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本日も宜しくお願いします
短目ですいません
後宮を抜け出して、クロピドでソロ冒険者として活動を始めて、1ヶ月が経った。クレマスが煩いのでそろそろクランに入団しようと思っている、今日この頃だ。
2日連日、西の森で狩りをして、1日休暇、1日鍛練を一巡として活動してきた。この間狩った魔獣は、ホーンラビット、ワイルドボア、ポイズンスネイク、ポイズンスパイダー、ゴブリン、コボルト、トレントだ。
ポイズンスパイダーは外骨格、糸、毒袋、魔石が売れる。肉は食べられない。ゴブリンは魔石以外の素材は取れないが、放っておくとどんどん増えて、人間に危害を加える。特に女性が、奴らの繁殖のために拐われるので常に討伐対象だ。討伐証明部位の右耳を回収する。コボルトは牙と毛皮、魔石が素材として売れる。トレントは全身余すところなく素材だ。
トレントの狩りは一般的に難しいと言われている。森の中でじっとされていると目視ではまず見つからない。奴等の攻撃手段は枝を矢のように飛ばしてくる遠距離攻撃と、2本だけある長い枝を鞭の様に振るってくる中距離攻撃があって接近を許さない。そしていざ、接近できても急所の魔石は幹の一番太い下部の中心にあって、こちらの攻撃が中々届かないときている。火系統の魔術攻撃には弱いが、素材が燃えてしまっては意味がないのと、森の中で火は延焼の危険があり使えない。
だが、リリカにとっては相性の良い魔獣だ。『索敵』があれば難なく見つけられる。遠距離攻撃は『障壁』で防いで、『飛斬』で2本の長い枝を切り落とし、『土槍』でトレントの真下から魔石を破壊する。流れ作業の様にトレントを狩っていく。この狩り方だと、2本の長い枝を切り落とす以外、素材を傷つけてないので買い取りに高値が付く。簡単な狩りだ。狩り過ぎて買い取り価格が暴落しない様に気を付けないといけない。
勿論、この倒し方では魔石の回収はできない。素材優先の倒し方である。魔石は他の魔獣からも採取できる。トレントの魔石が他の魔獣より優れていると言うことはない。これに対し、トレントの枝や幹は素材として非常に優れており、様々な物に加工される。魔力との馴染みがよく、更に普通の木材に比べて非常に硬く耐久性が高いからだ。例えば一部の魔術師が好んで使う魔術媒体である杖や、弓矢、槍や戦斧の柄、盾などの冒険者向けの物から、家具や建具、額縁など貴族向けの物まで幅広く使用されている。
そんな風に、定期的にそれなりの量の魔獣を狩って、素材を売っていると、やはりと言うか、当然と言うか、噂になっているらしい。「一人で稼いでいるガキがいる」と。そうなると、絡まれる。
今も絶賛絡まれ中だ。
「坊主、あり金全部出しな。最近稼いでるって知ってるぜ」
ついさっき、冒険者たちからあるクランへの強引な勧誘を受けたのだが、明らかに奴らの良いようにしか使われない気配があった。悪い噂の絶えないクランだ。なので奴らを撒いて路地に逃げ込んだら、今度はこれだ。
「渡すかよ、ばーか」
捨てゼリフを残して、走り出す。3人の破落戸が追いかけてくるが、『身体強化』と『索敵』を発動したミレイが冒険者にも成れない様な破落戸に負ける筈がない。奴らを武力で黙らせる事もできるが、それをすると報復合戦に突入して面倒な事になるのが目に見えているので、できるだけ逃げに徹している。こういう輩を始終警戒し続けるのは無駄に疲れる。そろそろ勘弁して欲しい。
路地を出る瞬間『隠密』を発動して、そっと道の端に寄る。遅れて路地から飛びだしてきた破落戸が、私を見失って、人波を乱暴に掻き分けてキョロキョロしている。暫くそうやって探していたが、やがて諦めて去っていった。
ソロは狙われる。クランに属せば、そうそう要らんちょっかいは出されなくなると思う。この1ヶ月で色々なクランの噂を聞いたり、ギルドで素行を見かけたり、西の森や街中でいちゃもん付けられたりと、色々見聞きしたお陰で、クランの良し悪しが分かってきた。“蒼天の鷹”と言うクランが一番良さそうだと思っている。最初にクレマスに勧められた所だから、奴の思い通りになる様でちょっと癪に障ると言うか、反発心を感じなくもないけれど、そんな理由で盲目になりたくない。
クラン“蒼天の鷹”のランクは金級だ。本当かどうかは知らないが、白金級も間近だと噂されている。
“蒼天の鷹”の拠点の場所はクレマスに聞いて知っている。明日あたり、行ってみるかな。
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明日はクラン加盟へ




