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僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


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⑨赦しと――再生の兆し


神殿の授業室。

朝の光が差し込む中、グラウス師は静かにメデルの前に座っていた。

机の上には、精霊石が並び、淡く光を放っている。

「メデル様。今日は“赦し”の言葉を学ぼう。誰かを許すことは、心を癒す第一歩だ」

メデルは、くましゃんを抱えたまま、眠そうに目をこすった。

「…ごめんなしゃい…だいじょうぶでしゅ…」

その言葉に、精霊石がふわりと光り、風が優しく吹き抜けた。

グラウスは目を見開いた。

「……これは……!言葉と魔力が…結びつき始めている……!」


その瞬間、自室の風がふわりと揺れた瞬間、ミディットレースの肩に白虎の幼体が乗った。

彼は驚いて声を上げた。

「えっ……なにこれ……肩が軽い……風が、流れてる……!」

メデルの幻想は、くましゃんを抱えながら、にっこり笑って消えた。

「ミディットにいちゃま……がんばってるでしゅ……かぜしゃん、みてるでしゅ……」

白虎は、ミディットレースの耳元で小さく鳴き、彼の魔力の流れを整えるように風を巻いた。

「ぼく……詠唱、うまくいくかも……ありがとう、メデル……ありがとう、白虎さん……!」

グラウスはその様子を見て、目を見開いた。

「聖獣の幼体が……魔力の流れに応じて寄り添っている……これは、奇跡だ……!」


中庭の一角。

ハクリスは腕を組み、ココリスを睨むように見つめていた。

「なんで……なんで勝手に冒険行くんだよ!僕だって……一緒に行きたいのに!」

ココリスは少し眉をひそめて言い返す。

「だって、ハクがずっと神殿にいたからでしょ?あたし、待ってるだけじゃダメだと思ったの!」

「でも……僕は、君の隣にいたいんだよ……!」

その言葉に、ココリスの目が揺れた。

「……ハク……」

そこへ、メデルの幻想がふらふらと歩いてきた。

くましゃんを抱えたまま、二人の間に立つ。

「なかよしでしゅ……けんか、かなしいでしゅ……」

メデルの声は、幼いながらも澄んでいて、風のように二人の心に触れた。

その瞬間、玄武の幼体がハクリスの足元に、翠鳥の幼体がココリスの髪飾りに寄り添った。

二人の間に、幼き日の思い出――手をつないで森を歩いた日、魔法の練習で笑い合った日――がふわりと浮かぶ。

ハクリスは、目を伏せて言った。

「……ごめん、ココリス。僕、ちょっと寂しかっただけなんだ」

ココリスも、そっと手を伸ばした。

「うん……あたしも、ちゃんと話せばよかった。次は一緒に行こうね」

メデルは、にっこり笑って消えた。「ふたりとも……だいすきでしゅ……」

ハクリスは言った。

「メデルって……ほんとに不思議だよ。言葉が、心に届くんだ」


騎士団の訓練場。

エリザマールは、模擬戦での失敗に肩を落としていた。

剣を握る手が震えている。

「また……仲間に迷惑かけちゃった……あたし、騎士団に向いてないのかな……」

彼女の声は、普段の強気な姿とは違い、どこか小さく、弱々しかった。

そこへメデルの幻想がやってきて、そっと手を伸ばした。

「また、がんばれるでしゅ……えりざ姉さま……つよいでしゅ……」

その言葉に、朱雀の幼体が剣の鍔に宿り、炎の鼓動が彼女の胸に灯る。

「……あったかい……これ、朱雀の……?メデル、あたし……もう一度、立てる気がする!」

メデルの幻想は、くましゃんをぎゅっと抱きしめながら消えた。

「えりざ姉さま……かっこいいでしゅ……だいじなひとでしゅ……」

エリザマールは目を潤ませながら笑った。

