恋なのか?
俺は学校ではいわゆるボッチというものだ。
今日も変わらずボッチライフを送る......はずだった。
「あ、あの霧崎君。少しいいかな?」
学級委員の普段から真面目で通っている眼鏡で三つ編みの桜川さんが休み時間に話し掛けてきた。
「な、なにかな?桜川さん」
「今日の日直なんだけど、職員室に皆のノートを取りに行くの手伝って欲しいんだ」
俺は黒板の右下に視線を向けると確かに、日直のところには俺の名前と桜川さんの名前が書かれていた。
「あ、あぁ。そうだね、日直の仕事だったね。僕一人でいくよ」
「え、えぇ~、わ、悪いよそれわ。一緒にいこ?」
(今、すごくかわいく見えたのは気のせいか?あの桜川さんだぞ?)
「じゃ、放課後取りに行こうか」
桜川さんはうん。とだけ言い残し、自分の席に帰っていった。
「てかさ~昨日のトリプルボーイズが出てる番組見た~?」
「見た見た!やっぱかっこいいよね~純也様~」
(!?俺たちってそんなに知名度上がってるわけ?)
「だよね~純也がいっちばんかっこいいよ~」
「正輝と啓斗も負けてないよね。あのグループは全員イケメンときた」
(冴えない純也様はここにいますよ~と)
まぁ、打ち明ける気もないしこのまま平凡でいいんだけどね。
キーンコーンカーンコーン
授業が始まる鐘の音が女子のそんな会話を終わらせた。
「......崎くん。霧崎君」
「どぉわっ!(近いよ桜川さん。びっくりして変な声が出てしまった。ん?)」
桜川さんはそんな俺を見てクスクスと笑っている。
(桜川さんもこういう笑顔するんだ......)
「ご、ごめん。最近、寝不足気味でさ。さ、職員室に行こっか」
俺と桜川さんは教室を出て、職員室に向かって廊下を歩いていると前から女子の三人グループがすれ違いざ
まに「霧崎と桜川って暗いよね~」「暗いのうつるから近寄んなっつーの」なんて聞こえて来た。
桜川さんが気になり横目で見てみるとこちらを向いて少し涙目を浮かべながらも強がって笑ってみせてくれ
た。
「ごめんね、私が暗いせいで」
なんて謙虚でいい子なんだ。俺が暗いから言われたところもあるだろうに......
「純也~。なんか今日元気なくね?」
「だね、純也、振られて落ち込んでるような面してるよ」
啓斗も正輝も好き勝手言ってくれやがる。
「なんかあったの?」
「啓斗、今日、俺のせいで女の子に嫌な思いをさせてしまったんだ」
「なんだよ。純也、恋してんねぇ~」
(ダメだ。コイツに何話しても茶化される。ただ桜川さんのことは何故か気になる。恋......なのか?)
「純也、なにがあったんだ?」と正輝はこういう時、啓斗より頼りになる。
「俺、学校では髪も下ろして暗い感じじゃん?それで一緒にいた女の子にも不快な思いさせちゃったってわ
け」
「そんなことで落ち込んでたのかよ!そんなもん髪上げて俺らと仕事してる時の純也でいれば解決っしょ」
啓斗の言う事も的を射てる気がするが。
「今更、純也でした。なんて簡単には......」
「それじゃ、またその子を気付付けちまうだけだけどな」
「あぁ~!分かったよ!髪上げて行けばいいんだろ!」
投げやりにも答えたが、啓斗は絶対楽しんでいるだけだ。
無邪気にも笑う啓斗を見て確信したね。
明日からどうなることやら。