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僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


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63/71

63旅―冒険者(アルセルフ国)43

灼熱の砂が、視界を白く塗りつぶしていた。

空は青ではなく、揺らめく光の膜に覆われ、蜃気楼が遠くに街の幻を描いている。

風は熱を孕み、肌を刺すように吹きつける。砂粒が頬を打つたび、痛みが小さな火花のように散った。

「……水、あとどれくらい?」

ブランデットが低く問い、荷車の水袋を確認する。

「半分……いや、三分の一かな。」ケルビスが答え、額の汗を拭った。

その声に、メデルは唇を噛む。胸の奥で、精霊の声が遠ざかっていくのを感じていた。

光の囁きが、砂に呑まれていく。

……怖い。精霊の声が聞こえないと、僕……

「メデル、下を向くな。」

ブランデットの声が鋭く響く。

「砂嵐が来る。風の流れが変わった。」

その瞬間、視界の端で砂が舞い上がり、渦を巻き始めた。

熱風が唸り、砂粒が刃のように踊る。

「風精霊、来て!」

ルククが叫び、指先に炎を灯す。

ロカが翼を広げ、風を集めると、砂嵐の流れがわずかに逸れた。

『炎と風、合わせるよ!』ロカの声が念話で響き、炎が風に絡み、熱の壁を押し返す。

「紅蓮の偏流、発動!」ルククが詠唱し、炎が砂粒を焼き切りながら風路を固定した。

「……すごい。」メデルが呟くが、その声は震えていた。

砂嵐は弱まったものの、熱波が押し寄せる。空気が重く、息が詰まる。

「結界を張る!」メデルは両手を広げ、黒魔法の詠唱を始めた。

「…光よ、恐れを責めず、包み込め。光結界!」

淡い金色の光が広がり、仲間たちを覆う。

熱が和らぎ、心のざわめきが静まる。

「……あったかい。」

ロカが翼を畳み、ほっと息を吐いた。

「やるじゃないか、メデル。」

ブランデットが微笑む。

だが、その笑みの奥に緊張が潜んでいる。

光結界は初めての試み。負荷は大きい。メデルの肩が震え、額に汗が滲む。

「無理するな。俺が光路を分散する。」

ブランデットが青魔法を展開し、結界の流れを調整する。

「ありがとう……でも、僕、やれる。」

メデルは小さく答え、光を強めた。

その時、遠くから砂帆車の影が近づいてきた。

帆に刻まれた紋章――風の契約者の印。

「商人か……いや、護衛が多いな。」

フーマが低く唸り、尾を揺らす。

砂帆車が止まり、男たちが降り立つ。

「旅人か?この砂漠で何をしている。」

先頭の男が声を張り上げる。腕には風護符が光り、砂粒が彼の周囲で舞っていた。

「アルセルフ国へ向かってる。」

ブランデットが答える。

「大神殿の鏡を……」

メデルが言いかけた瞬間、男の目が鋭く光った。

「鏡に触れる気か?あれは国の繁栄の象徴だ!」

声が砂嵐に乗って響き渡る。腕に巻かれた風護符が淡青に光り、周囲の砂が渦を巻く。

メデルは一歩前に出た。結界の光が彼の肩を淡く照らす。

「癒しの象徴?それは精霊を閉じ込めて得たものだよ!」

声は震えていたが、瞳は揺れなかった。

「精霊は国のために使うものだ!」

男が叫び、風が唸りを上げる。

「精霊は自由であるべき!」

メデルが返す。

その瞬間、砂が爆ぜ、風壁が立ち上がった。

「来るぞ!」

フーマが吠え、銀毛を逆立てる。剣が砂光を反射し、獣の瞳が戦場を射抜いた。

