表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/71

68旅―冒険者(アルセルフ国→シンノ国)48

アルセルフ国最後の夜、砂漠の空は深い蒼に沈み、無数の星々が静かに瞬いていた。

遠く、シンノ国の影が夜の帳に溶ける頃――その闇の中で、ひとつの光が生まれる。

メデルの胸から黒の魔力が淡く溢れ、風に乗って精霊の声が響いた。

『……目覚めよ、理を繋ぐ者たち。』

七つの精霊王の声が、世界を震わせる。

風精霊王 ゼフィルス ― 風が砂を撫で、遠い空の歌を運ぶ。

土精霊王 グランディア ― 大地が低く唸り、地脈が光を宿す。

水精霊王 アダマン ― 乾いた砂に、ひとしずくの命が落ちる。

火精霊王 イグニス ― 星の炎が瞬き、熱が夜を染める。

闇精霊王 ノクティス ― 闇が深く、静謐の力を抱く。

光精霊王 ルミナス ― 光が砂漠に降り注ぎ、未来を照らす。

時精霊王 クロノス ― 時の歯車が音もなく回り、運命を紡ぐ。

その声に、仲間たちの魂が震えた。


最初に応えたのはブランデットだった。

青と白の魔力が彼の体を包み、炎のように揺らめく。

肩に触れた精霊が、優しく囁く。

「……僕は、守るために。」

その声は震えていたが、瞳には確かな決意が宿っていた。

メデルが小さく頷くと、ブランデットは微笑んだ。

「メデル……僕たち、一緒に未来を守ろう。」

精霊の光が彼の背に羽のように広がり、砂漠に青白い輝きが咲いた。


次に、ケルビスの足元で砂が低く唸った。

黄の魔力が地脈を照らし、精霊が集う。

「……この力で、道を開く。」

彼は拳を握り、深く息を吐いた。

「俺は……ただの辺境の息子じゃない。未来を繋ぐ者だ。」

その言葉に応えるように、土精霊が契約の印を刻む。

地面から芽吹いた光が、砂漠に命の予兆を描いた。


炎が砂を撫で、夜に赤い光が広がる。

ルククの小さな体に、紅の魔力がきらめいた。

「僕も……一緒に!」

その声は幼いが、熱い意志を秘めていた。

火精霊が笑いながら彼の髪を揺らし、砂漠に炎の花を咲かせる。

「ルクク、君の炎は希望だ。」

その言葉に、ルククは胸を張り、炎を解き放った。


銀毛が光を反射し、フーマの体に虹光が宿る。

魔力を持たなかった彼に、精霊が力を与えた瞬間だった。

「……護る。それが俺の誓いだ。」

低い声が砂漠に響き、銀狼の瞳が鋭く輝く。

「若き者たちよ、俺が前を切り開く。」

精霊たちがその背に虹光をまとわせ、全体の銀毛が伸び獣の力が覚醒した。


静かに目を閉じたケルメデスアールの周囲に、深い蒼の魔力が広がる。

「……若き者たちよ、道を誤るな。」

その声は重く、砂漠に響いた。

古き精霊が彼の周囲に舞い、契約の印を刻む。

「この命、未来に捧げる。」

その誓いに、精霊たちが静かに頷き生命を刻む。


風が砂を巻き上げ、夜空に白い軌跡を描く。

マルコの拳に、蒼の魔力が宿った。

「……俺も、やるしかないか。」

笑みを浮かべながら、風精霊の力を握りしめる。

「皆に負けてられないな。」

その言葉に、風精霊が彼の背を押し、嵐の力が彼を包んだ。


最初に声を発したのは、風精霊王 ゼフィルス。

その声は、砂漠を渡る風のように柔らかく、しかし鋭い。

「黒の子よ……お前の祈りは、嵐を鎮める風となるか、それとも世界を裂く刃となるか。」

メデルは静かに答えた。

「僕は……守りたい。みんなを、未来を。」

ゼフィルスは微笑み、風が彼の頬を撫でた。

