たった二隻の機動部隊 編!!
時は1946年の8月!
真夏の日差しと暑さが絶頂期に達するインド洋をたった二隻の機動部隊は突き進んでいた、
看板はハムスターで溢れかえり、
期待と機体を並べていた、
「早くしろ!!輸送船団だ!!」
飛行甲板下の艦橋では粟谷が伝声管に叫んでいた、
たった今、速吸の零式三座水偵がイギリスの輸送船団を発見したのだ、
今回は大船団だ、
それくらいに獲物は多い、
飛行甲板に爆装の二式防戦と雷装の九六艦攻が溢れる、
なぜ、戦闘機がは爆装してるかと言うと、
たった六機の艦攻では非力過ぎるので、200㌔までの爆弾搭載可能な二式防戦の能力をかって搭載したのだ、
え?
発艦が出来ない?
大丈夫、我等が粟谷少佐は整備長(十九号の時から一緒のハムスター)と組んで、
呉の倉庫からカタパルトをかっぱらって来たのだ!
そして、整備長率いる新鋭整備士たちが飲まず食わずの超集中徹夜作業でインド洋への航海中に、
何とか飛行甲板に埋め込んだのだ、
その為、艦首飛行甲板の支柱が増えたのは別の話だ、
「チー(そこのレンチとって、)」
「チー(バカ!死にたいのか!!頭を下げろ!プロペラに殺されたいのか!!)」
「チー(そこ、そこの発艦位置に、違う!!)」
「チー(魚雷が通るぞー!!)」
「チー(いけね、工具箱忘れた!)」
「チー(カタパルトまだぁ?)」
「チー(待ってくれぇ)」
「チー(助けてくれぇ)」
ある意味飛行甲板は罵声が飛び交い怒鳴り合う、
それでも機体はちゃんと並べられていく、
対空機銃や高角砲が警戒を怠らない、
何しろイギリスには地中海戦区から鍛え抜かれたベテランの夜間雷撃隊が居るのだ、
この夜間雷撃隊でドイツとロンメルの補給路をズタズタボロボロにしているのだ、
それに対抗するべく計画されたのがこのインド洋作戦だ、
そこで、日本海軍はインドの南の島のセイロンを占拠、
ここを足掛かりにイギリスの補給路をズタズタボロボロにしてアフリカ戦線のイギリス陸軍を干上がらせる、
と言うのがこの作戦だ、
セイロン基地の司令官は栗田健男中将、
水雷戦のベテラン、しかし、軍令部内では弱腰提督と不評だ、
その軍令部の勝手な我儘と勝手な偏見で彼はこの地方基地へ飛ばされて来たのだ、
しかし、彼は後に『インド洋の栗と粟』と呼ばれる伝説を作り出すのはまた今度の話だ、
セイロン基地の戦力は特設巡洋艦3、空母型タンカー2云々…
防衛は零戦、He112云々…
云々が多いのは気にしないで下さい、
ネタバレしないためです、
カタパルトの用意が整い、
機体が次々と打ち出されていく、
パイロットはもちろんハムスター、
ある意味凄い光景だ、
総勢24機の攻撃隊はオレンジに染まる空へ消えていった、
十九号の時と同じ天候、
「…水偵に打電、船団周辺を警戒せよ、」
艦橋で粟谷が指示を出す、
前回の反省を踏まえての指示だ、
夜間雷撃の真似をして夜間雷撃でやられたくはない、
ここ一週間で粟谷は八つの船団をつぶした、
イギリスの標的になっても仕方が無い、
ただただ、波と風の音しか聞こえない、
何分過ぎたのだろうか、千葉大尉の言葉で我に帰る、
「間もなく対敵です、」
この一言に、艦橋の壁掛け時計を凝視した、
「……接敵。」
攻撃隊の真下には恐らく船団が姿を見せているであろう、
「チー(ト連送です!)」
愈、攻撃隊は船団に突入した事がハッキリとわかった、
「粟谷司令、吉報です、ポートモレスビーが陥落しました」
「どこの部隊だ?」
「第二航空艦隊です、」
「流石だ、この遣印艦隊の機動部隊も負けられないな、」
セイロン基地の艦隊は遣印艦隊と呼ぶ、
第二航空艦隊の司令官は小沢治三郎、
雲竜型航空母艦を基軸とした中型空母の機動部隊だ、
初戦から活躍するのは第一航空艦隊、司令官は南雲忠一、
後に第一航空艦隊の司令官は山口多聞になり、南雲は重巡を基軸とした水雷部隊の司令官になるのはまた今度の話だ、
「チー(報告します、敵の輸送船を20、敵の駆逐艦を1、敵の巡洋艦を2、大戦果です!!)」
「報告ありがとう、戻って良し、」
「やりましたね、司令官!」
「あぁ、ありがとう、だが、まだ気は抜けないぞ、着艦が待っている、」
「チー(水偵より入電!!敵の空母を見ゆ!!)」
「来たか、総員!!対空戦闘用意!!」
警告ベルがリンリン鳴り響く、
途端に艦内が忙しくなった、
高角砲弾が揚弾され、
機銃弾が箱ごと運ばれる、
「攻撃隊、帰艦!」
「急げ急げ!!英空母は水偵に見張らせろ!!何かあったら逐次報告!!」
「チー(水偵より入電!!英戦艦見ゆ!!)」
「何だと!!」
「そんな…」
今回のイギリスは本気だった、
粟谷の息の根を止めるべく空母は中型空母の傑作、アーク・ロイヤル、
戦艦はインコンパラブル (本当は巡洋戦艦だよ)を投入、
まさに、粟谷少佐絶体絶命!!
次回へ…




