わかってほしい。
御題:瞳・ブルーベリー・はにかむ
「おー、いっぱいあるなー。」
掃除もそこそこに、私たちはデパートに来ていた。
「しっかし、ダブルベッドだけでこんなにあるとはな………」
「最近のデパートってすごいね。」
「お、これなんかいいじゃないか。これなんか2人で寝てもまだ余裕あるぞ。」
「うーん………ちょっと大きすぎて入らなそう………」
「大丈夫だって~」
と、値段をのぞきこんだ梨華姉が絶句する。
「これ……ゼロ何個あるんだ?」
「梨華姉落ち着いて、ゼロは5個だからっ!」
「わ、私らの稼ぎ何年分?」
「こ、これのことは忘れて次いきましょ!」
「これなんかどうだ?」
「うーん……お手頃ではあるんですが…………」
端的に表すなら、少女趣味の極みって感じ。もっとざっくり言うと、フリルだらけの全身ピンク。
「かわいいと思うんだけどなぁ……」
「それよりもこっちなんてどう?」
「ちょっとそれはちっちゃいだろ。」
結局、気に入ったベッドが見つからなくて、私たちは諦めて帰ることにした。
「見つからなかったね……」
「やっぱ簡単には見つからないかぁ……」
「せっかくデパート来たんだしさ、ちょっとデパ地下寄ってかない?」
「お、いいねぇ。」
私は、エレベーターの1Fのボタンを押そうとした手を引っ込めて、その下のB1を押した。
扉が開いてまず目に入ったのは、フルーツタルト。
「おいしそうだな、虹海はどれにする?」
「私はオレンジ。」
「んじゃ私はブルーベリーだな。」
ショーケースを眺めている私たちに気づいた店員が、手に持ったトレイを差し出してくる。
「新商品の試食どうぞ。」
「あ、ありがとうございます。」
1口かじると、爽やかなフレーバーが口の中に広がる。
「グレープフルーツだ……」
「お気に召したら、他のご友人にもお薦めください。」
その言葉に梨華姉がピクリと反応する。
「虹海、電車の時間っ!」
「え、ちょっと。」
梨華姉は私の手を強く引いて駆け出す。
後には、ポカンとした店員が残された。
「梨華姉、どうしたの?」
「虹海、もうここのデパ地下には来ないよ。
………あの店員、私たちを『友達』だと思いやがった。」
「………無理もないよ、みんなそう思うもん……」
「よくない。私達はただの『友達』じゃないんだ……姉妹なんだ……」
梨華姉の瞳には、激しい怒りの炎が浮かんでいた。
その時、私の頭に梨華姉の言葉が浮かんだ。
『私たちは、家族で、姉妹で、そして、恋人なんだ。』
「梨華姉。」
「ああ。」
「腕、組も。」
「ああ………え?」
「手つなぐだけじゃだめ。私たちは友達じゃなくて恋人だって、みんなに思い知らせよ。」
私の突然の申し出に梨華姉は驚きながらも、すぐにはにかむ。
「ああ、思い知らせてやるか!」
グッと腕を掴まれる。私も梨華姉の腕を引き寄せる。
これでもまだ、仲がいいだけの友達に見えるかもしれない。けど、これが私たちの『愛の形』なんだ。