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Re:夢X夜  作者: ロア
8/88

2019/11/10

 私は水族館にいた。学校の遠足か何かだろうか、他にもたくさんの学生がいた。環状の水槽に囲まれた空間があった。水槽では細長い鯨やらアザラシやらが文字通り食っている尻から食われるという食物連鎖を繰り広げていた。水槽には水圧でひびが入っていたか、あるいは上が空いていたか、とにかくこの恐ろしい捕食の連鎖は我々人間にも及びそうだった。


 しかし、本当に怖いのはこれからだと聞かされた。私は悪魔に連れられ、外へ出た。どうやら水族館はテーマパークの一部だったらしい。石畳の広場。アーケードのガラス屋根越しに仰ぐ黒雲が不気味な、雨の夜だった。私は映画館へ連れられた。上映中に食べるものを選んでいいと言われて、私は迷った。バームクーヘンとドリンク。せいぜい味が違う程度でさして選択肢は無かったが、私は優柔不断なのだ。抹茶バームとコーンポタージュあたりにしたと思う。

 さて、売店から上映室に向かう間に、中学時代の旧友たちと一緒になった。ここで、我々には歌でコミュニケーションを取ることが課せられた。歌といって、別に大層なものではない。子供がよくやる、メロディのついたフレーズだ。練習も兼ねてお菓子を「分ーけて♪」「いーいよ♪」「くーださい♪」「どーうぞ♪」なんてやってると、私はお菓子と間違えて食事にする予定だったパンを渡してしまった。仕方なく、私は近くのコンビニにパンを買いに行った。奥の棚に目をやると、大きなチョコレートケーキが破格の7割引きになっていた。しめたと値札を探すと、7割引きされても500円以上。昼食に500円は高いな、と私は断念した。


 それから、私は悪魔にテーマパークの代償として連れて行かれそうになった。手始めに、耳を引きちぎられそうになった。するとそこへ弟がやってきて、助けてくれた。実物よりやたらに筋骨隆々だった。




 別のシーン。何かのゲームだろうか、私は湖の外周で敵の陣営と陣取り合戦をしていた。敵方が半時計周りに中立の新領地を開拓していく一方、私は積極的に敵の拠点ポイントを制圧していった。しかしどうにも成長性に欠ける戦略のようで、後からこちらの陣営は失速していった。




 別のシーン。私は親戚の集まりの中にいた。子供たちが何かのゲームをやっている。私がゲーム好きなのを知っている周囲は「ロアも混ざりたいだろう」と言っていたが、私はスマホで求人サイトと睨めっこしていた。しまいに眠くなって、座布団に突っ伏した。不眠症の私は意識が続いたままうつらうつらとしていた。ゲームに混ざる選択肢もあっただろうが、周囲が「きっと拗ねてるんだ」「照れくさいんだ」などと言うので余計入りにくくなった。眠気も相まって、絶対に返事をしないでおこうと思った。




 別のシーン。きっと『SEKIRO』がモデルであろう、城の中。姫の下に辿りつくと、その場にいた敵キャラの攻撃に姫が巻き込まれる。その度に、私はゲームを一からやり直した。しかし何度目かの挑戦で、どうやら姫は一度の攻撃では死なないようだと分かった。姫のところを過ぎると、棚の上の置物に赤いターゲットマークが表示された。攻撃コマンドを入れると攻撃できたが、特に何もなかった。私は「なるほど、これは敵が潜んでいるかもしれないポイントだ」と気付き、マークの出るところを全て刺して回った。すると、刺そうと思った置物の裏からセーラー服の女子高生が飛び出した。とても人間とは思えない顔をしている。化け物でも憑いているのだろう。狭い部屋と通路をしばらく追いかけ回すうち、私はそれを見失った。そして次の瞬間、それは首筋から私に憑依した。私は完全に乗っ取られた。


 それから私は私に成り代わったそいつの人生を、アルバム形式で見ることとなった。そいつはすぐに社会復帰した。普通に就職して、休日にビールでも飲んで過ごす社会人生活を楽しんでいた。実に快活な笑顔だった。それから40あたりになると、そいつは有り余る活力で私の資料を基に私の作品を完成させて発表した。ほんの趣味のような調子だった。

 願っても無いことだ。私はただ、あの作品のファンに過ぎない。形になるところを見届けられればそれでいい。悲願は成就した。それなのに何だろう、この悔しさは。やはり宗教家のように作品に奉じると決めても、我というものは消えないようだ。私にはまだ「あの作品を形にするのは私でありたい」という願望が残っているらしい。

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