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僕はメデル〜" "にはなりません〜  作者: はるかかなえ


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①目覚め――神子

――音が、揺れていた。

耳の奥で、遠くの鐘のような振動が響き、意識の底に波紋を広げていく。目を開けると、ぼんやりとした光の中に、しわくちゃの顔が浮かんでいた。


「―――――――――――・・・」


何かを言っている。けれど、言葉が霧のように遠く、意味が掴めない。その顔は笑っていた。

優しく、懐かしいような笑みだった。でも、まぶたが重くて、また眠りに落ちた。


***

何度か目を覚ますうちに、少しずつ状況がわかってきた。僕は、公爵家の七人兄姉の末っ子、五男。

名前はメデル。体が弱く、魔力が安定しないため、領地の教会で療養している。三歳の誕生祭を終えたばかり。この教会には、すぐ上の兄達3人と一緒に先月から滞在しているらしい。けれど――


一番上のお兄様は、僕と同じく体が弱く、魔力が不安定。それでも、彼は嫡男としての責務があるため、静養には来られなかった。本来ならば、僕と一緒に療養していたはずなのに、彼は公爵家の未来を背負って、王都に残っている。そのことを思うと、胸が少しきゅっとなった。僕もいつかお兄姉達のように、強くなれるだろうか。


姉のエリザマールお姉様は10歳の時に騎士団に押しかけて(笑)団長様が情熱に負けて(毎日来るから面倒になり)仮団員!見習い団員の女の子はお姉様1人だけ(笑)普通は学園卒業後に入るらしい(笑)一応試験には通ってるらしい所属して2年、毎日鍛錬に励んでいる。


ハクリスお兄様と双子のココリス姉様は、今年のはじめに10歳で冒険ギルドで冒険者登録して採取活動や狩に夢中。まだ、半年もたっていないのに毎日採取や狩をしてDランクになったそうだよ(笑)ココリス姉様は「ハクリスの栄養を全部持ってる」と笑っていたらしい。元気すぎる姉様たちだ。


脳内変換ところ変わって今、僕の世話をしてくれているのは、教会の下働きの民――しわくちゃのばーちゃま。名前はマル。他所から来た人らしく、言葉が少し聞き取りにくい。でも、優しい。


***

「おはようございます、坊ちゃま。体調はどうですか?起きられますでしょうか」


初めて、はっきりとした言葉が耳に届いた。

僕は驚きながらも、頑張って返事をした。

「おはようごじゃいましゅ…ぼくはメデルでしゅ…よろしくおねがいしましゅ…」ぅぅぅ…噛んじゃった…赤面。マル婆ちゃまは笑って、僕を起こしてくれた。前掛けをつけられて、赤ちゃんみたいでちょっと恥ずかしい。


「今日は体調が良いようですね。坊ちゃまは小さいのに、我が儘も泣きもせず、たいへん立派でございます」


籠の中から、まだ温かい麦ミルク粥を取り出して、僕に食べさせてくれる。赤ちゃんみたいだから自分で食べると言いスプーンを持ってみたけど、重くて断念。_| ̄|○マル婆ちゃまが優しく口に運んでくれる。


「久しぶりの起きての食事ですから、よく噛んで、ゆっくり食べてくださいね」


****

すると、扉の向こうから小さなノックが三回。

「トントントン…」

メデルが目をぱちくりさせると、そ~っと開いた扉の隙間から、三つの顔が覗いた。


ハクリスお兄様は眉を下げて優しく微笑み、ミディットレースお兄様は腕を組んで真剣な顔、そしてブランデットお兄様は口を尖らせて何か言いたげだった。

「起きて大丈夫か?」

ハクお兄様がそっと声をかける。


「安心するのはまだ早い。ゆっくり休め」

レースお兄様が厳しい口調で言うが、目は心配そう。


「げっ!不味い飯また食べさせられてるのか…可哀そうに」デットお兄様が眉をひそめて言った。

その瞬間、デットの目がふと宙を見つめて双子の姉(出産時ブランデットと同化して誕生しなかったカーロ)と念話している。

《今の言い方ちょっとキツよ》

(え?、今の言い方ちょっとキツかった?)

