⑫ お父様の秘密
――霧に包まれた巨大なログハウス。
扉を叩くと、銀髪の青年のような姿のキルが現れた。
「……コクベック様。ようこそ。お待ちしておりました」
「待っていた……?私を?」
キルは微笑みながら、奥の暖炉へと案内した。
そこには、穏やかな雰囲気を纏ったバルグが、湯を沸かしていた。
「あなたが来る日が、導きの書に記されていました。“調和者の父、血の記憶に触れる時、森は語り始める”と」
コクベックは、椅子に腰を下ろしながら、深く息を吐いた。
「私は……自分が老けないことに、ずっと疑問を抱いていたました、騎士団長を辞めてから、領地に戻り、記録を調べて……あなたの名前に辿り着いた」
キルは頷いた。
「私は、ハイエルフの先祖返り。寿命は2000年。今は、500年ほど生きています。バルグは、私の伴侶。配偶者には寿命を譲渡できるのです。私たちは、森の管理人として、自然と魔力の流れを見守ってきました」
コクベックは、震える声で尋ねた。
「では……私も、先祖返りなのか?ハイエルフの血を……?」
キルは、静かに頷いた。
「あなたの魔力の質、老化の遅さ、そして――子供たちの魔力不調。それらは、すべて“器”が育ちきっていない長寿種族の兆しです。
特に、末の子の魔力は、私たちの記憶にある“調和者”のそれに近い」
バルグが、湯を注ぎながら言った。
「メデル様の魔力は、属性を超えて響いている。それは、命の言葉を持つ者――ハイエルフの中でも特異な存在です」
コクベックは、頭を抱えた。
「子供たちが……五人とも、先祖返りの可能性があると?私は……どうすればいい……妻にも、兄にも、まだ話せていない……」
キルは、そっとコクベックの肩に手を置いた。
「恐れることはありません。彼らは、あなたの血を受け継ぎ、命の記憶を宿している。“器”が育てば、魔力は安定し、彼らは世界を癒す者となるでしょう」
バルグが、暖炉の火を見つめながら言った。
「そして、メデル様は、調和者。彼の言葉が、世界を変える日が来る。あなたは、その父として、真実を受け入れ、導く者となるのです」
コクベックは、静かに目を閉じた。
「……私は、彼らに話すべきだろうか。この血の記憶を、寿命のことを、魔力の本質を……」
キルは、微笑みながら答えた。
「話す時は、心が決めます。だが、導きの書にはこうあります――“調和者の父が、赦しを知る時、再生の風が吹く”と」
コクベックは、暖炉の火を見つめながら、静かに呟いた。
「赦し……か。私が、私自身を赦すことから、始めなければならないのかもしれない」
森の静けさの中、暖炉の火がぱちぱちと音を立てていた。
キルとバルグの言葉が、コクベックの胸に深く染み込んでいく。
「調和者の父が、赦しを知る時、再生の風が吹く――か」
コクベックは、暖炉の火を見つめながら、静かに目を閉じた。
過去の記憶が、波のように押し寄せる。
若き日の戦場。
騎士団長として、命令に従い、剣を振るった日々。
守るために戦ったはずなのに、時に命を奪うこともあった。
「私は……何を守ってきたのだろうか」
そして、家族。
妻の優しさ。
兄の知性と静かな支え。
子供たちの笑顔、涙、そして――メデルの生まれた瞬間。
彼は、拳を握りしめた。
「私は、父だ。彼らの命を預かる者だ。ならば、真実から逃げるわけにはいかない」
コクベックは、ゆっくりと立ち上がった。
その瞳には、迷いが消え、静かな光が宿っていた。
「私は、話そう。妻に。兄に。この血の記憶を。寿命のことを。魔力の本質を。彼らが何者であるかを、そして――私が何者であるかを」
コクベックは、森の奥に広がる霧を見つめながら、静かに呟いた。
「子供達はまだ幼いしばし守ろう言葉が紡ぐ時まで」
その言葉に、森の風がふわりと吹き抜けた。
