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本日も宜しくお願いします
因縁のオーガとの戦いです
雪辱を果たす!
依頼が減る冬場、クランではたびたび宴会が開かれる。宴会の理由は様々だが、今夜の宴会は「最近、春めいてきたから」と言うものだ。
「もう少ししたら依頼が増えてくるなぁ」
「のんびり呑めんのは今夜が最後かねぇ」
「だぁ~! 仕事の話は止めろ止めろぉ! 呑め呑めぇ!」
「飲み比べだー! 俺に勝てるやつぁーかかってこーい♪」
誰もが好き勝手騒いでるなか、ミレイは団長フィンの隣の席に収まっていた。
「団長は、どうやって武術の腕を磨いたんですか? 剣術、槍術、戦斧、弓術、何でもござれですよね?」
「そうっすよ。ずるい位に何でもできるっすよねぇ」
ミレイの隣でフマルも大きく頷きながら同意している。
「師匠が有能でね。私も武術なら何でも身に付けたかったから、彼に憧れて師事したんだ」
「へぇ。じゃあ、私は団長の弟子にしてもらおっ」
「あ、じゃあ、俺もっす」
「はははっ。いつでも教えてあげるよ」
団長の過去の依頼での出来事を聞いたり、ミレイがスラム向けの奉仕活動でやらかした失敗談を披露したり、フマルをからかったりして楽しんだ。最後はクラバモスにうざ絡みされて、団長とは引き離されてしまった。
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春がきた。今期最初の依頼はオーガの討伐だ。オーガの集落が発見されたのだ。30匹ほどの規模になっているらしい。今回は団長、副団長を含めた40人体勢で臨む。主力人員総出の勢いだ。それだけ、オーガは危険な魔獣だ。前世の死因もそれだった。
オーガは集団で行動し武器を使い、仲間同士の連携を取る知性と、強靭な体を持っている。体格は人間の1.5倍程もあり、高い膂力と素早さを持ち、体表は分厚く硬い筋肉で覆われていて生半可な攻撃など通らない。冒険者数人で1匹に対処する必要がある。前世でミレイが1人でオーガを相手にしていたのは本来はあり得ない事なのだ。あの時は突然の戦闘開始で混戦になり、仕方がなかったのだ。結局、捌ききれずに死んでしまった。
集落の発見場所は、クロピドから西へ馬で5日行った場所だ。出発前に、武装の整備や夜営の準備など入念に行われる。討伐時の組分けや夜営時の役割分担(夜営の設置、食料確保のための狩り、調理当番、夜間の見張り当番など)も事前に決めておく。
ミレイにとっては因縁のオーガ討伐だ。ミレイは自分から手を上げて討伐組への参加を希望した。前世の雪辱を果たしたい。前世の時と違って、今世はクラン単位での討伐だ。連携も取れているし、各冒険者の戦闘能力も高い。ミレイの魔力量も豊富だ。負ける気がしない。私はやれる!
