④王都の神殿――家族との再会
――旅立ちの前の日
神殿の修義が終わった翌朝。
メデルは、兄たちと畑で日向ぼっこをしていた。太陽の光を背に浴び、土の温もりに頬を寄せて、コロン♪コロン♪と転がっている。
「ぽかぽかでしゅ…土しゃんと太陽しゃん、ありがとでしゅ…」
その時、神殿の門前に一台の馬車が到着した。
紋章はタスク領のもの――黄金の盾に土の紋。公爵家本家の印。
扉が静かに開き、馬車から降り立ったのは、長身で細身、知的な雰囲気を纏った男性。
黄土色のローブを軽やかに纏い、銀縁の眼鏡が知性を際立たせている。
彼の名は――スワロ・ベネフィット・ルゥ・ベル・セーリンタスク・コルベック。
公爵家当主にして、コクベックの兄。黄魔法士。未婚。子供なし。
かつてはタスク領館に住んでいたが、現在は王都にて政務を担っている。
***
神殿の中庭にて、兄たちがメデルを囲んでいたところに、スワロ公爵が現れた。
「ハク達!王都へ行く準備はできているか?おや、これは…ずいぶん賑やかだな。メデル、認識して時には初めて会うかなぁ?」
メデルは、初めて見る人物に少し緊張しながらも、にこにこして言った。
「こんにちはでしゅ…おじちゃま…?きれいでしゅ…」
コルベックは少し驚いたように笑った。
「ふふ…“きれい”とは、なかなか言われないな。ありがとう、メデル」
メデルはぱあっと笑顔になった。
「おじちゃまといっしょに、いくでしゅ!」
ハクリスが一歩前に出て、礼を取った。
「伯父上、遠路お越しいただきありがとうございます。メデルの修義が終わり、神殿からの報告を受けて、急ぎお越しくださったと聞きました」
コルベックは頷きながら、兄弟たちを見渡した。
「ええ。ヴェルメールからの手紙も受け取っていたよ、彼は王都で静養中だが、後継としての責務を果たす意志を強く持っている。
そして、メデルの“調和者”としての兆しをとても心配している――けれどこれは、我が家にとっても大きな意味を持つ」
ミディットレースが静かに言った。
「メデルの魔力は、属性を超えて自然と繋がっているとの…それは、魔術師団の理論では説明できないものです」
コルベックは目を細め、少し空を見上げた。
「魔力とは、理論で縛るものではなく、命の流れそのもの。私は黄魔法士として土の力を扱ってきたが、メデルの魔力は…まるで大地そのものが息づいているようだ」
マルが静かに歩み寄り、深く一礼した。
「公爵様…メデルは、まだ幼く、何も知りません。
ですが、その心は澄んでおります。どうか、あの子の意思を尊重していただけますよう…」
コルベックはマルを見つめ、しばらく沈黙した後、優しく言った。
「あなたは…マルさんですね。王太子から聞いています。あなたがいなければ、メデルの魔力は安定しなかったでしょう。感謝しています。そして、あなたの過去も…私は知っています」
マルは、少し驚いたように目を見開いた。
「…ご存じで…?」
「ええ。帝国の記録には残っていませんが、王太子が調べていました。あなたが、リュスク神官の母であり、帝国の王妃に薬品を掛けられたことも」
リュスクマテルテスが静かに歩み寄り、コルベックに向かって言った。
「スワロ公爵様…私は、母を守ります。そして、メデルの力を、帝国の道具にはさせません」
コルベックは頷いた。
「その意志、しかと受け止めた。我が家は、メデルを“守る者”として支える。そして、未来を継ぐ子供達のためにも、家族の絆を強くしていこう」
メデルは、兄たちの間でにこにこしながら言った。
「おじちゃま…みんなでいっしょにごはんたべるでしゅか?」
コルベックは笑って言った。
「もちろんだ。今日は、家族の再会を祝う日だからな」
――旅立ちの朝
兄弟たちもそれぞれ荷をまとめ、神殿の使者と共に馬車へ乗り込んだ。道中、メデルは窓から見える景色に目を輝かせていた。
「お山しゃん、ばいばいでしゅ!お花しゃん、またねでしゅ!」
コルベックはその様子を静かに見守りながら、心の中で思った。
この子の魔力は、自然と繋がっている。…守らねばならない
そして、彼の胸に浮かんだ言葉は、静かに風に乗って響いた。
風は語り、土は歌う 幼き手が触れしものに 命の鼓動が宿るとき 家族の絆は、ひとつの輪となる
