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本日も宜しくお願いします

誤字報告頂き、ありがとうございます!

あんなに読み返したのに…って言うほどありました

そして、読み返しをあまりしなかった幕間に大量に誤字がありました(-_-;)


今話は、どんどん時間が経過します

後宮なんて、もうごめんだ!

 今年も王太子殿下の誕生祝賀会の時期になった。

 リリカの家にも招待状が届いていた。留守中に応接室のテーブルに置いていった様だ。マルボが持ってきたのかな?


「着ていくドレスがないな」


 流石に手直しでは、どうにもできないくらいに成長してしまった。ドレスのような高価な物を買う金もない。欠席したら何か言われるかな? 何か言われたら、「金くれ!」って言えば良いか。


「うん、欠席だな」


 念のため、当日は自宅待機をしていたが、誰かが探しに来る様子も、文句を言いに来る様子もなかった。後日、侍女の井戸端会議で確認したが、私が居なかった事に誰も気づいていないか気にしていない様子だった。


 日常生活に変わりはない。相変わらず王城で生活しており、フィリンとも仲良しだ。

 最近、武術の鍛練は、槍術だけじゃなく体術や剣術も少しやっている。槍術ほど極める気はないけど、いつでも槍を使って戦えるとは限らない。相変わらず、兵士に交じって鍛練している。


 魔術の方は、『隠密』『索敵』『鑑定』『収納』『引寄』『障壁』『移動』の習熟度がかなり上がった。

 『隠密』は裏の仕事を専門にする訳じゃなければ十分な程度だ。

 『索敵』は屋外では400歩ほどの距離まで可能であるし、建物内でも、壁の向こう側の様子がはっきりと分かる。

 『鑑定』は初めて見るものを調べたり、特性を調べる事もできるようになった。

 『収納』は一部屋分の大きさまで広がった。

 『引寄』は20歩位の範囲のものを引き寄せられる。発動速度も上がったので、例えば投擲した武器を素早く回収するとかも可能だ。なので、武術鍛練の時間にナイフや暗器の投擲練習も始めた。

 『障壁』はかなりの強度を出せるのでそれなりの攻撃から身を守れるだろう。5層まで重ねがけも可能だ。高速戦闘時に空中に足場を作って変則的な動きをやれるくらいに発動速度も速い。

 『移動』は目に見える場所という制約はあるが、移動可能な距離が20歩数ほどに伸びた。

 このまま習熟度をさらに上げていきたい。

 また、武器に属性の魔力を纏わせる事もできるようになった。これは刃の切れ味が上がったり、強度が上がったりする効果がある。

 まぁ今のところ、そこまでの敵と戦う予定がある訳ではないのだけどね。私はどこへ向かっているのかと思わなくはないが、良いのだ。前世の私を越えられたら満足なのだ。そして前世よりも長生きする。これが目標だ。

 目標低いなっ!






▲▽▲▽▲▽


 さらに時は進み、春、リリカは14才になった。


 この2年間も色々な事があった。まず、昨年は初夏に王太子妃殿下にお子が生まれた。王子だ。そして昨年の暮れに第一側室と第二側室が懐妊した。出産予定日は春ごろだそうだ。一昨年の冬の王太子殿下の誕生祝賀会は妃殿下懐妊祝いを兼ねていて、昨年冬の王太子殿下の誕生祝賀会はご側室たちの懐妊祝いを兼ねていたので盛大だった様だ。招待状は届かなくなった。まぁ、届いても参加しないけどね。

 そして今年の春になって、王太子殿下は兵を率いて出兵した。東の方で大規模な反乱が起きて、その鎮圧のためらしい。


(この遠征に出た王太子殿下は半年程で帰還したが、数ヶ月後に今度は北へ、次は南へと頻繁に反乱鎮圧の遠征に出ることになるのだった)


 そして王城の友達、フィリンが結婚した。ある兵士と良い感じになってるって聞いてから1ヶ月も経たないうちだ。本人は仕事を続けたがっていたが、ご主人の希望で辞めることになった。友達はフィリンしかいなかった。他人と深く関わると、身バレの危険が高くなるので複数の人と関わる気はない。フィリンと友達になったのも、たまたまだった。

 フィリンが王城を去って、軽口を言い合える相手が居なくなったことは、私にとって予想以上に寂しい事だった。なので気持ちは落ち込み傾向だ。


 それから、兵士の訓練場に行かなくなった。以前は新兵に混じって鍛練していたので紛れていたが、リリカの武術の錬度が上がって目立つようになってきたのだ。流石に軽い『隠密』では紛れるのが難しくなってきた(強めに『隠密』を発動すると、存在認識すらされなくなり模擬戦さえできなくなる)。これ以上ここに出入りしていると、「お前はいったいどこの所属の誰なんだ?」となりそうなのだ。なのでまた、後宮の家の裏の林で自己鍛練の日々だ。体もできてきたので、軽く『身体強化』の魔術をかけて動く訓練も始めた。槍は王宮の訓練場で借りてきた訓練用のものを使っている。


