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本日も宜しくお願いします
戦闘シーンを書くのは苦手です
バシュッ
鋭い音とともに、風属性の中級魔術『飛斬』がホーンラビットの首を刎ねた。ホーンラビットは数歩走った後、崩れる様に地面に倒れこんだ。
「よしっ」
拳を握って突き上げる。これで5匹目だ。前世でも初心者時代によく狩った獲物だ。
ギルドに登録した翌日、朝早くからリリカは西の森に来て狩りをしている。
「もう少し深く入るかな」
しゃがむことなく、『引寄』で拾い上げた獲物を『収納』に入れて呟く。今のところ森の辺縁が目視できる距離で狩りをしている。槍での戦闘の腕を試す相手に出会うためには、もう少し森の奥に入る必要がありそうだ。
『索敵』と『隠密』を発動しながら静かに森の奥へと分け入る。暫くそうやって森を進むこと1時間。『索敵』に魔獣の気配が引っ掛かった。この大きさはワイルドボアかな。ワイルドボアだったら良いな。肉が高く売れる筈。半ば希望的観測も交えた『索敵』結果に期待しながら獲物を目指す。
果たして、見えてきた魔獣はワイルドボアだった。重量で言うとリリカの3倍はありそうな大物だ。
(よしっ)
内心で拳を握り、狙いやすい位置へ移動する。ワイルドボアは前足で土を掘り返しながら何かを食べている様だ。食事に夢中になっているのは好都合だ。『隠密』を再度発動し直して、ゆっくりゆっくり移動する。かなりの時間をかけてワイルドボアの右側に回り込んで、15歩ほどの距離まで近づいた。『収納』から投擲棒を右手に出し、素早く投擲する。狙いを違わず、右前足に刺さって肘関節を破壊した。
「ピギャッ~~! ブモォ~~~!」
耳をつんざく悲鳴の後、怒りの咆哮を上げて、自分を傷つけた犯人に向けて3本脚で突進してくる。投擲の様な鋭い動きをすると『隠密』は解けて、簡単に見つかってしまうのだ。
重心を落として槍を構える。既に『身体強化』は発動してある。間近に迫った時、ワイルドボアは頭を下げて、己の身体の半分近い長さの牙を土を抉るように下から上へと振り上げて攻撃してきた。しかし、リリカは牙の届く場所には既にいなかった。攻撃がくる直前、大きく跳躍していたのだ。宙へ舞い、身体を反転させると『障壁』の足場を蹴って、リリカの姿を見失い戸惑うワイルドボアの背後から、魔力を纏わせて貫通力を上げた槍を突き出す。
「は、ぁあ!」
重い一撃を、ワイルドボアの頭部へ喰らわせた。
「ギュワァ~~~!」
頭を半分吹っ飛ばされたワイルドボアが断末魔を上げて走り出す。脳を破壊されても反射的に体が動くのだ。しかし、最初の投擲で右前足の関節を破壊されているワイルドボアの走りはぎこちなく、10歩ほど走っただけで脚をよろめかせ、ついには大きな音を立てながら地面へと倒れた。それでもまだ立ち上がろうと四肢をジタつかせているワイルドボアに止めを刺す。槍を素早く心臓に突き込むと、ピクピクと数度痙攣した後、漸く完全に動きを止めた。
「ふぅ~」
素早く槍を引き抜いて、『引寄』で投擲棒を回収してから、ワイルドボアを『収納』に入れた。投擲棒と刀身の血液を水魔術で洗い流して、また獲物を探して移動を開始する。
▲▽▲▽▲▽
フォレストウルフやスパイダーエイプの群れなど、単独で相手するには無理がある魔獣は上手く避けて、危なげなく狩りを終えたリリカは昼過ぎに西の森の外縁部に戻ってきた。朝のうちに見つけておいた小川の川縁で獲物の解体をする予定だが、まずは昼ごはんだ。後宮に居た頃に『収納』に入れておいた食料を取り出す。
さっさと食べて、休憩もせずに本日の獲物の解体作業に移る。本日の成果は、ホーンラビット5匹、ワイルドボア2匹、ポイズンスネイク3匹だ。
近くの丈夫な木の枝に、ワイルドボアの後ろ足に結った綱をかけて固定し、獲物を宙吊りにする(かなりの重さだが、そこは『身体強化』にものを言わせて持ち上げた)。
