⑩言葉の魔法――契約の兆し
神殿の庭、
朝の光が神殿の庭に差し込む。
メデルは、グラウス師と並んで立っていた。兄弟姉妹たちが静かに見守る中、メデルは深呼吸をし、目を閉じる。
「グラウス師……もう、ちゃんと話せるようになったです。……ことば、ふつうになったでしゅ...」
メデルは少し照れながら言い直す。
「……なったです」
グラウスは微笑みながら頷いた。
「君の言葉は、もう“魔法”になっている。さあ、心を込めて」
メデルは、両手を胸に当てて、静かに言った。
「やすらぎ……あたたかさ……つながる……癒しの言葉、届けます」
その瞬間、風が巻き起こり、聖獣幼体たちが一斉に光を放った。
白虎、朱雀、玄武、青竜、白蛇、翠鳥――六体がメデルの周囲に集まり、円を描くように舞った。
「これは……!」
グラウスは息を呑んだ。
「聖獣たちが……契約の兆しを示している……!」
メデルの言葉が、風に乗って庭全体に響き渡る。
「みんな……まもってくれる……ぼくも……まもる。命を、心を、つなぐために」
聖獣たちは、メデルの言葉に応えるように、彼の手にそれぞれの紋章を刻んだ。
その光は、虹のように空へと広がり、神殿の精霊石が一斉に共鳴した。
兄弟姉妹たちは息を呑み、ミディットレースがぽつりと呟いた。
「メデル……すごいよ……言葉が、魔法になってる……」
エリザマールは目を潤ませながら言った。
「こんな魔法、見たことない……これが、調和者の力……」
メデルの新たな力の目覚め
その夜、メデルは夢の中で光の中に立っていた。
六つの紋章が空に浮かび、彼の胸に集まっていく。
「これは……ぼくの……ちから……?」
空から、優しくも力強い声が響いた。
「言葉は、命を繋ぐ。君の言葉は、世界を癒す鍵となる。だが、癒しだけでは足りない。君は、導く者となる」
メデルの体から、虹のような魔力が広がり、神殿の古代魔法陣が淡く光り始める。
グラウスはその光景を見て、震える声で呟いた。
「これは……“調和者”の覚醒……!言葉による魔法が、空間と命を繋いでいる……!」
メデルは目を開け、静かに言った。
「ぼく……みんなの“こころ”が、わかるようになったです……」
――
神殿の門前
朝の光が石畳に差し込み、風が静かに吹き抜ける。
二人の長身の少年少女が、並んで立っていた。
テラ・スボルト・キャルロットスボルト・フラクシス・ドン・ルト・ルビール・ルクセル。
テラ・スボルト・キャルロットスボルト・フラクシス・ドン・ルト・ルビール・リクセル。
帝国皇太子ベルセルの“子”とされる双子――だが、彼らはその事実の裏にある真実を知っていた。
ルクセルは、神殿を見上げながら静かに言った。
「ここが……神殿。聖女様がいる場所。僕は……ここで、自分を見つけたい」
リクセルは、隣に立ち、目を細める。
「ルクセルが神殿に入りたいなら、私は王になる。兄の道を守るために。……でも、私たち、本当は……」
ルクセルは、少し苦笑した。
「ベルセル皇太子の子じゃない。母と祖父の子。……知ってる。でも、誰にも言えない。言ったら、僕たち……消されるかもしれない」
リクセルは、声を低くして言った。
「母は、祖父と交わることで老化を遅らせてる。祖父は、マルの血結晶(ハイエルフの血)を飲んで若さを保ってる。……でも、城を出ると老化が進む。あれは……呪いだよ」
「現王妃は、マルを死なせたことで王の怒りを買った。今は体調不良って言われてるけど……」
ルクセルは、拳を握りしめた。
「僕たちは、魔力を母に封じられてる。何もできない。何も守れない。でも……神殿なら、何かが変わるかもしれない。ヴェルメールの弟メデルって子に、会ってみたい」
