57旅―冒険者(いよいよナケミ共和国)37
「準備が整った。許可がおりたぞ!」
低く響く声が、夜の静けさを破った。フーマだ。銀狼の獣人は、月光を背に立ち、鋭い瞳で仲間を見渡す。
「サレム国を出る。風の谷まで一気に行くぞ。ナケミが待っている。」
その言葉に、イグナーは胸の奥で炎が揺れるのを感じた。使命の重みが再び肩に乗る…だが、今は迷わない。炎の紋章が静かに光り、決意を告げていた。
「食料、確保してきたぞ!」
明るい声と共に、マルコが戻ってきた。背中には袋がいくつも揺れ、香ばしいパンの匂いが漂う。
「干し肉、薬草、保存食、全部そろえた!あと、精霊用の甘い実もな!」
「さすがマルコ!」とメデルが笑い、精霊たちが袋の周りでわちゃわちゃと踊る。
「甘い実だー!」「やったー!」「旅のおやつゲット!」
フーマは腕を組み、低く唸った。
「……騒ぐな。」
その時、宿の支配人が静かに近づき、深々と頭を下げた。
「古城リシュベルトの宿、5日間のお代はいただきません……。」
フーマの耳がぴくりと動き、動きが止まった。銀の瞳がゆっくりとメデルたちに向く。
「……何をした?」
メデルは慌てて両手を振る。
「ぼ、僕たち何も悪いことしてません!!」
ブランデットも必死に続ける。
「精霊と遊んだだけです!壊してないです!」
フーマの視線がさらに鋭くなる。
「……本当にか?」
メデルたちは声をそろえて叫んだ。
「ほんとです!!!」
フーマは深く息を吐き、ゆっくりとケルメデスアールに視線を送る。
「……何か知っているか?」
ケルメデスアールは首を振り、重々しく答えた。
「わしも知らん。だが……精霊が動いたなら、何か理由があるのだろう。」
精霊たちはその横で、きらきらと光りながら無邪気に踊っていた。
「お代いらないって!」「やったー!」「サービスだー!」
フーマは額に手を当て、低く唸った。
「……出発前から頭が痛い。」
支配人はにこにこ笑顔で、深々と頭を下げた。
「お子様方が……隠し財宝を見つけていただきました。今は国に報告中で、すべて王家に引き渡しましたが、お礼として5日間のお代は無料とさせていただきます。さらに、帰りも当宿をご利用いただければ無料にいたします。」
フーマの耳がぴくりと動き、銀の瞳がゆっくりと仲間たちに向く。
「……お前ら、どんだけ見つけたんだ。」
メデルは笑いながら両手を広げる。
「いっぱい!でも、もうないよ!ぜーんぶ渡した!」
ブランデットは肩をすくめて苦笑する。
「宝石がたくさんあったけど……報告したから…サレム国の物だし。」
ルククは剣の話をしながら残念そうに言う。
「キラキラした剣もいっぱいあったけど……、置いてきた。」
ケルビスは静かに呟く。
「……オリハルコンも、ミスリルも……全部、国庫へ行くと思う(笑)。」
ケルメデスアールは固まったまま、深紅の外套を揺らしながら低く唸る。
「……サレム国の宝物庫か、ここは。」
マルコは耳をふさいで、必死に呟いていた。
「聞いてない、聞いてない……俺は何も聞いてない……。」
精霊たちはその横で、きらきらと光りながら無邪気に踊っていた。
「宝探し楽しかったー!」「もっとあるかも!」「次は地下だー!」
フーマは額に手を当て、深く息を吐いた。
「……出発前から頭が痛い。」
フーマは額に手を当て、深く息を吐いた。
「……持っていないんだな!!国境で検査されて出てきたらやばいぞ!!……俺は知らん。」
ケルメデスアールは重々しく笑い、肩をすくめる。
「時代だな……精霊と子供が国を動かすとは。」
