鬼がいる
鏡の中に鬼がいる
人のふりした鬼がいる
外では優しい顔をして
心の中に怒りを養い
やがてそれが大きく育って
花開き
実を結び
熟れて落ちて一面が真っ赤に染まって
物に当たるようなり
人に当たるようになり
世界に当たるようになり
最後には自分自身に当たるようになって
もう何も傷つけるものがなくなったとき
鏡に映った鬼は
ずっと握りしめていた拳を開き
真っ赤に染まった顔を覆って泣いたのだ
心の中に鬼がいる
お前が鏡を覗くとき
そこにはお前の心の鬼が映っている
その鬼を殺すことができるのはお前だけだが
わかってあげられるのもまたお前だけだ