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本日も宜しくお願いします

団長、過保護を発動中

 ミレイは十分な療養を終えて復帰した。また依頼を(こな)す日々が戻ってきたが、その全てで団長が率いるパーティーに組み込まれた。移動中は常に側に居るように言われ、見張り当番はいつも団長と組む。討伐や魔獣狩りの時は遠距離の魔術攻撃を専門に任され、近接戦闘には出されない。団長のパーティーは猛者揃いなので、そもそもミレイの出る幕はあまり無い。


 「安全安心」の冒険者活動に従事する毎日なのだ。


「どうして、こうなった・・・」

「ミレイ、どうした? 具合でも悪いのか?」


 ひとり頭痛を堪えるかのように額へと手を当てていたミレイに団長が声をかける


「いえ、全っ然、問題ありません!元気一杯で、今日も頑張ります!」

「ミレイはそこまで頑張らなくて良いんだぞ、俺たちに任せておけば良いんだ」


 爽やかに笑って団長が(のたま)う。今日も今日とて、団長の過保護は全開だ。

 これからゴブリン村の掃討を行うのだが、村の規模は小さく、上位種の発生もなく、何でこんな依頼に団長のパーティーが来るのか? と言う簡単な仕事だ。明らかにミレイの安全を優先した依頼選びだ。


「っはぁ~~~っ」


 皆に指示を出し始めた団長に聞こえないように、小さくため息をつくミレイだった。




▲▽▲▽▲▽


「で、お前ぇはどうしたいんだぁ?」

「普通で良いんだよ、普通で。だって可笑しいだろ? 何なんだよ、ほんと。いい加減にして欲しい」


 ミレイは、クランではない街の酒場でクラバモス相手に管を巻いている。暴走ぎみな団長の過保護をどうにかできないかと相談しに来ているのだが、相談と言うより愚痴になってしまっている。


「だいたいお前ぇは、この間まで『団長ぉ~♪ 団長ぉ~♪』って団長に引っ付いて回ってただろうがよぉ」


 鼻にかかった、甘えた声をクラバモスが出して、私をからかう。

 剥げたおっさんの甘えた声なんて吐き気しか催さんわ。


「うげぇ~、気持ち悪ぃ声を出すなよ、クラバモス。私は団長を尊敬して、崇拝して、憧れてるんだよ。下卑た想像すんじゃないよ」

「まだ自覚しとらんのかぁ? それとも態とかぁ? お前ぇら相思相愛じゃねぇかぁ。素直に認めたらええがよぉ」

「何が相思相愛だ。団長に私のような、どこの馬の骨とも知れないガキんちょの相手をさせるわけにはいかんだろうが。馬鹿か?」

「はぁ~、馬鹿はお前ぇだ」


 クラバモスに相談したのが間違いだった。


「兎に角、次の依頼は、私を団長以外のパーティーに組み込んでよ」

「へぇへぇ、団長が許可したらな」

「頼むよ、ほんと」




▲▽▲▽▲▽


「ミレイは俺と組むのが嫌なのか?」


 いつもの余裕のある態度ではなく、どこか焦った様子の団長が、まるで助けを請う様に上目遣いでミレイを見つめてくる。憂いを乗せたその瞳に罪悪感をゴリゴリに刺激されて、ついつい、


「そんな事、これっぽっちも無いですよ!団長とご一緒させて頂けるのは光栄です!」


 と言ってしまう。


「だけど、私に無理に合わせて頂いてるみたいで心苦しく、団長パーティーには実力に見合った依頼を受けて頂いた方が良いのではと、提案いたしましてですね」

「ミレイはそんな事気にする必要はないよ。俺が好きでやってる事なんだから」

「えっ? 好きって・・・」

「あっ! 好きでって言うのは、そう言う事じゃなくて好き勝手にやっているの意味だよ!」

「はっ! そ、そうですよね!分かってます、分かってます」


「わし胸焼けしてきたわぁ」


 2人で言い合っていたら、クラバモスが失礼な茶々を入れてくる。


「えぇ、私もです」


 副団長のデクトも同意する。真面目なデクトのくせに。


「団長、そろそろちゃんと働いて下さい。難易度の高い依頼が来ています。マンティコアの討伐です。(つがい)で出没するそうです。これは他の者に任せるわけにはいきませんよ」


 デクトが畳み掛ける様に団長に訴える。


 マンティコアは人面・獅子の胴体・コウモリの翼・サソリの尾を持ち、人を食うのが好きな魔獣だ。魔術耐性が高く、俊敏で、空を飛べるため、1匹でも脅威である。それが2匹となると、実力のあるパーティーで当たる必要がある。新人の冒険者など連れていく訳にはいかない。


「そんなのデクトがリーダーで・・・いや、分かった。俺が行くよ」


 一瞬、デクトに押し付けようとしたが、デクトのひと睨みで撤回した団長だった。


 