リクセルは、兄の横顔を見つめながら、静かに言った。
「兄は、ずっと“自分”を探してた。でも、私は……兄のために“王”になるって決めた。誰かが、守らなきゃいけないから」
ルクセルは、目を伏せて言った。
「リクセル……君は、いつも僕のために何かを背負おうとする。でも、僕は……君も自由でいてほしい。僕たちは、誰かの“影”じゃない。自分の“光”を見つけたい」
リクセルは、少しだけ微笑んだ。
「……じゃあ、神殿で一緒に探そう。私たちの“光”を」
その時、神殿の門が静かに開いた。
神官が現れ、二人を見つめていた。
「ようこそ、神殿へ。君たちの心に、癒しと真実が届くことを願っている」
リクセルは、神官を見つめて言った。
「私たち……本当の“自分”を知りたいんです。神殿で、それを見つけられますか?」
神官は静かに頷いた。
「それを見つけるために、ここはある。君たちが“言葉”を持つ時、神も応えてくれるだろう」
ルクセルは、静かに言った。
「じゃあ……僕たちも、聖女様のように“言葉”を探します。心の奥にある、本当の声を」
神官は、二人に手を差し伸べながら言った。
「その声は、必ず貴方たちの中にある。...封じられた魔力も、閉ざされた心も、言葉によって開かれる。さあ、神殿へ」
双子は、ゆっくりと門をくぐった。
その背に、まだ見ぬ聖獣の気配が、静かに寄り添っていた
――
王都神殿の奥庭。
夕暮れの光が木々の間から差し込み、風が静かに葉を揺らしていた。
メデルは感じた。
「感じたか、メデル。あの気配は、双子の子らに宿る聖獣の残響だ。封印されているが、君の魔力はそれを越えて届くのだな」
グラウス師は諭す様に言った。
メデルはゆっくりと歩を進め、庭の奥に佇む二人の子供に近づいた。ルクセルとリクセル。13歳の双子。
どこか怯えたような瞳で、メデルを見つめていた。
「こんにちは。ぼく、メデル。……きみたちの中に、光がいる。聖獣の光。怖くないよ。ぼく、話せるから(∩´∀`)∩」
ルクセルが眉をひそめる。
「聖獣って……夢の中で、声が聞こえたことがある。でも、誰にも言えなかった」
リクセルがそっと兄の袖を握る。
「……わたしも。あったかい声。でも、すぐ消えちゃった」
メデルは微笑む。
「それ、ほんとうに聖獣の声だよ。きみたちの中に、ずっといる。封印されてるだけで、消えてないよ」
――
神殿の聖堂。
天井のステンドグラスから差し込む光が、静かに揺れていた。
グラウス師は双子の前に立ち、両手を掲げる。
「この子らにかけられし封印は、母の魔力によるもの。だが、聖獣の加護がある限り、真の力は眠り続けることはない。今、導きの者の前で、その封印を解く」
メデルは双子の手を握り、そっと囁いた。
「怖くないよ。ぼくがいるから。聖獣たちも、きみたちを待ってる」
グラウス師が詠唱を始めると、空気が震え、聖堂の中心に淡い光が集まり始める。双子の胸元から、封印の魔力がゆっくりとほどけていく。
ルクセルが息を呑む。
「……胸が、熱い……」
リクセルが目を閉じる。
「でも、痛くない。……懐かしい感じ」
メデルは静かに言った。
「それが、聖獣の光。きみたちの心に、ずっと寄り添ってたんだよ」
封印が解かれた瞬間、聖堂の空気が変わった。白虎の気配がルクセルに寄り添い、朱雀の羽音がリクセルの周囲に舞う。
白虎の声が響く。
「ルクセルよ。お前の心は、剣のようにまっすぐだ。だが、折れぬように、しなやかさを持て。怒りではなく、守るために剣を振るえ」
ルクセルは震える声で答える。
「……ぼく、誰かを守りたい。でも、怖くて……」
「恐れは力となる。だが、導く者の光を忘れるな」
