第2話 村の案内
目を覚ますとあの見慣れない部屋にいた。昨日は気づかなかったが窓から日が注いでいる。最後にバンナムさんが言っていたことがやはり気になる。夢なのかもしれないが気になるものは気になる。ベッドから降り、ドアへ向かう。
部屋から出ると5mくらいの長い廊下に出た。廊下の角に階段があり、話し声が聞こえる。メアリー、バンナムの他に誰かの声が聞こえる。誰なのだろうか。
下の部屋に降りるとメアリーとバンナムがご飯を食べていた。バンナムが申し訳なさそうな顔をしながらこちらを見て
「昨日は申し訳なかった。本当にすまない。」
そう言い足早に食器を片付けるとメアリーに言う
「今日は城へ行ってくる。メアリー、この坊主に[スリーパー]のことを説明しておいてくれ。レオン、今日の練習は止めだ。すぐに準備をしてくれ。」
レオン、と呼ばれる僕と同じくらいの身長の男の子がキッチンからでてきた。
「わかったよ。バンナムさん。でも久々の練習が潰れるのはいやだな。帰ってきたら練習してくれる?」
勿論だ。そう一言呟きバンナムとレオンは部屋から出ていく。そしてメアリーが[スリーパー]について説明する
[スリーパー]というのは眠ることにより二つの世界を行き来することができる人のことを指す。バンナムも元々は[スリーパー]だった。元々、というのは時間が経ちすぎるとこちらの世界の体に元の世界の魂が乗り移りあちらの世界に戻れなくなるという。
そして[スリーパー]はひと月に一度現れている。[スリーパー]を生み出しているのが天界にいる女神[ガイア]を筆頭とする天使達だった。[スリーパー]がこの世界に現れるようになって数百年経つが、天使達が[スリーパー]を生み出す理由は未だにわかっていない。その天使達に対抗、そしてこの世界に来た[スリーパー]を助ける組織がバンナムをリーダーとする[HS]と呼ばれる組織だった。
天使達とHSの幾多の戦いを通して結んだ約束は、「この世界に来て1日目のスリーパーなら元の世界に返す。1日が経ったスリーパーは返せない。」
というのが約束だったが口約束の上に多くのスリーパーは見つけることが出来ずにほとんどのスリーパーを助けることが出来ていないそうだ。
メアリーは更に別のことを話す。本当は言わない方がいいんだろうけど、と前置きをし、[パワーストーン]について話す。
簡単に説明すると何もせずに魔法が使えるようになる石。都市部に住んでいるほとんどの人は持っているが農村部に住んでいる人は持っていない人の割合が高い。メアリーが住んでいるこの村もバンナムしか持っていないと。[パワーストーン]の中でも差があり、炎の石、水の石、風の石、氷の石はよく出回っている。[パワーストーン]はドラゴンによって作られ、この4つの石を作るドラゴンは気前がいいそうで毎日作っているとのこと。バンナムが持っているのは炎の石でレオンが使えるように練習しているそうだ。
説明を終えると
「話が長くなったわね。この村を案内するわ。ついてきて。あ、ところでキミの名前はヒロでいいかしら?」
「はい。それでいいです。」
メアリーについて外に出るとそこは広大な自然が広がる農村だった。都会育ちの僕にとってはとても新鮮だった。
しばらく歩いていると村役場についた。2、3人しかいなかったが設備はしっかりとしていた。特に挨拶をすることも無くすぐに出る。今度はどこへ向かうのだろうか。少しペースを上げた瞬間木の根に足が引っかかり転んでしまった。
「ヒロ大丈夫?足元はよく見なさい。ここはモンスターがいないけど外だったらモンスターに食べられていたかもしれないわ!気をつけなさい。」
厳しい口調だったがかなり僕のことを心配してくれているようだ。メアリーの手を取り起き上がると額から血が出ていることに気づいた。メアリーが傷に気づき、回復魔法をしてくれたが完全に治るには少し時間がかかるようだった。
しばらく歩いていると村の端に来た。そこには大森林が広がっていた。
「ここがフェルタルの森よ。森を進むと湖があるんだけどその近くでヒロが倒れていたそうよ。あの近くはモンスターが水を飲むために集まるからとても危険なの。今のあなたには武器も防具も何もないんだから絶対に森へ入らないこと。わかった?」
「分かりました。メアリーさん。」
ちょうどその時村役場の方から爆発音が聞こえた。