 ▲▽▲▽▲▽


 団長パーティーがマンティコアの討伐に出かけたので、ミレイは久しぶりに他の冒険者たちと討伐に参加できた。

 本日はハーピーの討伐だ。

 ハーピーは顔から胸までが人間で、翼と下半身が鳥であり、鷲のようなかぎ爪を持つ。容姿は醜く青白い女性の顔をしている。食欲旺盛で常に空腹であるため、目にする物は、食べ物であっても人でも魔獣でも仲間の遺骸でさえも、全てを貪り、残飯の上に汚物をまき散らしていく。独特の悪臭を放ち、終始耳障りな声で騒ぎ立てるという、非常に不快感を与える魔獣だ。


 クロピドから南へ3日、街道沿いにハーピーが出没しているのだ。元レチノール国に巣くって増えていたハーピーが分巣して北上してきた様だ。今でこそレチノールはかなり復興して住民も増えたが、(かつ)ての激しい戦禍の後、死体が放置され、土地を管理する領主も居らず、様々な魔獣の温床になってしまった時期があったらしい。ハーピーもそのせいで増えてしまったのだろう。レチノールの復興が進み、魔獣は少しずつ討伐されているが、戦争で多くの魔術師が亡くなった影響でか、南方は上位魔術を扱える魔術師がおらず、魔術師の数自体も少ない。そのため討伐できないでいる間にハーピーの群れが数を増やし、そしてまた討伐が難しくなると言う悪循環であったらしい。その増えたハーピーの一部が新天地を求めて北上を始めたのだ。


 街道沿いの遠くの空にハーピーの群れが飛んでいる。ざっと40匹はいるだろうか? あの数に上空から飛びかかられたら、飛ぶ手段のない人間にとって、かなりの脅威になる。ハーピーは急降下してきて、その鋭いかぎ爪で獲物を傷つけ、あるいは掴んでそのまま上昇して高所から落とす。近接攻撃の届く高度に殆ど留まらないので遠距離攻撃手段を持つ者が数多くいないと討伐は難しい。

 今回、我らの構成は、長剣のトルジムをリーダーに、弓師のエステル、魔術師のダルテパ、魔術師のレノグラス、槍のフマル、長剣のバナザ、戦斧のアラバ、そしてミレイだ。エステル、ダルテパ、レノグラス、ミレイが遠距離攻撃でハーピーを撃ち落とし、トルジム、フマル、バナザ、アラバが(とど)めを刺す作戦だ。

 ハーピーは空を飛ぶ機動力と数の多さだけが問題で、地上に落ちてしまえば、個々の戦闘力や防御力はそれほど高くない。なので、近接戦闘に元新人冒険者のフマル、バナザ、アラバが参加している。彼らも依頼を(こな)すようになって半年以上経つ。もう新人とは呼ばれない。と言うか今春、クラン“蒼天の鷹”はまた新人冒険者を迎えているのだ。


 遠くを飛んでいたハーピーが迫ってきた。トルジムが戦闘開始の指示を出す。まずミレイが風系統の上位魔術『竜巻』を発動した。『竜巻』は文字通り風の魔術で竜巻を起こすのだが、竜巻の中には無数の風で作った刃が籠められている。直径が10歩程もある巨大な竜巻がハーピーの群れに突っ込む。『竜巻』に巻き込まれたハーピーは、あるものはその暴風に煽られて平衡を失い、またあるものは竜巻の中に籠められた無数の刃に切り裂かれて、落下してきた。すかさず、フマル、バナザ、アラバが落下したハーピーに駆け寄り、(とど)めを刺していく。『竜巻』が発動していた時間は呼吸をほんの10回するほどの間であったが、飛んでいたハーピーの約半数が犠牲になった。

 ミレイの魔術攻撃から免れたハーピーは一旦距離を取ったが、落下した仲間が次々に()られていくのを目にして、怒り狂ったように騒ぎだし、再び襲いかかって来ようとする。すかさずエステルが弓で、レノグラスが土属性の中級魔術『土槍』で、ダルテパとミレイは火属性の中級魔術『火炎弾』で次々にハーピーを撃ち落としていく。最初は指示役に徹していたトルジムも途中から参戦して、落下したハーピーに(とど)めを刺していく。上空のハーピーが残り数匹になった頃、ミレイも槍を持って(とど)めを刺す方に参加した。


 多少の掠り傷を負った者はいたが、無事にハーピーの討伐を終える事ができた。一度、アラバがハーピーに腕を掴まれて上空へ連れ去られると言うことが起こったが、墜落させられる前に、ミレイが『移動』でアラバの側まで行き、アラバを片手でしっかりと掴むと同時に『飛斬』でアラバを捕まえていたハーピーの脚を切断して、再び『移動』で地上に戻る、と言う荒業で事なきを得た。

 クロピドに帰還したミレイは、団長がまだ帰還していない事を良いことに、更に2つ依頼を(こな)したのだった。


毎日更新中

明日は、2人の関係が進展・・・する?

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