背川恵流の想い
これを読む前に、本編の『一途』を読むことをお勧めします♪
わりと奥が深いお話しにしようと思ったら、連載ものになってしまいました。
それから、多少の誤字脱字はお気になさらずですm(u_u;)m
恋を叶えるためには犠牲が必要。
由菜が好き。
哉人くんも好き。
背川恵流16才、生まれて初めての恋は、とても苦しいものでした。
公立笹の芽高校入学式
私は今日から通うことになるこの高校には、知人が誰1人としていない。
中学校のとき、いじめられていて、2年間不登校だったため、同じ中学出身の子がいない高校を選んだ。
人の中にいるのは怖い。また、いじめられるかもしれない。
私は、中学の頃、バレーボール部に所属していた。でも、1年間も入っていられなかった。
私はバレーが大好きだ。
人一倍…かどうかはわからないけど、好きなもんは好き。
早くレギュラーになれるように必死に部活に取り組んだし、家で自主練もした。
そのおかげで、1年生にしてレギュラーを獲得した。
ポジションはセッター。
私はとても嬉しかった。
けれど、私は…いじめられた。
「恵流ちょうしのってんじゃねーよ」
「あたしらだってレギュラーになりたいのに!」
「ちょっと上手いからってちょうしのんな!」
私の努力を知らないくせに!
私は、そのいじめに耐えられなくなり、不登校になってしまった。
「ねぇ、どこ中出身?よかったら友達になってよ?私、同じ中学出身の人、1人しかいないからさ」
「え?」
突然のことにびっくりした。
たまたま席が隣だった子に声をかけられた。
それが、私と坂上由菜の出会いだった。
由菜の笑顔は、私の凍った心を溶かしてくれた。
あっという間に、私たちは親友になっていった。
由菜は、私の親友。私は、由菜の親友。
由菜のためなら何だってできる。
ずっと一緒だよ。
由菜のおかげっ、高校生活が楽しく送れている。
毎日が充実している。
私は、自分らしくはないけど、自分というキャラをちゃんとつくることができた。
ちょっとドジで、へらへらした明るい子を演じることができた。
「由菜ぁ~ここの問題わかんないよぉ」
「ん~、…あぁ、ここはね、Xを代入して…」
「むぅっ……ん~と…あっ!できたぁ」
「よくできました」
「由菜のおかげだよぉ!ありがとぅっ!由菜大好き」
「ちょ…やめて!あはははっ!くすぐったぁ~い」
由菜と親友になったと同時に、私に新たな感情が芽生えた。『恋』という感情。
どんっ!
ガシャーン!
私は、クラスメイトの男子とぶつかってしまい、窓ガラスに頭を打ち付けてしまった。
意識、はある。
けど、頭を打ったせいかクラクラする。
クラス内が騒然としている。
その騒然を押し切り、ある男子が私を抱えて、保健室に運んでくれた。
三倉哉人。
由菜と唯一同じ中学出身で、由菜と昔は仲がよかったらしい。って由菜が言ってた。
保健室のベッドに寝かせてもらい、私の意識は途切れた。
目を覚ますともう空は真っ暗だった。
先生によると、軽い脳しんとうで、病院に行くまででもないようだったそうだ。ってのはあとからきいた話し。
目を覚ますと、目の前に由菜と三倉哉人がいた。
「恵流!よかったぁ」「よかったな、無事で」
「うん!授業中もぐっすり眠れて、気分爽快!だよぉ。…ぁ痛っ!…頭、こぶできてるぅ~」
「恵流、安静にしてなきゃ!はしゃぎすぎだよ」
「はぁ~ぃ」
「そだ、恵流知ってる?保健室まで運んでくれたの、三倉だよ」
「うん、ちょっと覚えてる。ありがとぅ三倉哉人さん」
「あ、うん。ってかフルネームじゃなくていいよ…クラスメイトなんだし」
「じゃあーかなと君!」
「うん」
「私ね、背川恵流!」
「…知ってるけど」
「え?」
「だからクラスメイトだってば」
「そりゃあ知ってるわけだわ~」
「当たり前」
あははははっと、3人で苦笑した。
男の子に優しくされたことなんてほとんどない。
あったとしても、あのいじめで人の優しさなんて忘れてしまった。
心臓がうるさい。
かなと君と話してると、ドキドキが止まらない。
由菜と、かなと君にきこえてないかなぁ??