光は揺れ、影は溶け 魔力は心に寄り添いながら 世界を包む優しさとなる 愛しい子よ――
その笑顔が、未来を照らす その言葉が、世界を癒す 我らは誓う 君を守り、共に歩む 調和の光のもとに・・・
***
――王都の神殿・家族との再会
神殿の中庭に、馬車が静かに止まった。
扉が開き、ハクリスが最初に降り立つ。
「王都の空気…懐かしいな。メデル、しっかり手を握っててね」
ハクリスは弟たちを気遣いながら、周囲を見渡す。
ミディットレースは、少し緊張した面持ちで言った。
「兄さま…あそこにいるのって…!」
ブランデットが、メデルの手を握りながら囁いた。
「メデル、あれ…お父さま、お母さま、ヴェルメール兄さま、エリザ姉さま、ココリス姉さまだよ!」
メデルはぱあっと顔を輝かせた。
「ほんとでしゅか!?みんな、みんな…!」
そして、駆け出した。
「おとーしゃまー!おかーしゃまー!ヴェルメールにいちゃまー!エリザねえちゃまー!ココリスにいちゃまー!」
お父さまは、堂々とした姿で腕を広げて待っていた。
「メデル…よく帰って来た。お前が元気そうで、父は嬉しいぞ」
メデルは勢いよく飛び込んで、お父さまの胸に抱きついた。
「おとーしゃま、だいすきでしゅ!」
お母さは、涙を浮かべながらメデルの髪を撫でた。
「メデル…ずっと会いたかったのよ。元気に育ってくれて、ありがとう」
メデルはお母さはの頬に手を添えて、にこにこした。
「おかーしゃま、やさしいでしゅ。お花しゃんみたいでしゅ」
ヴェルメールは、白魔法士の制服を身にまとい、少し痩せたが凛とした姿で、膝をついてメデルを迎えた。
「メデル…よく帰って来たな。修義、立派に終えたんだな」
「うん!がんばったでしゅ!ヴェルメールにいちゃまに、ほめてもらいたかったでしゅ!」
ヴェルメールは微笑みながら、メデルの頭を撫でた。
「よく頑張った。お前は、我が家の誇りだ」
エリザマールは、凛とした赤魔法士の姿で、少し照れながらも微笑んだ。
「メデル…あなた、また少し大きくなったわね。修義、頑張ったのね」
メデルは胸を張って言った。
「うん!風しゃんと土しゃんと、いっしょにおべんきょうしたでしゅ!」
ココリスは、姉として、メデルの手を取って言った。ココリスがぴしっと指を立てて言った。
「ちょっとメデル!“にいちゃま”じゃなくて、“ねえちゃま”でしょ!ココリス姉さまだよ!」
メデルは立ち止まり、ぽかんとした顔で首を傾げた。
「…あれ?ココリスにいちゃま…じゃなかったでしゅか?」
ココリスはため息をつきながらも、笑ってメデルの頭をくしゃくしゃに撫でた。
「もう、かわいいから許すけどね。でも次からは“姉さま”って呼ぶのよ?」
メデルはにこにこしながら、元気よく言った。
「はいでしゅ!ココリスねえちゃま、だいすきでしゅ!」
ココリスは少し照れながらも、満足げに頷いた。
「よろしい。メデル、王都は広いけど、怖くないよ。私たちがいるからね」
メデルはココリスの手をぎゅっと握り返した。
「こわくないでしゅ!みんながいるから、メデルはだいじょぶでしゅ!」
ハクリスが父に礼を取った。
「父上、母上。メデルは、修義を立派に終えました。僕たち兄弟も、メデルに支えられ供に帰る事が出来ました。」
ミディットレースも続けて言った。
「メデルは…すごいんです。魔力が、自然と繋がってて…僕たちも、何度も助けられました」
ブランデットは、少し照れながらも言った。
「メデルは、僕の光です。僕の体が弱くても、メデルがいると…元気になれる気がするんです」
マルタは、兄弟たちを見渡しながら、そっと言った。
「あなたたち…みんな、立派になったわね。母は誇りに思います」
コクベックも頷いた。
「我が家の子らは、皆強く、優しく育った。今日の再会は、我が家の誇りだ」
そして、家族は円を描くように集まり、メデルを中心に手を取り合った。
スワロ公爵は、家族全員を見渡しながら言った。
「今日という日は、我が家にとって特別な日だ。
メデルの修義が終わり、調和者としての兆しが現れた。そして、家族が再び一堂に会した。これは、未来への第一歩だ」
メデルは、みんなの手を見渡しながら、にこにこして言った。