木々が揺れ、葉がささやくように応えた。
それは、コクベックが初めて“父としての覚悟”を持った瞬間。
静かなる決意が、森に響いた。
― 血の記憶に触れる夜
公爵館の書斎。
夜の帳が降り、窓の外には静かな星々が瞬いていた。
コルベックは、書類に目を通しながら、ふと気配を感じて顔を上げた。
「コクベック……珍しいな。こんな時間に、君が来るとは」
コクベックは、扉の前に立ち、少し迷いながらも静かに歩み寄った。
「兄さん……話したいことがあるんだ...大事なことなんだ」
コルベックは、書類を閉じ、椅子を引いてコクベックに座るよう促した。
「君が“大事なこと”と言うなら、きっと本当に大切な話だ。聞かせてくれ」
コクベックは、深く息を吐き、言葉を選びながら語り始めた。
「メデルが生まれてから……私の中で、何かが変わった。心と体が共鳴して、五属性の魔法が使えるようになった。それは、誇らしいことのはずなのに……なぜか、怖かった」
コルベックは、黙って頷いた。
弟の言葉を遮らず、ただ受け止めていた。
「私は……老けない。年齢にしては、若すぎる。それがずっと気になっていた。騎士団長を辞めてから、領地の記録を調べて……森の管理人に会った。
彼は、ハイエルフの先祖返りだった。寿命は2000年。そして、彼は言った。私も、同じ血を持っている可能性があると」
コルベックの瞳が、静かに揺れた。
「……ハイエルフの先祖返り……?」
「そうかもしれない。そして、子供たちも……魔力の不調は、器が育ちきっていない兆し。彼らも、先祖返りの可能性がある。特に、メデルは……命の言葉を持つ“調和者”かもしれないと言われた」
コルベックは、しばらく沈黙した後、静かに言った。
「……私も……老化の遅さに気づいていた。だが、君達ほど魔力が強くないから、気のせいだと思っていた。でもメデルが生まれた時から...魔力が大幅に増えた...私にも……その血が流れているのかもしれないな…」
コクベックは、驚いたように兄を見つめた。
「兄さんも……?」
コルベックは、微笑みながら頷いた。
「私たちの家系は、古くから“風と土の誓い”を守ってきた。その中に、ハイエルフの血が混ざっていたとしても、不思議ではない。むしろ、メデルの存在が、それを証明しているのかもしれない」
コクベックは、拳を握りしめた。
「私は、父として……夫として……この真実をどう伝えればいいのか、分からなかった。でも、今日……森で、決めたんだ。私は、話す。マルタに。子供たちに。彼らが何者であるかを、そして――私が何者であるかを」
コルベックは、弟の肩に手を置いた。
「それでいい。君が選んだ道は、正しい。真実を語ることは、怖い。だが、それが家族の絆を強くする。私も、君の隣で支えるよ。兄として、家族として」
コクベックは、初めて安堵の表情を浮かべた。
「ありがとう、兄さん。」
公爵館の屋上庭園。
夜風が静かに吹き抜け、星々が空に広がっていた。
コルベックは、ワインを片手に月を見上げていた。
そこへ、コクベックが静かに現れた。
先ほどの告白の余韻が、まだ胸に残っている。
「兄さん……少し、話せるか?」
コルベックは、振り返り、微笑んだ。
「もちろん。今夜は、星がよく見える。話すには、いい夜だ」
二人は並んでベンチに腰を下ろした。
しばらく沈黙が流れ、風が葉を揺らす音だけが響いていた。
コクベックが、ぽつりと呟いた。
「昔……兄さんと剣の稽古をした日を、覚えてる?」
コルベックは、目を細めて頷いた。
「覚えているよ。君は、いつも力任せで突っ込んできた。私は、風の流れを読むように、受け流していた」
「兄さんは、私の盾だった。私は、兄さんの剣だった。それが、兄弟の役割だと思っていた」
コルベックは、ワインを傾けながら言った。
