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僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


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⑪メデルのある日の一日

お父様と

メデル三歳の僕は、ようやく魔力が落ち着いて、大好きな家族と一緒に暮らせるようになったんだ。僕はメデル。ちょっと前までは、魔力の不安定さで領地の神殿で過ごすことが多かったから、こうして皆と過ごせる時間が本当に嬉しいんだ。


ある日、コルベック伯父様がお出かけするから、お父様がお仕事がお休みになったみたい。朝、お父様が楽しそうに玄関を出ようとしたら、ハクリス兄様、ミディットレース兄様、ブランデット兄様と僕がばったり!


「やあ、みんな!今日は特別だ。お父様と秘密の畑仕事に行かないか?」とお父様がニヤリ。


「畑仕事?でも、公爵館に畑なんてありましたっけ?僕が知る限りでは…」とハクリス兄様が首を傾げると、お父様は僕たちにウィンクして、「これは内緒の冒険さ。秘密を守れるか?」って。


僕たちは胸を張って、「はい!」と大きな声で答えたよ。「もちろん、秘密は守ります!」ってブランデット兄様も力強く頷いた。お父様は満足そうに笑って、声をひそめて教えてくれたんだ。


「実はな、公爵様の目を盗んで、裏庭のずっと奥に小さな通用門があるんだ。そこを出ると広大な平原が広がっていて、その先に王都を囲む城壁があるだろ?その壁にもうひとつ隠された門があってな、その向こうの森の中に、知る人ぞ知る秘密の畑があるのさ!」


「お父様ー!それ、言っちゃ駄目なやつだよー!」って、みんなで突っ込んだら、お父様は「しーっ、しーっ」って、指を口に当てて、悪戯っぽく笑っていた。僕たちも笑いながら、でも心の中ではワクワクが止まらなかった。


結局、みんなで秘密の畑へ向かって一時間ほど歩いたかな。公爵家の敷地の外れ、城壁に近づいたところで、庭師のトムがいたんだ!


「トム、こんなところで何してるんですか?」とミディットレース兄様が尋ねると、お父様は苦笑いしながら、「いや、トムははじめに出る時に偶然会ってしまってな。秘密を共有する代わりに、畑の手伝いを頼んでいるんだよ。もちろん、採れた作物はきっちり分けているさ。トムも美味しい野菜が食べられると喜んでくれてね。」と説明した。


※執事のリバルセルマーズが気付き庭師のトム(トーマスだけど)に補助を命じた様だ(笑)リバルはお父様の行動を全てお見通!



公爵館の敷地と外部を隔てる閉門は、トムには開けられないみたいだったけど、僕たちが試しに触れてみたら、なんと簡単に開いたんだ!驚きだったよ。門の外は、お父様の言った通り、見渡す限りの平原が広がっていた。そこにはビッグラビットやバールマウス、プールドッグといったEランクの魔物がいるらしい。


さらに二時間ほど歩いて、王都の外壁にある閉門にたどり着いた時には、もうヘトヘトだったよ。門のそばには四人の兵士が立っていて、お父様を見つけると、一斉に敬礼したんだ。


「赤魔法騎士団長、おはようございます!」


「えっ?!団長?!」僕たちきょうだいは、みんなで声を上げた。お父様が?騎士団長だったなんて!騎士団といえば、国を守る精鋭部隊のことで、赤いシンボルカラーの「紅蓮の獅子王団」なんかが特に有名だね。他にも様々な魔法騎士団があるけれど??じーーお父様じゃぁないね!(笑)お父様は陽気に笑って、「ははは、今はもう辞めたから元団長だよ。元ね!」と言いながら、兵士たちに「今日もここを通っても良いかね?」と尋ね、門の取っ手を指差したんだ。


兵士の一人が、慣れた様子で答えた。「はっ!毎度のことながら、復唱をお願いいたします、団長!」別の兵士も頷いた。「いつものことですので、ご安心を!」


お父様は、厳かな顔で呪文を唱え始めた。


「『我なんじを癒し、穢れを払い、偽りを食む影を持ち、知を恐れず、破壊の業火を識り、雷光の矢を身に込め、大地の祈りとなる』」


呪文を唱え終えると同時に、お父様は閉まったままの門に近づき、まるでそこに何もないかのように、すり抜けちゃったんだ!


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」って、僕たちは目が点になったよ。ブランデット兄様が「信じられない…魔法で門を消したんですか?!」と声を震わせた。


お父様は、最高の笑顔でこちらに戻ってきて、「さあ、みんなもやってごらん!トムは通れないけど、私と手をつなげば通れるからな!」って言った。


すると、先ほどの兵士さんが、にこやかに「ココには私しか門は通れる者がないのですが、私と手をつないでも、誰も通れませんでした(苦笑)」とぼそっと答えたんだ。「今のところ団長専用の通り道ですから!」と付け加える兵士もいた。まるでコントみたいで、みんなで笑ってしまった。


まずはハクリス兄様が、恐る恐る手をかざして門を通り抜けた!「おおっ、本当に通り抜けられる!」とハクリス兄様も驚いている。次にミディットレース兄様も続いて、スルリと門の向こうへ。「僕もだ!すごい!」とミディットレース兄様も興奮気味だった。そしてブランデット兄様の番になった時、「よし、僕も!」と意気込んで門に手を伸ばそうとしたその瞬間、なぜかメデルは門に呼ばれたような気がして、手を触れてみたんだ。すると、メデルもスカーンと、門を通り抜けてしまった!


