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僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


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⑲旅の前の学び――幼き者たちの準備

公爵家・学びの間 朝

旅立ちを決めたメデルとブランデットは、家族と公爵家の支援のもと、静かに準備を始めていた。


常識の学び ― 執事リバルセルマーズ

「旅に出る前に、まずはお勉強です。」

執事リバルセルマーズが、優しく微笑みながら言った。彼の担当は“常識”。帝国の礼儀、言葉遣い、地図の読み方、精霊との接し方――すべてを、絵本と実演で教えてくれる。

リバルセルマーズは、銀盆に地図と精霊の紋章カードを並べながら、静かに語り始めた。

「メデル様、ブランデット様。旅は、ただ歩くだけではありません。言葉と心を持って、世界と向き合うことです。」

メデルは、カードを指でなぞりながら「この精霊さん、風の人?」と尋ねる。リバルセルマーズは微笑みながら頷いた。

「はい。風の精霊“リュア”。挨拶は、手を胸に当てて、目を閉じて風を感じること。」

ブランデットは、弟の真剣な顔を見て、そっと手を添えた。

「メデル、風さんにちゃんと届くように、心を静かにしてみよう。」

二人の間に、静かな敬意が芽生えていた。


剣術の学び ― 父コクベック

中庭では、父コクベックが木剣を手に、ブランデットと向き合っていた。風が吹き抜けるたびに、剣の先が揺れる。

「剣は、誰かを傷つけるためにあるのではない。守るためにある。お前が守りたいものは、何だ?」

ブランデットは、剣を握りしめながら答えた。

「メデル。カーロ。家族。……僕の心。」

コクベックは、静かに頷き、彼の肩に手を置いた。

「その気持ちが、剣になる。技よりも、心が先だ。」

メデルは、風の流れに合わせて体を動かしながら、魔力の剣をイメージしていた。

「風さん、メデルの剣になってね。」

その声に、風が優しく応えたように、葉が舞った。


野宿の学び ― キル様とバルグ様

森の奥では、キル様が葉の寝床を作りながら語っていた。

「夜は静かだが、命は動いている。耳を澄ませば、精霊が語る。寝床は風を避け、音を聞く場所に作るんだ。」

バルグ様は、火打石を手に、メデルの小さな手を導いた。

「火は命だ。だが、森では、火を使うには許しがいる。風に聞いてから、火を灯す。それが礼儀だ。」

メデルは、風に「いいですか?」と尋ねてから、火打石を打った。ぱちりと火が灯り、キル様が頷いた。

「よくできた。風が君を認めた証だ。」

ブランデットは、葉の寝床にそっと横になりながら呟いた。

「ここ、あったかいね。森が、優しい。」


サバイバル料理 ― コック長ナヤラ(男性)