ドキドキも、時間も止まってほしいな。
そう、私はかなと君に恋をした。
その日以来、私はちょくちょくかなと君を目で追うようになった。
目で追っていると、かなと君のちょっとした仕草や、癖がわかって嬉しかった。
いろいろなことが分かってきた。
でも1つ、私は…知ってはいけないことを知ってしまった。それは、かなと君が由菜のことを好きだということ。
かなと君も私と同じように由菜を目で追ってる。
気づいてしまった私は、目の前が真っ暗になっていくような感覚に襲われた。
苦しい。
つらい。
なんだか、あのいじめられていた日々が蘇ってくるようだった。
初恋は叶わないってよく言うけど、本当だ。
どうすれば、つらくなくなる?
どうすればいいの?
私には…わからないよ。
そして、私はまた1つ、知ることになる。
由菜も、かなと君が好きだということを。
由菜本人がそう言ったわけじゃない。
けど、由菜がかなと君のことを語るときの表情は、恋する乙女そのものだから。
それに、2人が唯一おなじ中学出身っていうのも、お互いに好きあっていれば自然とそうなるだろう。
由菜が好き。
かなと君も好き。
どっちかなんて選べない。
恋を叶えるためには犠牲が必要
って、なんかの本で見たことがあるような気がする。
犠牲?
もし私が恋を叶えることができたら、犠牲になるのは由菜…だよね…。
由菜が恋を叶えることができたら、犠牲になるのは…私…?
怖い。私が犠牲になるのが怖い…。
だけど、由菜を犠牲にする自分がいるのは、もっと怖い…!
私は…私は、自分を犠牲にする。
そう決めた。
だいたいの人が、高校生活に慣れてきた頃。
由菜は部活に勤しんでいる。
私は帰宅部で、由菜の部活が終わるのを毎日校門辺りで待っている。
由菜はバレーボール部。
私だって、あんな狂おしい出来事がなければ、由菜と楽しく部活ができたかもしれないのになぁ。
いつものように校門辺りに行くと、今日は3年の不良たちがたむろっていた。
少し後ろには、かなと君がいる。
…私は、決意した。
この先の展開は予想できる。
きっと、うまくいく!
不良たちが気付くようにわざと前を通る。
「あ、ねえ、新1年のコ?」
よし、かかった。
「かわいーじゃん」
「俺らと遊びに行かねぇ?」
「え?どこに?」
わざとよく分からないふりをして、と。
「いいトコだよ」
「でも、由菜待ってるから行けないよ」
「いいよ、友達にはメールでもしとけばさぁ」
「めっちゃ楽しいぜ」
「そっかぁ、それなら行こうかなぁ~」
そろそろかなと君が助けにくるはず。
そのとき、
「背川!」
やっぱりね。
「あ、かなと君だぁ~」
「えっと、坂上が呼んでたぞ!」
「え?ほんとぉ?行かなきゃ!…お兄さんたち、ごめんねっ!由菜のとこ行かなきゃなの」
全速力で走る。
でなきゃ捕まるし。
数百メートル走ったところあたりで、かなと君の声が聞こえた。
「背川っ!止まれ!」
「え?由菜のとこ行かなきゃ~」
「ちがっ!あれ嘘なんだよ!」
「…嘘、なの?」
「そうだよ。お前が絡まれてたから、つい」
「?からまれ…?」
「さっきの不良に!」
「でも、あの人たち、楽しいトコにつれてってくれるって…」
「あー、もういい!…嘘ついて悪かったな!じゃーな」
ここで逃がす私じゃないよ。
「あ、待って!由菜が来るまで、一緒に…お話し、しよ?」
「…え?」
「ダメ、かな…?」
「まぁ、いいけど…」
「やったぁ!由菜待ってる間、いつも1人で寂しかったんだ~」
「お前も部活やりゃあいいじゃん」
…一瞬、ものすごく心が痛かった。
「あ、うん。…えっと…私、トロいからみんなに迷惑かけちゃうかなー…って…」
「ふ~ん」
うぅっ、ちょっと痛いとこ突かれたな。雰囲気も悪くなっちゃった。
まぁ、ここは携帯でも使おうかな。
「あ、ねぇかなと君!メアド交換しよっ?!」
「…いいけど」
「よぉ~っし!赤外線準備おっけーです隊長!」
「隊長って…」
「えへへ~」
「ん、登録完了」
「ありがとぉ~」
「ま、適当にメールしてくれ」
「りょーかいっ」
嬉しいって思った。だって、好きな人のメアドだよ?