「え、僕?!なんで?」ブランデット兄様もびっくりして「メデルが先に…!」と目を丸くしていた。メデルは呪文を唱えていないのに、なぜ通れたのだろう?みんな一度塀内に戻っていたから、メデル一人になってしまった。メデルは「えーぇぇぇぇ」と急いで閉門を叩いた。Σ(・□・;)「どうしよう!」とパニックになりかけたメデルを、慌ててお父様が抱っこしてくれた。(涙)


帰る時は通るぞって思いながら、くぐると通れるぞってお父様が教えてくれたけど僕まだ唱和してないよー??(困惑だよー)??


一度みんなのところに戻り、お父様は兵士に「ちょっとこのことは秘密で頼む…」と小声で言った。兵士たちは少し戸惑いながらも「はっ!」と答えた。まるで兵士たちもお父様の子どもであるメデルのことは特別だと心得ているようだった。


お父様は「じゃぁ行ってくる〜」と明るく言い、今度はメデルを抱っこしたまま、みんなで呪文を唱え、トムと手を繋いで閉門を通り抜けた。お兄様たちは戸惑いながらも、森の中へお父様と一緒に進んでいった。僕はお父様の腕の中...疲れてしまった。


お父様は心の中で思っていた。「…やはりメデルは...なのか?」。


森の中を歩いていると、さすがのブランデット兄様も疲れてきた。その時、お父様がお兄様たちとトムに手を繋ぐように言った。お父様はメデルを支えていた手を離し、両手でトムとハクリスお兄様と繋いだ。メデルはお父様に自分で抱きついて、落ちないようにしっかり捕まったんだ。


お父様が呪文を唱える


『時空の縛を解き放ち、我を導かん、望む場所へ瞬時に至れ、光速の翼を借りて望む地へ』


周りの空気と気配が変わり、眩しい光が差し込み、浮遊感がした。何か膜のような感じがする場所に入ったと思うと、先程とは全く違う拓けた畑にいたんだ。「え?移動魔法?」メデルが驚きの声を上げると、お父様は笑いながら「いや、移転魔法だよー」と言った。


お兄様たちとメデルは、その言葉に目を丸くして、驚きを隠せない。「移転魔法?!」ハクリス兄様が思わず声を上げた。ミディットレース兄様も「瞬間移動ってことですか?!」と興奮気味に尋ねる。お父様はニヤリと笑って、胸を張った。「その通り!みんな、すごいだろ?」


お父様は、ここまでの道のりを振り返った。「実はな、普段ここに来る時は家の庭から閉門までは普段は『筋力強化』の魔法を使って、ものの10分くらいで着くんだ。で、外閉門からは森を抜けて、こうして一瞬で畑まで飛んでくる。いつもはね、この移転魔法でサッと来てるのさ」


ブランデット兄様が信じられないといった様子で口を開いた。「じゃあ、今日は僕たちと歩いてたから、あんなに時間がかかったんですか…?」


お父様は優しく頷いた。「そうだよ。今日はみんなで散歩がしたかったからな!、でも、みんなもよく頑張ったな!」


お父様は周りを見回し、「さてと、一応ちょっとは畑仕事するけど、もう時間も時間だし、みんな疲れただろう?休んでなさい。」と言った。すると、お父様は地面に手をかざし、ぶつぶつと呪文を唱え始めた。「『大地の息吹よ、形を成せ。堅固なる座を築き、疲労を癒す憩いとなれ』」


メデルたちが目を凝らしてみると、地面からごつごつとした土が盛り上がり始め、みるみるうちにしっかりとしたテーブルと椅子が数脚、目の前に現れた!「わぁ!」メデルは思わず手を叩いた。ブランデット兄様も「土魔法でこんなものが作れるなんて!」と感嘆の声を漏らした。


お父様は満足げにうなずき、「さあ、みんな座って休憩だ。疲れた体には甘いものが一番だからな」と言って、トムがどこからともなく取り出したお茶とお菓子をテーブルに並べた。温かいお茶の香りが畑に広がり、メデルたちは土でできた椅子に座って、甘いお菓子に舌鼓を打った。


「お父様、これって…本当にいつもこうしてるんですか?」ハクリス兄様が尋ねると、お父様は「ん?ああ、秘密の畑仕事はな。たまにはこうしてのんびりするのもいいだろう?」と笑った。メデルは、お父様の隣で温かいお茶を飲みながら、この不思議で楽しい一日を心に刻んでいた。


