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本日も宜しくお願いします
日々大変甘い、という話
でもそんな日々に影が・・・
ミレイとフィンが付き合い始めてから半年が経った。
今は冬の閑散期に入っており、危険な討伐依頼が少ないので、フィンの過保護は少し落ち着いている。
寒い季節だが、2人は未だに付き合い始めの様な熱愛ぶりが続いている。フィンは可能な限りミレイを側に置きたがり、
ミレイが笑えば、団長の顔は緩んでしまう。
ミレイが拗ねても、団長の顔は緩んでしまう。
ミレイが落ち込んでいても、団長の顔はいちいち緩んでしまう。
つまり日々大変甘い、という話だ。
そう、大変甘い雰囲気にはなるのだ。そして熱いキスも交わす。だけど、その先に進まないのだ。もう付き合い始めて半年近くにもなるのだけど、こう言うものなのだろうか?
小耳に挟んだ噂によると、「付き合ったその日に」とか「1ヶ月くらいで」とからしいのだけど・・・それとも、貴族ならこれが普通なのだろうか?前世では、誰とも付き合わなかったから、よく分からない。
やはり、ミレイがまだ子供過ぎてそう言う方面での魅力が無いんだろうか?でも、あと少しで18歳だ。其れなりに女性的な体になってきたと思うんだけどな。髪も伸ばし始めたし。
キスの後、フィンに撓垂れ掛ってみたり、「まだぁ帰りたくなぁい♪」なんて甘えた声を出してみたり・・・ちょっと恥ずかしかったけど、色々試してみたんだ。でも、
「ミレイ、俺の理性を試す様な事は止めてくれ」とか
「自分が何をやっているのか分かっているのか?」とか
「男の前でそんな表情をしたらダメだ」とか言って、
やんわりと拒絶されてしまった。
(何でだ!解せない!)
ミレイは憤懣やる方無しであった。
(でも、諦めないぞ!何度でも誘惑してやる!)
ちょっと意地になって、手を替え品を替えして攻略を進めた結果、ミレイの努力(?)の日々が功を奏する日がきた。
翌日が休暇と言う日、フィンの家にお泊まりに行った。この日はミレイの18歳の誕生日と言う事で、良い感じのレストランで食事をし、フィンの家へ2人で帰って果実酒を開けた。楽しく会話をしていたのだが、ふと、会話が途切れて・・・団長はミレイの手を取った。
そしてそのまま寝室に移動する。
「ミレイ・・・愛してる」
フィンはミレイをベッドに寝かせると唇を重ねてきた。
「フィン・・・」
ミレイはフィンの首に腕を回した。
そしてこの日の夜、2人は結ばれた。
翌々日、ミレイの顔は弛みまくっていた。
「えへへへへー・・・くふふふ」
「ミレイ、何かいい事でもあったか? すんげー、スケベ顔してっけど」
「んふ・・・ふふふ」
「少しは隠せよ。そーゆー、この上なく幸福な顔をされると、真面むかつく」
ミレイはちょっと、いや、かなり浮かれぽんちである。アラバやフマルに突っ込まれても、何処吹く風だ。
「団長とミレイ、この2人は似た者同士なのかも知れない」と新たな発見をしたクランの冒険者達だった。
因みにフマルとアラバはミレイと団長の関係を祝福していない組だ。フマルはミレイの入団試験で負けた時に、アラバはハーピー討伐で助けられた時にミレイに惚れてしまったのだ。叶わぬ恋の悩みを打ち明けあった2人は意気投合し、戦闘でも息の合った動きを見せ、長らく活躍することになるのだが、それはまた別の話だ。
▲▽▲▽▲▽
ある初夏の頃、一晩中降り続いた雨のせいで冷えたのか尿意を催して、何時もより随分と早くに目が覚めたミレイは厠へ行った。さて、部屋に戻ってもう一眠りしようかと寮の通路を歩いていて、窓から本館の方をひょいと何気に眺めてみれば、団長の執務室に明かりが灯っているのが見えた。ミレイは予定を変更して、団長の執務室へ足を向けた。
(朝の挨拶をしてから、少しイチャつく時間があるかなぁ♪)
目的の部屋の前に到着して、扉をノックしようとした時、中から話し声が聞こえる事に気がついた。そっと扉に耳を押し当ててみると、話をしているのは団長と団長のパーティーの数名だった。幹部の中でも団長に一番近しい人達だ。
「本当か!?」
「ああ、遠征先で風邪を拗らせたらしい。「たいしたことないから」って、治療師の診療を拒んでいて、あっという間に悪化したんだと。朝、なかなか起きてこないから侍従が様子を見に行ったら、既に冷たく硬くなっていたらしい。血を吐いた跡があったから、それで喉を詰まらせたんじゃないかって」
「やっとこの時が来ましたね。長かったです」
「いや、思ったより早かったと思うぞ。陛下はまだ若かったからな」
「それにしても、こちらから仕掛ける手間が必要なくなって良かったよ。こんな呆気なく逝くとは思わなかったなぁ」
「フィトナジオン殿下、直ぐに王宮に参りますか?」
「ああ。明日、陛下の崩御が発表される。それから20日間を喪に服した後、兄上が即位を宣言する。俺は直ぐに王宮に戻って軍部を掌握する。今回は、元騎士団の者のみついてきてくれ、クランには緊急依頼だと説明を。王宮が落ち着いたら、改めてクランの皆には説明する。皆には俺の直属の部隊、親衛隊に入隊するか、クロピドに残って冒険者を続けるか選択肢を与える。冒険者を続ける者には、十分な金と新しいクランに移籍するための紹介状を準備する」
「ミレイの事はどうなさるので?」
「王弟となると、庶民を妃に迎える訳には行きませんぞ。しかるべき家から正妃を迎えませんと」
「それについては⎯⎯⎯⎯⎯ 」
ミレイはそれ以上、話を聞かずにその場を離れ、急いで寮の自室に戻った。
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明日は幕間で、明後日から新章です




