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友人の死

作者: CH3COOH

友人の死はわりと唐突だった。

入社して最初にできた同期の友人で、家も近所だった。


地方から上京してきた自分にとってすごくありがたい存在で、

毎週のように、ごはんを食べに行き、1日中カラオケで歌い、お互いの家に泊まったりもした。


出会ってから3年目の冬、友人が検査入院した。

かねてから調子が悪いと言っていた胃腸の検査をするためだった。

すぐに退院してきて、その時は酷めの胃腸炎と言っていた。


しかし、3週間くらい経った時、友人がボソリと私に伝えた。

「食道癌…だってさ。1年後生きてる確率も10%くらいらしい。仕事は休職して地元で手術してくる。」

正直なんて言っていいかわからなかった。

一緒に悲しんだ方がいいのか、なるべくいつも通りに土日に遊びに行くのがいいのか。

結局、私はいつも通りの友人であることに努めた。

友人が地元に帰った後も頻繁にメールも送ったし、ゲームの話題とかも色々と送った。


けれど、3か月ほどが経ってパタリと返信が来なくなった。

ネットでかじっただけの知識によれば治療がかなりキツイ時期らしい。

返信する気力もないかもしれないし、送れば送るだけ負担になってしまうかもしれない。

そう思った私は連絡する頻度を減らした。

結局最後の最後まで、返事が来ることはなかった。


さらに3か月がたった。

友人が地元に帰ったのが3月くらいだったから9月のあたまだった。

某S○NYの友人のゲームアカウントがログイン状態になっていた。

私はあわてて携帯を手に取りメールした。

もしかしたら具合がよくなりゲームを手に取るまでに回復したのではないかと。

「ひさしぶり!体調よくなったの!?」と短い文だけメールした。

すぐに返事が返ってきた。

「母親の○○です。いつも息子と仲良くしてくれてありがとうございました。息子は先月の○○日に天国へ旅立ってしまいました。」

メールの内容はこんな感じだったと思う。

正直、衝撃が酷すぎて、頭にすら入ってこなかった。

そのあと10分もしないでその友人の電話番号から電話が来た。

電話をしてきたのは友人の母親だった。

ここも正直、なんて会話したか覚えていない。

同じ会社の同期なんです!とか

毎週のように遊びに行ったんです!とか

なにかお手伝いできることがあれば遠慮なく言ってください!とかだったと思う。

自分がこの時そんなに取り乱さなかったのは、

きっと友人の母親がすごく落ち着いた声をしていたからであろう。

私の何倍どころではないほど悲しいはずなのに…


それ以来、友人の携帯番号からメールが来ることや電話が鳴ることはなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言]  葵枝燕と申します。  『友人の死』、拝読しました。  私も2017年2月中旬、近所に住んでいた同期生を病気で亡くしました。小学校から高校までを同じ場所で過ごした彼女でしたが、特別仲が良かっ…
[一言] 悲痛な思いが綴られていますね。悲しくて悲しくてやり切れない、といった感じですね。フィクションかノンフィクションか分かりませんが、主人公が長い時間をかけても友人の死を受け止められるようになりま…
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