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吸血
「もう終わりだ」
たった一言で全てが砂のように零れ落ちる。
さらさら。さらさらさらさら
彼があんまりあっさり″それ″を口にするものだから、僕は阿呆みたいに、ぽっかり口を開いたまま静止していた。
油蝉の声が耳に痛い。
唐突に出来た傷口に、その鳴き声は細かい粒子になって塗り込まれる。
じっとりと、汗ばんだ肌に気だるい蝉の鳴き声が貼り付く。ぺと、ぺと。
無情だ、と僕は思う。
そして世界は残酷だ、と。
「おわり」
確かめるように、彼に問う。
「血の河は閉じてしまった」
「閉じる」
「もう戻れない」
「戻れ、ない」
壊れたぜんまい時計の様に同じ事を繰り返す。絶望とも違う。
無、だ。
僕はもう永遠に、けっして永遠に。
人間には戻れない。
そしてそんな絶望から物語は始まっていく。