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嘆きの果ての叛逆神話【ジャンヌダルク】  作者: ぱいせん
第一章 聖ヴラトア西方学園編
19/27

第十九話 ハプニング・デイ

次週は休載とします。

「ありがとう……ございます」


 ロンベイルに繁華街の宿屋まで送って貰った。

彼の……何だか商会の取引先らしく、融通が効くらしい。

五階建で、煉瓦造りの立派な建物だ。

浅い夕日に照らされて、ガラス窓がオレンジ色に光っている。


 主要都市なだけありかなり発展していて、前の人生に見た漫画やアニメの様な”中世ヨーロッパ風”よりも少し進化している印象を受ける。


「……お二人とも、お疲れでしょうからゆっくり休んでください。さあ、どうぞ」


 僕らがショックを受けているのを察したロンベイルが、先導して正面の入り口の前に立つと、精巧な木枠に透明なガラスが埋め込まれた二枚の扉が、一人でに横へスライドした。


「「うわぁ!?」」


 僕とアルトの声が珍しく揃った。

おいおい、まさか。あるのか?自動ドアが……?


「これ……どうなってるんですか?」

「この自動開閉は、多重魔術刻印というものが使われているんです。

 他国の技術なんですけどね……床に感知の術式があって、それが作動すると次は

 扉を開けるための術式が作動するんです。

 コレを導入するのはかなり値が張るので……良い所にしかありません」

「「へぇ〜〜」」

『ほぉ、よく考えたもんじゃ』


 なるほどね、科学技術が無くても魔術が有能過ぎるから問題無いって訳ね……

しかし、よく思いついたなぁ……自動ドア。

結局の所、生き物は少しでも楽したいと思うのはどの世界でも一緒なのかなぁ。


「では、話をつけてきますので少々待っていて下さい」


 ロンベイルがフロントに顔を見せると、偉そうな人が出てきて話し込んでいる。

あ、今何かマズそうな顔でこっちを見たぞ…‥?

そんな事を思っていると、ロンベイルが気まずそうに歩いて来た。


「お待たせしました……すいません、一部屋空いてはいたのですが……

 大きいベットが一つしか無い部屋の様でして……」

「あぁ、なんだ。ビックリしましたよ。そんな顔で来るからてっきり空いて

 いなかったのかと思いました。その部屋で全然大丈夫です」

「え!?」

「え?なに?嫌なの?アルトは」

「あ……いや、何でもない」


 おい、格安で良い所に泊まれるんだから文句言うなよ……

と一瞬思ったけど、コレはそう言う反応じゃ無いな。多分逆か……忘れてた……


「そうですか!ならよかったです!では、早速手配して貰いましょう」


 ロンベイルがホッとした表情で、フロントで待っていた恐らく支配人に伝えに行くと、フロント一同が笑顔でこちらに会釈をした。

少し扱いが大層過ぎて気まずい気もする。



「さっきのは支配人の方ですか?」

「そうです。ここはウチの商会が経営しているので顔見知りなんですよ。

 あ、ここの部屋です」


 今居るのは五階。

エレベーターは流石に無いので、階段を上がってくる時にある事がよぎった。

”最上階は大体高い”と言う事を。

たかが五階かも知れないが、来る時に街を見た感じ高い部類に入ると思う。

大丈夫かな……後で高額請求とか……


「おぉ……!俺たちの部屋と大きさあんま変わらないね!シン」

「えぇ……!?そ、そうかな?こっちの方が広い気が……するかも……」


 バカ!そう言うのは相手を立てるんだよ!