厨房では、ナヤラが干し野菜の袋を広げながら語っていた。

「旅の料理は、命をつなぐ魔法よ。味だけじゃない、心も温めるの。」

メデルは、野菜を一つずつ並べながら「この子は、甘い?」「この子は、苦い?」と話しかける。

ナヤラは笑いながら答えた。

「そうよ。食材にも性格があるの。仲良くなると、美味しくなるのよ。」

ブランデットは、メデルの手元を見ながら「じゃあ、僕が火を守るね」と言った。

二人の料理は、まるで精霊との対話のようだった。


薬と体のメンテナンス ― 母マルタ

治療室では、母マルタが薬草を並べながら、優しく語っていた。

「痛い時は、我慢しなくていいのよ。声に出して、助けを呼ぶこと。それも、強さのひとつ。」

メデルは、薬袋を握りしめながら「メデル、痛い時は“お母様”って呼ぶ」と言った。

マルタは微笑みながら、彼の額に手を当てた。

「その声が届くように、魔力を整えておきましょうね。」

ブランデットは、母の手を握りながら「帰ってきたら、また一緒に作る」と言った。


学園の勉強 ― 兄姉たちと共に

学びの間では、兄姉たちがそれぞれの得意分野を教えていた。

ヴェルメールは魔法理論を、図と実験で。

エリザマールは歴史と剣術を、物語と実演で。

ハクリスとココリスは魔力の応用を、遊びながら。

ミディットレースは絵本と詩を、歌にして。

「メデル、ブランデット。旅に出ても、僕たちの声は心にある。いつでも思い出して。」

メデルは、兄姉たちの言葉を胸に刻みながら、旅のノートに絵と言葉を描いていった。

ブランデットは、ノートを見ながら「この絵、帰ってきたら見せるね」と言った。


***

王宮・地下聖堂 静寂の時

王宮の奥深く、誰も足を踏み入れぬ地下聖堂。石造りの回廊を抜けた先に、静かなる空間が広がっていた。空気は澄み、魔力の流れが穏やかに満ちている。

聖堂の中央には、聖樹が根を張り、その根元に古の祭壇があった。そこに、眠るように置かれていたのは――聖獣の卵。

メデルとブランデットは、コルベック伯父様とコクベックお父様に手を引かれながら、ゆっくりと聖堂へと足を踏み入れた。

ベルセル王子が、聖樹の前に立っていた。彼の瞳は、いつもの陽気さを捨て、静かな決意に満ちていた。

「来てくれてありがとう。メデル、ブランデット。君たちに見せたいものがある。」

王子が手をかざすと、聖樹の葉が揺れ、翠鳥の気配が現れた。風のような声が、聖堂に響く。

「聖獣の卵――1500年前程、冒険ギルドから献上されたもので、神の域に還るべき命。今は眠っているが、意思を持ち、時折テレパスで語りかけてくるらしい。」

メデルは、卵にそっと手を伸ばした。触れる寸前、風がふわりと彼の指先を包んだ。

「……この子、眠ってる。でも、夢の中で話してる。」

ブランデットは、弟の隣で静かに頷いた。

「カーロと同じ。心で話す。言葉じゃなくて、気持ちで。」

コクベックは、祭壇の前に膝をつき、卵を見つめた。

「この卵を、精霊の森の奥――“神の域”まで届ける。それが、我が家に託された使命か。」

コルベックは、聖樹に手を当てながら語った。

「神真の翠龍様が待っている。この卵が還ることで、理が整い、精霊たちが目覚める。」

ベルセル王子は、静かに付け加えた。

「この卵には、かつてマル様が魔力を注ぎ、命を守った。そして今も、リュスクマテルテス神官が魔力を送り続けている。彼らの祈りが、この命を繋いでいる。」

メデルは、卵に向かってそっと囁いた。

「メデル、守るね。カーロと一緒に、森まで行く。風さんも、森も、待ってる。」

卵は微かに光を放ち、聖堂の空気が優しく震えた。

その瞬間、聖樹の葉が一枚、ふわりと舞い落ちた。翠鳥の声が、風に乗って囁いた。

「約束の子らよ。道は険しくとも、光は君たちの中にある。」

***

精霊と小人の手仕事

