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本日も宜しくお願いします
リリカとしての人生は捨てて、ミレイとして歩み始めたので、リリカの文字は使わない事にしました
(入力がメンドーで…テヘペロ)
翌朝、訓練場にミレイの姿はあった。他の冒険者たちに交じって走っている。そこにはクラバモスやフマルの姿もある。
鍛練前にクラバモスはミレイを仲間に紹介してくれた。一昨日の宴会に参加していない仲間もいたからだ。みな温かく歓迎してくれた。その時(宴会の前もだが)、ミレイの性別に関して何も言及されなかった。だから模擬戦の前にミレイの冒険者証を見た数人とフマル以外はミレイの事を男と思っている者が大半だ。ミレイもその勘違いを放置する。
これも冒険者の不文律の一つだ。女性冒険者は依頼遂行中の危険以外に、女性である事による危険にも遭遇する。そのため、女性が実力が付くまで性別を隠すのはよくある事なのだ。ミレイが自分で性別を公開するまでは、他の誰も勝手にばらす事は無いようだ。
依頼で出かけている者、酒場に屯っている者(バーテンと酒場で飲んでる数人は門番代わりなのだそうだ)以外の34人がいま訓練場に集まっている。走っているのは30人だ。
そこそこ広い訓練場を50周ほど走ったところで、一旦小休憩をとる。息が整ったら、それぞれの得物ごとに分かれて、型練習に移る。槍術はミレイとフマルと他に3人いる。そこに、さっき走らないで見ていた、アクビルと言う名の年配の元冒険者が指導に入った。60才くらいだろうか、深い皺が走った険しい顔に灰色の短髪。薄茶色の瞳は眼光鋭く、本人の気質を表しているようだ。
掛け声をかけながら、突いたり払ったり回したり、皆で合わせて動く。型練習の次は模擬戦だ。フマルはミレイと戦いたがったが、アクビルはフマルを他の者と組ませた。ミレイの相手はアクビルがやってくれる。
アクビルは年齢による衰えを感じさせない動きでミレイの攻撃を捌いていく。ミレイは『身体強化』も他の魔術も使用していない。槍術の技量そのものを上げるための鍛練だからだ。自力での渾身の突きを繰り出し、薙ぎ払い、そしてまた突く。何とか相手の隙を突こうとしたり、意表をつく動きをしてみたり、牽制したりと色々試すがアクビルの守りは鉄壁だった。ミレイの攻撃は弾かれ、いなされ、回避される。そして鋭く間合いを詰められて、足を払われ体勢を崩したところで槍を突きこまれる。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ、まいり、ま、した、はぁっ、はぁっ」
「16才とは思えない技量ですね。『身体強化』は使ってなかったんですよね? このまま鍛練を続けたら、かなりのレベルに到達できそうですね」
「はぁっ、はぁっ、あり、がとう、ござ、いま、した、はぁ~あ、ふぅ~う」
「では、もう一戦やりましょう。いまは自分よりも強い者と戦う経験をたくさん積むことです」
「はいっ、お願いします!」
その後、鍛練時間の最後までアクビルとの模擬戦を続けたが、10回やって全敗。最後は仰向けになって暫く起き上がれない位に疲労困憊したミレイだった。
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午後、と言っても、昼食を食べて、たっぷり昼寝した後なので夕方近いのだが、学習の時間が始まった。たっぷり昼寝時間をとるのは、学習中に居眠りする言い訳を与えないためだそうだ。冒険者達はたいてい学がない。腕っぷししか頼れるものが無いからこその冒険者なのだ。だから学習の時間は皆、苦痛なのだ。
他のクランでは学習などしない所の方が多い様だが、“蒼天の鷹”では学習を重視している。依頼の成功率を高めたり、依頼主との不要なトラブルを避けたり、冒険者引退後の生活を良いものにしたり、学は色々な場面で冒険者を助けてくれるのだ。
若い冒険者が10人ほど並んで「うん、うん」唸りながら学習に取り組んでいる横で、ミレイはクラバモスからクランの説明を受けている。
