一章 続き
少し遅い朝ごはんをマキさんに用意して貰い、食べた。
食堂は普通の民家とほぼ変わりがない作りをされている。
大きなテレビもあり、依頼者によっては緊張を解すために世間話もすることがあるため、ある程度の情報は確認していたりする。
マキさんによると、少し前に結衣は帰ったとのことだった。
10時か。
今日の仕事の待ち合わせは11時。
「そろそろ出ますね」
何時も身に着ける除霊用の服ではなく、普通のTシャツとジーパンという姿に着替えた。除霊用の服は集中力を高め、身を守る効果もあるとも言われるが、外に出るのにあの格好では目立ちすぎる上、除霊に向かったと見せるようなもので依頼だと周囲に広めては依頼者のストレスにもなってしまう。
「依頼者については公にしてはいけない決まり・・・・だからなあ」
ただ、周囲の人間に本当に依頼の授受がわからないわけではないようだけども。
車を走らせて、依頼者の待つ、カフェに向かった。
しかし、相変わらずだが、道が悪い。
砂利がガンガンと車にぶつかってくる。
ぼこぼことしているし、こんな道を夜に運転してくるのはやはり大変だっただろうな、と結衣の事を思い出した。
昨日の夜と言えば、小さい女の子の思念と、誰かの男の声。
あれは一体何だったのか。
考えているうちに、喫茶店前に着いた。路肩に駐車し、中に入った。
普通に賑わう喫茶店だった。
「いらっしゃいませ、お一人様ですか」
「いえ、待ち合わせです」
待ち合わせの印とした赤いボールペンと青いボールペン両方をテーブルに並べている女性を探した。
窓際の端に一人で外を見て座っている女性のテーブルにボールペン二本を見つけた。
「高橋様でしょうか」
笑顔で女性に話しかけた。
依頼者は、三十代前半の女性だった。
こちらを見て小さく頭を下げた。
「はい・・・・そうです」
暗い表情の女性を見て、静かに正面の椅子に腰を掛けた。
暫くの沈黙だった。
恐らく言い出しにくいのだろう。依頼はしたけれど言い出せない。そんなことはよくあることだった。
何かなだめる為の世間話をするべきかと口を開きかけた時に、女性が小さい声で話し出した。
「娘の・・・あゆかの死について・・・調べて欲しいんです・・・」