精霊たちはさらにきらきらと舞いながら叫んだ。
「次は地下だー!」「もっと宝あるよ!」「探検だー!」
フーマは本気で吠えた。
「やめろ!!明日朝出発だ!!」
支配人はにこにこ笑顔で、深々と頭を下げ。
「…もっとある?…お帰りもお待ちしております。」
朝焼けが谷を染める中、一行は古城を後にした。風が頬を撫でる。
まだ見えぬナケミの風車に心動かして進む。
フーマは長い足取りで先頭を歩きながら、隣に並んだマルコに低くぼやいた。
「……普通に旅はできんのか。」
マルコは肩をすくめ、苦笑しながら袋を揺らす。
「俺に聞くなよ。食料は確保したけど……精霊用の甘い実、もう半分なくなってる。」
フーマの耳がぴくりと動き、後ろを振り返る。
そこではメデルたちが精霊と一緒に、道端で炎のハートや風の輪を作ってはしゃいでいた。
「見て見て!炎のハートだよ!」
「風のドラゴンもできるよ!」
フーマは額に手を当て、深く息を吐いた。
「……メデルは全属性か…頭が痛い。」
マルコは笑いをこらえながら言う。
「でも、楽しそうだろ?こういう旅も悪くないんじゃないか。」
フーマは銀の瞳を細め、低く唸った。
「悪くない……じゃない。普通じゃないんだ。」
その後ろで、ケルメデスアールが深紅の外套を揺らしながら、静かに笑った。
「時代だな……わしの頃とは違う。今は精霊と子供が世界を動かす。……悪くない。ハハハ(笑)」
風が谷を駆け抜け、精霊たちがその流れに乗って舞い上がる。炎の粒が朝日に溶け、風の輪が空に描かれる、旅は始まったばかりだ。
国境を越えたとき、ぼくは胸をなでおろした。
「ふぅ……通れたね!」
門番はぼくたちをちらりと見ただけで、何も言わなかった。ケルメデスアールが何か魔法を使ったのかもしれない。深紅の外套が風に揺れて、彼の背中はいつもより大きく見えた。
「安心するのはまだ早い。」
フーマが低く言う。銀の耳がぴくりと動いて、ぼくを見下ろした。
「えー、だってもう国境だよ?」
「もう少ししたら曲がり道だ、人がいなくなる所まで行ってから飛ぶぞ。歩いてたら目立つ。」
「飛ぶって……え?」
ぼくが首をかしげる。
少し歩いて人が見えなくなるとフーマはぼくをひょいっと抱き上げた。
「わっ!」
「暴れるな。落ちるぞ。」
「落ちないよ!ぼく、風で浮けるもん!」
「……だから、お前が俺込みで浮いて進め…人に会う前に降りろ。」フーマがため息をついた。
後ろではマルコがブランデットを抱えていた。
「マルコどうしたんですか?」
「仕方ないだろ。俺、飛べないんだから。ブランデット俺込みで飛んで!」がむっとして言う。
「飛べないっていうか、精霊に頼めばいいじゃん!」ぼくが叫ぶと、ブランデットは肩をすくめた。
「ぼくが皆を風で押してあげる!」ぼくは手を伸ばしたけど、フーマがぼくの額を軽く押した。
「やめろ。余計なことするな。」
その横で、ルククとケルビスは軽やかに宙に浮いていた。
「わぁ、久しぶりに飛ぶね~やっぱり楽しい!」ルククが笑う。
「風の精霊、ありがとう!」ケルビスも声を弾ませる。
ケルメデスアールは深紅の外套をひるがえし、まるで鳥のように滑らかに空を舞っていた。
「……時代だな。」彼が小さくつぶやいたのが、ぼくの耳に届いた。
谷を越える風が頬を撫でる。ぼくはフーマの腕の中で、空を見上げた。
「ねぇ、フーマ。飛ぶのって楽しいね!」
「……普通じゃない。」
「え?」
「旅ってのは、こういうもんじゃないんだ。」
「でも、楽しいよ!」ぼくは笑った。
フーマは銀の瞳を細めて、低く唸った。
「……悪くない、か。」
