あたしに力を!
「あたい」寄りの「あたし」?
三日月の高さと翼の重さに
肩を垂らして踵をひきずってた
纏うのは鉛のドレス 鎖のフリル
想いをへし折るたびに
アスファルトに くちづけた膝
大きなかけらを失くしたら
棒きれの脚を繋ぐことも
かなわないけど
あたしに力を!
慈悲 浅き海を渡って あなたに
欲望でうすよごれたバラを届けたい
あたしに力を!
愛に替わる炎と夢に替わる雷
そいつをさがして
不揃いの指が虚空を裂くの
満月の低さと地平の狭さに
肩を擁かれて世界は微睡んでた
歌うのは醜貌き天使 美貌の悪魔
誓いを裏切るたびに
てのひらごと うちつけた釘
小さな罪だけ重ねても
紙切れの束にすがりついた
愚かな願い
あたしに力を!
思慮 深き智慧を掠めて あなたの
絶望で彩られた園を散らしたい
あたしに力を!
愛を染める夕日と夢を編める絹糸
そいつを寄越せと
節くれた指が架空に掴む