旅の準備が整い始めた頃、メデルとブランデットは、聖樹の根元へと案内された。そこには、風の精霊たちと、土の小人たちが集まっていた。

空には夕焼けが広がり、葉の隙間から差し込む光が、まるで祝福のように地面を照らしていた。

聖獣の卵は、静かに眠っている。その命を安全に運ぶために、精霊たちは動き始めていた。

風の精霊が、聖樹の葉を一枚ずつ優しく撫でながら、選び取る。


「この葉は、風を通さず、魔力を守る。卵の眠りを妨げないように。」

土の小人たちは、聖樹の茎を編み込みながら、柔らかな背負い袋の形を整えていく。彼らの指は小さくても、動きは確かで、繊細だった。

「蓋は、風の結び目で閉じる。開ける時は、風に“お願い”するんだよ。」

メデルは、袋の中に卵がぴったり収まるのを見て、目を輝かせた。

「すごい……ふわふわしてる。卵さん、気持ちいい?」

卵は微かに光を放ち、まるで「ありがとう」と言っているようだった。

ブランデットは、袋の背負い紐を手に取り、肩にかけてみる。

「軽い……でも、しっかりしてる。これなら、落ちない。」

精霊たちは、袋の表面に小さな紋章を刻んだ。それは、風・土・命の三つの精霊の印。

「この袋は、精霊の加護を受けている。君たちが迷った時、風が道を示し、土が足元を守る。」

メデルは、袋にそっと手を当てて囁いた。

「卵さん、僕とデット兄さまが守るね。風さんと小人さんが作ってくれたから、安心して眠ってて。」

その夜、聖樹の根元には、命を運ぶための優しい手仕事と、精霊たちの祈りが満ちていた。


***


フーマ出会い

王都の中心にある冒険者ギルド本部。重厚な扉をくぐると、魔力の気配と剣の匂いが混じる空気が広がっていた。

その日、ギルドの副マスターである伯爵家三男(30歳・Aランク冒険者)は、銀狼の獣人フーマを応接室へ呼び出していた。

「フーマ。王家からの依頼だ。精霊の森へ向かう子供たちの護衛を頼みたい。」

フーマは眉をひそめた。「子供たちの護衛?王家の依頼で?」

副マスターは微笑みながら扉を開けた。

「入ってもらおうか。」

小さな足音が響き、二人の子供が姿を現した。

「こんにちは、ふーま様。僕、メデルです。よろしくお願いします!」

黒髪の少年が、緊張しながらも笑顔で挨拶した。その背には、聖樹の葉と茎で編まれた柔らかな背負い袋があり、蓋の中には聖獣の卵が静かに眠っていた。

隣に立つ少年が、一歩前に出る。

「私はブランデットです。メデルの兄になります。ご存知かと思いますが、私の中には半精霊のカーロがいます。姉です。」

フーマは目を細めた。銀色の瞳が二人を見つめる。

「……なるほど。お前たちが“あの聖獣の卵を返す使命”を背負っている子供たちか。……敬語はやめろ。俺は偉くもないし、堅苦しいのは性に合わん。」

低く、しかし優しさを含んだ声で言う。

メデルが目を丸くし、ブランデットが一瞬戸惑う。

「え……でも、ふーま様はすごい方で……」

「すごいかどうかは、旅の中で決めろ。今は、仲間になるかどうかの話だ。」

その言葉の傍らで、副マスターがくすっと笑い、肩をすくめながら頷いた。

「フーマらしいな。子供相手でも容赦ない。だが、それがいい。彼らには、飾りのない本物が必要だ。」

副マスターが静かに言った。

「彼らは、精霊の森へ向かう。聖獣の卵と、カーロを神域へ返すために。帝国の未来に関わる旅だ。フーマ、お前にしか任せられない。」

フーマはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。

「……俺は子供の相手は得意じゃないぞ・・・旅は甘くない。お前たち、命を懸ける覚悟はあるか?」

メデルは真っ直ぐにフーマを見つめた。

「僕、カーロお姉様と卵を、ちゃんと帰してあげたいんです。」

ブランデットも静かに頷いた。

「私の中の姉が、あと1年ちょっとで精霊の森に還らなければ、私の人格が壊れ姉は消えてしまう。だから、行きます。必ず。」