風がぼくたちを運び、谷をひとッ飛びで越えていく。
焚き火の赤い光が、谷間の夜をやわらかく染めていた。
人の気配がするよ!!って闇の精霊が言ってくれたので、僕達は路に戻った。
「やっぱり地面はいいな・・・」フーマはボソッと言う
「あああ折角鳥になってたのに・・・。」
マルコは降りた事にガッカリしていた。
薄暗くなて来たので歩きながらぼくは炎の粒を指先で転がしていた、ちらりと視線を上げる。そこには、見知らぬ二人がいた。
一人は、荷車のそばで笑っている旅商人。陽気そうで、荷物の中から甘い匂いが漂ってくる。
もう一人は、深い緑の外套をまとった男。杖の先に淡い光を宿し、焚き火を見つめている。その瞳は、ぼくが知っている誰よりも静かで、深かった。
「……ケルメデスアール殿。」
男が低く言った。声は落ち着いていて、でもどこか懐かしさを含んでいる。
ケルメデスアールがゆっくり立ち上がり、深紅の外套を揺らした。
「久しいな、ナケミの賢者セルジオス卿よ。まさか、こんな場所で会うとはな。」
ぼくは炎の粒を落としそうになった。
賢者? この人、ただ者じゃないの……!
フーマが焚き火の影から一歩前に出る。銀の瞳が鋭く光った。
「……面倒な匂いがする。」
低い声に、ぼくは肩をすくめる。フーマはいつもこうだ。強いけど、ちょっと怖い。
「面倒って何?」
ぼくは首をかしげる。
「お前は気にしなくていい。」
フーマはぼくの頭を軽く押した。
「えー、気になるよ!」
ぼくは炎の粒をぱっと弾いて、空に小さなハートを描いた。
「見て!炎のハートだよ!」
「……遊んでる場合か。」
フーマがため息をつく。
その横で、マルコが商人に近づいていた。
「珍しい香辛料だな。どこで手に入れた?」
商人はにっこり笑って、袋を開ける。
「ナケミの風車町さ。祭りが始まるんだ。香辛料も甘い実も、今が一番いい時期だよ。」
「祭り!」ぼくはぱっと顔を上げる。
「風車って、大きなやつ? 精霊が遊べる?」
「遊べるかどうかは知らないけどな。」商人は笑った。
そのとき、伯爵がぼくを見た。深い瞳が、ぼくの炎のハートを映している。
「……全属性か。」
ぼくは首をかしげる。「え?」
「炎だけじゃないだろう。風も、水も、土も……」
「え?、内緒なの!」ぼくはブランデットお兄様の後ろに隠れた。
「…どちら様でしょうか。」ブランデット
伯爵は静かに笑った。
「精霊と子供が世界を動かす。悪くない。…。」
ケルメデスアールも笑う。
「そうだ。悪くない。」
焚き火の火がぱちりと弾け、風が谷を駆け抜ける。精霊たちがその流れに乗って舞い上がり、炎の粒が夜空に溶けていった。
…ケルメデスアール様ご相談が…。「風の谷のナケミの風が止まりました…」
セルジオス卿の言葉が、焚き火の赤い光よりも重く胸に落ちた。
「風精霊王ゼフィルス……?」ぼくは小さくつぶやいた。
耳元で精霊の声が震える。
『風が泣いてる……王が眠りから呼んでる……』
ぼくはぎゅっと拳を握った。怖い。でも、放っておけない。
ケルメデスアールが深紅の外套を揺らし、伯爵に一歩近づく。
「セルジオス卿、その言葉……ただの異変ではないな。」
伯爵は静かに頷き、杖を地面に突いた。淡い光が土に広がり、風の精霊がその上で震えている。
「ナケミの風車は古代の封印を守るために建てられた。風が止まるということは、封印が揺らぎ始めている証だ。」
焚き火の音がぱちりと弾ける。ぼくは息を呑んだ。
「封印って……悪いもの?」
伯爵の瞳がぼくを見た。深い緑の光が、ぼくの心を射抜くようだった。