ケルビスが両手を地に突き、詠唱を紡ぐ。

「土よ、支えろ…鎮護陣・砂圧!」

砂が圧密化し、帆車の車輪が沈む。護衛たちが驚きの声を上げる。

「動けない!?何をした!」

「砂は道にも鎖にもなる。」

ケルビスの声は低く、砂漠の底のように重かった。

「ルクク、ロカ、風を押さえろ!」

ブランデットが指示を飛ばす。

炎が舞い、風が絡む。

「紅蓮の偏流、発動!」

ルククの詠唱が砂嵐を裂き、熱の刃が風路を固定する。

ロカが翼を広げ、風精霊の声を呼ぶ。

『風よ、結べ…炎と共に!』

炎と風が交わり、砂嵐が一瞬で静まる。だが、護衛たちは風刃を放ち、結界に衝突した。

「メデル、結界を強めろ!」

ブランデットが叫ぶ。

「光よ、恐れを責めず、包み込め。光結界・第二層!」

淡金の光が厚みを増し、風刃を弾く。だが、衝撃がメデルの腕を震わせる。

「無理するな!」

ブランデットが青魔法で光路を分散し、負荷を肩代わりする。

「ありがとう……でも、僕、やれる!」

メデルの声は小さく、しかし確かだった。

「やめろ!」

フーマの剣が風護符を弾き、護衛の腕を切り裂く寸前で止まる。

「俺たちは戦いに来たんじゃない。精霊を解放しに来たんだ!」

「解放?それは国を壊すことだ!」

男が吠える。

「国を壊すのは、均衡を奪ったお前らだ!」

フーマの声が砂漠を震わせる。

その言葉に、一瞬、風が止んだ。

砂粒が舞う静寂の中、メデルの結界が淡く光り、精霊の声が微かに戻ってきた。

「……精霊の声が、聞こえる。」

メデルが呟く。

その声に、ロカが翼をぱたぱたさせて笑った。

『やっぱり、光は風と仲良しだね!』

ルククが炎を弱め、護衛たちを睨む。

「戦うより、話す方がいいんじゃない?」

男は歯を食いしばり、風護符を握りしめたまま沈黙した。


「…風が時々…助けてと聞こえる…」

護衛の一人が呟いた瞬間、戦場の空気が変わった。

砂嵐の唸りが弱まり、風刃の軌跡が揺れる。

「おい、何を言ってる!」

年配の護衛が怒鳴るが、その声にも迷いが混じっていた。

メデルは結界に指を触れ、静かに目を閉じる。

「聞いて……風の声を。」

淡金の光が広がり、結界が柔らかな波動を放つ。

護衛たちの耳に、微かな囁きが届いた。

『……ここは暗い……出して……』

「……精霊が……泣いてる?」護衛の一人が剣を下ろした。

「嘘だ!」

護衛が叫ぶが、その手も震えている。

フーマが一歩前に出る。剣先が砂を切り、銀毛が陽光を弾いた。

「剣を抜くのは簡単だ。だが、均衡を戻すのは難しい。」

その声は低く、砂漠の底のように重かった。

「俺たちは戦いに来たんじゃない。理を繋ぎに来たんだ。」

護衛の瞳が揺れ、風護符の光が弱まる。

「大神殿の鏡を壊せば……俺たちは……」

その呟きが、砂漠の熱より重く響いた。

ブランデットが結界を維持しながら、仲間に視線を送る。

「聞いたな。鏡が鍵だ。」

メデルは唇を噛み、胸の奥で精霊の声を抱きしめた。

…鏡を解放しなければ、この風も、この声も、救えない。

砂漠の風が、熱を孕みながらも、少しだけ柔らかくなった。

だが、その柔らかさは嵐の前の静けさに過ぎない。

都市の中心、白銀の鏡が待っている…光と理を試すために。


砂漠を越えた先に広がる都市は、まるで蜃気楼が現実になったようだった。

白い石畳が陽光を反射し、風塔が空を突き刺すように立ち並ぶ。塔の頂には風精霊の紋章が刻まれ、淡い蒼光が回転していた。

市場は香辛料の匂いで満ち、砂金の輝きが目を射る。荷車を引くのは人ではなく、風精霊の力を宿した帆。商人たちは護符を掲げ、風を操りながら荷を運んでいた。

