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俺氏、色々覚悟を決める。

「はぁ~… こっちにも風呂の文化ってあったんだな」

 淳は湯船につかりながらため息交じりに文化をたたえる。

「こっちに来てからは水浴びが主だったからな… たまには日本人らしく風呂につかりたいってもんだ」

 窓からは北の集落、エルフェイドの街並みが一望できる。活気にあふれていて、ここが首都だと言われても信用できるくらいだ。

『お湯加減はどうですか~?』

「う~ん、なかなかいいよ~」

 脱衣所からはこの家の家主、アリシアの声が響く。元居た集落が人間の手によって焼かれ、行く当てのない淳とアニーシャを快く受け入れてくれたのだ。

『そう?よかった。 それじゃあ…』

「失礼するわよ」

「!!??」

 脱衣所からなんとアニーシャとアリシアが風呂に入ってきた。こちらには誰かと風呂に入るときタオルを巻くなんて習慣がないのか一糸まとわない姿だった。

「ちょ!!なんで入ってくるんだよ!」

「なんでって… 時間がたったらお湯が冷めちゃうでしょ?だからこうやって———」

「だからって入ってくることないだろ!?」

「? 何か見られたら困るものでもあるんですか?」

「…もしかしてだけど、こっちって男女が一緒にふろに入るのが普通なの?」

「「そうだけど?」」

 淳は目を覆って天を仰ぐ。 ——神よ…これって喜んでいいの?—―と。

「もしかして、そっちはそういう文化じゃないの?」

「あ、私も気になります!」

 二人はそういいながら平然と湯船につかる。狭くは無いものの、そこまで広くないのでいろいろ柔らかいものが当たっている。(何がとは言わない)

「…俺がいた世界では、普通男女が一緒にふろに入るのは恋人とか夫婦になってからだったよ。 それ以外は男女別々に風呂に入ってる」

「へ~… なんか無駄ね」

「そうだね。一緒に入ればいいのに」

 うん、人の話聞いてた?

「じゃあ、今の状態だとアンタの世界じゃアンタと私たちが恋人ってなるの?」

「わ、なんかそれ大胆だね」

 oh… なんという超解釈…。

「そうなると俺、二股掛けてる最低男じゃん…」 

「二股?そんなの別に構わないけど。アンタの世界じゃダメなの?」

「こっちは何人と関係持とうが自由だもんね」

 ほう、一夫多妻制みたいなものか。

「まー俺のいた世界にもそういう文化はあったけど、俺の住んでたトコとは別の地域だったしな」

「そ~なんだ~。あ、ジュンくん。背中流してあげるね」

「お、おう。よろしく頼むわ」

 そういいつつ股間を隠して湯船を出る。

「あ~!!なんで!?私と水浴びしたときは流させてくれなかったじゃん!」

「ま、まぁあれだ。郷に入っては郷に従えっていうか… 朱に交われば赤くなるというか…」

「わけわかんないこと言ってんじゃないわよ! もういい!アリサが背中流すなら、私は前流す!」

 ほうほう、異世界の亜人美少女二人に体を洗われると… ん?

「ちょ!前は待った!」

 咄嗟に股間を隠そうとしたが、時すでに遅くむなしく。いきり立った股間を見られてしまった。

(あぁ… 俺の異世界人生オワタ…)

 そう観念した、その時だった。

「あれ?なんだ、アンタ今発情期なの?」

「あ、それも含めて一緒にお風呂入るの嫌がってたんだね」

 —――発情期、とな?

「え?何?エルフって発情期とかあるの?」

「え?あんたたち人間にだってあるでしょ」

「…無いよ!?てかあったらびっくりだよ!」

 ていうかあったら困らない!?

「無いの!?じゃあどうやって繁殖するの!?」

「そ、そりゃあ排卵とかそういうタイミングに合わせて…ゴニョゴニョ…すれば…」

「え、何?聞こえなかったんだけど」

 ええい、羞恥プレイか!

「だ、だから… そうだ、ある一定時期に交尾すればできやすいんだよ」

 こういう説明ならややダイレクトだけど理解してもらえるだろう。

「だからそれが発情期じゃないのかな?」

 —――あるぇ?おっかしいぞぉ?そうなのかな、いやそうじゃないだろう。でも危険な日って確かに一定周期で来るから発情期とも… あれ?