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5日の移動を経て、これからオーガの村がある森に侵入しようとしていた時だ。肩肘張ったミレイに気づいた団長が、肩を叩きながら声をかけてきた。
「ミレイ、無茶はするなよ。皆で生きて帰るのが一番だ。その上で、オーガを殲滅できれば良いのだからね」
ミレイはハッとする。
「はい、すいません。ちょっと緊張していたみたいですっ」
団長はミレイの頭をやや乱暴に掻き回してから去っていった。
(団長には何でもお見通しだな。前世の復讐心に気持ちが引きずられ過ぎてた。気持ちが先行しすぎると体が固くなっていつもの様に動けなくなる。新人には有りがちな事だ。適度に力を抜いて心に余裕を持たないといけない)
スーハー、スーハー、スーハー。深呼吸して肩を回す。よし、今度こそ万全だ。
一行は夜明け前の暗闇の中を出発した。前日にオーガ村を確認した斥候達が先導して森を慎重に進み、空が白んできた頃にオーガの村に到着した。オーガ村はまだ眠っている様子だ。見張りのオーガが2匹いるが、彼らも居眠りをしている。奇襲をかけるためにこの時間を狙ったのだが上手くいきそうだ。斥候達の『索敵』で、オーガの数は情報と大きく違わず35匹と確認できている。他の魔獣はいない。人が囚われている様子もない。
今回、近接戦闘組と遠距離攻撃の魔術師組とに分かれている。近接戦闘組は、盾役1人と前衛2人と後衛1人の4人パーティーを9組作っている。彼らは村の周囲3ヶ所に分かれて潜伏する。魔術師組はミレイとダルテパとレノグラスの3人だ。団長は村を見渡せる高台で指揮を執る。魔術師達も団長と一緒に高台にいる。
皆が配置についたのを確認して、まずミレイが土魔術で村全体を囲む様に壁を作った。オーガの体当たりでも崩れない様な厚みのある頑丈な壁だ。かなりの広さのあるオーガ村の全体を囲む壁を作るのはそう簡単ではないが、そこはミレイの豊富な魔力量にものを言わせての力押しだ。9組の討伐隊は壁の外にいる。次に、土属性の上級魔術『土車輪』を村の中に発動し建物ごと破壊する。
突然の襲撃に慌てたオーガが、壊された建物から飛び出してきたら、続いてダルテパが火属性の上級魔術『紅炎波』を叩き込んだ。
さすがに上級魔術と言えど、『土車輪』も『紅炎波』も村全体には広がれない。なのでこれで討伐されるオーガは少数だ。恐らく10匹も殺れてない。すると生き残ったオーガは、奇襲をかけてきた敵に反撃しようと、もしくは囲いから逃げようとする。ミレイの作った土壁にはオーガが1匹ギリギリ通れる位の出口を3ヶ所開けてある。その3ヶ所に4人パーティーが3組ずつ待ち構えていて、出口から出てきたオーガを1匹ずつ倒していく。たくさんのオーガに一度に囲まれないように少しずつ誘き出して戦う作戦だ。
足や顔に弓を射って、あるいは魔術攻撃を放って撹乱し、前衛2人が果敢に攻撃する。オーガの攻撃は盾役が押し返す。攻守の均衡が取れた戦闘でオーガを危なげなく倒していく。
さらに出口に殺到して出られずに溜まっているオーガをミレイの火属性の中級魔術『火炎弾』とレノグラスの土属性の中級魔術『土槍』が襲う。そうやって少しずつだが確実に削っていって、とうとう立っているオーガは居なくなったのだった。
団長と魔術師3人は村へ降りていって戦闘部隊と合流した。まだ息のあるオーガがいる様だ。手分けして止めを刺して回る。ミレイは村の中を主に見て回った。『索敵』で村内に生き残ったオーガが居ないことを確認して、壁の外に戻った。村の外ではクランのみんなが集合していた。誰も大きな怪我をした者はいない様だ。
討伐が安全に終わり、ホッとする。戦闘が終わって、皆の気が緩んでいた。その時、ミレイの『索敵』がまだ生きているオーガがいるのを感知した。団長の背後に仰向けに倒れているオーガだ。その右腕が剣を握っている。筋肉が脈動している。団長も他の団員も誰も気づいていない。その右腕がゆっくりと持ち上がる。ミレイの目には何故か世界がゆっくりと動いている様に感じる。自分の体もその世界の遅さに囚われたようになり、動けない。オーガの右腕が振り下ろされそうになった瞬間、パチンッっと弾けた様に世界と自分の体が動き出した。ミレイは『移動』で団長の背後へ瞬間的に移動し、団長の背中を力一杯押した。果たしてオーガが振り下ろした剣がミレイの横腹を切り裂く。
痛いと言うより、熱い。そんな感覚を感じながら、その場に崩れ落ちたミレイは、オーガと団長を確認しようとするが、急激に視界が暗くなり周囲の音も遠ざかる。
「ミレーイッ!」
遠くで私を呼ぶ声が聞こえる。あれはメルファランの声だろうか?また失敗してしまったなぁ。
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ミレイは無事なのか!?