「悪いかどうかは……時代が決める。」
その言葉は、夜の闇よりも深くて、ぼくの胸に不思議なざわめきを残した。
フーマが焚き火の影から低く唸った。
「……面倒が増えたな。」
銀の瞳が炎を映して、冷たく光る。
「面倒って何?」ぼくはまた聞いてしまった。
「お前は気にしなくていい。」フーマはぼくの頭を軽く押す。
「えー、気になるよ!」ぼくは風の粒をぱっと弾いて、空に小さなハートを描いた。
「見て!風のハートだよ!」
「……遊んでる場合か。」フーマがため息をつく。
その横で、マルコが商人に声をかけていた。
「風車町で祭りが始まるって言ったな?」
「そうさ。でも……風が止まったなら、祭りどころじゃないかもな。」商人は肩をすくめる。
「えー!祭りなくなるの?」ルククが不安そうに声を上げた。
「ぼく、風を呼べるよ!」ぼくは思わず言った。
伯爵の瞳が一瞬、強く光った。
「……君が?」
「うん!炎も水も土もできるよ!」ぼくは胸を張った。
「メデル、内緒だって言っただろ!」ブランデットが慌ててぼくの肩をつかむ。
「えー、だって風が泣いてるんだよ!」ぼくは精霊の声を思い出して、ぎゅっと拳を握った。
伯爵は静かに笑った。
「彼の纏う風は人とは違う。彼は……暖かい。」
ケルメデスアールが笑い、焚き火の赤にその声が溶けた。
「ハハハ、彼はメデル。精霊と人を繋ぐ者だ。」
焚き火の火がぱちりと弾け、風が谷を駆け抜ける。精霊たちがその流れに乗って舞い上がり、炎の粒と風の粒が夜空に溶けていった。
ぼくは胸の奥で、何かがわくわくと弾けるのを感じていた。
風車町で何が待っているんだろう。
夜が深まり、焚き火の赤い光が遠くなったころ、ぼくはハンモックに揺られていた。
でも今日は一人じゃない。ブランデットお兄様と一緒だ。狭いハンモックに二人でぎゅっと詰まって、体温が伝わってくる。ちょっとくすぐったいけど、安心する。
風の精霊がまだ耳元でささやいている。
『風が泣いてる……ゼフィルス様が呼んでる……』
胸の奥がざわざわして、眠れそうになかった。
「メデル。」
低い声がして、ぼくは顔を上げた。お兄様の横顔が近い。焚き火の残り火がその頬を赤く染めている。
「……また言ったね。」
「え?」ぼくは首をかしげる。
「全属性のことだ。伯爵の前で。」
「あ……ごめんなさい。」ぼくは小さくなった。
「内緒だって約束したでしょ!」
「だって、風が泣いてるんだよ!」ぼくは思わず声を上げた。
「泣いてても、言わないでよ。」お兄様の声は低くて、でも怒ってるというより心配してる感じだった。
「……わかった。」ぼくはうつむいて、ハンモックの端をぎゅっと握った。
「もう一度約束。」
「……うん。内緒にする。」
「絶対。」
「絶対。」ぼくは小さく頷いた。
しばらく沈黙が続いたあと、お兄様がぽつりとつぶやいた。
「……たのむから、精霊にならないでくれ。」
ぼくは目を丸くした。
「え?」
「離れるのは……カーロだけでいい。」
その声は、夜の闇よりも静かで、でも切なさが滲んでいた。
ぼくは胸がきゅっとなって、ぎゅっとお兄様の服を握った。
「……ならないよ。僕メデル、人だもん。お兄様の弟だもん。」
「……そうだな。うん…僕の弟。」お兄様は小さく笑って、ぼくの髪を軽く撫でた。
その笑顔が、ちょっとだけ震えて見えた。
ハンモックがゆっくり揺れる。お兄様の体温と聖獣の卵の暖かさと精霊の声が混ざって、ぼくの胸は不思議な熱でいっぱいになった。
『ゼフィルス様が……目覚める……』
ぼくはその声を聞きながら、眠りに落ちていった。