「でも今は、違う。君は、家族の盾であり、剣でもある。そして、私は……君の背を押す風になりたい」
コクベックは、目を伏せながら言った。
「兄さんも、先祖返りかもしれない。それを聞いて、少し安心した。でも同時に……兄さんにまた重荷を背負わせたくないとも思った」
コルベックは、静かに首を振った。
「重荷じゃないよ。これは、誇りだ。君が話してくれたことで、私は自分の中の“何か”を受け入れられた。それに、君がいたから、私は迷わずに済んだ」
コクベックは、兄の言葉に目を潤ませながら言った。
「兄さん……ありがとう。あなたがいてくれて、本当に良かった。これからも、隣にいてくれる?」
コルベックは、そっと肩を叩いた。
「もちろんだ。君が調和者の父なら、私はその“風の記録者”になろう。君の歩みを見守り、必要な時に風を吹かせる。それが、兄としての役目だ」
コクベックは、深く頷いた。
「じゃあ、約束。どんな時も、共に歩もう。家族の未来を、メデルの旅を、守っていこう」
コルベックは、空を見上げながら言った。
「この星々のように、君の光が世界を照らす日を、私は待っているよ」
そして、夜風がふわりと吹き抜けた。
それは、兄弟の絆が新たな形で結ばれた瞬間だった。
「ねぇ兄さんベルセル王子の事も本当は諦めて欲しくはない・・・寿命が延びるなら王太子妃が死去した後に一緒になる事も可能だね(笑)」
「!!おい!!めったな事を言うな!!」
「でも…...好きでしょ?」
「…………ああ……ぁぁ…・・・」
コルベックは静かにベルを思い微笑んだ。
――コクベックの告白
公爵館の夜。
月の光が窓辺に差し込み、居間には静かな空気が流れていた。
マルタは、子供たちの寝顔を見届けた後、湯を淹れて戻ってきた。
「あなた、今日はずいぶん静かね。何か、考え事?」
コクベックは、暖炉の前に座り、手元の湯飲みを見つめていた。
その瞳には、迷いと決意が混ざっていた。
「マルタ……少し、話したいことがある。大事なことなんだ」
マルタは、彼の隣に腰を下ろし、静かに頷いた。
「ええ。あなたがそう言うなら、きっと大切な話ね」
コクベックは、深く息を吐いた。
言葉を選びながら、ゆっくりと語り始めた。
「メデルが生まれた時……私の中で、何かが変わった。心と体が共鳴して、五属性の魔法が使えるようになった。それは、祝福だと思っていた。だが、同時に……違和感もあった」
マルタは、静かに耳を傾けていた。
彼の言葉を遮らず、ただ受け止めていた。
「私は……老けない。年齢にしては、若すぎる。それがずっと気になっていた。騎士団長を辞めてから、領地の記録を調べて……森の管理人に会った。
彼は、ハイエルフの先祖返りだった。寿命は2000年。そして、彼は言った。私も、同じ血を持っている可能性があると」
マルタの瞳が、少し揺れた。
「あなたが……ハイエルフの先祖返り……?」
「そうかもしれない。そして、子供たちも……魔力の不調は、器が育ちきっていない兆し。彼らも、先祖返りの可能性がある。特に、メデルは……命の言葉を持つ“調和者”かもしれないと」
マルタは、湯飲みをそっと置き、コクベックの手を握った。
「それで……あなたは、怖かったのね。自分が何者か分からなくなって、子供たちに何を伝えるべきか迷っていたのね」
コクベックは、目を伏せながら頷いた。
「私は、父として……夫として……この真実をどう伝えればいいのか、分からなかった。でも、今日……森で、決めたんだ。
私は、話す。あなたに。子供たちに。彼らが何者であるかを、そして――私が何者であるかを」
マルタは、彼の手をぎゅっと握り返した。