フーマは、彼らの瞳に宿る決意を見て、低く笑った。

「……いい目をしてる。なら、俺も命を懸ける価値がある。・・・敬語に戻っているぞ(笑)」

ブランデットは静かに頷き、メデルは笑顔を浮かべて言った。

「じゃあ……ふーま、よろしくね!」

フーマは口元をわずかに緩めた。

「よし。それでいい。俺も、よろしくな。」

こうして、銀狼フーマとメデル、ブランデットの旅が始まった。

それは、帝国の深奥に眠る“理”と“光”を揺り動かす、運命の旅路だった。


***

騎士団長との手合い

王都の公爵家訓練場。

その日は、銀狼フーマが正式に旅の護衛を引き受ける前に、ある“願い”を申し出ていた。

「俺に、手合いを願います。元赤魔法騎士団長――コクベック様と。」

その言葉に、公爵家の騎士たちがざわめいた。

銀狼フーマは帝国一のAランク冒険者。だが、彼が憧れていたのは、かつて帝国を守った赤魔法騎士団長、コクベックその人だった。

フーマの瞳には、少年の頃から抱いてきた憧れが宿っていた。帝国を守り、魔力と剣を両立させた伝説の騎士――コクベック。

彼の背を追い、獣人でありながら人間の騎士たちと肩を並べるまでに至ったフーマにとって、この手合いは“夢の続きを確かめる”瞬間だった。

コクベックは剣を手にしながら、静かに言った。

「……本気か?」

「本気です。俺の剣が、あなたに届くかどうか。確かめたい。」

その言葉に、公爵家の騎士たちがざわめいた。

「銀狼が団長に挑むってよ!」

「本気の手合いだぞ、見逃すな!」

訓練場の周囲には、騎士たちが次々と集まり、メデルとブランデットも見守っていた。

そして、コルベック伯父様が腕を組みながら、呆れたように言った。

「まったく……弟は引退しても、こうして挑まれる。どれだけ“憧れ製造機”なんだか。」

副マスターが笑いながら頷いた。

「でも、フーマの目は本物ですよ。これはただの手合いじゃない。魂の礼です。」

訓練場の空気が張り詰める。

銀狼フーマは、腰の銀剣を抜き、低く構えた。

その姿は、獣の本能と人の技術が融合した、研ぎ澄まされた刃そのもの。

対するコクベックは、赤い魔力を纏った騎士剣を手に、静かに立つ。

その構えは無駄がなく、魔力の流れが剣と体に自然に馴染んでいた。

「始めるぞ。」

コクベックの声と同時に、地面が赤く光る。

フーマは一瞬で距離を詰めた。

獣人特有の跳躍力と加速――その動きは、目で追えないほど速い。

銀剣が横薙ぎに振るわれ、空気を裂く。

コクベックは剣を立てて受ける。

衝突の瞬間、赤い魔力が盾のように広がり、衝撃を吸収する。

「速いな……だが、まだ甘い。」

コクベックは足元に魔法陣を展開。

赤の魔力が地を這い、フーマの足元を狙う。

フーマはそれを察知し、後方へ跳躍。

空中で体をひねり、魔力を剣に纏わせる。

銀の魔力が剣先から放たれ、閃光のようにコクベックへ飛ぶ。

だが、コクベックは剣を振り上げ、赤の魔力でそれを切り裂いた。

「魔力の制御も見事だ。だが、俺の剣は“理”を断つ。」

コクベックが前進。

一歩ごとに魔力が地を震わせ、剣が空気を押しのける。

フーマは迎え撃つ。

銀剣と赤剣が交差し、火花が散る。

その瞬間、フーマは低く身を沈め、獣の動きでコクベックの懐へ滑り込む。

剣を逆手に持ち替え、下段から突きを放つ。

「……!」

コクベックは剣を横に払い、フーマの剣を弾く。

だが、フーマの動きは止まらない。

連撃、跳躍、魔力の刃――すべてが一つの流れとなって襲いかかる。

コクベックはそれを受け止めながら、最後に魔力を剣に集中させた。

地面が赤く光り、フーマの足元に魔力の鎖が現れる。

瞬間、フーマの動きが止まる。

「……見事だ。」

コクベックが剣を下ろす。

フーマは膝をつき、深く頭を下げた。

「ありがとうございました。俺は、あなたの背を追い続けます。」