「ならば、風はお前に翼を与えよう。」

次に、土精霊王 グランディアが低く唸る声を響かせた。

「大地は重い。お前の心が揺れれば、世界は崩れる。耐えられるか?」

メデルは拳を握り、砂を見つめた。

「……僕は揺れない。絆があるから。」

グランディアは深く頷き、地脈が光を宿した。

「ならば、大地はお前の足を支えよう。」

水精霊王 アダマンの声は、静かな水面のように澄んでいた。

「黒の祈りよ、流れを乱すな。お前の涙は、命を潤すか?」

メデルは目を閉じ、胸に手を当てた。

「僕の涙は……希望のために流れる。」

アダマンは微笑み、砂に一滴の水が落ちた。

「ならば、水はお前に癒しを与えよう。」

火精霊王 イグニスが炎のような声で笑った。

「黒の子よ、炎は破壊だ。だが、炎なくして再生はない。燃やせるか?」

メデルは星空を見上げ、静かに言った。

「僕は……闇を燃やす。光のために。」

イグニスは炎を揺らし、夜空に赤い花を咲かせた。

「ならば、炎はお前に力を与えよう。」

闇精霊王 ノクティスが、深い闇の中から声を響かせた。

「黒の祈りよ、闇は孤独だ。お前はその孤独に耐えられるか?」

メデルは胸を張り、仲間たちを思い浮かべた。

「僕は……一人じゃない。絆がある。」

ノクティスは静かに笑い、闇が優しく彼を包んだ。

「ならば、闇はお前を護ろう。」

光精霊王 ルミナスが、星のような声で囁いた。

「黒の子よ、光は脆い。お前の心が曇れば、光は消える。守れるか?」

メデルは強く頷いた。

「僕は……光を守る。みんなの笑顔を。」

ルミナスは輝きを増し、砂漠に白い花を咲かせた。

「ならば、光はお前に未来を照らそう。」

最後に、時精霊王 クロノスが、時の歯車の音を響かせた。

「黒の祈りよ、時は残酷だ。お前はその流れに抗えるか?」

メデルは深く息を吸い、静かに言った。

「僕は……抗わない。時を受け入れ、未来を紡ぐ。」

クロノスは微笑み、星々が流れ始めた。

「ならば、時はお前に扉を開こう。」

覚醒の夜は、未来への扉を開いた。


その瞬間、メデルの胸から黒の祈りが溢れ、七つの光が砂漠に咲いた。

星々が震え、砂が歌い、精霊たちが舞う。

『理を繋げ。絆を刻め。』

夜明けの空が虹光に染まり、未来への扉が開いた。

砂漠の果てに、緑の芽がひとつ、静かに息づいていた。

それは希望の証。

七つの精霊王との契約が終わり、夜は虹光に染まっていた。

メデルの胸から溢れる黒の魔力は、静かに世界を揺らし、星々を震わせる。

その瞬間――精霊王たちの声が再び重なった。

『黒の子よ――その闇を超え、理を繋ぐ者となれ。』

風が舞い、砂が歌い、炎が踊る。

闇と光が交わり、時の歯車が音もなく回る。

メデルの体を包む黒の輝きが、ゆっくりと変化を始めた。


黒髪が、夜空の闇を溶かすように淡く光り、一本一本が金糸に変わっていく。

その輝きは星の光を映し、砂漠に黄金の風を呼んだ。

黒い瞳もまた、深い闇を手放し、金色の光を宿す。

その瞳は、未来を映す鏡のように澄み、精霊たちの力を受け止めていた。

メデルは驚きに息を呑み、震える声で呟いた。

「……僕……変わっていく……?」

光精霊王 ルミナスが、星のような声で答える。

『変化は恐れではない。お前が選んだ絆の証だ。』

闇精霊王 ノクティスが静かに続ける。

『黒は消えぬ。お前の中に在り続ける。だが今、その闇は黄金に溶け、理を守る力となる。』

時精霊王 クロノスが、時の流れを刻む声で告げる。