すごくドキドキした。踊りだしたい気分だった。
でも、由菜のことを考えると、そんな気持ちは消えた。
だめだ。これは由菜のためだから。
個人的な感情を持っちゃだめっ!
そう考えていたら、部活の終わった由菜が走ってきた。
「恵流~!おまたせ~…て、あれ?三倉?なんで?」
「由菜ぁ~、お疲れ様ぁ!あのね、かなと君ね、私を悪い人から守ってくれたの~」
「よくわかんないけど、よかったね!三倉、恵流のこと守ってくれてありがと」
「べ、別に」
「もぉ、三倉ってば何で最近そんなによそよそしいの?」
「……えっと…」
「中学んときは普通だったじゃん。…もしかして、私のこと嫌いになった?」
「そ、それは…」
あぁーあ、せっかく私の気持ち押し殺してまで演じてるのに…今の雰囲気じゃ壊れちゃうよ。
また、演じなきゃ。
「ねぇ由菜ぁ~、私お腹すいたよぉ!」
「え?じゃあ、ハンバーガーでも食べに行こっか」
「やったぁ!ハンバーガー!あ、かなと君もだよっ」
「え?あぁ…」
ハンバーガーショップへの移動中も、私は試行錯誤していた。
どうやったら由菜たちがお互いの想いを打ち明けてくれるのか。
いい手段としては、2人きりの時間をつくることだと、思いついた。
「うぅ…由菜ぁ~…お腹いたぃよぉ…」
「恵流?!大丈夫?…どぅしよう…」
「由菜、大丈夫だよ…あそこのスーパーでトイレかりてくるから…ハンバーガー…一緒に行けなくてごめんね…」
「恵流…大丈夫なの?」
「うん、だから、ばいばぃ…」
そのまま私はスーパーの入り口へと駆けていった。
「恵流…」
「まぁ…背川ならきっと大丈夫だろ」
「そう、だね。恵流案外しっかりしてるから。…じゃあ、行こっか」
「おぅ」
私は、こっそり2人のあとをつけるようにした。
会話がきこえるくらいの距離をとりながら。
「ねぇ、三倉、さっきの話しの続き」
「え?あ、うん」
「あのね、私、三倉と前みたいな関係に戻りたいなぁ…と思って」
「前?」
「そ。中学のときみたいに。あのときはもっと仲よかったでしょ?私ね、三倉と一緒に笑ったり、遊んだり…いろいろ楽しかったんだ。だけど、中学卒業する前らへんから、あんまり三倉が話しかけてこなくなっちゃって、寂しかったんだ。私のこと嫌いになっちゃったのかなって…」
私の感だと、その時期は由菜と同じ高校に行きたくて、必死に勉強してたんだろうな…。
「そ、そんなんじゃねーよ!…嫌いとか、そんなんじゃないから。…ただ、」
「ただ?」
「…ッなんでもねーよ」
「もぉ、何あせってるの?」
「あ、あせってない!」
「あはははっ」
「笑うな」
「…嬉しいな、三倉と久しぶりに話せて」
「…どうも」
「あ、そぅだ!アド交換しよっ?三倉とメールしたいな」
「あぁ」
「んじゃ、赤外線いくよー?」
「おー」
2人の会話が1つ1つ心に突き刺さってく。
痛い、けど…私はこれを望んだのだから…痛いなんて感じちゃだめだよね。
「登録完了!…あ、今日メールしてもいい?」
「うん、まぁ」