 魔術の訓練は、基本的に個人活動であるため、あまり目立たないので、こちらはまだ訓練場に通えている。攻撃魔術は、中級を終えて上級へと進んでいる。

 火、風、水、土の4属性の攻撃魔術に挑戦したが、火と水属性の上級魔術はうまく発動できなかった。適性がないのだろう。残念だ。

 風と土属性の上級魔術は『竜巻』と『土車輪』が発動できた。

 『竜巻』は文字通り竜巻を起こすのだが、竜巻の中には無数の風で作った刃が籠められていて触れるものを切り裂きまくるエグい魔術だ。

 『土車輪』は土の巨大な車輪を生み出し、その車輪が回転しながら周囲を走り回る魔術だ。車輪の縁は鋭利になっており、触れるものを切り裂きながら、あるいは下敷きにして踏み倒しながら暴れまわる。こちらも中々にエグい。習熟度が低いのでまだ車輪の規模は小さいし、持続時間も短いが。


 そんな色々な変化があったが、私の生活は相変わらずだ。鍛練と王城の仕事。後宮には寝に帰るだけ。

 ただ、最近のリリカは孤独だ。フィリンがいなくなって、兵士の訓練に参加しなくなって、後宮では『隠密』『索敵』を常時発動しているため誰にも存在を認識されない。マルボはここ数年顔も見ていない。王太子からの接触は一切ないし、王太子妃殿下や側室たちはリリカの存在を忘れてしまったかの様に無視している。母からの手紙も届かない。

 この先、この孤独な生活が延々続くのかと思うと、気が滅入ってくる。今まで、人質としての責務やエタノルの国民の安寧を考えると、私個人の将来について夢を見たり、具体的に考えたりすることはできなかった。しかし最近は、後宮を出て冒険者になる事を真剣に考え始めた。いや、具体的な方法について考え始めた。


 最近、街で冒険者についての情報収集を始めた。王都では街中での仕事依頼が多い様だ。スラムの掃除や、貴族屋敷の護衛とか酒場や商館の用心棒。行商人の護衛はたいてい専属で雇われている様だ。他の街に行くと、魔獣討伐系の依頼が増えるようだ。

 驚く事に、ミレイが冒険者をしていた時代とは大きな変化があった。ミレイの時代、冒険者は個人でギルドに登録して、ソロもしくは仲間数人でパーティーを組み、ギルドから依頼を受けていた。


 それよりも、もっと昔には酒場などに集まってきた情報を元に、冒険者が個人で依頼主と交渉して仕事を受けていた時代があった。依頼主の質は様々で、情報に偽りがあったり、報酬がきちんと支払われなかったり、罠に嵌められて借金奴隷にされたりと色々あったらしい。だから冒険者は仕事を受ける際に自分で情報を精査する能力が必要であった。そんなだから、経験不足の若い冒険者の致死率が高く、ベテランが育たない。そもそも冒険者の成り手も少ない。


 そこで冒険者の有志が集まって、仕事を冒険者に斡旋するギルドを設立したのだそうだ。ギルドは情報を精査した上で、冒険者の力量にあった仕事を割り振る。そのためにランク制度を設けてその冒険者の強さを測る指標にしていた(ミレイは6級までしか上がれなかった)。そのおかげで冒険者の育成が進み、致死率が下がった。冒険者の成り手も増えた。そうやって冒険者は比較的安全に依頼を受けられる様になったのだった。これがミレイの時代だ。


 冒険者が守られる様になると、今度は別な弊害が出てくる。安易に冒険者になる人間が増えてきた事で、冒険者の質にばらつきが出てくるようになったのだ。口ばかりで実力を伴わない者がいたり、嘘の報告をしたり、依頼に誠実に対応しない輩も出てくる。冒険者の精査もギルドの仕事だが、あまりに数が増えてくると対応しきれない。また、仕事がうまくいかない冒険者が盗賊に身を(やつ)すこともある。


 そこで近年は、冒険者にクランを組ませて、ギルドはクランに仕事の依頼を出すという仕組みになったそうだ。依頼の精査はギルドが行い、冒険者の育成や精査はクランが責任を持つということだ。クラン内では固定のパーティーを組んだり、または依頼(ごと)に最適なパーティーを組んだりして依頼を(こな)す。またクランは加齢や怪我で引退した冒険者の受け皿にもなっている。一線を退いた経験豊富な冒険者がクランを運営し、若い冒険者を訓練し導く。クランにも大小、質、雰囲気など色々と違いがあって、どのクランに所属するかで明暗が分かれそうだ。

 前世で行われていた冒険者個人へのランク付け制度は無くなっており、今はクランにランクが付けられている。ランクの種類は上から、特級、白金級、金級、銀級、鉄級、銅級、級なしだ。

 またギルドは、討伐した魔獣の素材の買い取りは冒険者個人からも受け付けている様だ。


 前世(ミレイ)は故郷の森での討伐依頼を受けられずに人生を終えた。だから、今世(リリカ)もできれば討伐系を受けたいと思っている。王都を離れて、他の街を活動拠点にした方が良さそうだ。どの街に行くのか、移動手段など必要なことを調べなきゃ。そして成人したら、後宮(ここ)を出ていこう。




毎日更新中

明日は幕間

明後日は新章が始まります

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