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僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


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②光の訪れ――兆し

――日の光


教会の畑に優しく光が差し込んでいた。

メデルは、兄たちに抱かれて外へ出ると、マル婆ちゃまが広げた麻の茣蓙の上にそっと寝かされた。

「今日は土の小人が来ていたから、畑で日向ぼっこしましょうねぇ~」マル婆ちゃまがそう言って、籠を置きながら微笑む。


メデルは、太陽の光を背中に浴びながら、土の温もりに頬と胸とお腹をぺたーっとくっつけた。「ぽかぽかでしゅ…土しゃんと太陽しゃん、ありがとでしゅ…」コロン♪コロン♪と転がりながら、メデルはにこにこしていた。


ハクお兄様がそっと膝をついて、メデルの顔を覗き込んだ。「メデル、昨日より顔色がいいな。魔力、安定してきてるのか?」


「うん!スーって流れてるでしゅ!お腹の中がキラキラしてるでしゅ!」


「うん?」ハクお兄様は僕の魔力が動いている事に気付きレースお兄様は魔力測定器を取り出し、メデルの胸元にかざす。「…反応が強い。昨日よりもずっと安定してる。これは…自然循環による魔力調整か?」

マル婆ちゃまがにこにこしながら言った。「坊ちゃまは、太陽と土の力を借りて、魔力を整えていらっしゃるのです。魔力は、心と自然が繋がることで、流れを持つのですよ」


その様子を、少し離れた場所から見つめていたのは、白銀の刺繍が施されたローブを纏う最高神官リュスクマテルテス。彼の隣には補佐官のセレナ・ヴァルティスが立っていた。


セレナが眉をひそめて言った。「この子…本当に三歳なのかしら?魔力の流れが、まるで熟練の神官のように整っているわ」


リュスクマテルテスは静かに頷いた。「ええ。しかも、黒魔法士でありながら、光の属性が混じっている。これは記録にない現象です」


セレナは魔力測定器を見ながら、さらに驚いたように言った。「…全属性に微弱反応がある。黒、白、青、赤、黄、緑…これは“調和者”の兆しでは?」


***

その瞬間――

メデルの体が、ふわりと光を放ち始めた。

「え”」

「あ”」

「へ” メデル光ってる!」

兄たちが驚きの声を上げる中、メデルはコロン♪と転がりながら、光の中で笑っていた。「太陽しゃん…土しゃん…風しゃん…みんな…ありがとでしゅ…」風が舞い、光が揺れる。


その中心に、リュスクマテルテスが静かに歩み寄ってきた。メデルはその人の気配に惹かれるように、コロン♪コロン♪と転がって近づき「うんしょ♡」と起き上がって、彼のローブの裾にぺたーっと頬を寄せた。「気持ち良いでしゅ…この人…太陽しゃんみたいでしゅ…」


リュスクマテルテスは微笑みながら、メデルの額に手をかざした。「メデル様、あなたの魔力は、黒の属性でありながら、光を内包している。これは神殿の記録にも存在しない、特異な現象です。あなたは…神の御子かもしれません」


ハクお兄様が驚きながら言った。「神の御子…?そんな…メデルが…?」


レースお兄様は真剣な顔で言った。「でも、確かに…メデルの魔力は、僕たちとは違う。自然と繋がっているように見える」


マルが、涙を浮かべながら言った。「坊ちゃま…あなたは、きっと…この世界に光をもたらすお方です…」


メデルはまだ何もわからない。ただ、ぽかぽかとした太陽と、土の温もりと、優しい人たちに囲まれて、「にっぱ~☆彡」と笑っていた。


メデルが光を放ち、兄たちが驚きの声を上げる中、リュスクマテルテスは静かに歩み寄り、メデルの額に手をかざした。その光が収まり、メデルがコロン♪と転がって眠りについた――


眠りについたその瞬間

空から、柔らかな光が降り注ぎ始めた。それは、太陽の光とは違う、神殿の祝福のような光。温かく、優しく、すべてを包み込むような輝きだった。


ハクリス様の肩に、ふわりと光が触れた。彼の眉間のしわがほどけ、疲れがすっと抜けていく。「…あれ?体が…軽い…」


ミディットレース様の胸元にも光が届き、彼の魔力の流れが整っていく。「これは…癒しの魔力?いや、もっと根源的な…“調和”の力だ」


ブランデットお兄様は、光に包まれながら、カーロの声を聞いた。《デット…私の力、少しだけ使って。みんなを癒してあげて》

(わかった…カーロ、ありがとう)

デットの体から、淡い青白い光が広がり、兄弟たちの周囲に優しい波紋を描いた。その光は、カーロの魂の力――守護と癒しの精霊の契りによるものだった。


その日、神殿の畑に降り注いだ光は、ただその場にいた者たちだけでなく――

遠く離れた王都にも、静かに届いていた。

***

王都・公爵家の一室。

ヴェルメールは書類に目を通しながら、魔力の調整に集中していた。ふと、窓辺に立つと、空が淡く光っているのに気づいた。「これは…魔力の波?」

彼は手をかざし、魔力の流れを感じ取った。

「…メデル…お前の魔力が、ここまで届いているのか」その瞬間、彼の体内の魔力が静かに整い、長年の不安定さが少しだけ和らいだ。

「…ありがとう…」

***

王都・騎士団の訓練場。

エリザマールは剣を振るい、汗を流していた。

その瞬間、空からふわりと柔らかな光が差し込んだ。「…え?」剣を構えたまま、彼女は空を見上げた。胸の奥が、ぽかぽかと温かくなる。

「メデル…?」彼女は剣を下ろし、そっと胸に手を当てた。「今…あの子の魔力が、私に届いた気がした…」その光は、彼女の疲れた筋肉を癒し、心の焦りを静めていった。

***

王都・ギルドの採取準備室。

ココリスは荷物をまとめながら、ふと空を見上げた。「ん?なんか…キラキラしてる?」

彼女は手を伸ばし、光を掴むように空気を撫でた。

「…メデルの“スー”だ。間違いない」彼女は笑って、ハクリスの名前を思い出しながら呟いた。

「ハク兄の栄養、また持ってっちゃおうかな~。でも今日は、メデルの魔力で元気になったから、分けてあげる!」その光は、彼女の魔力を活性化させ、採取活動への活力を与えていた。