《うん、ちょっと。でも、メデルは笑ってるから大丈夫。》

(そっか…了解)

三人が部屋に入ってくると、メデルは布団の中から顔を出して、にこにこしながら言った。

「お兄ちゃま達、おはようごじゃいましゅ…今日は体調が良いでしゅ…」

そして、デットお兄様の方を見て、ちょっといたずらっぽく笑った。

「デットお兄ちゃま、僕のご飯食べますたね(笑)」

デットお兄様は一瞬固まったが、すぐに笑って頭をかいた。

「ばれたか…だって、見た目は不味そうでも、意外と……不味かった(笑)」

《それ言っちゃうの?》

(だって、正直だろ?)

《でも・・・メデルは嬉しそうだから良いか。》

(へへへ…よかった(笑))


メデルは嬉しそうに小さく拍手して言った。「美味しいでしゅよ…たくしゃん嚙んじゃいましゅた…あ”」言い終わると、顔がぽっと赤くなり、布団に顔をうずめた。


マル婆ちゃまはその様子を見て、くすくす笑いながら言った。「坊ちゃまの食事は体力改善のためのものですから、美味しく感じるのはまだまだ本調子ではない証拠ですね(笑)」


***

会話がひと段落すると、マル婆ちゃまが少し真面目な顔になって言った。「この教会では、貴族の御方様が恵みをいただき、次に神官様、見習い神官様、平民、そして孤児や下民がいただくのです大変申し訳ございませんがお食事の・・・」


メデルは目を丸くしてびっくりしてマル婆ちゃまの会話にかぶせる様に話した。「えっ…そんな順番があるんでしゅか…」そして、急いで口を開けて叫んだ。「はやく食べましゅ!パッカ!」


その勢いに、兄たちも思わず笑った。

「…パッカって…可愛い…」

ハクお兄様が目を細める。

「確かに可愛いが…メデル、ゆっくりだぞ」

レースお兄様が優しく言う。

「お前、食べるのだけは元気だな」

デットお兄様が肩をすくめた。

《メデルの“パッカ”って、ほんと癒されるね》

(だな…カーロ、今度“パッカ”って言ってみてよ)

《えっ…わたしが?…どうやって?私がしたら!!デットが恥ずかしいよ…(笑)》

(おおおお!!じゃあ、俺が代わりに言う!)

《え!?・・・(恥ずかしくないんだー(笑))》

「パッカ!」

兄たちが一斉にデットを見た。

ハクお兄様は微笑みながら言った。

「カーロも元気そうだな」


***

ハクがカーロの声を“魔力の共鳴”と受け入れた時〜


ハクは、カーロの声を「精神の幻聴」ではなく、「魔力の共鳴」として理解していた。彼は魔力の流れを読むのが得意で、デットの周囲に時折現れる“青白い揺らぎ”に気づいていた。ある日、ハクは静かに言った。「カーロの声は、デットの魔力の中にある“記憶の波”だ。彼女の魂が完全に消えたわけじゃないんだ」デットが眠っている間、ハクはそっと手をかざし、魔力の流れを感じ取った事があった。

そこには、デットの魔力と重なるように、もう一つの優しい波があった。「これは…カーロの“想い”だ。彼女は、今もここにいる」ハクお兄様は少しだけ目を細めて、静かにうなずいた。「カーロの声、最近よく聞こえるようになったな」

私の可愛い妹・・


***

レースがカーロの存在に戸惑った過去〜


レースは、デットの「カーロが言ってる」と言う言葉を初めて聞いたとき、眉をひそめていた。それは、まだ神殿に来る前、タスク領の屋敷でのことだった。「カーロが…僕に話しかけてるんだ」