「みんな、いっしょでしゅ。風しゃんも土しゃんも、ここにいるでしゅ!」
そして、王都の神殿には、家族の絆が満ちていた。
それは、メデルの魔力が最も輝く瞬間――“愛”に包まれた再会の光だった。
ミディットレースが静かに言った。
「メデルの魔力は、心のままに波動...流れますね」
コルベックは目を細め、
「メデルの魔力は…大地そのものが息づいている...制御をいや守るよ...」
リュスクマテルテスが静かに歩み寄り、コルベックに向かって再度誓った。
「スワロ公爵様…再度誓います…私は、メデルの力を、帝国の道具にはさせません」
コルベックもまた頷き再度誓う。
「我も再度誓おう…その意志、しかと受け止めた。
我が家は、メデルを“守る者”として支える。
そして、未来を継ぐ子供達のためにも、家族の絆を強くしていこう」
静かにけれど確かにリュスクマテルテスは心から捧げ誓う
風は語り、土は歌う 幼き手が触れしものに 命の鼓動が宿るとき 貴方は、ひとつの輪となる
光は揺れ、影は溶け 魔力は心に寄り添いながら 世界を包む優しさとなる 愛しき子よ――
その笑顔が、未来を照らす その言葉が、世界を癒す 我は誓う 君を帝国の道具にはさせぬ
君を守り、共に歩む 調和の光のもとに・・・
メデルは、兄たちの間でにこにこしながら言った。
「おじちゃま…みんなでいっしょにごはんたべるでしゅか?」
コルベックは笑って言った。
「もちろんだ。今日も、家族の再会を祝う日だからな」
――祝宴の夜
その夜、神殿の食堂には、久しぶりに家族が揃った。
長いテーブルには、神殿の料理人が腕を振るった温かな料理が並び、香りが広がっていた。
メデルは兄たちの間で笑い、スワロ公爵は静かにその様子を見守っていた。
「メデル…お前は、我が家の光だ。
その光が、世界を照らす日が来る。私は、それを信じている」
マル婆ちゃまは、そっと微笑んだ。
「坊ちゃまは、きっと…皆を繋ぐ存在になりますよ」
そして、家族の絆は、静かに、しかし確かに結ばれていった。
王都の神殿にて、風と土の力が、家族の心をひとつにした夜だった。
***
王都の公爵家
お父様が、なぜかそわそわしています。
「うむ…今日の服だが…」
お父様は、執事が持ってきた真新しい赤魔法騎士の制服を前に、なにやら口ごもっています。
その様子に気づいたお母様が、優しくも鋭い視線でお父様を見つめます。
「あなた、何を言っているの?ハクリス達の帰りを祝う大切な日なのですよ。
それに、あなたは子供達の父親、騎士団を辞めても、あなたは赤魔法騎士、誇りを持ってその制服を着るべきですわ」
ヴェルメールも、心配そうな顔で続きます。
「父上、体調が優れないのでなければ、ぜひ着てください。メデルも、父上が格好良い制服を着ているところを見たいはずです」
エリザは、腕を組みながら一言。
「まったく、子供じゃないんだから。シャキッとしないと、ハクリス達に示しがつかないじゃないですよ」
ココリスは、ちょっと呆れた顔で言います。
「父上、またですか?神殿でのお祝いの席で、普段着なんて許されませんよ。メデルも楽しみにしているんですから」
子供達に口々に言われ、お父様はタジタジです。
そこへ、長年タスク家に仕える執事のリバルセルマーズが、落ち着いた声で口を挟みました。
「コクベック様、皆様のおっしゃる通りでございます。魔法騎士の制服は、タスク家の誇りの証。
そして今夜は、メデル様をはじめ、ご家族皆様の喜びを分かち合う特別な夜でございます」
リバルセルマーズは、そっと制服を取り上げ、お父様に手渡します。
「コクベック様の凛々しいお姿は、ご家族皆様の喜びを一層深めることでしょう。どうぞ、皆様のために、そしてご自身の誇りのために、お召しになってくださいませ」
リバルセルマーズの穏やかな言葉に、お父様はふっと息を吐き、観念したように制服を受け取りました。
「…うむ。わかった。お前たちの言う通りだな。リバルセルマーズ、着替えを手伝ってくれ」
そして、お父様は少し恥ずかしそうにしながらも、赤魔法騎士の制服に袖を通しました。
・・・ハクリス達私が赤魔法騎士の制服を着てたって気付いたかなぁ?しょんぼり(´・ω・`)