朱雀の声がリクセルに届く。
「リクセルよ。お前の声は、風のように優しい。だが、迷わぬように、芯を持て。癒しは、揺るがぬ意志から生まれる」
リクセルは涙を浮かべながら言った。
「わたし、誰かの役に立ちたい。でも、どうしていいかわからなかった」
「その迷いを、導く者が照らす。信じよ、己の心を」
メデルは二人の手を握りながら、静かに言った。
「大丈夫。きみたちの中に、ちゃんといる。ずっと、守ってくれてたんだよ。これからは、ぼくと一緒に歩こう」
儀式の後、双子は疲れた様子で座り込んでいた。メデルはそっと近づき、両手を彼らの背に添えた。
「だいじょうぶ。ぼくの魔力は、“癒し”の言葉になる。きみたちの心に、届くように話すね」
メデルは静かに語りかける。
「きみたちは、ずっとがんばってた。誰にも言えないこと、たくさんあったよね。でも、もう一人じゃない。ぼくがいる。聖獣たちもいる。だから、安心していいよ」
光がメデルの手から広がり、双子の体を包む。彼らの表情が、少しずつ柔らかくなっていく。
ルクセルがぽつりと呟く。
「……あったかい……胸の奥が、ほどけていくみたい」
リクセルが涙を流す。
「……こわかった。でも、今は……泣いてもいい?」
メデルは優しく頷いた。
「泣いてもいいよ。泣いたら、心が軽くなるから。ぼくが、ここにいるから」
双子は静かに涙を流した。
「ありがとう、メデル……」
「ううん。ありがとうって言ってくれて、ぼくもうれしい。これからは、いっしょに歩こうね」
――
神殿応接室での話し合い
神殿の応接室には、重厚な静けさが漂っていた。
集まったのは、グラウス師、神官長、リュスクマテルテス神官、ベルセル王太子、そしてスワロ公爵。
双子は別室で休んでおり、この場にはいない。
神官長が口を開く。
「昨日の儀式により、双子の魔力封印は完全に解除されました。聖獣の加護も明確に確認され、彼らの存在は神殿にとっても、王家にとっても特異な意味を持ちます」
リュスクマテルテス神官が静かに頷く。
「彼らの魔力は、母によって封じられていたが、聖獣の力はそれを超えて宿っていた。今、彼らは目覚めの途上にある。導きと保護が必要だ」
ベルセル王太子は腕を組み、沈痛な面持ちで言った。
「……彼らは私の子だ。だが、城では彼らの存在が政治の火種になりかねない。王妃の件も未解決で、王父の意向も不透明だ。今、城に戻すのは危険すぎる」
スワロ公爵が静かに言葉を継ぐ。
「城の混乱が収まるまで、神殿での一時預かりが最善だ。ここならば、聖獣の加護のもと、魔力の安定と心の癒しが得られる。彼ら自身の安全も守られる」
グラウス師が頷く。
「神殿には、彼らを受け入れる準備がある。魔力の調整、聖獣との対話、心の安定。すべてを整えるには、ここが最も適している」
神官長が机に手を置き、重々しく言った。
「神殿として、双子を正式に一時預かりとすることに異論はありません。彼らの魔力は未成熟であり、聖獣との絆もまだ不安定です。導きと保護の期間が必要です」
ベルセル王太子はしばらく沈黙した後、静かに言った。
「……彼らを守るためなら、私は何でもする。だが、今は私がそばにいるより、神殿の方が安全だ。頼む、彼らを導いてやってくれ」
スワロ公爵が深く頷く。
「彼らはまだ若い。だが、聖獣に選ばれた者として、未来を担う存在だ。神殿での時間が、彼らの力と心を育てるだろう」
リュスクマテルテス神官が最後に言葉を添える。
「神殿は、彼らを迎え入れます。聖獣との絆を深め、魔力の安定を図る。城の混乱が収まるまで、ここが彼らの“家”となるでしょう」
神官長が立ち上がり、場を締めくくる。
