53旅―冒険者(まだサレム国)33
道中。
街を出てしばらく歩くと、道はだんだんと森の入り口へと続いていた。鳥のさえずりが耳に心地よく、街の喧騒はもう聞こえない。ブランデットが注意するように言っていたように、気を引き締めて進む。
その時、道端の木の影に小さな人影を見つけた。背の低い、木の枝のような手足を持つ存在。「あぁ、木の小人さんだ!」ルククが声を弾ませる。
小人はひょこっと顔を上げ、警戒する様子もなくこちらを見上げた。手に持っているのは、何やら硬そうな麻袋だ。メデルは好奇心にかられ、そっと近づいてみた。
「こんにちは。その大きな麻袋、どうするの?」
小人はメデルの言葉に、こくりと頷いて見せた。
「ぼくらの、大事な袋だよ!でも、かたい……」
小人が困ったように麻袋を撫でる姿を見て、メデルはピンときた。以前、宿のおかみさんと仕切り袋を作った時に、麻の布が最初は硬かったのを思い出したのだ。
「もしかして、もっと柔らかくしたいの?」
小人は目を輝かせ、ぶんぶんと頷いた。
メデルは、宿のおかみさんと仕切り袋を作った時のことを思い出しながら、木の小人に優しく話しかけた。
「柔らかくだね。麻は最初は硬いけれど、柔らかくする方法はあるんだよ」
「まずね、この麻袋を熱いお湯で煮て洗ってみるといいよ。そうすると、麻の繊維がほぐれて、柔らかくなるんだって」
小人は不思議そうに首を傾げた。
「それから、煮洗いした後に、高い温度でしっかり乾かすことで、さらに繊維が分解されて、布が柔らかくなるんだって」
メデルは、宿のおかみさんが「そうすることで、生地がふんわりするんだよ」と言っていたことを思い出し、僕は付け加えた。
小人はメデルの話を真剣な表情で聞いていた。そして、麻袋をじっと見つめ、何かを決意したように強く頷いた。
「ありがとう!め・で・る!」
小人は満面の笑みでそう言うと、ぱっと身を翻して森の奥へと駆けていった。その手には、まだ硬そうな麻袋がしっかりと握られている。
「え?柔らかくしていかなくて良いの?・・・。(笑)」
メデルは笑いながら木の小人が駆けて森へ消えて行った方を見ながら呟いた。
フーマは耳を動かし声をかける。
「さぁ行くぞ!」
ルククとメデルは木の影から出て来て返事をした。
「はーい。」
直ぐにブランデットお兄様の側に付いて僕とルククは一歩一歩ぴったりとくっついて歩いた。道の端は外路樹が植えてあり少しひんやりとしていて、小鳥たちの歌声が心地よく耳に届く。ブランデットお兄様は、時折、私の頭をそっと撫でてくれて、その温かさに心が安らぎました。
「お兄様、ブランジェ、僕たちがこっちに居るってわかるかなぁ」。
メデルの小さな声は、ブランジェという、銀色のフェンリンへの想いに満ちていた。出発前に念話して確認しても先に行っていてって言われて返事が曖昧だった。前回置いて行ったからちゃんと確認したのにー!!