そう言ったデットの目は真剣だったが、レースは思わず言い返した。「お母様から双子の気配(魔力)がお腹の中で1つになりカーロと呼んでいた片割れは…もういないと言っていたはずだ。どうしてそんなことを…」その夜、レースは一人で屋敷の書庫にこもり、魂の同化や魔力融合に関する古文書を読み漁った。そして、ある一節に目を留めた。「双魂の宿りし者、片方が消えたとき、もう片方に記憶と感情が宿ることあり」レースはその時、初めて「カーロ」という存在を受け入れ始めた。それでも、今でも時折、カーロの声が聞こえるというデットの言葉に、いい意味で胸がざわつくことがある。

私の可愛い妹・・


***

メデルは目を輝かせて言った。

「カーロお姉ちゃまも、僕の“パッカ”好きでしゅか?」


デットは少し照れながら、頭の中で答えを聞いた。

《もちろん。メデルの“パッカ”は、世界で一番可愛いよ》

(…だってさ)

デットお兄様はふと目を閉じ、静かに耳を澄ませる。

《メデル、今日も元気でよかったね》

(カーロ…メデルに、直接言ってみる?)

《うん…でも、あなたの声を借りるね》

デットはそっとメデルのそばに膝をつき、優しく語りかけた。

「メデル、カーロお姉ちゃまが言ってるよ。『今日も元気でよかったね』って」

メデルはぱっと顔を輝かせた。

「ほんとでしゅか!?カーロお姉ちゃま、僕、いっぱい嚙んで食べたでしゅよ!」

デットは微笑みながら、心の中でカーロの笑い声を感じていた。

《ふふっ…メデルの“いっぱい嚙んだ”って、ほんと可愛い》

(だろ?)


***

食事を終え、外へ出る準備。

ハクお兄様が僕を抱っこして、レースお兄様は本を、デットお兄様は木の棒を持って、マル婆ちゃまは茣蓙と籠を持って「今日は朝に土の小人が来ましたので、畑で日向ぼっこしましょうねぇ~」と言いながら畑へ。


畑に茣蓙を広げ、僕はそっと寝かされる。太陽の光が背中にぽかぽかと降り注ぎ、土の温もりが体を包む。「しゃきほどまで怠くてだめだめでしゅたが、太陽しゃんと土しゃんに抱っこして貰うと“スー”としてとっても気持ち良いでしゅ♡」コロン♪コロン♪と転がりながら、魔力が体を巡るのを感じた。


***

そして、僕は太陽の光を体に取り込み、魔力を巡らせ、土に流すように放出した。

“えい♪”

その瞬間、僕の体が光り出した。

「え”」

「あ”」

「へ” メデル光ってる!」

白いローブの人物が現れた。

風が舞い、光が揺れる。

その人は、

神殿の高位神官――リュスクマテルテス。

僕はコロン♪コロン♪と転がって、その人の足元にぺたーっと頬を寄せた。

「気持ち良いでしゅ…この人…太陽しゃんみたいでしゅ…」

そして、物語は動き出す――。










***

ある日の夕暮れ時、マル婆ちゃまは、兄弟たちに語りかけた。「カーロ様は、ただの魂ではありませんよ。彼女は“精霊の契り”を受けた特別な子でした」


兄弟たちは静かに耳を傾ける。「カーロ様が亡くなられたとき、精霊たちは彼女の魂を完全に還すことを拒みました。その魂は、弟であるブランデット様の誕生と同時に、彼の中に宿ったのです」


ハクが静かにうなずいた。「だから、デットは“二つの魂”を持つ存在なんですね」


マル婆ちゃまは微笑みながら続けた。「ええ。そして、カーロ様の魂は、愛と守護の力を持っています。

何故か坊ちゃま――メデル様が元気になるたびに、その力が強くなるのです」


レースは少し目を伏せながら言った。「…俺は、まだ完全には信じきれていない。でも、メデルが笑うと、カーロの声が聞こえる時がある」


デットはそっと呟いた。

「カーロは、俺の中にいる。ずっと、ずっと…」

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