「それでは、神殿として正式に受け入れの手続きを進めましょう。双子の未来のために、今できる最善を尽くしましょう」
――
王の間間、
その頃、王は謁見室の玉座に腰掛け、静かに書簡を読んでいた。
窓から差し込む光は薄く、部屋の空気は冷たく張り詰めている。
側近が報告を終えると、王は書簡を閉じ、短く言った。
「双子は神殿に預けたか。よい。あの王太子妃の手元に置いておけば、いずれ破滅する」
その声には、感情の起伏は一切なかった。
ただ、冷たい事実の確認にすぎない。
側近は慎重に言葉を選びながら進言する。
「妃殿下は、城の魔力減少を非常に気にされております。王家の魔力維持に不安があると……」
王は、書簡を机に置き、冷ややかな目で側近を見た。
「聖女の血が必要だ。だが、王太子妃はあれはもう“器”として限界だ。新たな聖女を探す。それが王家の未来だ」
「妃殿下は……?」
「王太子妃は、過去の象徴にすぎん。魔力が吸収できようと、心が壊れていては王家を支えられぬ。双子が聖獣に選ばれたなら、彼らこそが未来だ」
側近は一瞬、言葉を失ったが、意を決して尋ねる。
「聖女の候補は……?」
王は立ち上がり、窓の外を見つめながら答えた。
「神殿にいる。マルの血を継ぐ者――我が義弟、リュスクマテルテスが、まだ目覚めていないだけだ。導きの者の神託が下りた今、時は近い」
その声には、確信と焦燥が混じっていた。
王は、若さに執着していた。
老いを嫌悪し、血結晶によって魔力と若さを維持してきた。
だが、その結晶も、残りわずか。
彼の瞳は、窓の外に広がる神殿の塔を見つめながら、過去の幻影を映していた。
――マル。
かつて我を魅了したハイエルフ。
前王の妃でありながら、地下聖樹の間に居た彼女。
父王の退位に伴い、王家の魔力管理を任された王は、地下聖樹の間の管理を引き継ぎ、そこで眠るマルと出会った。
聖樹の間の“たまご”に魔力を注ぐと、彼女も一定期間眠りにつき、その間、城に彼女の魔力が満ちる。
その仕組みを知った王は、彼女の魔力に魅了された。
運よく、魔術師団の中に研究熱心な者がいた。
凍結・移動魔法の紋章を組み合わせ、血結晶を生成する術を編み出した。
我は、マルが眠っている間にその紋章を彼女の腕の裏に刻印し、血結晶を自らの机の壺に流れ込むようにした。
それは、王家の魔力を私物化する行為だったが...愚かにも王妃は、前王から渡された薬品をマルに使い、彼女を“処理”した。
前王は、自らの死期を悟り、マルと共に逝くことを望んでいた。
彼女が処理された後、城の魔力が激減したため、我はマルの血結晶を飲み、30歳ほど若返った。
だが、我から出る魔力は、出るだけで留まることはなく、城に定着しない。我は老いを恐れ、若さに執着するようになった。魔力を城に維持するために、王太子妃を“器”として選び、代償として交わった。
しかし、彼女の魔力はマルの残滓にすぎず、王の若さを完全には保てず、徐々に老化は始まっている。
「王太子妃は終わる。あれは“代償”として我と交わることで、我のマルの魔力――血結晶から得る力を取り込み、魔力量と老いを止めていることに執着し始めている。ちょうど良い……処理の時期だ」
王の目は、冷たく光っていた。
慈悲も、情も、そこにはなかった。
あるのは、若さへの執念と、老いへの恐怖。
「マルの血を継ぐ者――聖女の時代が始まる。血結晶が尽きる前に、紋章の刻印もリュスクマテルテスにせねばならん。目覚めさせねばならぬな……」
王は、静かに呟いた。
その声は、未来への希望ではなく、支配と継承への執念に満ちていた。
――老いは、王にとって死よりも恐ろしい。
