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嘆きの果ての叛逆神話【ジャンヌダルク】  作者: ぱいせん
第一章 聖ヴラトア西方学園編
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第二十三話 やっと見つけた

あけましておめでとうございます。

ペースはかなり遅いですが、よろしくお願いします。

 朝の起床は時刻板の9時。とてもゆとりのある起床を迎えられる。


 朝はその時間に部屋に備え付けられている魔道具が、ベルを鳴らして起こしてくれる。

目覚まし時計の役割だ。やはりコレがないとね。

大体、起きて一時間後位に学部毎の点呼がある。

少し位の遅れならちょっと怒られる程度だが、遅れ過ぎると罰として寮の掃除をさせられる……らしい。

流石にまだそんな人は居ない。


 朝食は大食堂まで移動しなければならない。

寮の大扉を開けると、噴水がある広場を挟んで向かい合っている男子寮からも生徒がぞろぞろと出てきた。

全生徒が同じタイムスケジュールで動いている為、当たり前の光景になる。


 あくび混じりに見慣れない道を眺めながら歩いていると、後ろから一際存在感のある声が聞こえてきた。


「シーーン!おはよーーーう!」

「ヒメーーィ!おっはようございまーーーす!」

「「おはようございますっス〜!」」


 朝からまあ、元気な事で……

朝ご飯食べる前から胃もたれしそうな気分ですわ……


「うん、おはよう……見られてるから、さ、もうちょい声抑えてね」

「あ、ごめん……で、昨日大丈夫だった?なんか、ジルがやらかしたりとか

 なかった?」

「おい、アルト。お前よぉ、俺がヒメに害を成す事をする訳ないだろ」

「ジル様はお前よりヒメの事を気にかけているっス!」

「……ふっ、出会って数週間の奴らが何言ってんだか」

「あ?こんの……」

「ねぇ、キ ミ た ち……?」


 寮が別々で本当よかった。


 こんなの、一日中やってたら疲れ果てるわ……

アルトはなんか目が充血していて血走っているし……

慣れない環境で寝られなくてテンションおかしいのかな、今。


 と言うか、心配とか色々気にする立場は護衛である僕なんだけどね。


 逆じゃない?普通


「あっ……/// 朝からそんな目で見られるなんて……」


 コイツはブレないなぁ。



 大食堂は自由席。

それぞれ仲良しグループや研究会仲間、派閥なんかで集まって座っているみたいだ。


 中でも派閥は凄い。

日頃から集団行動で動いていて、自然と目立つし目を惹く。

僕らの学年にも既にあり、二十人程が入っていると聞く。

初等部からの生徒らしいので、詳しい事はわからないが……

そして、まさにその派閥の中心人物が先程からチラチラとこちらを見てくるのは何故なのだろうか?

銀髪のショートカットの女の子で……んー?……ってあれ?

よく見たら、入学式で僕にガンつけてきた子じゃない?

僕以外は見られている事に全く気がついていない。


「シン、そっちは今日何するの?」

「ん〜っと……魔術の基礎理論と、人族(ヒト)の歴史だったはず」

「へぇ〜、そんな事……ねぇ?」

「そんな事だぁ?随分よゆーだなアルト」

「そうだよ?基本は大事だよ?何やるにも基本が生きてくるんだからね」

「え、え?……い、いやぁ、別にみくびってる訳じゃあ……」


 アルトは少し余裕ぶってるみたいだ。

そう言うやつから大体足元すくわれるから危ない。


「ねぇ、アルト……あの子知ってる?」


 僕はアルトに小声で話す。

さっきから見てくる女の子の方へ目配せをし、アルトに存在を気づかせる。


「……?誰?全く知らないね」

「だよね〜……」


 う〜ん……まあ、アルトは有名になったらしいし、注目は他の生徒からもかなりあるから……考えすぎなのかぁ。



 大体、11時位に授業が始まる。

全員が揃ったのを教師が確認してから始めるのだ。


 さて、この世界での正式な初授業は”国の歴史”だ。

デューク先生には、「虚偽、改竄は数え切れない」と言われているので鵜呑みにする気はさらさら無い。

どこの世界にもそう言うのはあるんだ、と親近感を覚えたくらいだ。

とは言え、デューク先生も全てを教えてくれた訳では無いので、どんな話をしてくるのかは興味はある。


 そして教師は授業を進める。


 血鬼族(ヴァンパイア)の奴隷同然だった人族(ヒト)が、種族権を得てたった百年と数十年でこの世界最大の大地である「天元の大地」の下腹部に国を創り、ここまで発展させたのは確かに凄い。