騎士たちは静まり返り、やがて拍手が起こる。

「銀狼の剣、あれがAランクか……」

「団長の魔力、やっぱり桁違いだ……」

「この手合い、記録に残すべきだな……」

コルベック伯父様はため息をつきながら、ぽつりと漏らした。

「弟がまた誰かの“人生の目標”になったか……これで何人目だ? もう数えるのも面倒だ。」

副マスターは肩をすくめながら言った。

「でも、これで旅は安心ですね。フーマは、ただの護衛じゃない。魂で守る男です。」

こうして、銀狼フーマは、公爵家の信頼を得た。

そして、メデルとブランデットの旅は、確かな絆と共に始まるのだった。

魔力のきらめき。

手合いが終わった後、訓練場には静寂が戻っていた。

銀狼フーマが膝をつき、コクベックに礼を述べるその姿を、メデルは目を輝かせて見つめていた。

「お父様……すごい……!」

その瞬間、メデルの体がふわりと浮き上がった。

誰も触れていないのに、空気が柔らかく持ち上げるように、彼の小さな体が宙に浮かぶ。

「わっ……浮いちゃった……!」

周囲の騎士たちがざわめく。

「外で浮いてる!?マルタ様さまに怒られる?……」

「誰か、制御できるか!?」

だが、メデルの瞳は空を見ていた。

そこには、目に見えない精霊たちが集まり、彼に語りかけていた。

「きらきらしてる……精霊さん、こんにちは……!」

メデルの周囲に、淡い光が集まり始める。

それは魔力の粒子――ぴかぴかと輝き、彼の感情に共鳴していた。

「すごい……すごいよ……!」

興奮したメデルの魔力が一気に高まり、光が弾けるように広がった。

「メデル、危ない!」

ブランデットが叫ぶより早く、メデルの体が光に包まれ――

次の瞬間、彼は訓練場の中央、コクベックのすぐそばに瞬間移動していた。

「お父様っ!」

コクベックは驚きながらも、すぐにメデルを抱きとめる。

「……お前、今のは……」

その場にいた公爵家の騎士たちは、顔を青ざめさせ騎士たちは一斉に動いた。

記録魔晶を操作していた若手騎士が、慌てて魔晶の停止符を唱える。

「記録、止めました!映像は……消去しますか!?」

「いや、保管だ。公爵様の判断を待て!」

別の騎士が、訓練場の光源魔法を落とし、場の雰囲気を沈静化させる。

「光を落とせ!目撃者を集めるな!」

「外の騎士たちには、“風のいたずら”と伝えろ!」

「マルタ様に報告は……どうする?」

「それは……公爵様とコクベック様の判断だ。俺たちが口を滑らせたら、今度こそ本当に胃が破裂するぞ……!」

騎士たちは、訓練場の周囲に魔力障壁を張り、外部からの視線を遮断した。

一部の騎士は、メデルの魔力の残滓を解析しようとしたが、精霊の干渉が強すぎて、魔力の構造が読めなかった。

「これは……聖女の力か……?」

「いや、聖女というより……精霊そのものが動いてる。人の魔力じゃない。」

コルベックは静かに歩み寄り、騎士たちに低く命じた。

「記録は保管。報告は限定。王家には“兆し”として伝える。公爵家内では、極秘扱い。いいな?」

「はっ!」

コルベック伯父様は、頭を抱えながらぼそりと呟いた。

「王家は知っているが……こんな騒ぎを起こすとは。……」

騎士たちは、メデルの周囲にそっと距離を取りながら、彼の安全を確保しつつ、何事もなかったかのように訓練場を整え始めた。

「次の訓練予定は、午後の剣術演習です。……通常通り、進行します。」

「公爵様、訓練場の魔力残留はどうしますか?」

「自然に消えるまで放置でいい。精霊の痕跡は、下手に触ると逆に呼び寄せる。」

騎士たちは、忠誠と混乱の狭間で、冷静に、迅速に、そして何より“公爵家の名に恥じぬよう”動いていた。

だが、メデルの瞳には、まだ精霊の光が宿っていた。


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