※※※


お母様と

朝の光が公爵館の廊下を優しく照らす頃、僕――メデルは、兄たちと一緒にふらりと歩いていた。

ハクリス兄様が「今日は何か面白いことあるかな?」と呟き、ミディットレース兄様が「昨日の魔法調整、ちょっと疲れたから、今日はのんびりしたいな」と返す。

ブランデット兄様は、僕の手を握りながら「メデル、今日はどこに行きたい?」と聞いてくれた。

その時、ふわりと薬草の香りが漂ってきて、振り向くと――お母様がいた。

「まあ!あなたたち、朝から元気ね。今日はお父様じゃなくて、お母様と一緒にどう?」


お母様の笑顔は、いつもあったかくて、でもどこか遠くに感じることもあった。

神殿でのお仕事が忙しくて、僕が神殿にいた頃は、なかなか一緒に過ごせなかったから。

「……いく!」

僕は、はっきり言った。

お母様は、僕の頭を優しく撫でてくれた。

「じゃあ、今日は特別な見学の日ね。お母様の職場、見せてあげる」


神殿治療院の朝

神殿の治療院は、静かな緊張感と温かな気配が混ざり合った場所だった。

白い石造りの壁、薬草の香り、魔力の流れが整えられた空間。

治療師たちが忙しく動きながらも、患者に優しく声をかけている。

「ここが、私の職場よ。命と心を癒す場所」

お母様は、薬草棚の前に立ち、手際よく調合を始めた。

「緑の薬草は炎症を抑える。赤い薬草は血の巡りを良くする。混ぜると、傷薬になるの」

ハクリス兄様が目を輝かせて言った。

「お母様、まるで魔法使いみたいだ!」

ミディットレース兄様が頷く。

「僕も、調合してみたいな……」

ブランデット兄様が紫草薬草を見つけて、ぽつりと呟いた。

「これ……お父様の畑にあったような……」

ハクリス兄様が小声で言った。

「ユーリンソウだよね?魔力調整に使えるって……」

ミディットレース兄様が「ちょっとだけ分けてもらえないかな」と言った瞬間――

「え?どういうこと?」

お母様の笑顔が、少し怖かった。

「ユーリンソウは、神殿でも手に入らない貴重な薬草よ。……お父様の は た け に?」

僕は、兄たちの顔を見て、そっとカーロに話しかけた。「お母様、怒ってる?」

僕の心の中にそっと囁いた。

『怒ってるんじゃないよ。びっくりしてるだけ。お母様は、みんなのことが大事だから』

僕は、少し安心して、お母様の手を握った。


治療の現場

突然、怪我をした冒険者が運び込まれてきた。

お母様はすぐに駆け寄り、優しく声をかける。

「大丈夫よ。すぐに良くなるからね。安心して」

その声だけで、冒険者の表情が和らいでいくのが分かった。

ミディットレース兄様がぽつりと言った。

「お母様って……本当にすごい。人の痛みを、言葉で癒してる」

ハクリス兄様も頷いた。

「僕も、あんなふうになりたい」

近くの治療師さんが「はぁ……疲れた」と呟いたのを聞いて、ミディットレース兄様がひそひそと話す。

「メデルがやってたみたいに、全体にサーチして、悪いところだけヒールすれば、もっと効率的かも」

ブランデット兄様がまた大声で言った。

「それ、いいアイデアだね!」

僕も「うん、そうだね!」と答えてしまった。

お母様は、またにこにこしながら言った。

「……それも、お父様とコルベック兄様に“相談”してみるわね」

やっぱり、ちょっと怖かったです。


緊急事態とメデルの言葉

午後、神殿に鐘の音が響いた。

緊急搬送された冒険者が、泥だらけで運び込まれてきた。

お母様はすぐに駆けつけ、治療師たちに指示を出す。

「落ち着いて!まずは清潔にして、傷の確認を!」

僕は、咄嗟に言葉が浮かんで、口にしてしまった。

「我なんじを癒し、光と水に願う身の清潔を日に祈る」

すると、患者さんの体が光に包まれて、泥がすべて消えた。

お母様は、同僚に小声で言った。

「……このことは、ちょっと“秘密”にしておいてね」

その笑顔が、またちょっと怖かったです。

でも、治療が終わった後、お母様は僕の頭を撫でてくれた。

「メデル、ありがとう。あなたの言葉は、魔法になってるのね」

僕は、胸がぽかぽかして、涙が出そうになった。

「……ぼく、がんばったです」

カーロが、僕の心にそっと囁いた。

『メデル……それが“癒し”の力だよ。言葉で、心を繋ぐんだよ』


帰り道

夕暮れの神殿を後にして、僕たちはお母様と一緒に家に帰った。

お母様の仕事は、たくさんの人を助ける、すごく大変で、すごく優しいお仕事だった。

ハクリス兄様が言った。

「お母様って、ほんとにすごい。僕も、あんなふうになりたい」

ミディットレース兄様も頷いた。

「うん。人を癒すって、かっこいいね」

ブランデット兄様は、少し考えてから言った。

「でも……お母様の“相談”って、ちょっと怖いかも」

僕は笑いながら言った。

「でも、ぼく、お母様のこと……だいすき!」

お母様は、僕たちをぎゅっと抱きしめてくれた。

「ありがとう。みんながいてくれるから、私は頑張れるのよ」

その言葉に、僕たちはみんな、心がぽかぽかになった。

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