「……すごい。」

メデルが思わず呟く。

ロカが翼をぱたぱたさせ、目を輝かせる。

『風がいっぱい!ここ、風精霊の楽園みたい!』

ルククが笑いながら炎を指先に灯し、熱を散らす。

「でも、光の精霊は……感じないね。」

メデルは胸の奥で、静かな空白を覚えた。光の囁きが、ここにはない。

大神殿は都市の中心にあった。白銀の柱が並び、天井には砂漠の星を象ったモザイク。

その奥に…鏡があった。

高さは人の背丈の三倍、縁には古代文字が刻まれ、表面は水面のように揺れている。

鏡の前には貴族たちが列をなし、祈りを捧げていた。

「鏡に触れれば、心が安らぐ。」

司祭の声が響き、参拝者が次々と鏡に手を触れる。

その瞬間、彼らの顔が穏やかに緩む。

だが…メデルには聞こえた。

鏡の奥から、光精霊の呻きが。

『……出して……ここは暗い……』

「……やっぱり。」

メデルの指が震える。

ブランデットが肩に手を置き、低く囁く。

「落ち着いて。まだ言うな。」

だが、メデルは一歩前に出た。

「駄目だよ……光の精霊を閉じ込めたら!」

その声は、静寂を裂いた。

貴族たちが一斉に振り向き、ざわめきが広がる。

「何を言う!」

「鏡は癒しの象徴だ!」

「国の繁栄を支える聖具を侮辱する気か!」

司祭がゆっくりと歩み出る。白い法衣が砂光を反射し、瞳は冷たい。

「旅人よ、言葉を慎め。この鏡は痛みを吸い、安らぎを返す。それを罪と呼ぶか?」

メデルは唇を噛み、声を絞り出す。

「安らぎが、精霊の囚われで成るなら、それは……借り物の恩寵です。」

その言葉に、広間が凍りついた。

「均衡を壊す気か?」

貴族の一人が叫ぶ。

「鏡を壊せば、国の理が崩れる!」

フーマが前に出て、銀毛を揺らしながら低く言った。

「均衡はもう崩れている。至福の森の外が砂漠になったのは、何故だ?」

その声は剣より鋭く、広間に重く響いた。

司祭の眉がわずかに動く。

「……砂漠は、理の試練だ。」

「試練?それは奪った精霊の声が、地に満ちず砂に変えた証だ。」

ケルメデスアールが静かに言う。

「……理は崩れるいる…もう崩れる。」

その言葉に、貴族たちの顔が強張った。

「鏡を壊すことは許さぬ。」

司祭の声が冷たく落ちる。

「……だが、調査は許そう。夜間、鏡間のみ。破壊は厳禁だ。」

その条件に、ブランデットが息を吐く。

「……時間を稼げるだけ、ましだな。」

だが、広間の隅で私兵たちが動くのを、フーマの鋭い視線は見逃さなかった。

この都市は、鏡を守るためなら剣を抜く覚悟をしている。

そして、メデルたちは精霊を解放するために、剣を抜かざるを得ないかもしれない。

砂漠の熱は消えたが、ここには別の熱がある。


夜のアルセルフは、昼の喧騒とは別の顔を見せていた。

市場の灯りが消え、風塔の蒼光だけが都市を照らす。

大神殿の白銀の柱は月光を受けて冷たく輝き、鏡の間へ続く回廊には私兵の影が潜んでいた。

「……見たか?」

フーマが低く呟き、銀毛を揺らす。

「広間の隅で動いていた奴ら、鏡を守るためなら剣を抜く覚悟だ。」

ケルメデスアールが頷き、剣の柄に指をかける。

「理を守るために剣を抜く……皮肉だな。」

その声は静かだが、底に鋼の響きがあった。

一行は宿の奥で円を描き、地図を広げた。

砂漠の星を象った古い羊皮紙、その中央に大神殿の印。

「夜間、鏡間のみ……破壊は厳禁。」

ブランデットが条件を繰り返す。

「でも、解放しなきゃ意味がない。」

メデルの声は震えていたが、瞳は揺れなかった。