「ありがと!…あ、私こっちの道だから…って、前に何度か家にきたことあったよね」
「あぁ、そういえば」
「また…きてもいいから」
「え?」
「じゃぁ、ばいばいっ」
「え?あ、うん」
由菜ったら、全然素直じゃないなぁ。
見ていてこっちがいらいらするくらい。早く、2人がラブラブになってくれれば、私のこの気持ちがおさまるのにな…。
さて、このへんでかなと君にメールしておくか。
>かなと君('-^*)/
恵流だよぉ♪
何か進展あったぁ?
これで私の策略だとわかるはず。
かなと君がわかってくれてた方が行動しやすいし。
あーぁ、お腹すいた。今の私ならハンバーガー10個くらいいけるかな。
やけ食いってやつで。
私は、駆け足でハンバーガーショップに向かった。
目覚まし時計を2個セットして、私は朝の4時に起きた。
今日は、かなと君にお弁当を作るんだ。
…まるで、恋人同士みたい…なんて、思いたいけど思いたくなかった。
これも2人の仲を深めるための作戦のうちなんだから。
私の計画では卵焼きは絶対入れない!
きっと、あのフラグを立ててやるんだから!
って言っても…私、料理苦手だよぉ…。すでに指は絆創膏だらけ。
恥ずかしい。
でも、こんなにがんばったんだから…少しくらい、ほめてくれるかな…かなと君…。
「ん?うわっ!からあげがッッ!火~」
あわや大惨事になりかねなかったな…。ミニ消火器があってよかった。
お母さん感謝。
とりあえずお弁当は完成できた。
かなと君に受け取ってもらえるかなぁ。
授業中も気が気じゃなかった。
自分でもどうしようもないくらい、ドキドキした。
そしてお昼…
「かなと君!あのね恵流ちゃんがお弁当作ってきました!」
「誰に?」
「もちろん、かなと君にだよぉ~」
「え?…別に、いらない…」
言われちゃった…。ズキっと痛んだ気持ちを押し殺して、私はかなと君の胸ぐらをつかんで言った。
「いいから受け取りなさい。これを使って、由菜と私と一緒に食事タイムするの!がんばって由菜をおとしなさいよ」
この迫力にはかなわないよね。
「う、うん。わかった」
「それじゃあ、私、もぅ由菜に交渉してあるから、由菜のとこ行こっか!」
「はや」
「あ、あとね、私が話すことにはちゃんと合わせてねん!それから、そのお弁当はかなと君のお母さんが作ったってことでおっけー?」
「あぁ、了解」
お弁当を食べる場所は屋上。しかも、立ち入り禁止の場所だから人気もないし、好都合。
私とかなと君は走って屋上で待ってる由菜のところへ向かった。
「由菜ぁ、お待たせ~」
「走ってきたの?お疲れ様っ」
「えへへ~」
「三倉も、座って。はやく食べよ?」
「おー」
「それじゃあ恵流ちゃんに合わせて、せーのっ!」
『いっただっきまーす!』
「って小学生かよ!」
「あははっ!かなと君ナイスツッコミ」
「三倉うける~」
3人で笑いあった。
ここまで読んでくださり、ありがとぅござぃますっ♪
だんだんと進めて行きますので、続きが気になるって思った方はぜひ、また読んでください('-^*)/