「ははっ、故郷のご自宅はさぞかし大きな家なんでしょうね。

 狭いかも知れませんが、家だと思ってくつろいでください。

 では、私はコレで失礼します」


 僕は刺す様な視線でアルトにアイコンタクトを送る。

それに気づいたアルトは、ハッとした様に何かを感じ取った。


「色々ありがとうございました!」


 うんうん、そうだろう。わかっているじゃないの。


「本当にありがとうございました。それで、その……料金は?」

「結構です……と言いたい所ですが、それではシンさんの心は

 晴れないでしょう?」


 短い付き合いなのにそこまでわかるのか。

商人の観察力と言うやつなのかな。


「それは、ここまでされたら誰でもそうなると思いますよ」

「うーん……二週間ですよね?……では、銀神貨三枚……ですかね」

「わかりました。コレで」


 先生に聞いた話では、二週間の宿代は金神貨一枚位の出費が想定されていた。

銀神貨は十枚で金神貨一枚相当らしいので、半額以下になったのは結構大きい。

その話は普通の宿の想定だったので、この見るからに上質な部屋の金額はもっとするだろう。


「あ、そうです!コレを持っていて下さい。きっと役に立ちますよ」


 そう言ってロンベイルは、僕に名刺サイズの黒い厚紙を渡した。


「何ですか?コレ」

「それは”アディスリィ商会”の系列店で使える特別証です。

 結構値段が落とせますよ」


 へぇー、クーポンとかそう言う類のやつか。

ありがたいが、僕達を顧客にしようとするその姿勢は流石商人だなと感心する。


「ありがとうございます!」

「では、しばらく都市部に私は居ますので、何かあったらお願いしますね」


 そう言ってロンベイルは宿を後にした。



「よし、アルト。会場の下見に行くよ」


 まだ日が落ちきってないからギリ行けるだろう。

明後日は朝から受付に行き、そのまま実技試験だから場所を知っておきたいと思っていた。


「シタミって何?」

「どこにあるか見に行くって事。……てか、日程覚えてる?アルト」

「え?い、いや……覚えてるよ……?」


 嘘つけ。

打ち合わせの時、あくびして興味無さそうにしてたの知ってんだからね。

どーせ僕が覚えるからいいと思ってたんだろうさ。


「行く前に、何かあったら困るから魔力をギリギリまで抑えれる?」

「あー、ちょっと待って……俺はシンみたいにすぐ出来ないんだよ……」


 そう言ってアルトは目を瞑り、集中する。

僕は目を瞑ら無くてもイメージできる様になったけど、人それぞれ習得スピードがあるからね。

まあ、僕の場合覚えないとヤバい状況だったから……


「どう?シン」

「うん、大丈夫だと思うよ。じゃあ行こうか」


 先生から貰った入学関連の資料の中には、地図も入っていて大事な事はマークしてある。

この地図は一般用なので持って歩いても何の問題も無い。

幸いな事に宿から受付会場はそこまで離れていなく、行って戻って来たら日が暮れる位だと思われた。


「シン、また人が集まってるけど……一応見ておく?」

「うん、知っておかなきゃいけないからね。たとえ辛くても……」


 多くの人が行き交う大通りに、人が端に沿う様に集まっていた。

まるでこれからパレードが始まると言わんばかりの光景だった。

僕達はまだ小柄な体を活かして大人達を掻い潜り、前方まで来た。


「誰か来る……?のか……?」

「……アルト、魔力制御に集中して。……絶対押さえて」

『大丈夫じゃ。アルトはそこそこ出来とる。問題は無いじゃろう』


 僕はアルトの方は向かず、遠くの一点に集中しながら注意を促す。

感じる”魔圧(プレッシャー)”。隠さずに強い魔力(マナ)が近づいて来る。

ブルーノの本気は知らないが、普段の彼よりも強い印象を受ける。

民衆が見ている十字路の前方には何も見えない。左右どちらか……

恐らく初めて見る教会勢力に、緊張が走る。


「……あ!団長様だ!見えたぞ!」

「いつ見ても美しさと親しみが……」


 民衆のお目当て”神聖騎士団(ガルディアン)”が角を曲がって姿を現した途端、周りが急に騒がしくなった。

それに応える様に先頭の騎士が手を振っている。

兜はつけていなく、髪は桜色。鎧は鋼のドレスの様な形で、各所に差し色として紫が散りばめられている。


「アルト、絶対目を合わせないで……」

「……わかった」


 団長と言う単語が聞こえて来たし、アレが”第五支団団長”のレイシア=ディオーネだろう。

この場は一旦離れる……と言う選択肢もあるだろうが、いつかは対峙する存在だ。

一目見ておきたい。距離もある程度離れてるし、魔力制御も大丈夫。


「ありがとう〜☆うん、皆んな応援ありがとう〜☆

 そう、今から磔を回収しに行くの〜♪」


 レイシアは、騎士……と言うより、アイドルの様な振る舞いをしていた。

……なんか思っていたのと違うな、と感じ少し脱力してしまったその時。

刹那。

レイシアが野獣の様な速度でこちらの方を見た。


『シン!馬鹿者!お主が緩んでどうする!?』

「っ!……アルト、別ルートから行くよ!早く!」

「え?う、うん」


 え?揺らいだか、今?僕自身は感じられないレベルだぞ……?