首を切って血抜きしながら、素早く腹を裂いて取り出した内臓を川原に掘った穴に捨てる。そして、川下に首を向けて川に浸けておく。ホーンラビットも同じように血抜きと腹抜きをして川に浸けた。獲物が流されない様に大きめの石で固定しておく。
川に浸ける意味は、急速に肉を冷やす事と、最初の血抜きで抜け切れてない血をさらに出すためだ。肉が傷んだり、味が落ちたり、臭みが出る原因はバイ菌だ。バイ菌が増える条件とは、血と獲物に残った体温だ。その条件を取り除くのが美味しい肉を得るための技術なのだ。
ホーンラビットとワイルドボアを冷やしている間に、ポイズンスネイクの解体をする。ポイズンスネイクは血抜きだけで大丈夫だ。何故なら肉には毒があり食べられないからだ。皮を剥いで、喉元にある毒袋を破かない様に取り出す。心臓の辺りにある魔石を取り出したら残りは、穴に捨てる。剥ぎ取った素材を『収納』に入れて、穴の中の廃棄物を火の魔術で燃やしてから埋めておいた。
ホーンラビットとワイルドボアが冷えるのには、もう少しかかるだろう。川原に腰かけて休憩する。
獲物が充分冷えた事を確認して、ワイルドボアを水から引き上げて、解体を始めた。皮を破かない様にかつ肉が皮に残らない様に丁寧に剥がす。魔石と牙と爪を引き抜く。後は、体をパーツ毎に切断して、骨から肉を剥がし、適当な大きさに切り分けて終了だ。
ホーンラビットの剥ぎ取り部位は、魔石と毛皮と肉と特徴的な額の角だ。こちらも丁寧に剥ぎ取りを行って、全ての素材を『収納』に入れて、本日の狩りは終了だ。帰路につく。
▲▽▲▽▲▽
ギルドに行くと、夕方の時間帯であるためか、賑わっていた。みな依頼終了の報告に来ているのだろう。リリカは素材の買い取り窓口に並ぶ。周囲の冒険者たちが見慣れない新人冒険者に好奇の視線を向けてくる。
絡まれるかと心配したが、ここへ来ているのはクランの代表だ。考え無しに行動するアホはいなかった。順番が来たので、背負い袋から取り出すふりをしながら『収納』から本日得た素材を次々に出してゆく。
今日の買い取り窓口の職員は優男クレマスだ。口笛を吹いて、驚きを口にする。
「ヒュー♪ 今日一日でこれだけ狩ってきたの?一人だよね?自信過剰なガキかと思ってたけど、違ったようだ」
「まぁね」
「じゃあ、査定するからこの札を持って待ってて。あっちの支払い窓口から番号で呼ばれるから」
「分かった。時間はどれくらいかかる?」
「なに、直ぐに終るよ」
クレマスの声が聞こえてたのだろう。報告窓口に並んでいる冒険者たちがこちらを見ながら仲間同士で何かを話し合っている。が、ちょっかいをかけてくる者はいなかった。
程なくリリカの番号が呼ばれた。全部で大銀貨2枚と小銀貨3枚になった。内訳は、ワイルドボアが1体につき銀貨1枚、ホーンラビットは1体につき小銀貨2枚、ポイズンスネイクは1体につき小銀貨1枚だそうだ。買い取り価格は魔獣の種類ごとに固定値があり、素材の欠けや品質で加算または減額するそうだ。リリカの提出した素材は加算がついたそうで、剥ぎ取り技術を誉められた。
(買い取り価格は悪くないな。剥ぎ取りはまぁ、前世で4年近く冒険者やってたし、冒険者になる前には村でも解体の手伝いをしていたからね)
暖かくなった懐にホクホクしながら、西門の近くに取った宿へと帰っていった。宿は治安と食事を重視して選んだため少し値が張ったが、長期滞在をすることで割引してもらえた。それに今日の稼ぎを考えると、けっこう余裕がありそうだ。
リリカと書いて、ミレイとルビを付けているのは、リリカがミレイと名乗っているのを表すためです
お金の価値は、ざっくりですが、白金貨 1000万円 、大金貨 100万円 、金貨 50万円 、小金貨 10万円 、大銀貨 1万円 、銀貨 5000円 、小銀貨 1000円 、大銅貨 100円 銅貨 50円 、小銅貨 10円位で考えています
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