第一九号型掃海艇 編!!
「クッソー、インド洋暑し!」
額に玉の様な汗をうかべて粟谷が愚痴る、
今回はイギリスの輸送船団を発見し、
これを壊滅させよという命令で、
一隻で壊滅させよって、無茶があるだろ…
装備されて居る3門の主砲では限界があるが、
そこは、粟谷の戦術に期待しよう、
「チー(暑い…)」
「夕食には氷菓が出るから我慢しろよ?」
「チー(分かってます)」
「……つか、打電にあった船団はどこだ!」
辺り一面青い海ばかり、
空との境界線も分からなくなるほど青かった、
まさか嘘の電文では有るまいか、
と、ふと粟谷は思った、
だとしたら相当な嫌がらせだ、
「チー(見当たりませんねぇ…)」
「ある、絶対にある、」
その後、
少佐がインド洋にこだわる事となる戦いが勃発する、
何とイギリスはUーボートなどの居る危険極まりない大西洋から、
自軍の保有するアーク・ロイヤルを始めとする空母をここ、
Uーボートが少ないインド洋に移したのだ、
開戦初頭にUーボート艦隊によるスカパ・フロー奇襲が相当響いたらしい、
現在もスカパ・フローの軍港のドックは損傷を負った戦艦やらが占拠して居た、
空母に損害が無かったのは不幸中の幸いだろう、
これで、空母はアメリカの戦時量産簡易式護衛空母頼りだ、
その護衛空母もドイツの戦艦軍艦、Uーボートが撃沈しまくって居るが、
「チー(ま、マストを発見しました!)」
「絶対方角を報告!!」
「チー(8時方向にあります!)」
「最大戦速!!」
最大戦速と言っても20ノットのみの意外とドンガメ、
その20ノットでも頑張るのが、粟谷だ、
「いいぞ、船団の船橋が見えるぞ!」
ついに、
マストから下の船橋も見える様になった、
愈々海面にゴマ粒みたいに船団の影が確認できる、
空は鮮やかなオレンジ色に染まって居る、
後部甲板からはみ出た零式3座水偵を降ろす作業を始める、
爆雷投下甲板をわざわざ改装した物だ、
これで爆雷投下は舷側の投射機しか無くなった、
その零式3座水偵の腹に二発の爆弾の様な物を装備させる、
パイロットは勿論、粟谷が機長で他はハムスターだ、
しばらくの間は機上で自分の艇を操らなくてはならない、
無線機はハムスターの工兵長が弄ってくれたので感度は素晴しく良好、
艦橋の無線機とお互いに確認し合い、
暖機させ、エンジンオイルを暖める、
そうで無ければ途中でエンジン止まって落っこちても自己責任だ、
10分程暖機させ、オイルが暖まり、
水偵を海面に降ろす、降ろす際に整備員がおにぎりを握らせてくれた、
飛行弁当だ、
揺れる海面を多少気にしながらエンジンをしぼる、
バババッと排気管から淡い炎の閃光が見えた、
しかし、空に上がってしまえば相手からは小過ぎて見えなくなる、
海面を切り裂きながら水偵はスピードを増して行く、
バッと大きな波がフロートを撫でる、
その瞬間、機体はその反発で空中に浮き上がった、
あとは、まだ沈みかけの夕日で辛うじて見える船団に一直線に向かうのみだ、
ただ、航海法はやらなければ機位を失ってしまう、
機位を失ってしまう事はつまり帰れなくなるという事に直結するのだ、
後部機銃座は呉の備品倉庫からかっぱらった20mm旋回機銃を取付だ、
これは犯罪でも違反でも何でも無い、
普段の仕返しをしたまでだ、
飛び上がってから、
どうもこうも、何故か胸騒ぎがした、何かしらの良からぬ事が起こるのではないかと、
間もなく、我々の第一九号型掃海艇も水偵も船団に愈々近付いた、
粟谷は一つ目の爆弾の様な物を船団のど真ん中に落とした、
爆弾の様な物は落とされた途端にパラシュートを開く、
そのパラシュートを開いた衝撃で中の物質を発火させ、
周りを昼間みたいに照らし出す、
そう、照明弾だ、
「よしうまく行った!攻撃始める!!出来るだけ喫水線付近を狙える!浸水作戦だ!!」
バウッと第一九号型掃海艇の三つの主砲が一斉に光る、
かっぱらった25mm3連装機銃で増設した機銃座も景気良くタタンタタンと撃ち出す、
商船では装甲が未無なので大口径機銃も恐ろしいのだ、
しばらくの間飛んで居ると分かった事がある、
相手の輸送船団は無線を装備して居ないのだ、
幾らかの小規模の対空機銃が撃ち上がるも、
無線だけはどんなに切り替えても聞こえて来ないのだ、
ただ、その対空機銃も我が水偵の7.7mm機銃を掃射して牽制して居るが、
「いいぞ、皆飲み込みが早いぞ!」
そう喜んで居ると、
遥か彼方の水平線に何かを見た、
小さな星屑の様に光ってたそれは、水平線にまた消えた、
何だったのか、
気になって飛行士に方向転換を伝声管で伝えた、
「針路を南へ、何かが光った、多分はぐれた敵の輸送船だろうな、」
針路を南へとった途端、
またあの星屑が水平線に浮き出た、
ー航海灯だ、
心の中で確信する、
しばらくの間飛ぶと、
はぐれた敵の輸送船は直ぐそこまで迫って居た、
しかし、形が変だ、
よっぽど大事な物を運んで居るのだろうか、
専門輸送船かな、
やがて、その輸送船は真下にきた、
構わず照明弾を投下して漸く分かった、
自分達がとんでもない物に喧嘩を売ろうとして居る事を、
「イラストリアス級!?」
英装甲空母、
イラストリアスだ、
幸いにも飛行甲板にはまだ艦上機は並んで無かった、
「ヤバイなぁ…」
未だに、
イラストリアスは眠りながらも覇気を放って居た、