『金色は始まりだ。お前の祈りは、未来を紡ぐ糸となった。』


「メデル……精霊にならないで! 僕の弟でいて……!」

ブランデットの声は涙に震えていた。

メデルは微笑み、金色の髪を風に揺らしながら答えた。

「お兄様…僕は…僕のまま。みんなと未来を守る。」

ルククが笑顔で叫ぶ。

「すごい! メデル、かっこいい!」

ケルビスは低く呟いた。

「……これが、黒の祈りの力か。」

フーマは銀毛を揺らし、誇りを込めて言った。

「……その姿、もう子供じゃないな。未来を背負う者だ。」

七つの精霊王が声を重ねる。

『ならば――進め。理を繋ぐ者よ。』

砂漠に七色の光が咲き、夜明けの空が黄金に染まった。

星々が流れ、砂が歌い、精霊たちが舞う。

遠く、シンノ国の神域が朝の霞に浮かび上がる。


夜明けの光が、砂漠に淡い金色を落としていた。

七色の輝きが消えた後も、空には虹光の余韻が漂い、精霊たちの歌声が遠くで微かに響いている。

砂漠の果てには、緑の芽がいくつも顔を出し、乾いた大地に命の気配が広がっていた。

メデルはまだ眠っていた。金糸の髪が朝の光を受けて輝き、仲間たちはその小さな寝顔を守るように囲んでいる。

ブランデットはそっと弟の手を握り、安堵の息を吐いた。

「……よかった。メデル、ちゃんと戻ってきてくれた。」

その声には、夜の緊張が解けた優しさが滲んでいた。


少し離れた場所で、フーマが立ち上がった。

銀毛が夜明けの光を浴びて、まるで流れる水銀のように輝いている。

その毛並みは以前より長く、しなやかで、背中には鬣のような厚みが生まれていた。

彼の体躯は一回り大きくなり、獣の力がさらに研ぎ澄まされている。

「……これが、精霊の加護ってやつか。」

低い声に、誇りと驚きが混じる。

ケルビスが笑って肩を叩いた。

「フーマ、まるで王獣だな。銀狼の伝説そのものだ。」

フーマは鼻で笑い、銀毛を揺らした。

「王獣なんて柄じゃねぇ。ただ……護る力が増えた。それで十分だ。」


その時、ルククがぱっと顔を輝かせてフーマに駆け寄った。

「フーマ! その鬣、すごくかっこいい! ねえ、編んでみてもいい?」

マルコも風に髪を揺らしながら笑った。

「面白そうだな。俺も手伝うよ。」

フーマは片眉を上げ、少し呆れたように言った。

「……編む? 俺の毛を?」

ルククは真剣な目で頷く。

「うん!前髪邪魔でしょ、全部入れて編み込んであげる!」

マルコが風精霊を呼び、銀毛をふわりと持ち上げる。

「ほら、風で整えてやる。ルクク、炎で指先を温めて編みやすくしろ。」

「わかった!」

二人は笑いながら、フーマの前髪を後ろの鬣と一緒に編み込み始めた。

銀毛に炎の温もりと風の優しさが重なり、編み込まれた部分は虹光を帯びて輝いた。

フーマはため息をつきながらも、どこか嬉しそうに目を細める。

「……好きにしろ。ただ、変な飾りはつけるなよ。」

「わかってる! でも、ちょっとだけ赤い紐を入れたいな……」

「おい。」

仲間たちの笑い声が、朝の砂漠に溶けていった。

ケルビスが遠くの地平を見つめ、静かに呟く。

「……シンノ国が見えてきたな。ここからが本当の旅だ。」


ブランデットは眠るメデルの髪を撫でながら、心の中で誓った。

(必ず守る。どんな未来が待っていても。)

その時、胸の奥でカーロの声が震えた。

『……ブランデット、メデルが遠くへ行ってしまう気がする。……。』

ブランデットは強く手を握り、静かに答えた。

(そんなことさせない。メデルは僕の弟だ。カーロも一緒に守ってくれるだろ?)