***


王都の空に、誰もが気づかないほどの微細な光が舞っていた。それは、メデルの魔力が自然と繋がり、兄姉たちへと届いた証。遠く離れていても、家族の絆は魔力を通じて繋がっていた。そして、メデルは神殿の畑で、すやすやと眠りながら――

その光を、無意識のうちに世界へと広げていた。


***

マルの手にも光が触れた。しわくちゃだった肌が、ほんの少しだけ柔らかくなり、声が澄んでいく。「坊ちゃま…これは…精霊の祝福…」


リュスクマテルテス様の胸にも光が届き、彼の魔力が静かに震えた。「母上…これは、あなたの魔力が…再び目覚めようとしている」


マルは、涙を浮かべながら言った。

「坊ちゃまの光が…私たちを癒してくださっている…」


セレナ補佐官が、震える声で言った。「これは…神殿の記録にもない…“調和者”の奇跡…」


その時、メデルの胸元から、ふわりと精霊の羽のような光が舞い上がった。それは、カーロの魂の一部が、兄弟たちとマル、リュスク様に分け与えられた証だった。


ハクは静かに言った。「メデルは…僕たちの中心にいる。光の源だ」


レースは拳を握りしめながら言った。「この力…守らなきゃ。メデルを、そしてこの光を」


デットは、心の中でカーロに語りかけた。(カーロ…ありがとう。君の力が、みんなを繋いでくれてる)《ううん…メデルが、みんなを癒してくれてるの。私は、ただ…見守ってるだけ》


マルは、そっとメデルの頬に手を添えた。

「坊ちゃま…あなたは、私たちの希望です」


リュスクマテルテス様は、静かに祈りの言葉を口にした。「この子に、神々の祝福と、精霊の導きを…」


そして、光は静かに収まり、メデルの寝息が穏やかに響く。その場にいたすべての者が、癒しと再生の力を受け取り、心に新たな希望を灯した。






***

マルは、そっとリュスクマテルテスの背後に立ち、静かに声をかけた。

「…リュスク様、やはり気づいていたのですね」

リュスクマテルテスは振り返らず、穏やかな声で答えた。

「ええ。あの子の魔力は、私たちの血に流れるものと似ている。

母上…あなたの魔力の記憶が、あの子に宿っているように感じます」

マルは、しわくちゃの顔に微笑みを浮かべながら言った。

「坊ちゃまは、純粋でございます。私のような者の過去など知らずとも、自然と魔力を巡らせておられる。

それが…嬉しくて、涙が出そうでございます」

リュスクマテルテスは、ようやく振り返り、母の姿を見つめた。

「母上…あの時、なぜ私を置いて帝国を去ったのですか?

私は…ずっと、母上が死んだと思っていた」

マルは、しばらく沈黙した後、静かに語り始めた。

「リュスク様…あなたが生まれる少し前、私は帝国の前王に見初められ、王妃として迎えられました。

ハイエルフである私の魔力は、王家にとって“神の加護”と見なされていたのです。あなたを産んだ後、私は王妃としての役目を終えたとされ、城の地下――祈りの樹の間に閉じ込められました。

あそこは聖獣の卵が眠る場所。誰も近づかない、静かな牢でした」


リュスクマテルテスは息を呑んだ。

「そんな場所に…母上を…」


マルは、目を伏せながら続けた。

「それから50年ほど立って10年前、王が代替わりし定期確認に来た現王が、若いまま私の姿を見て驚いていました、それから時々来ていました。2・3年後、現王妃が私の存在に気づき、“祝福の薬”と称して魔力を歪める薬品を掛けたのです。その瞬間、私の容姿は崩れ、肌はしわくちゃに、声も変わり、誰も私を認識できなくなりました。前王には、50年近く魔力を流しても聖獣の卵に変化がないと、もう不要と10年前に現王に破棄依頼をされていたの…丁度前王も寿命を迎え供に埋葬するはずだと・・・王は城下の墓地に置かれる事は知っていたので、仮死魔法を自分に掛け、死んだように見せかけて時間を置き逃げました。ただ…ただ、あなたのそばにいたかったから。探したのです。現王があなたに嫉妬して、10歳のあなたを神殿に入れたと聞いていたので」


リュスクマテルテスは、目を見開き、言葉を失った。

「…そんなことが…母上…」


マルは、そっと彼の手を取った。

「私は、母として失格かもしれません。でも、あなたが神官として立派に育ち、今こうして坊ちゃまを守っている姿を見て…私は、誇りに思っておりますよ」


リュスクマテルテスは、しばらく沈黙した後、静かに言った。「母上…これからは、隠れずにいてください。私は、あなたを母として迎えたい。メデルたちにも、あなたの本当の姿を知ってほしい」


マルは、涙をこらえながら、そっと頷いた。

「ありがとう…リュスク。私は、あなたがいてくれるだけで、もう十分です。でも、坊ちゃま――メデル様の魔力は、私たちの因縁を超える力を持っています。あの子が、世界を変えるかもしれません」


風が再び吹き抜け、木々がざわめいた。

母と息子は、静かに祈りの場に立ち尽くし、過去の痛みと未来への希望を胸に抱いていた。

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