「どうやって?」

ルククが炎を指先に灯し、問いかける。

「鏡はただのガラスじゃない。契約陣だ。」

ケルビスが低く言う。

聖獣のたまご…翠龍様が念話で皆に伝える。

『解放には六つの要素が必要だ。黒魔法、白魔法、青魔法、赤魔法、黄魔法の力、そして……砂漠の星の欠片。』

「メデル、ブランデット、カーロ、ルクク、ケルビス……星の欠片?」

ロカが翼をぱたぱたさせる。

「夜の砂漠に眠る、星精霊の息だ。」ケルメデスアールが古文書を指でなぞる。

『それを集めなければ、鏡は開かぬ。』

「……時間がない。」

フーマが尾を打ち、視線を鋭くする。

「私兵が動く前に、星を手に入れ、鏡を解放する。だが、戦いは避けられない。」

その言葉に、空気が重く沈んだ。

メデルは結界の光を指先に灯し、静かに呟く。

「……精霊の声が、鏡の奥で泣いてる。僕、絶対に助ける。」

ブランデットが弟の肩に手を置き、低く言った。

「なら、俺たちが道を作る。風と炎で嵐を裂き、土で足場を固める。お前は光で扉を開けろ。」

「……うん。」メデルの声は小さく、しかし確かだった。

ケルメデスアールが剣を抜き、月光にかざす。

「……理が崩れる音がする。だが、それは壊れる音じゃない。組み替わる音だ。」

その言葉に、全員の胸に火が灯った。

夜風が回廊を抜け、遠くで鏡が鈍く光った。


砂漠の夜は、昼の灼熱とは別の世界だった。

冷たい風が砂丘を撫で、天空には無数の星が瞬いている。

その光は、まるで精霊の吐息が散ったかのように、砂粒に淡い銀を宿していた。

メデルは膝をつき、砂に指を触れた。

「……ここに、星の息があるの?」

淡金の光が指先に灯り、砂粒が微かに震える。

胸の奥で、精霊の声が囁いた。

『……欠片を持て……』

翠龍様が念話で皆に伝える。

『全員で地面に手を当てて魔力を広げて包み込むように…。』

ロカが翼を広げ、風精霊の声を呼ぶ。

『風よ、星を集めて――』

ルククが炎を灯し、熱で砂を柔らかくする。

「紅蓮の偏流、固定!」

ケルビスが詠唱を重ね、土の陣で砂丘を支える。

「土よ、支えろ――崩れるな。」

メデルは魔力を深く広げる

「集まって皆を助けるから…お願い…。」

ブランデットはメデルが無茶をしない様に見ながら。

「星精霊よお願いだ貴方の欠片をいただきたい…。」

応える様に星砂が淡銀に輝き、メデルの掌に集まった瞬間、遠くで砂が爆ぜた。

私兵の影…鏡を守る者たちが、砂漠を裂いて迫ってくる。

「来るぞ!」

警戒をしていたフーマが低く唸り、銀毛を逆立てる。

剣が月光を弾き、獣の瞳が戦場を射抜いた。

「急げ!」

マルコが叫び、剣で路を切り裂く。

「ケルビス!路を開けなさい」

ケルメデスアールが剣を手に黄魔法で砂漠路を示す。

砂嵐が舞い、炎と風が交錯すし剣と魔法が応戦している時

星精霊の声が、最後の欠片をメデルの掌に落とした。

『……光と風と土、そして炎――結べ。』

「取った!」

メデルが叫ぶと同時に、砂嵐の向こうから次々影が迫る。

私兵たちだ。鏡を守るために、剣と風護符を握りしめて。

「急げ!」

ブランデットがメデルを抱え、砂丘を駆け下りる。

「ケルビス、路を固めろ!」

「土よ、支えろ――崩れるな!」

ケルビスの詠唱が砂を圧し、足場が硬くなる。

その上を、フーマとケルメデスアールが剣を閃かせ、私兵の刃を弾いた。

「剣を抜くのは簡単だ。だが、均衡を戻すのは難しい!」

フーマの声が夜風に響き、銀毛が月光を弾いた。

大神殿の白銀の柱が見えたとき、メデルの胸は焦燥で焼けるようだった。

