子派だしうまいことやってくれるだろう。さすが一生のお願いの効果は抜群である。まぁ親父殿にはひとつ約束させられてしまったが仕方あるまい。