ルククはひょいとブランデットの体の向こう側から顔を出し、メデルの問いかけに答えた。
「大丈夫だよ!ブランジェ!前だって空を駆けてきたでしょ!(笑)」。
頷きながらブランデットは優しく微笑み応える。
「そうだよ!大丈夫!だって彼はフェンリンだ!前回だって空をひとっ飛びだったでしょ(笑)」
「そうだった(笑)ブランジェは、あの速いフェンリンだもんね」
ブランデットの声は、暖かくて、安心させてくれる魔法のようで、ブランデットお兄様の優しい笑顔を見ていると、きっとブランジェも大丈夫だって思える。だって、ブランデットお兄様は、いつもみんなのことを守ってくれる、僕の大事な冒険の仲間だから。
「さあ、メデル行こうよ!」ルククが手を差し伸べる。
メデルがその小さな手を握り返すと、ルククの腕から柔らかな光が発せられ、ふわりと彼らの体が宙に浮かび上がった。地面から足が離れ、重力から解放される感覚は、幼いメデルにとっていつもの感覚。下から見上げる世界は、ほんの少し前までと同じ場所なのに、まるで違う場所にいるかのように色鮮やかに映る。メデルは好奇心いっぱいの瞳で、きらめく光の小さな粒がルククの周囲を周っているのを見つめた。
囁く風と見下ろす世界。
風がそよぎ、彼らの髪を優しく撫でる。メデルの黒いローブの裾が、穏やかに揺れた。ルククはメデルの小さな体をしっかりと支えながら、ゆっくりと上空へと進んでいく。眼下には、初めて見た外路地長い先も変わらず続く道、日差しを受けて街路樹の葉がキラキラと輝いている。鳥たちが彼らの傍らを軽やかに横切り、まるで挨拶をするかのように鳴き声を上げた。
ルククはメデルの表情を見て微笑み、「ブランジェはもっと速いと思うんだ。あっという間にあの雲まで行けると思う(笑)」彼の声は、メデルの心に小さな風を起こし、これから始まる冒険への期待をさらに膨らませた。ふわりと、彼らは穏やかな空気の流れに乗って、目的地へと向かっていく。
その時、下からから低い声が響いた。
「メデル!ルクク降りてこい!」
僕とルククは慌てて下をみた、銀狼フーマ腕を組み、鋭い銀の瞳が僕達を射抜く。僕達はゆっくり・・・ゆっくりと地面に降りた。
フーマは大きくため息を吐き。
「約束は?どうなった?誰かに見られたらどうするんだ?見せ物小屋の奴に捕まりたいのか?俺達は一緒に旅をしているんじゃぁ無いのか?」と淡々と問いかける。
メデルの小さな手が、フーマの腰にきつく抱きついた。顔を埋めるようにして、ごめんなさいの気持ちを精一杯伝えている。
「ごめんなさい。嫌わないで(涙)」ルククもまた、シュンとした表情で頭を下げ、軽率な行動を謝罪した。
「すみません。」
フーマの鋭い銀の瞳は、一瞬和らいだものの、すぐにまた真剣な光を宿す。
ブランデットは、そんなフーマの様子に苦笑いを浮かべながらも、メデルとルククを咎めるような言葉は口にしなかった。彼の優しいまなざしは、まるで「しょうがないなあ」と二人を包み込んでいるようだ。一方、マルコはというと、膝を叩いて大爆笑している。彼の大きな笑い声だけが、張り詰めた空気の中で響き渡った。ケルビスは眉間に手を当て、深くため息をついている。その様子は、まるで「またか」とでも言いたげだった。そして、ケルメデスアール様は、いつものように固まったまま。彼らしい反応に、少しだけ場の緊張が緩む。
フーマは鼻を鳴らし尾を揺らしながら、メデルの頭をポンと優しく叩いた。「わかればいいんだ」と、短く言って。
「俺たちは、見せ物小屋に捕まるために旅をしているわけじゃない。それに、もし騒ぎを起こせば、メデルの力が周りに知られてしまう可能性もある。メデル、お前は皆とは違う!だが、だからこそカーロや聖獣のたまごが癒せる・・・もっと慎重に・・・な。」と、フーマは静かに続けた。彼の言葉には、皆の安全を何よりも優先する強い思いが込められていた。