「ま、でも異世界だからね。もしかしたら人間にはそういうのがないんじゃない?」

「う~ん… 確かにその説明で理解できるんだけど、だったらなんでこんなになってるの?」

 デスヨネ~その質問来ますよね~わかってました。

「ええっと、なんといいますか。俺たち人間の男ってのは別に発情期とかないんですけど、その。女の人の体とか見てるとこうなっちゃうっていうかなんというか…」

「ふむふむ… じゃあつまり、今ジュンは私たちの体を見てこうなっている、と?」

「———もっと簡単に言うと、発情したらこうなるっていうか…」

「じゃあ、ジュンくんは私たちの体で発情してるってことなんだね?」

「——————はい」


 ホントのことを言っただけなのに、やっぱりというかなんというか、その後3日くらい気まずい雰囲気続いた。


*****


 さて、その3日後。エルフェイドの広場に人だかりができていた。

「ん?あれなんだろう」

「男の人が多いみたいだけど… 何かのイベントかな」

 さすがにイベントはないんじゃないかな~と思いつつ、人だかりの中心をのぞいてみるとそこには傷だらけの人間がへたり込んでいた。更にはその人間に向かってありとあらゆる罵詈雑言が投げつけられていた。

「なんだ、また人間からの停戦の提案か。行きましょ」

「そうなの?うわさでは聞いたことあるけど初めて見たよ~」

「そうなのか?でもあの人間、どこかで…」

 そう、どこかで見たことがあるのだ。どこだったか… と記憶を漁っていると、人間の声がこだまする。

「だから、森だった区域を開放する代わりに洗脳された人間を一人開放してくれと言ってるだろう!」

「—――思い出した」

「え、ちょっと!?」

 淳は人ごみをかき分けてその人間へと近付いて行く。確かに淳はその男を知っていた。

「おい、アンタ!」

「あぁ… やっと見つけた…」

 男は淳を見るなり安堵する。その光景を見た周囲のエルフたちは何事だとざわついていた。

「エルフから逃げられたのに、なんでまた来てるんだよ」

「アンタは… 洗脳されてるんだ… だから…」

 緊張の糸がほどけたのか男は気絶していて、うわごとをぽつりぽつりと呟いていた。

「アンタ確か、アリシアのところに潜り込んでる兄ちゃんだろ?いったいこいつはどういう状況なんだ?」

「肉屋のおっちゃん… 説明すると長いから要点だけ話すけど、こいつら俺が洗脳されてると思ってるみたいなんだ」

 洗脳、と聞いてエルフたちは一層ざわつきだす。

「つまり何か?こいつら人間は兄ちゃん一人と引き換えにこの戦争を終わらそうっていうのか」

「そんなのだめ!」

 人ごみをかき分けてアニーシャが叫ぶ。その後ろにはアリシアもいる。

「そんなことしたら、ジュンが何されるかわからないよ!」

「アリシアの言うことはわかるが、こいつ一人の犠牲で戦争が終わるんだ。だったら———」

「そんなことしたら、人間とおなじになっちゃう!」

「どういうことだ?なぜ俺を引き渡せば人間と同じになるんだ」

 その問いにアリシアが駆け寄って答える。

「まだ話してなかったね。この世界の人間は、隷属した他種族の人を労働力として他国に売りさばいてるの」

「っ!それって!」

 人身売買。人の命を金でやり取りする最も忌むべき行為だ。

「だからこの場合、今まで人間が進行してきた領土っていう代金で、兄ちゃんを買おうってわけだ」

 その場にいる者全員が、今の説明ではっきりしたようだ。

「そんなことしてたまるか!」「汚い人間どもめ!」

「やはり戦うしかないのか…」「こうなったら徹底的にやってやろうぜ!」

「…待ってくれ!」

 ざわついていた空気が、淳の一言で一気に静まり返る。

「なんだ兄ちゃん。もしかして人間たちに買われるなんて言うなよ?」

「っ! ジュン!」

 肉屋のおっちゃんの皮肉めいた一言に、アニーシャは心配そうな顔をする。

「大丈夫だよおっちゃん。そんなことはしない。だからアーニャもそんな顔すんな」

「じゃあ何か、この戦争を終わらせる方法があるっていうのかい?」

「—――ある」

 淳の一言に、エルフたちはどよめく。

「じゃあ聞かせてくれ。異世界からの勇者様」

 勇者、か…

「お生憎さま、俺はそんな大したもんじゃない。だけど、俺たち言葉を介する者たちができる戦争の仕方がある」

 そういうとゆっくりと立ち上がり、集まったエルフたちの方に振り向く。

「いっちょ始めるとするか!人間同士の”言葉の戦争”ってやつを!」


—to be continue—

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