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第一九号型掃海艇 編!!


第一九号型掃海艇の直ぐ横に、

水偵が着水する、

既に船団は壊滅して居り、

主砲の45口径十一年式12cm単装砲は、

現在は上空を警戒する為に上に向けて居る、

イギリスの夜間雷撃隊の活躍はもう知って居る、

ロンメル将軍の補給路を締め上げて居るのだ、

何機かのソードフィッシュ雷撃機が編隊飛行でこちらに近付き、

一機が先行して照明弾を落とす、

つまり、照明弾を落とされた瞬間に勝敗が付くのも同じだ、


船団とイラストリアスの距離はおよそ40、

戦艦大和の最大射程程はあるが、

今も敵が攻撃隊を準備して居ると考えると、寒気がする、

ここで、恐らくは最後の夜食が配られた、

乗員105名全員に牛丼とたくあん、アイスと牛缶が配られた、

しかし、インド洋は蒸し暑いので、

全員一斉に手を出したのはアイスの方だった、

お代わりが続出し、冷凍庫からアイスは消え去った、

むしろ、人生最後のアイスになるかもしれないので、これは当たり前だ、

ここで漸く皆牛丼に手を付けた、

食が意外と進むのはやはり、死期を感じて居るからであろう、

その中でも、粟谷と副長兼整備長(ハムスター)は一段と食が進んで居た、

牛丼と牛缶、更にたくあんと言う贅沢な組み合わせだ、


「(モゴモゴ)……副長、弾薬庫に、酸素魚雷が二つありましたよね?」

「(モギュモギュ)チー(有りましたな、)」

「(モゴモゴ)…やろうと、思う、」

「(モギュモギュ)チー(何を?)」

「(モゴモゴ)………夜間雷撃を、」

「チー(無茶があるだろ、しかもたった一機の水偵では、)」

「食って見せます、こう見えてパイロットの経験は有りますから、」

只今二人は牛缶の最後の一切れを奪い合って居る、

ちなみに、粟谷はミッドウェー海戦で水偵で敵の空母を見つけた隠れた英雄だ、

彼が居なければ、ミッドウェー海戦が逆転して居たのかもしれなかったのだ、

「チー(分かった、出来るだけやってみよう)」

「皆には迷惑を掛けっぱなしだからな、」

「チー(無茶は承知で魚雷を付けてくる)」

「任せました、」

二人は立ち上がると、

粟谷は艦橋へ、副長兼整備長は弾薬庫へ、


「待たせた、今より東郷平八郎の故事にならって回頭する、艦をまた船団に戻せ、そうだ、90度大回頭だ、」

ガララと舵輪が軽快に回り、操艦される

艦は暫くしてから漸く艦首を夜の闇に燃え盛る船団に向ける、


一方の整備長は魚雷を弾薬庫から取り出し、

後部甲板に運び、

試行錯誤の末、漸く酸素魚雷を取付た、

しかし、酸素魚雷は暴発する危険性がある、

しかし、粟谷はそれを見越しての判断だ、

戦艦をたった3発で行動不能に追い込む事が出来る酸素魚雷は確かに魅力的だった、

まさに諸刃の剣だ、

そんな魚雷を二発も零式3座水偵に無理やり乗せて居るのだ、

飛行士は、背中の模様がポンカン形の『サブポン(ハムスター)』

航海法は、人間の粟谷、

後部機銃座は、頭に埃の様な模様がある『ボン三郎(ハムスター)』、


暖機が終わり、

緊張が漂い出す、

魚雷二つを腹に抱えた水偵は、

夜の海面のベタ凪な波にも酷く揺れた

既に夜12時は回って居た、


「行ってくる!!」

「チー(帽降れ!)」

真ん中の席から立ち上がった粟谷が綺麗な敬礼を見せて居た、

『チー(ガンバレー)』

『チー(帰って来いよ!)』

『チー(ヤレー)』

などの援声も聞こえる、

海面の波をモロに被りながらも、

水偵がヨロヨロと離水した、航海法は、一応しておく、

ちなみに、酸素魚雷も呉の武器庫からかっぱらった物だ、


海は荒れ始めた、

後にイギリスの戦史にはこう記されて居る、


ー彼等はクレイジーな賭けに出た、


そして、この大胆な変針と悪天候がイギリスの夜間雷撃隊の攻撃から第一九号型掃海艇を守ったのだ、

一方の水偵は、

悪天候により、更に魚雷を付けて来た影響が出て、のたうち狂う海面近くを這う様に飛んで居た、


「クッソー、何も見えない、」

真っ黒なドスのきいた黒雲が深夜の蒼空を支配し、

雨風波浪が視界の邪魔をする、

波浪は今にもフロートをさらって行きそうな勢いで襲い掛かってくる、


「チー(航海灯をつけましょう、機位を失います、)」

「……一か八かの賭けだ、もし、この海域にあのイラストリアスが居たら、」

「チー(やってみる価値はあると思います、)」

「よし、行こう!」

翼の先端の赤、緑などの航海灯が一斉に点灯する、


「あ!!」

「チー(発光信号!!)」

「何でもいい何か返せ!」

そう言って、

粟谷は座席の発光銃を取り出し、

トリガーを引き、モールス信号を発光する、

流暢な英語だ、

十年式信号拳銃も照明弾を装填する、

愈々艦影がはっきりして来た、


「島型艦橋!チョイ右!射線ドンピシャだ!!」


漸く、照明弾が撃ち上がった、

翼の日の丸が頼もしく雄々しく見えた、

粟谷は自分の中の恐怖を押さえ込み、座席から立ち上がった、


島型艦橋が、

あの瞬間程恐ろしく感じた事は無かった、

































『チー(我、雷撃成功ス)』


この瞬間、

艦橋は何とも言葉に表現出来ない熱気に包まれた、


「チー(よくやった!)」

「チー(頑張った!!)」

「チー(帰って来い!)」

歓声が響き渡る、

しかし、


『チー(我、機位ヲ失ウ、靖国デ会オウ、)』

その場の騒ぎが、

一気に鎮まった、

誰も(ハムスター)が心の中で追悼した、


後にイギリスの戦史にはこう記されて居る、


ーその日本機はまるで狐だった、

照明弾が上がるまで誰もが見方の水上偵察機と信じて疑わなかった、

イラストリアスは、新型魚雷2本により機関を損傷、

マダガスカル島へ敗走した、





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