メデルは顔を上げ、フーマを見つめた。自分たちの無邪気な行動が、そんな大きな危険につながるかもしれないと、改めて認識したのだ。そして、ブランデットお兄様が言っていた「フェンリン」に乗せてもらうことが、どれほど特別なことなのかを理解した。
ルククもまた、真剣な表情で頷く。彼らは、それぞれの形でこの旅に重い意味を背負っている。だからこそ、軽はずみな行動は許されない。
「ごめんなさい、フーマ。これからは、もっと気をつける…」と、メデルは小さな声で約束した。フーマはもう一度小さく頷くと、皆に向かって言った。「旅はまだ始まったばかりだ。油断するな」
その言葉で、再び彼らの旅が動き出す。メデルは、フーマやブランデットたち冒険の仲間と共に、そして彼らの絆と共に、さらに深く世界と魂と魔力を繋ぎ直していく旅を続けるだろう。彼の持っている「言葉」の魔力が、どんな未来を紡ぎ出すのか。そして、誰も知らない「黒の祈り」が、静かに世界を揺るがす日は来るのだろうか。
夕焼けが地平線の向こうに溶け出す頃、外路を歩く一行は野宿の場所を探していた。旅の安全と快適さを左右する重要な選択だ。周辺の地形、風向き、そして潜在的な危険物を考慮し、最適な場所を選び出す。先頭を行くマルコが、木々がわずかに途切れた開けた場所で立ち止まった。「ここが良い感じですね♪」彼の陽気な声が、薄暮れ始めた外路に響く。
フーマもまた周囲を見回し、銀色の瞳を細めて頷いた。「あぁ、こちら側も見通しが良いなぁ。あの先も見える」と、短いながらも的確な評価を下す。その瞬間だった。きらきらと光の粒が舞い、爽やかな風が一行の間を通り抜けた。思わず手で目を覆い、風が通り過ぎるのを待つ。そして視線が戻った時。
そこには、淡い光を帯びた蔓で編まれた、三つのハンモックが木々の間に揺れていた。花の小人が得意げに「使って!」とでも言いたげな仕草で消えていく。あまりにも唐突な出来事に、メデルたちは驚きのあまり声も出なかった。しかし、いち早く状況を理解したのはブランデットだった。「感謝して使わせていただこう」彼の優しい声が、皆の硬直した心を解きほぐす。メデルたちは互いに頷き合い、てきぱきと野宿の準備を始めた。
木々のざわめきが、遠い記憶の歌のように耳朶をくすぐる夜。あたりはすっかり夜の帳に包まれ、頭上には漆黒のベルベットに散りばめられた宝石のような星々が瞬いていた。街路樹の木々に花の小人が紡いだ蔓のハンモックが、風に揺れている。メデルたちは、それぞれの場所で静かに夜の訪れを感じていた。
メデルとブランデットのハンモックは、他の二つより少し離れた木立の間に吊るされていた。ブランデットは、幼いメデルが安らかに眠れるよう、そっと身を寄せている。昼間のフーマの厳しい言葉が、まだメデルの小さな心に影を落としているのが、ブランデットには痛いほど分かった。あの無邪気な好奇心が、世界という広大な舞台でどれほどの危険をはらんでいるか。その責任の重さを、改めて噛みしめているようだった。
隣のハンモックでは、ルククがケルビスの穏やかな寝息を聞きながら、じっと星空を見上げていた。今日の自分の軽率な行動を責める気持ちと、それでも見上げた空の美しさに胸が締め付けられるような、複雑な感情が入り混じる。ケルビスだけが、何もかもを包み込むような静けさで眠りについていた。彼にとっては、この旅の苦難も、すべて受け入れるべき経験の一部なのかもしれない。
そして、一番奥の木には、いつもと変わらぬ姿勢でケルメデスアール様が揺られている。まるで、周囲の喧騒とは無関係に、遠い昔からそこに存在し続けているかのように。彼の存在だけが、この旅の途方もないスケールを物語っているかのようだった。
一方、地の底と繋がるかのようにどっしりと根を張った大木の根元には、マルコとフーマが陣取っていた。メデルとブランデットの結界が張ってあるため、不眠で番をする必要はない。それでも、共に冒険者である二人にとって、この時間は必要なのだ。互いの存在を感じながら、静かに、しかし確かに旅の安全を守る。しかし、先に寝ているはずのマルコは膝を叩き、静かに肩を震わせている。今日の騒動を思い出したのだろう。彼の豪快な笑い声が張り詰めた空気を打ち破ることは、この夜はなかった。その代わり、時折漏れる忍び笑いが、フーマの鋭い神経を逆撫でしているかのようにも見えた。