アレが”六感”と言われるが所以という事なのか……?


「ケン、そんなにブレた?僕」


 アルトに聞こえない様に小声で話す。


『大多数の奴には分からんレベルじゃが、微弱ながらブレていた。

 それを感じ取られたんじゃろうなぁ、とんでもない小娘よのぉ……』


 くそ、完全に鷹を括っていた……そこまでか……

そんなの防ぎ用が無い。



「ん〜〜?」

「どうされました?レイシア様?……!?まさか?」

「……いやね、ネイト。あっちから変な魔圧(プレッシャー)を感じたんだよ☆

 確かにあの事件とも関係あるかもだから、見て来る♫」


 レイシアは軽やかにジャンプしながら、自らが感じた方へ足を運ばせた。


「お兄さんお兄さん。ここら辺に怪しい人居なかった?☆」

「へ?い、いやぁ居ませんよ?

 ……ん〜〜強いて言うなら子供なら走っていきましたが……」

「あれ……?うーん、子供は関係ないかな♪ありがとう☆」


 そう言ってレイシアは持ち場に戻った。

この時レイシアは、前に起こった消失事件の関係者かどっかの団長クラスが隠れて視察に来ていると思っていた。

あの会議に参加出来なかった第一支団の騎士ならあり得ると踏んでいたのだ。


(あの感じは……絶対団長級だと思ったのに……でも、感じた事無い魔力だった。

ん〜……今日は調子が悪い日?)


 レイシアはその場では自分に言い聞かせ、自分のやるべき業務に戻ったがしばらく心は晴れなかった。



「はぁ……はぁ……」

「はぁ…ちょっと……どうしたのさ、シン」


 僕もアルトも少し肩で息をしている。

あの場を離れる時に強化魔術なんて使えば、追って来て下さいと言っている様なものだ。


「ごめん、僕がミスってコッチに感づいたみたい……」

「!?嘘でしょ……?僕は何も感じなかった。アイツ、ヘラヘラしてたくせに

 想像以上なヤバいのかあぁ」

「いや、あの魔圧を感じなかったの?」

「あぁー……それ、まだあんまり分からないんだよね……」

『あの騎士の小娘も、魔力制御しておったから普通はわからんよ』


 うーん……まあ、今は僕が分かればいいか。

しかし結構走って来たけど、目的地はこの辺りのはず……

地図は前もって確認しておいたし、案内板が至る所にあったしで闇雲に逃げて来たわけでは無い。

路地を抜け、僕は予想通りに受付場を見つけた。


「アルト、あれ。アレが明後日来る所」

「ふーん。でも、何でわざわざ見に来たの?危なかったし」

「いや、まあ…アレは予想外……。下見は試験の基本なんだよ」


 フフッ。受験等でも下見は大事だからね。当日ミスったらもう終わりなんだよ、アルト君。


「え?シン、なんか試験受けた事あるの……?」


 え?……いいんだよそこは。スルーしてよ。

何でその事に興味持っちゃってるのさ……


「せ、先生が言ってたんだよネ……」


 この発言は間違っちゃいない。学校や学習塾で言われる事だしね。

デューク先生と呼ばれている事で起こった偶然……!


