社員化という選択肢
本題に入る前にエピソードを一つ。以前から僕は、L社のSさんに「うち(L社)で働く気はないですか?」と誘われていた。ありがたいことに、Sさんは僕のことを買ってくれていた。
目の前の仕事にいっぱいいっぱいだったし、大変そうだとか勤務地が家から遠くなるとか考えていた僕は、興味はあります程度に答えていた。
職場を転々とするのに疲れていた僕は、P社の退職が決まったころから、Sさんに履歴書を送って添削してもらい、L社での社員化の話を具体的に進めてもらっていた。
Sさんが紹介してくれるとのことで、審査はさほど厳しくはないという話だった。
L社の代表と会う前に、Oさんという人と面談することになった。OさんはG社に勤務するL社のメンバーをまとめている人で、現場経験もあるベテランだった。Sさんの話によれば、厳しいところもあるが情熱のある人物とのことだった。
Oさんは、第一印象があまりよくなかった。初めて会ったときから、顔を合わせるたびに、誰かしらに対する不満をメンバーにもらしていたからだ。
Oさんが腹を立てていた相手の一人に、SMさんという人がいた。SMさんは、L社の忘年会で代表に「このたびデザイン会社を設立したSMさんです」とみんなに紹介され、L社との関係も密接そうだったのでびっくりした。
さらに驚いたことに、そのときにはSMさんの会社はもう倒産していた。SMさんは仕事ぶりがひどく、社員への給与支払いも一時期滞っていたらしい。G社には、もともとSMさんの会社に勤めていた人もL社経由で来ていた。
まあ、企業なんてそんなもんだろう。よくある話だ。
こんな話をいつもしていたので、G社でのL社ミーティングは居心地がよくなかったし、L社の内情は大丈夫なのかなあという気持ちになった。
だいぶ前からL社の僕の担当はTさんという人になっていて、この方にはSさん同様、非常にお世話になっていた。
Tさんは「大丈夫ですか、この女子会的ノリ?(僕とOさん以外は女性)」と僕を気遣ってくれた。「私もちょっと苦手なんです、こういうの」と言っていた。
それにしても、「うぇ~い!」と言いながら口から米粒を飛ばしてくる人はインパクトが強かった。
面談のほうはというと、Oさんは「(僕のL社での社員化は)難しいと思うよ」と言った。社員になるともっと色々やらなくちゃいけないし、僕にはまだ経験が足りないという話だった。
それに対して異論はなかった。それに、L社の社員になったらOさんの下で働くことになるだろうし、簡単にゲーム業界から抜けることもできなくなるので、社員化の話は保留にしようと思った。代表との面談も見送ってもらうことにした。