「ありがとう、話してくれて。あなたが誰であっても、私にとっては夫。子供達にとっては――大切なお父様よ。それに、あなたが選んだ“赦し”の道は、きっと再生に繋がる。私たちは、家族。一緒に歩いていきましょう」
コクベックは、初めて安堵の表情を浮かべた。
その瞳には、静かな光が宿っていた。
「ありがとう、マルタ。君の言葉が、私の心を救ってくれた。これからは、共に歩もう。家族の守り手として」
マルタは、コクベックの告白を静かに受け止めた後、しばらく沈黙していた。
暖炉の火が、二人の間に柔らかな光を灯している。
「あなたが……そんなに長く生きるかもしれないなんて、想像もしていなかったわ」
マルタは、湯飲みを両手で包みながら、ぽつりと呟いた。
「私も、まだ信じきれていない。けれど、キルとバルグの言葉を聞いて……ようやく、受け入れようと思えたんだ」
マルタは、そっとコクベックの手に触れた。
その手は、騎士として数多の戦場を越えてきた強さを持ちながら、今は静かに震えていた。
コクベックは、マルタの手を握り返した。
その瞳には、迷いが消え、静かな光が宿っていた。
「ありがとう、マルタ。」
マルタは、微笑みながら言った。
「それにしても……2000年も生きるかもしれないなんて、長いわね。途中で飽きられたら困るから、私も寿命を譲ってもらおうかしら」
コクベックは、思わず笑った。
「飽きるなんて、ありえない。君と過ごす時間なら、いくらでも欲しい。もし……君が望んでくれるなら…私の寿命を分けよう。君と、ずっと一緒にいたい…」
マルタは、少し照れながらも、真剣な瞳で頷いた。
「じゃあ、約束よ。どんな時も、隣にいて。子供たちが成長して、旅立っても――私たちは、共に見守る者でいましょう」
コクベックは、マルタの額にそっと口づけを落とした。
「約束だ。君と、共に生きる。命の記憶を、家族の絆を、未来へ繋げるために」
そして、暖炉の火が優しく揺れた。
それは、夫婦の絆が新たな光を灯した瞬間だった。
公爵館の朝。
まだ陽が昇りきらない時間、屋敷の廊下にはすでに軽やかな足音が響いていた。
「坊ちゃま、靴が左右逆ですぞ! ああ、またお嬢様が階段を飛び越えて――おっと、カップが宙を舞っております!」
リバルセルマーズ執事は、まるで舞踏会のダンサーのように軽やかに動きながら、次々と家族の“朝の事件”を処理していた。
「ふふふ、今日も平和ですねぇ……いや、平和とは言い難いですが、活気があるのは良いことです」
その背後から、重厚な足音が響いた。
「リバル、朝から騒がしいのう。わしの静かな引退生活が、また遠のいておるわい」
現れたのは、リムリムマーズ。
白髪をきっちり結び、杖をつきながらも背筋はぴんと伸びている。
彼は公爵家の元執事であり、現在は領地の森の奥に巨大なログハウスがある道の手前にの真ん中にある小屋に住み、門番として君臨している。
「父上、今朝は早いですね。ログハウスの霧が晴れたのでしょうか?」
「霧が晴れたから来たのではない。森の住人様が外に出られたので来たのじゃ、様わからんが明日コクベック様が来られるとからと買い出しに出られてのぉ。
丁度、王都に来られるとの事なんで、一緒に移転していただいた。お前がまた“公爵家の動きをすべて把握している”などと吹聴しておるか、確認に来たのじゃ(笑)」
リバルセルマーズは、にこりと笑った。
「事実ですから。昨日の夕食、誰が何を残したかまで記録しております。ちなみに、コクベック様はニンジンを三切れ残されました」
「……それは把握しすぎじゃろう」
その時、廊下の奥からメデルの声が響いた。
「リバルせるまーずー! おはようー!」
「おはようございます、メデル様。今日も魔力が輝いておりますね。ですが、浮いてはいけませんよ。お母様に叱られます」
「うん……ちょっとだけなら……」