「そっかぁ……。チッ、ブルーノはそう言う細かい所教えてくれないからなぁ」

「まあまあ、今覚えたんだからいいじゃん。はは……」


 その後すぐに宿に戻ったが、道中でのアルトのブルーノに対する愚痴が止まらなかった。

ごめん、ブルーノさん。



「ふひぃ〜、食べた食べた」

「…………」


 夕食は部屋にベルボーイ的な人が直接持って来てくれた。

特に頼んではいなかったし、かなり驚いた。

グレイ邸で出た夕食よりも少し豪華な気がする。霊魔の肉もあるし。


「ねえ、シン。そんな窓とドアばっか見てどうしたのさ」

「……もしかしたら、追手が来るかも知れないから……」

「えぇ……ここ五階だよ?ドアはわかるけど、窓は無理でしょ。

 しかもシンの感知でわかるはずでしょ?変なの来たら殺せばよくない?」


 よくないわ!短絡的過ぎる!怖っ


 確かに、五階まで飛んで来て窓から……ってのは派手すぎるか。

いや、屋上からの可能性もあるか?あるいは能力で壁をすり抜けるなんて事は……


「じゃあ、俺は風呂入るから。そこまで心配するんだったら見張ってて」


 アルトはさっさと風呂に行ってしまった。

案内された時に見たけれど、僕ら位なら四人は入れる大きさだった。

大きな窓があって、さぞ景色が…………窓?

もしそこから何者かが入ってきて、アルトが捕まりでもしたら……全てが終わる。

元はと言えば僕が招いてしまった不安の種。背に腹は変えられない。

僕はケンを持って風呂へ直行した。


『お主、その歳にして大胆じゃな』

「入り口に置いておくから、なんかあったら伝えて」

『承知〜』


 バン!と僕は勢いよくドアを開けた。全てを脱ぎ捨てて。


「どぅぁわぁぁぁぁ!?ちょ、え?」


 アルトは追い込まれた蜘蛛の様に暴れて驚いて見せた。

壁に頭を強打したみたいだが、それ所では無さそうだ。


「僕も入る。僕が居た方が安全でしょ?」

「---そそそそうかな!?」


 その後、アルトは一定の距離を保ち僕に触れない様に立ち回っていた。

紳士じゃないか、と感心すると同時にからかいたくもなった。

その時の慌て様は、思い出しただけでニヤついてしまう。


 この時、アルトは


 (狙われるのはオイシイのでは……?)