従来の考え方では信じ難いが、魔術なんてモノがあるから十分可能なのだろう。

これは信憑性が高いかも知れない。


 そして、それを成し遂げたのが人族(ヒト)の三英雄。


”イブ=アウス”は天賦の主導力を持って民を導き、

”マグドギール=シュタイン”は叡智と魔術で国を支え、

”ユタカ=コンゴウミネ”は強固な力で民を守る。


 最後の人は初耳だった。

初耳だったけど……また聞き馴染みのある単語だった。

この人は僕と近い境遇になっている可能性が高いかも知れない。

今すぐにでも聞きに行きたい位だが、この人も”神使”だと言うから今は不可能だろう。

”神使”にして”神聖騎士団総団長”、それがこのユタカ=コンゴウミネという人。

聞くに、神使になってまだ日が浅いんだとか。

浅いって言っても、数年は経っているみたいだけど……


 この国の首都は”アウス”と言うらしいが……

僕は自分の名前の一部を首都にする勇気は持ち合わせていない。

ここからかなり離れているらしく、イブ=アウスもそこに居るらしい。


 なるほどね……そこを落とさない限り僕らに勝ちは無いって事ね、ふむふむ。


 ……って、無理じゃね?どうするのコレ本当……?

この国は四つの地区に一つづつ大きな都市があり、地区自体の大きさは前の世界の小国位はあるだろう……


 グレイ……本当に大丈夫か、これぇ……


 そっからはひたすらいかに人神は凄いかーとか、訳の分からない逸話を聞かされたので割愛する。



 昼を挟んで二つ目の授業。

コレは、僕が楽しみにしていた魔術の授業だ。

魔術は今のとこ初級程度しか使えないので、早いところコツとか知りたい。


 授業は進む。


 そもそも前提として、この世界には大量の”微精霊”がウヨウヨいるらしい。

誰の目にも見えず、そこにいる……酸素とかと同じなんだろうか。

魔術はその微精霊の力を借りて発動するものだ。

魔術式は術者の魔力に反応した微精霊の集合体であり、言わば餌に食いついた魚の様な感じ……だと言う。

だから魔力を多く込めれば出力が上がり、より強力な魔術が発動できる訳だ。


 ただ魔力を込めればいいって話でもなくて、様々な段階を踏まないと指定した魔術は発動しない。


 例えば初級魔術の”火球(イーグニス)”は、ただ魔術式を展開しても手のひらに炎が出来上がるだけ。

そこに温度、射程距離、放出速度のイメージを魔術式に反映させるとようやく”相手を攻撃できる”のだ。


 想像力と知識量が大事で、上位の術者ほど発動までに時間がかからない。

込める事ができる魔力が増えたり、追加設定が向上したりすると必然的に中級、上級と上がっていく。

教師曰く、最上級魔術というものが存在するらしいが、人族(ヒト)で扱えるのは片手で数える程度しか居ないと言う。

デューク先生は使えそうな気がするけど……どうだろう……


 さて、今のは基本であり次からが問題なのだ。


 先程のはあくまで”単体”であり、次からが”複合”となる。

魔術と魔術を合わせて、特定の魔術を発動するというもの。


 例えば、氷雪系魔術は”水”と”大気の温度操作”の魔術を組み合わせると発動する。

こう言った魔術を”限位魔術”と言うそうだ。

合わせる魔術によって数字が上がり、難易度も跳ね上がる。

先程の氷雪系魔術は”第二限位魔術”になる。

人族(ヒト)が扱えるのは第五限位魔術が関の山らしいが、伝説や噂程度の話になるらしい。

第二限位を使えればエリート、第三者限位を使えれば天才……と教師は熱弁していた。


 まあ、僕は無理そうだな。


 一つでもキツいのに、一つキープしながらもう一つって……意味がわからない。

アルトは氷雪系を普通に使っていたから、第二限位はできるって事か……

あれ?あの子意外と頭いいのか?



「いやぁ〜、退屈でした。あんな初歩の事なんて皆んな知ってるっつー話ですよ。

 ねぇ?ヒメ?」

「う、うん。そうだねぇ」


 今日の授業が終わった。


 授業は一つ二時間が、午前と午後に一回づつありその後に自習が一時間ある。

それが終わると各研究会へと生徒達は向かう。

コレが一日の流れだ。


「ジルって限位魔術使えるの?」

「もーちょいって感じですね〜、まあ直ぐに使えるようになって見せますよ!

 ヒメはどうなんです?」

「僕、魔術苦手なんだよね……初級しか使えないから魔力任せで誤魔化してる」

「ほぉ……、意外ですねぇ」

「なにさ?何か言いたげな顔して」

「いやっ……// そんな顔して無いですよ!?(ヒメのジト目まじ最高だな……)」

「そうだ、次の自習で魔術教えてよジル」

「え!?俺でいいんですか?わかりました!」


 きっとコツを掴めば大丈夫だもんね。

……別に覚えなきゃダメって訳でも無いだろうけど。

なんとかなると思いたい。



 [サイド・アルト]


 私の名前はルーク=ギャンスパー。四十五歳。


 元神聖騎士団第三支団の分隊長をやっていたが、今は引退して聖ヴラトア西方学園で剣術教師をやっている。

今年で五年目で、教師の中では比較的若い方だ。

今でも生徒と手合わせをしているが、歳をとったとはいえまだまだ生徒に引けは取らない。


 今年の担当は高等部一年だった。

なにやら十一歳で飛級入学をしてきた子がいるらしい。

にわかには信じ難いが……上位の騎士家系出身でコネとかなのか?