クラン“蒼天の鷹”は6年前に、団長フィンと副団長デクト、クラバモス他、合わせて10名で設立した。その後、入団していたクランが潰れて行く宛のなかった冒険者や、他のクランで使い潰されそうになっていた若い冒険者などを迎え入れて、本格的に稼働した。半年後には銅級に上がり、その後は一年毎に鉄級、銀級、金級とランクを上げてきた。その間に冒険者の入団が増えて、今に至る。
現在、現役冒険者と元冒険者合わせて、ミレイも入れて60名だ。経理や折衝などを担う事務員1人、治療師1人、料理人や施設の管理をする従業員3人も合わせると65人の大所帯だ。
パーティー編成や依頼を誰に任せるかなどは幹部が話し合って決めているが、下からの意見があれば考慮するので、何かあれば臆さず意見して欲しい。依頼を受けない日は鍛練と、必要な者は学習に必ず参加すること。
休暇は依頼を終えた翌日と必要に応じて。依頼を受けていない新人は5日毎に休暇を与える。病気や怪我をした場合はちゃんと治るまで休ませる。治療もクランの責任で行う。
部屋代、クランの拠点で摂る場合の食費と依頼中の食費、得物と装備の整備費用はクランが出すが、得物の購入、服や日用品、外での飲食、クランの酒場で飲む酒代、その他趣味の物などは個人の負担になる。
(昨日のミレイの酒代はクラバモスが出してくれたそうだ。ゲロの件も合わせて、謝罪しておいた)
得物を買う金がない時はクランから無担保・無利子で貸す。報酬は給料制で、基本給と、依頼を受けたら難易度に応じて手当てが付く。
クランの建物内は防犯上の理由で、魔術を使おうとすると無効化されて、さらに警報音が鳴る仕掛けがしてある。そう言う特殊な魔道具があるのだ。ただし、魔道具に魔力紋を登録した者の魔術は無効化しない。
(魔力紋とは魔力の揺らぎの様なもので個人差があり、同じ魔力紋を持つ者はいない事、終生不変という特徴を持つ事から個体識別に利用できるそうだ)
魔術師はこの魔道具に魔力紋を登録することになっているが、クランに入団して1年間は登録が許されない。なので、新人はクラン内で魔術を使ってはいけない。因みに訓練場は使用可能である。
依頼を受ける場合は、自分の言動がクランの評価に繋がることを常に意識して行動する事。先輩や幹部に報告・相談を忘れないこと。言動が目に余る場合、クランから指導が入るが、何度、指導しても行動を直せない者は追放する。悪質なら命を以ての処罰もあり得る。
このようにクランの説明を聞き終えた次に、ミレイの技量について聞かれた。
武術は槍術、投擲が主。剣術と徒手を少々。
魔術は生活魔術各種、『身体強化』『光明』『隠密』『索敵』『鑑定』『収納』『引寄』『障壁』『移動』『火弾』『火炎弾』『空気弾』『飛斬』『竜巻』『水弾』『水槍』『土弾』『土槍』『土車輪』。
隠す必要も無いので、洗いざらい話した。
「16才で、多彩過ぎんだろぉ」
感心と言うより呆れを含んだ苦笑いで呟かれた。
「私もそう思う」
ニヤリと笑って答えたら、頭を叩かれた。
(何でだよっ)
最後にクランの一員である証明の焼き印を、自分の鎧の胸元に押して貰って終了した。
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それからの日々は、鍛錬に勤しんだ。武術だけじゃなく、数日に1回は魔術師の組にも入った。
時々、パーティーを組んで模擬戦を行った。組む面子を変えながら、冒険者同士の相性を確認したり、連携を取る訓練をしたりした。
因みに午後の学習は試験を一発合格して免除されている。
こんな日々が半年程、続くのだった。
ミレイって日本人の感覚だと、女性のイメージですが、フランスでは男性のイメージがあるそうですよ
また、有名なミレーって画家のこのミレーは名字だそうです
と言うことで、「ミレイって名前で女だって分かるよね?」って意見は無しでお願いします
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明日は初討伐へ!