「ありがとう、メデル。あたし、もう一度、剣を握るよ。今度は、誰かを守るために」



書庫の一角。

ヴェルメールは、魔力調整後も無理をして書類を読み続けていた。

額には汗が滲み、肩が重そうに落ちている。

「僕は……家族の長男だから……休んでる暇なんて……」

その言葉に、メデルの幻想がそっと近づいた。

くましゃんを抱えたまま、ヴェルメールの膝に座る。

「やすんでも……だいじょうぶでしゅ……ヴェルメールにいちゃま……つよいでしゅ……とっても、やさしいでしゅ……」

その瞬間、青竜の幼体が背に浮かび、魔力の流れを整えるように水の気配が広がった。

ヴェルメールは、静かに目を閉じて頷いた。

「……ありがとう、メデル……少しだけ、休ませてもらうよ」

彼の背に青竜が寄り添い、水のように静かに力を満たしていった。

「君の言葉は……まるで水のようだ。静かに、でも確かに、心に染みてくる」

メデルの幻想は、うとうとしながらも微笑んで消えた。

「ヴェルメールにいちゃま……だいすきでしゅ……」


神殿の回廊の窓辺。

朝の光が柔らかく差し込む中、ブランデットは静かに座っていた。

彼の胸元には、白く輝く小さな蛇――白蛇の幼体が巻きついている。

「……命って、あったかいんだね……」

彼は、そっと白蛇を撫でながら、ぽつりと呟いた。

「ぼく……ブランデットです。でも……カーロも、いっしょにいます……」

白蛇は、静かに首を持ち上げ、ブランデットの瞳を見つめた。

その瞳は、まるで彼の奥に眠る“もうひとつの命”を見透かしているようだった。

「命とは、ひとつではない。重なり、響き合い、形を変えて続いていく。我は、二つの命が交わった死と再生の決断の時は供に…」

ブランデットは、少し考えるように目を伏せた。

「…ぼく、カーロのこと…おぼえてる。やさしくて、つよくて……でも、ぼくが生まれた時、いなくなった……」

その時、メデルの幻想がふらふらと歩いてきた。

くましゃんを抱えたまま、眠そうな目でブランデットを見つめる。

「ブランにいちゃま……きらきらしてるでしゅ……」

メデルの幻想は、そっとブランデットの手を握った。

「いきてるでしゅ……だいじでしゅ……カーロ姉さまも……いっしょでしゅ……」

白蛇の幼体が、メデルの幻想の手に触れ、淡く光った。

その光は、命の記憶を優しく包み込むように、二人の間に流れた。

ブランデットは、涙を浮かべながら、メデルに微笑んだ。

「……ありがとう、メデル。ぼく……もう、こわくない……カーロも、ここにいる……」

白蛇は、静かにブランデットの胸に光を灯し、彼の中に眠る“カーロ”の存在を優しく肯定した。



***

師への導き ―聖獣からの贈り物

夜のグラウス自室。

書庫の窓からは、月の光が静かに差し込み、古文書の頁を淡く照らしていた。

グラウスは、机に広げた古い記録を見つめながら、深く息を吐いた。

かつての弟子の名が記された頁。

その隣に、メデルの名をそっと書き加えた。

「赦しとは…他者だけでなく、自分にも向けるものだ……」

彼は、静かに目を閉じた。

「メデル様……貴方は、私に“赦し”を教えてくれた。私は、もう一度師として生き直す」

その時――

風がふわりと吹き抜け、書庫の空気が変わった。

六つの聖獣の紋章が、棚の奥に並ぶ精霊石に淡く光を灯す。

「……これは……」

グラウスが立ち上がると、精霊石の前に、六体の聖獣の幼体が静かに姿を現した。

白虎は、風のように軽やかに跳ね、グラウスの肩に乗った。

「導く者には、風の視野を。迷いを越え、道を示す力を」

朱雀は、炎の羽を広げ、グラウスの胸に光を灯した。

「導く者には、火の情熱を。心を燃やし、信念を貫く力を」

玄武は、足元に根を張るように佇み、地を震わせた。

「導く者には、土の耐性を。揺るがぬ意志と、支える力を」