まあ、あっても不思議ではない。


 真偽を確かめたい私情で、かなり早い段階ではあったが生徒同士で試合をしてもらった。

理由は生徒の実力を知る為、とでも言えばいいだろう。


 その子、アルト=ラウェインの強化魔術は一般騎士より優れていて、私は目を疑った。

アルト以外の子は十六歳で、体格的に圧倒的不利のはずがそんな事は微塵も感じさせない身のこなし。

相手の木剣が小枝に思える程に、力負けしていた。

そうして、気づけば彼は涼しい顔で歳上を打ち倒していた。


「次、誰?」


 本物だった。

子供とは思えない戦い慣れした風格に、期待と気味悪さが同時に走る。

幼少期の英才教育がこうさせたのか……?

コレほどのセンスは血統も影響がありそうだが、彼は田舎出身の下流人だと言う。

現在の団長達も、血統では無く実力で上がりつめた者が結構いる。

私は新たな騎士家系の歴史を目の当たりにしているのかも知れない。


 本当は私も手合わせをしてやろうと思ったが……


 やめておこう。



 [サイド・シン]


 ジルは教えるのに向いていないタイプだった。


 擬音と感覚で伝えてくる一番困るタイプだ。

トレフとトイラはそれでわかっちゃってたから、やっぱずっとついてきただけあるな。


「あ、シン。どうだった?授業は?」

「うん。歴史はつまんなかったけど、魔術は興味深かったよ。アルトは?」

「いきなり試合させられたけど、どいつもこいつも大した事なかったよ」

「流石はアルトくん」

「ふふん、どうだ?ジル?お前も俺とやってみるか?

 まあ、結果は見え見えだけどなぁ?」

「あぁん?お前調子乗んなよなぁ?」


 6時の夕食を終えて、寮に戻る最中。

もう日は落ちかけている。


 このまま寮に帰ってケンの話をただ聞かされながらも、ベッドでゴロゴロしながら読書するというルーティンに入るかと思われた矢先だった。

後ろから知らない声に呼び止められたのだ。


「アルトさん、少しよろしいですか?」

「「??」」


 共に行動していた五人は一斉に振り向く。

そこに居たのは、銀髪のショートカットでとても可憐な人形の様な少女だった。


 ……ってよく見たら、僕を睨んでいた子じゃないか!?


 ……あ!はは〜ん。さては告白とかかなぁ?

だからかぁ……そりゃあ睨まれても仕方ないねぇ。

こんな早い段階で……凄いモテ男じゃないか。


「…!これはこれは、アリシア様じゃあないですか。一人とは珍しい」

「からかうのはやめなさい、ジル。今は貴方に用事は微塵もありません」

「はあ……」


 ん?ジルの知り合い?


「ジル、知り合い?」

「ええ……ラクト地区でも一位、二位を争う名家”モルハデウス家”長女の

 アリシアです。ちなみに、同学年なんですけど…ねぇ……」

「え、まじか」


 自己紹介も飛級の人しかなかったし、仕方ないと思うんだ。

しかし、随分なお嬢様に目をつけてもらったもんだな……僕もアルトも。


「私が一人になれる機会を探っていました。

 もう少し早く接触したかったのですが……。

 アルトさん、単刀直入に聞きますが”ラウェイン”はいつから名乗っている

 ものですか?」

「「!?」」


 何だよ、今の質問……


 そんなの、偽名なのか疑っているって言っているもんじゃないか。

普通に過ごしていたら、そんな事思わないだろう。

騎士団の情報網なのか?僕らが目立ち過ぎたのか……?

……周りには魔力反応は無いみたいだ。

伏兵等はいないみたいだけど……気付かれたらこの娘を消さないといけなくなるのか……?


「い、いやぁアリシアさん?いつからって……そりゃあ生まれた時からでしょう?

 僕はアルトの幼馴染ですから、証明できますよ?」

「チッ、貴方には聞いていませんよ?女狐さん」

「めぇっ……!?」


 は?なんなんだこの娘?失礼極まってないか?

びっくりし過ぎてどっか踏まれたヤギみたいな声出たわ。

気付く気付かない関係なく、やり返したくなってきた……


「シンの言う通りだけど?なんで?」

「そう……ですか。何を刷り込まれたのかは知りませんが、一緒に帰りましょう。

 アルトさん……いえ、お兄様」

「「はいぃ?お、お兄様ぁ?」」


 突然の発言に面食らった僕とアルトだったが、彼女……アリシアの顔は真剣そのものであった。


読んでいただきありがとうございました。

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