 と感じていたのだが、そんな事は本人しか分からない事であった。



 時刻板は夜の12をとっくに過ぎている。

相変わらず細かい時間はわからない。あぁ、日付越えたな……


「シン、起きてる……?」


 自信が無さそうにアルトが聞いてきた。

なんだ、そっちも起きてるのか……


「ん……どうしたのさ」

「……今日見た魔女狩りの磔……あれは俺達の感覚がおかしいのかなぁ?」

「……僕はそうは思わない」


 仰向けになって、見慣れない天井の一点を見つめて僕は思考を巡らせる。

そうかぁ……アルトもちゃんと考えてたんだな。

戦う事ばかり考えている訳じゃ無いって示された気がした。

暫しの静寂の後に、アルトが口を開いた。


「初めて大きな都市に来てわかったよ。俺、何も知らなかったんだって。

 きっとそれはグレイやデューク達に守られてたからだったのかも知れない……

 グレイ達がやろうとしている事の意味がわかった気がする。

 もしかすると、デュークは解らせる為にあえて言わなかったのかも……」

「それは……そうかもね。あり得る」


 そうか、先生ならやりかねない。腑に落ちた。

敢えて問題点を見せないでおいて、然るべき時に見せる。

現にこうして僕らがこの国の現状を突きつけられて、向き合っているのだから効果はある。

大人に頼る事も必要だが、自分達で考える事も必要だろう。


「シンはなんでグレイに協力するの?」

「なんでって……引き取ってもらって、生活させてくれて、鍛えてもらって……

 の恩かなぁ?」


 あと、神様にルートを決められているってのもある。

今となってはそれが一番の理由かも知れないが、そんなの言える訳ない。


「じゃあ、俺と似てるね。俺もデュークに拾われた恩がある。

 それと、俺を捨てた家に思い知らせてやりたいんだ。やった事の重大さをね」

「……復讐するって事?」

「いや、殺したりはしないさ。俺がもっと強くなって名が知れ渡ったら、

 向こうは悔しがるかな。とか考えてるけど……んー、まだ考え中」

「……そっかぁ」


 思ったより可愛い内容だな。

意識していなくても何処か肉親だから、と言うストッパーが働いているのかも知れない。

でも、それでいいんだよ。復讐なんて良い事無い。

僕がそうだったからね……


 目を瞑りそう思っていると、意識が薄れていった。



 二日後、予定通りに受付場に着く事ができた。


 早朝にも関わらず、僕の予想を超える人数が会場にいて思いがけず声が漏れた。

確か定員は百十人位だったはずだが、倍以上はいる。

ほとんどの受験者は十〜十二歳程度で僕達と同世代だ。

保護者に連れ添われたり、遠くで保護者が心配そうに見てたり、お受験って感じ。

今並んでいる列は保護者立ち入り不可なので、もう子供達だけの領域。

一定の間隔で騎士が居るので安全面は問題ないと見られる。

 武器等は護身用としての所持は容認されているけど、許可無く使用した場合は即失格又は退場…下手をすれば身柄を拘束されると言う。


 時間が経ち、もう少しで受付できそうな位置に来た所で予想外の問題が来た。


「おい!避けろよ、チビ共よぉ」


 態度も体も大きな男の子が無理矢理横入りをしてきた。

連れの二人の男の子が後続に下がれと指示を出し、周りはそれに泣く泣く従っている。


「はぁ!?んだよアイツゥ」

「シッ!声が大きい!」


 アルトの気持ちはわかるが、ああ言うのに関わってはダメだ。

周りも戦慄の表情を浮かべている。ましては今の立場では……


「ん?おい、そこのお前……今何つった?あぁ?」


 最悪だ。聞こえていた。

こっちに近づいてくる。アルトも背は高い方だと思っていたが、この悪ガキはもう少し大きい。

参ったな……


「すいません!私達、田舎から出てきて何もわからないんです!

 この子が失礼な態度を取ってしまってすいません……キツく言っておきます」

「お、おい!シン!」

「黙りな」


 好戦的なアルトに対して腹が立ったので、キツめに冷たく言ったらアルトは動かなくなった。


「はっ!田舎モンかよぉ!道理で土クセェ訳だ。

 女に守って貰うとかダサ過ぎだろ、金髪のお前。お前らが受けた所で

 どーせ受かんねぇよ!今年はレベルがちげぇし、田舎モンが入る所はねーよ。

 帰れ帰れ!」


 言うだけ言って満足したのか、悪ガキは受付の方に行った。

しかし……めっちゃ言うじゃんアイツ……なんかもう腹立つを通り越して感心してしまった。

うわぁ……見てよアルトの目。目線で人殺せそうなレベルで睨んでるよ……


「アイツ、今度会ったら確実に泣かせる」

「気持ちはわかるけど、ダメだよ。暴力は」

『騒がしい小僧だったな。しかし、態度の割に大した事無さそうじゃったが……

 恐らく親の七光りとかかのぉ?』


 あー、そう言う感じのヤツ?

ちょーっと、周りに聞いてみるか……


「すいません、さっきのって誰ですか?」

「田舎から来たから知らないのかい……?運が悪かったね……。

 さっきのは騎士名門”アルドリッジ家”のジルさ。都市部では有名人。

 手がつけられないってね」


 ビンゴだ。ケン。

騎士名門って、貴族みたいなものかな?

だとすると貴族の坊ちゃんかぁ……最悪だな。対応に困る。

僕は「よくやった」の意味を込めてケンを二回叩いた。


『ふっ、親の顔が見てみたいのぉ』

「なるほど……ありがとうございます」

「キミ、ジルにあんなに言われても動じなくて凄いね……女の子なのに」


 中身は10こ以上歳上だからね。癪には触るけど、動じないよ。

能力的な優位感もあるかもだけどね。

既にジルは受付を終えて試験会場に行ったらしく、列が進み僕らの番が来る。


「次の方どうぞ!……はい、確認しました。シン=ダルクさんは第三会場、

 アルト=ラウェインさんは第一会場へお進みください」


 え!?会場って複数箇所あんの!?

しかもアルトと別々じゃないか!ヤ、ヤバいな……

僕とアルトは互いに顔を合わせて困惑の表情を浮かべる。


「シン、大丈夫だと思うけど頑張って」

「アルト……頼むからやり過ぎないでよ……?」

「流石に大丈夫だから」


 僕は小声で呟き、アルトは頷く。


 そうして僕らは、別々の会場へと向かった。





読んで頂きありがとうございます。

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