青竜は、水の流れを纏いながら、グラウスの背に寄り添った。

「導く者には、水の柔軟を。変化を受け入れ、流れに乗る力を」

翠鳥は、肩に舞い降り、耳元で囁いた。

「導く者には、風と水の調和を。言葉に心を乗せ、響かせる力を」

白蛇は、静かにグラウスの額に光を灯した。

「導く者には、光と影の理解を。命の循環を見守る力を」

六体の聖獣が、グラウスの周囲に光の輪を描き、彼の魔力に静かに触れた。

その瞬間、グラウスの体から、柔らかな光が立ち上がった。

「……これは……導きの魔力……?」

居ないはずのメデルとメデルを抱くスワロ公爵の姿が幻想的に映し出され

メデルは、コルベックの膝の上でうとうとしながら、ふわりと目を開けた。

「グラウスしゃん……きらきらしてるでしゅ……」

グラウスは、メデルの言葉に微笑みながら、静かに膝をついた。

「メデル様。貴方が“赦し”を教えてくれたから、私は“導き”を得た。これからは、貴方の旅を照らす灯となろう。師として、共に歩む」

聖獣たちは、光の粒となって書庫の空へと舞い上がり、精霊石に還っていった。

その光は、神殿の天井に虹のような軌跡を描き、静かに消えていった。

メデルとメデルを抱くスワロ公爵の姿もまた、静かに消えていった。

そして、書庫の静寂の中――

グラウスの胸には、六つの属性の力が宿り、師としての新たな魔力が芽吹いていた。

それは、幼き調和者の旅を導く者に与えられた、聖獣たちからの贈り物。

次なる試練への準備が、静かに始まっていた。


公爵家居間。

その夜、居ないはずのグラウスの姿が幻想的に映し出され

メデルは、コルベックの膝の上でうとうとしながら、ふわりと目を開けた呟いた。

「グラウスしゃん……きらきらしてるでしゅ……」

その瞬間グラウスの姿は、静かに消えていった。

コルベックは、驚きながらまだ幼い甥っ子を抱きしめた。

「僕、ことば…すこしずつ…わかってきたでしゅ…」

コルベックは、彼の髪を撫でながら微笑んだ。

「ああ君の言葉は、世界を癒す鍵になる。聖獣たちも、それを待っている」

その言葉に応えるように、聖獣たちの紋章が淡く光り始めた。

それは、次なる試練の予兆――

幼き調和者の旅が、また一歩進もうとしていた。

***

お父様の秘密


領地公爵館の書庫。

騎士団長を辞任し領地帰り領主館の書庫で夜の静けさの中、コクベックは一人、古文書の頁をめくっていた。

蝋燭の火が揺れ、彼の影が壁に伸びる。

「メデルが生まれてから……何かが変わった。心と体が共鳴して、五属性の魔法が使えるようになった。それは、誇らしいことのはずなのに……なぜか、怖い」

彼は、鏡に映る自分の顔を見つめる。

皺は浅く、髪は艶やかな銀髪。

「年齢にしては……若すぎる。老けない。なぜだ……?」

子供たちの魔力不調も、気がかりだった。

「ヴェルメールも、ハクリスも、ミディットレース……みんな、魔力が強すぎる。それなのに、体が追いついていない。まるで、器が足りないような……」

彼は、領地の管理記録に目を留める。

「森の管理人:キル・エル=ヴァルド」

百年前から、変わらぬ名前。

「……同じ名前が、百年も……?」

疑問は確信へと変わり、夜明け前、コクベックは馬を走らせた。

向かうは、領地の森。答えを求めて。


――霧に包まれた巨大なログハウス。


扉を叩くと、銀髪の青年のような姿のキルが現れた。

「……コクベック様。ようこそ。お待ちしておりました」


「待っていた……?私を?」

キルは微笑みながら、奥の暖炉へと案内した。

そこには、穏やかな雰囲気を纏ったバルグが、湯を沸かしていた。

「あなたが来る日が、導きの書に記されていました。“調和者の父、血の記憶に触れる時、森は語り始める”と…」

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