フーマは、銀色の瞳を鋭く光らせ、周囲を警戒していた。微かな風の音、葉の擦れる音、遠くで鳴く獣の声。森のすべての気配が、彼の五感を研ぎ澄ます。今日の出来事。メデルの力が露見する可能性。そして、この旅の先に待ち受けるであろう未知の困難。すべてが、彼の頭の中を駆け巡った。彼らは、皆。それぞれがこの旅の重い意味を背負っている。だからこそ、野宿の夜は、ただの休息ではない。明日への活力を養い、来るべき試練に備えるための、大切な時間なのだ。
夜が明けると共に、森はゆっくりとその表情を変え始めた。柔らかな朝の光が木々の間から差し込み、夜露に濡れた葉をきらめかせている。鳥たちのさえずりが目覚めの合図のように響き渡り、やがてハンモックのそばで、透明な光の粒がふわりと現れた。それは、小さな水の精霊だった。 水の精霊は、くるくると舞いながら、琥珀色の小さな水差しを差し出した。清らかな水がなみなみと注がれたそれを見て、メデルが声をあげる。
「わあ、ありがとう、水の精霊さん!」
ブランデットに促され、メデルは丁寧にそれを受け取ると、ひんやりとした水で顔を洗った。爽やかな水の感触に、昨夜の疲れがスーッと引いていくようだ。他の皆も、次々と精霊の差し出す水で顔を洗い、眠気を覚ましていく。
顔を洗い終えると、一行は昨夜休んだ蔓のハンモックをたたんだ。マルコの近くに目をやると、そこには見慣れない小さなかまどが据えられている。土の小人が用意してくれたものだろう。
「んー、いい匂い!」
マルコが手際よく火を起こし、大きな鍋で何かを煮込んでいる。湯気とともに漂ってくるのは、香ばしい野菜と肉の匂い。すっかり目が覚めたメデルが、嬉しそうに駆け寄った。
「マルコさん、これ何ですか?」
「おお、メデル、おはようさん! これは、森のキノコと干し肉のスープだ。体が温まるぞ」
マルコはにっこり笑い、木べらで鍋の中をかき混ぜる。フーマも静かにその様子を見守っていた。
「昨日の土の小人、気の利く奴だな。こんなものまで用意してくれるとは」
「まったくだ! おかげで朝から温かい飯にありつける」
マルコは豪快に笑い、パンが入った魔法の鞄を取り出した。
「ささ、みんな! 焼きたてのパンもあるぞ!」
フーマはため息交じりに言った。
「このパン、大量に買い込んだな。食べきれるのか?」 「大丈夫ですよ、フーマさん! 旅の途中で減りますって!」
ルククが元気いっぱいに答える。皆で温かいスープとパンを囲み、焚き火の周りには穏やかな時間が流れた。
朝食を終え、旅の準備を始める中、ケルビスがルククに話しかけた。
「ルクク、昨夜はよく眠れたか?」
「はい、おかげさまで。あのハンモック、とても快適でしたね」
ルククは少し照れたように答える。昨夜は星空を見上げていたようだが、すっかり顔色は良くなっていた。
「そうだな。精霊たちの加護があったからこそだ。しかし、これからの旅路、何が起こるか分からん。常に気を引き締めていくとしよう」
ケルビスの言葉に、ルククは真剣な表情で頷いた。
一方、マルコはパンをちぎりながら、フーマに冗談めかして言った。
「フーマ、お前ももう少し笑えって。俺昨日は笑いをこらえるのが大変だったぜ、へへっ」
フーマは鋭い視線をマルコに向けた。
「貴様、昨夜俺を笑っていたのか!!」
「いやいや、まさか! ただ、メデルの驚いた顔を思い出したら、つい、な。それにしても、ケルメデスアール様は相変わらずだなぁ。」
マルコは、相変わらず静かに揺られているケルメデスアールの方をちらりと見た。ケルメデスアールは、まるで周囲の騒がしさとは無縁であるかのようだった。ブランデットは、そんな彼らのやり取りを優しく見守っている。
朝食の片付けを終え、一行は再び旅の準備を整えた。ケルメデスアール様がゆっくりとハンモックから降り蔓のハンモックを片付けた、その視線は遠くの地平線を見据えているように見えた。