若さこそが王座の資格。
その信念が、王家を蝕み続けていた。
――老侍女ミルディアの視点
お嬢の奥、
月影の間は、かつて静養のために設けられた部屋。
今では、王太子妃の怒りと執着が渦巻く牢獄のような空間となっていた。
香炉の煙は乱れ、絹のクッションは床に散乱し、砕けた水晶盤の破片が光を反射している。
ミルディアは、壁際に控えながら、荒れ狂う王太子妃を見つめていた。
その姿は、かつて王城に初めて足を踏み入れた日の彼女とはまるで別人だった。
――あの方は、まだ囚われている。
王太子妃(当時は公爵令嬢)は、幼き頃から十歳年下の王太子に執着していた。
恋ではない。
彼女が見ていたのは、王太子ではなく「王家」だった。
王太子妃になることだけを夢見て、異様なまでに王家に執着していた。
ミルディアは、あの日のことを思い出す。
王太子がまだ少年だった頃、彼女はすでに魔力の素質を見込まれ、王家の「未来の妃候補」として育てられていた。
王太子が剣術に励む姿を、遠くから見つめていた彼女。
その瞳には、憧れではなく、渇望が宿っていた。
「王太子は私を見ていない!!彼奴と出会ってからすべてがおかしくなった!私が王太子妃!私が王妃になるのよ!!」
“彼奴”――スワロ公爵。
当時はまだ公爵家の息子だった。
王太子が彼と再会してから、王太子妃の焦りは加速した。
王太子がコルベック様と語らう時の柔らかな表情。
それは、王太子妃がどれほど尽くしても見せたことのない顔だった。
「私の魔力は、あの女の“残りかす”だったのよ……! 誰も教えてくれなかった……!」
ミルディアは、静かに目を伏せた。
あの女――マル。
かつて前王に求められ、王妃となるはずだったハイエルフ。
だが、帝国の陰謀によって容姿を変えられ、処理された。
王太子妃は、王家に属する魔力を得るため、城に滞在していた。
普通の人間では吸収できない魔力を、彼女は吸収できた。
それが、彼女の“選ばれし者”としての証だった。
マルが去り、魔力吸収ができなくなった時――王と王太子妃は、ある“代償”を選んだ。
それは、王妃になるための代償。
王太子妃は、自らその道を選んだ。
「双子からも魔力を吸収できる様になったのに……! なのに、神殿に閉じ込めるなんて……!
聖獣の加護? 魔力の目覚め? 何故!!封印していたのに!!あの子たちは私の“証”なのよ! 王家に属する唯一の証なのよ!」
ミルディアは、王太子妃の叫びに耳を傾けながら、心の中で呟いた。
――妃さま、あなたはまだ気づいていない。
王太子は、あなたを“妃”として迎えたのではなく、“義務”として受け入れたのです。
あなたは、王太子に心を捧げたのではなく、王家の闇に捕らわれてしまったのですね。
「私のものなのよ……あの子たちは……私の“証”なの……!」
その言葉に、ミルディアは静かに一歩前に出た。
老いた声で、しかし確かな響きを持って言葉を紡ぐ。
「妃さま……その“証”が、妃さまを縛っているのではありませんか。
王家の魔力は、血ではなく“心”に宿るもの。
王太子様が見ているのは、妃さまの魔力ではなく、“光”を持つ者です。」
王太子妃は、ミルディアを睨みつけた。
その目には、怒りと、そしてほんの一瞬、怯えが混じっていた。
「黙れ……! お前も、奴の手先なのね……!」
ミルディアは、ただ静かに頭を下げた。
その背には、長年王家に仕えてきた者の覚悟が宿っていた。
――妃さま、あなたが王妃になったその日から、王太子様の心は遠ざかっていたのです。
それでも、あなたは“王家”にしがみついた。
その執着が、今、双子をも縛ろうとしている。