『……もちろん。でも……お願い、ずっとそばにいて。』

(約束する。僕たちで、メデルを守るんだ。)


メデルの寝顔の周りには、精霊たちがまるで守護の輪を作るように集まっていた。

風が頬を撫で、炎が小さな花火のように瞬き、水が朝露を落とし、砂が柔らかな絨毯を編む。

光の精霊は金糸の髪に触れ、淡い輝きを重ねていた。

その光景は、世界そのものがメデルを抱きしめているかのようだった。

その時、メデルの指がわずかに動き、まぶたが震えた。

「……ん……」

小さな声とともに、金色の瞳がゆっくりと開いた。

メデルはぼんやりと空を見上げ、次の瞬間、息を呑んだ。

「……え……僕……?」

彼の視線が自分の髪に落ちる。黒だった髪が、朝の光を受けて金糸のように輝いていた。

瞳もまた、深い闇を失い、黄金の光を宿している。

「……どうして……僕、こんな……」

声が震え、指先が髪を掴む。

「僕……もう、僕じゃないみたい……精霊になっちゃったの……?」

ブランデットが慌てて駆け寄り、肩に手を置いた。

「メデル、落ち着いて。大丈夫だよ。」

メデルは首を振り、涙をにじませながら呟く。

「でも……みんな、僕を呼んでる……僕、どうなっちゃうの……?」

ブランデットがメデルを抱きしめてながら言う。

「大丈夫、メデル。大丈夫だよ。」

その言葉に、胸の奥でカーロの声が震えた。

『……ブランデット、見て。精霊たちが離れようとしない……まるで、メデルを自分たちのものにしようとしてるみたい。』

(そんなこと、させない。メデルは僕の弟だ。精霊のものじゃない。)

『でも……愛されすぎてる。光に溶けて、私たちの声が届かなくなるんじゃないかって……怖い。』

(大丈夫。僕が守る。カーロも一緒に。)

朝の光が金糸の髪を照らし、その誓いを祝福するかのように輝いた。


編み込みが完成した瞬間、銀毛に炎と風の魔力が溶け合い、虹光がきらめいた。

「……できた!」ルククが満面の笑みを浮かべ、マルコが肩をすくめる。

「悪くないな。フーマ、まるで王獣だ。」

フーマは鼻で笑いながらも、どこか誇らしげに目を細めた。

「……旅の証か。悪くない。」


メデルはしばらく動揺していたが、ブランデットに抱きしめられ、仲間たちの声に包まれてようやく落ち着いた。

「……僕、まだ僕だよね?」

ブランデットは微笑み、頷いた。

「もちろん。メデルはメデルだ。」

その言葉に、メデルは小さく息を吐き、金色の髪を指で撫でた。

「でも……髪、すごく長くなってる……」

ルククがぱっと顔を輝かせる。

「じゃあ、僕が編んであげる! フーマみたいにかっこよく!」

メデルは驚いたが、仲間たちの笑顔に押されて頷いた。

「……うん、お願い。」

ルククは炎で指先を温め、器用に金糸の髪を編み始める。

「わぁ、すごい……光ってるよ!」

マルコが風精霊を呼び、髪をふわりと持ち上げて整える。

「風で仕上げだな。旅の証だ。」

メデルは少し照れながら笑った。

「ありがとう……なんだか、ちょっと楽しい。」

仲間たちの笑い声が、朝の砂漠に柔らかく溶けていった。

編み込みが終わると、ケルビスが持ってきた燻製窯の蓋を開け、香ばしい匂いが広がった。

「さあ、朝飯だ。砂蠍の丸焼き、できてるぞ!」

ルククが歓声を上げる。

「やったー! 僕、お腹ぺこぺこ!」

フーマが鼻を鳴らし、笑みを浮かべる。

「……旅の始まりにしては悪くないな。」

メデルがふとケルビスの方を見て、にっこり笑った。

「ねえ、ケルビスが朝食作ったの? すごい匂いする!」

ケルビスは燻製窯の蓋を持ちながら、肩をすくめる。

「ああ、俺だ。砂蠍の丸焼き、旅の始まりにはちょうどいいだろ?」

マルコが風で火加減を整え、熱々の肉を切り分ける。

「ほら、メデルも食べろ。力をつけないと。」

メデルは編み込まれた髪を指で触れながら、笑顔で頷いた。

「うん……ありがとう、みんな。」

砂漠の朝に、笑い声と香ばしい匂いが広がる。

遠く、朝の霞に包まれたシンノ国の神域が、黄金の光の中にぼんやりと浮かび上がっていた。

その光景は、仲間たちの絆と未来への希望を映していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