鏡の奥から、精霊の声が泣いている。

『……暗い……出して……』

「必ず助ける。」

その言葉を、誰に聞かせるでもなく、メデルは呟いた。


鏡は月光を受けて鈍く光り、表面は水面のように揺れていた。

その縁に刻まれた古代文字が淡銀に脈打ち、まるで心臓の鼓動のように広間に響いている。

空気は張り詰め、砂漠の夜風さえ息を潜めていた。

「……始めるよ!」

ブランデットが剣を抜き、青魔法の陣を展開する。

「青路、分岐――過負荷を散らす!」

青い光が鏡の周囲に走り、空気が震えた。

「炎よ、風と結べ――紅蓮の偏流!」

ルククが炎を灯し、ロカが翼を広げて風精霊を呼ぶ。

『風よ、炎を抱け!』ロカの念話が響き、炎と風が絡み合い、赤と蒼の光が鏡を囲む。

「土よ、支えろ――結界!」

ケルビスが両手を地に突き、土の鎮護陣を刻む。

砂が硬化し、鏡の基盤を守るように支えた。

メデルは鏡の前に立ち、掌を掲げる。

淡金の光が広がり、黒魔法が光属性へ昇華する瞬間、翠龍の声が響いた。

『六つの力を結べ――光、白、青、赤、黄、そして星の息。』

「光よ、闇を赦し、理を繋げ――至福の名の下に、囚われを解け!」

メデルの声が広間を満たし、鏡の表面に光陣が走る。

古代文字が淡銀に輝き、契約陣が解き放たれようとしていた。

その瞬間。

「止めろ!」

私兵隊長の怒声が響き、風刃が詠唱を裂こうと飛んだ。

「メデル!」

ブランデットが叫び、青魔法で風刃を逸らす。

「集中しろ、メデル!」

「僕……やれる!」メデルの声は震えていたが、瞳は揺るがなかった。

フーマの剣が閃き、私兵の刃を弾いた。

「理を守るために剣を抜くか……皮肉だな。」

ケルメデスアールが冷静に言い、黄魔法で視界を歪め、敵の動きを封じる。

「押し返せ!」フーマが吠え、銀毛を逆立てる。

「剣を抜くのは簡単だ。だが、均衡を戻すのは難しい!」

その言葉に、私兵たちの動きが一瞬止まった。

「ルクク、ロカ、もっと風を!」

「任せて!」ルククが炎を強め、ロカが翼を打ち、風を結界に流し込む。

「ケルビス、支えを強化!」

「土よ、守れ――結界強化!」

砂が硬化し、鏡の震えを抑えた。

掌の光が強まり、星精霊の欠片が陣に溶け込む。

『星の息、ここに――』翠龍の声が重なり、広間が淡銀に染まった。

「鏡を壊すな!」私兵が再び突撃する。

「壊さない……解き放つんだ!」メデルが叫び、光陣が爆ぜるように輝いた。

旅人が神殿の門を越え、鏡の解放を求めてやって来た。

その背に、砂漠の夜風が重くのしかかる。

私兵隊長は剣を握りしめ、冷たい風に目を細めた。

背後には私兵隊が並び、鎧の隙間から滲む汗が夜気に冷えていく。

「……来るぞ。」低い声が砂に沈む。

神殿外の砂漠で、司祭は震える手で祈りの印を結び、

司教は唇を噛みしめながら呟いた。

「……神よ、どうか……」

不安は重く、砂漠の闇は深い。

だが、その闇を裂くように微かな光が地面に走った。

最初は一筋の線。次に、円。

そして、爆ぜるように広がった光陣が、夜空を照らした。

「……来た……!」隊長が息を呑む。

光は砂を染め、熱を奪い、命の色を呼び戻す。

乾いた大地に、緑が芽吹いた。

砂漠に…草が、小さな花が、風に揺れる。

司祭が涙をこぼし、司教が膝をついた。

「これは……奇跡だ……!」

光陣の中心で、虹光が天へと昇り、誓約の力が世界を満たしていく。

その瞬間、旅人の影が光に溶け、新しい理が砂漠に芽吹いた。

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