「ちょっとだけでも、浮いてはいけません。昨日は天井に頭をぶつけておられましたから」
リムリムマーズがくすりと笑った。
「メデル様は、わしが若い頃の同級の精霊使い様に似ておる。あの者も、よく空を飛んでおったわい」
リバルセルマーズは、父に向かって小声で囁いた。
「父上、…同級生の精霊使いは、確か“飛びすぎて雲に住み始めた”と記録にありますが……」
「うむ。だから、メデル様には地に足をつけて生きてほしいのう」
その言葉に、メデルがにっこり笑った。
「じゃあ、今日は地面と仲良くする!」
「それは素晴らしいお言葉です、メデル様。では、朝食の席へご案内いたしましょう。ちなみに、今朝のメニューは――」
「パンケーキ! 知ってる!」
「さすがです。家族の動きだけでなく、厨房の動きまで把握しておられるとは……将来有望ですな」
メデルは手を伸ばしてリムリムマーズに言った。
「一緒に朝食食べよう!」
リムリムマーズは、満足げに頷いた。
「うむ。もうわしは執事ではなく。じーじだからな!孫との食事!前公爵様も悔しいじゃろなぁ~(笑)」
メデルは椅子にちょこんと座り、目を輝かせていた。
「パンケーキ! パンケーキ! 今日は三枚食べる!」
リバルセルマーズは、すかさずメモ帳を取り出した。
「メデル様、昨日は二枚半でございました。三枚となると、魔力消費量が約1.2倍になりますので、午前中の浮遊は控えめにお願いいたします」
「えー! パンケーキ食べたら浮きたくなるのに!」
「それが問題なのです、メデル様。浮遊と糖分の相関関係は、昨年の魔力日誌にも記録されております」
リムリムマーズが、ゆっくりと席に着きながら言った。
「リバルよ、お前の記録はもはや魔導書じゃな。パンケーキと浮遊の関係まで記しておるとは……」
「父上、記録は執事の命です。ちなみに、エリザマール様は昨日、パンケーキを一枚半残されました。理由は“気分”とのことです」
「気分まで記録するな!」
リムリムマーズは、パンケーキを一口食べながら呟いた。
「うむ……焦げているなぁ、これは“冒険”じゃな。わしの歯が試されておる」
メデルは、もぐもぐと食べながら言った。
「でも、おいしいよ! 焦げても、パンケーキはパンケーキ!」
リバルセルマーズは、メデルの言葉をメモしながら微笑んだ。
「“焦げても、パンケーキはパンケーキ”……名言ですな。家訓に加えてもよろしいかと」
リムリムマーズが、ふと真顔になった。
「ところでリバルよ、昨日の夜、誰が冷蔵庫のプリンを食べたか、記録しておるか?」
リバルセルマーズは、すっとメモ帳を開いた。
「はい。22時13分、ブランデット様が“夢遊状態”で冷蔵庫を開け、プリンを一口召し上がりました。その後、“夢の中でプリンと会話した”と記録されております・・・多分カーロ様かと...」
「……夢でプリンと会話……?」
メデルは、目を輝かせた。
「すごい! 僕もプリンと話したい!」
「メデル様、それは魔力の安定と睡眠の質が関係しております。今夜は“プリンとの対話”を目標に、睡眠計画を立てましょう」
リムリムマーズは、パンケーキを食べ終えながら、満足げに言った。
「うむ。今日も公爵家は、今日も元気じゃ。」
その時、リムリムマーズに風が囁いた。
「帰られた様だ。わしも、また森へ戻るとしよう。霧が濃くなる前にな」
「お気をつけて、父上。門番の務め、よろしくお願いいたします」
「任せておけ。誰も通さん。特に、怪しい魔力の者はな」
そして、リムリムマーズはゆっくりと歩き去っていった。
その背中には、長年の知恵と家族への深い愛が滲んでいた。
リバルセルマーズは、メデルの手を取りながら、にこりと笑った。
「さあ、今日も始まりました。公爵家の一日。魔力と笑顔と、ちょっとした騒動を添えて――」