ハンモックがゆっくり揺れている。お兄様の体温と聖獣の卵のぬくもりが、ぼくを包んでいた。
でも、眠りに落ちた瞬間、世界が変わった。
…風がない。
谷も森も、空も、すべてが静止している。
ぼくは一人で立っていた……と思ったら、すぐ隣にお兄様がいた。
「……メデル?」
「お兄様?」
声が重なった瞬間、二人の足元に光の紋章が広がった。火、水、風、土、闇、光、…すべての属性が重なり合って、ぼくたちを包む。
遠くに巨大な風車が見える。黒い鎖で縛られ、きしむ音が響いていた。
その風車は、ぼくが知っているものよりずっと古くて、怖いくらい静かだった。
耳元で声が響く。
『メデル……ブランデット……』
低く、深く、でも優しい声。
『風が泣いている……ゼフィルス様が呼んでいる……』
ぼくは振り向いた。
そこには、光でできた人影が立っていた。長い髪が風に揺れている…でも、風は止まっているのに。
その瞳は空よりも青く、ぼくたちを見つめていた。
『守る者……選ばれし子……二人は繋ぐ者……』
声が重なっていく。火の精霊、水の精霊、土の精霊、闇の精霊、光の精霊…みんながぼくたちの周りでささやいている。
『封印が揺らぐ……風車は鍵……ゼフィルス様が……目覚める……』
ブランデットがぼくの手を強く握った。
「メデル……これは……」
「お兄様、怖い?」
「……怖い。でも、お前を離さない。」
その言葉が、夢の中なのに胸に響いた。
光の紋章がさらに強く輝き、ぼくたちの影が風に溶けていく。
精霊たちの声が重なり、ぼくの心に響いた。
『繋ぐ者……精霊と人を……ゼフィルス様と一緒に……を封印して…。』
…そして、目が覚めた。
ハンモックの揺れと、お兄様のぬくもりが戻ってきた。
でも、胸の奥にはまだ、あの声が残っていた。
『ゼフィルス様が……目覚める……ゼフィルス様と一緒に……を封印して…。』
ぼくは小さく息を吐いた。
お兄様も、同じ夢を見たのかな……?
…風車町で、何かが起きる。
それだけは、確かだった。
朝の光が、薄い布越しに差し込んでいた。ハンモックがゆっくり揺れて、ぼくは目を開けた。
お兄様の腕がまだぼくを抱いていて、聖獣の卵のぬくもりもすぐそばにある。
――でも、胸の奥はまだ夢の中にいた。
風車、鎖、ゼフィルス様の声……全部が、はっきり残っている。
「……メデル。」
小さな声が耳元で響いた。お兄様だ。
「起きてる?」
「うん……」ぼくは小さく答えた。
お兄様の顔が近い。焚き火の残り香がまだ漂っている。
「……夢、見たな。」
ぼくはびくっとした。
「え? お兄様も?」
「風車……鎖……ゼフィルス様って名前……聞いた。」
ぼくは息を呑んだ。
「ぼくも……同じ。」
二人の声が重なって、ハンモックの中で小さな沈黙が生まれた。
「……怖かった?」ぼくはそっと聞いた。
「……怖い。でも、メデルがいたから……」
お兄様は言葉を切って、ぼくの髪を軽く撫でた。
「メデル、まだ誰にも言うな。伯爵にも、フーマにも。」
「うん……内緒にする。」ぼくはぎゅっと頷いた。
「絶対だ。」
「絶対。」
ぼくはお兄様の服を握った。
「でも……ゼフィルス様が呼んでる。」
「……呼ばれても、行くのは一緒だ。」
その言葉が、朝の光よりも強くぼくの胸に響いた。
ハンモックが揺れる。風がそっと布を撫でる。
精霊たちが耳元でささやいた。
『守る者……二人は繋ぐ者……』
ぼくは小さく息を吐いた。
――この秘密、絶対に守る。
そして、風車町で何が待っているのか……ぼくたちは一緒に確かめるんだ。