「さあ、皆。出発の準備は良いか? 今日も一日、気を引き締め、無事に旅を続けよう」
ブランデットの声が、森に響き渡る。疲れが癒え、新たな活力が漲る朝。それぞれの心に、様々な思いを抱えながらも、一行は再び旅路へと足を踏み出していくのだった。
黄金の池の小さな火口近く、熱を帯びた大地が脈打つ古の聖地。この神聖な場所で、森羅万象を司る精霊たちにしか感知できない、新たな命の脈動が始まろうとしていました。周囲の空気は微細な魔力に満ち、精霊たちの気配がいつもよりずっと濃く感じている。
火口から立ち上る硫黄の匂いと、池の深淵から湧き上がる清らかな水の気配が混じり合う中、それぞれの属性を司る小人たちが、めいめいにその出現を待ち望む。
木の小人たち は、若葉のような声でさざめきながら、まだ見ぬ命のゆりかごとなる最高の巣を品定めしている。
「ふむ、この麻袋は少し硬いか…でも柔らかくする!絶対!!」
「そちらの蔓はしなやかだぞ、風の通り道も考えねばな!」
花の小人たち は、色とりどりの花びらを揺らし、祝祭の光を放ち。彼らの指先からは、甘く優しい香りが広がり、神秘的な雰囲気を醸し出す。
「どんな色の子でしょうね、きっと綺麗でしょう」
「この咲きたての蜜は、小さな体にも負担なく、命の力を与えてくれるはずよ」
土の小人たち は、地面の奥深くから響くような声で、力強くその場を見守ります。彼らの体は、生まれたての命を支える大地。
「大地は我らの母。その恵みを、惜しみなく与えん」
「この場所ならば、揺るぎなき安息をもたらすことができるはずだ」
水の小人たち は、キラキラと輝く水滴を飛ばしながら、澄んだ歌声を奏で、清浄な気を満たす。彼らの歌声は、生命の源。
「清らかな水は、すべての汚れを洗い流す…」
「健やかなる成長を、水脈の恵みと共に」
風の小人たち は、そよぐ風に乗って、祝福の舞を舞い。彼らの舞は、生命に動きと自由を与える魔法。
「優しき風よ、新たな息吹を運べ」
「遠くまで、その翼を広げられるように…」
そして、火口の最も近くに鎮座するのは、火の小人たち。彼らは燃え盛る炎を操り、最も神聖な儀式の番人として、じっと佇んでいる。
火の小人頭:「この燃え盛る炎は、生まれる命への最大の祝福」
火の小人:「我らの熱が、その小さな命を護らん」
そんな中、フェンリンは、自身の魔力の揺らぎを感じながらも、その瞳は期待と不安で火口を見つめてる。
フェンリン:「この揺らぎ…生まれるのは、もうすぐ…この胸騒ぎは…きっと、特別な子…魔力補助上手く出来るか不安だ…。」
火の小人頭:「恐れることはない、フェンリンよ。これは新たな始まりの炎だ。お前の魔力は、その命を正しく導くだろう」
水の小人頭:「清らかな水が、穢れなき命を育むでしょう。さあ、深呼吸を…」
火口の中心で、まるで脈打つかのように輝く光が徐々に、しかし確実に強まります。周囲の精霊たちの魔力は、まるで呼吸をするかのように同調し、一つの大きなエネルギーの流れを作り出していました。光の渦が最高潮に達したその時――。
パリンッ!
甲高く清らかな、しかしどこか喜びに満ちた音が響き渡りました。光が収まると、そこには、手のひらに乗るほどの小さな 火竜の赤ちゃん が、琥珀色の瞳をきょとんとさせて佇んでいます。その小さな体からは、生まれたばかりとは思えないほどの強い生命の輝きが放たれ、周囲の精霊たちも思わず息を呑みました。
風の小人頭:「おお…なんと、尊き命よ!」
花の小人頭:「この世にようこそ、小さな宝石…」
土の小人頭:「大地がその健やかなる成長を、永遠に見守ろう」
フェンリン:「(蜥蜴ではなく竜…聖竜!!)歪み始めてからは生まれなかった命…竜が今日生まれた…!ありがとう…メデル」
火竜の赤ちゃんは、周囲に集う精霊たちを見上げ、小さく「キュルル…」と鳴きました。その鳴き声は、まるで彼らへの感謝と、新たな世界への希望を歌い上げてた。




