表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕はどう生きるか 偏差値80からうつ、ニート、無職になるまで  作者: 依澄歌
大学~社会人時代 迷いの日々は続く
58/74

社内ニート

 L社のおかげで、C社を退職した後、1か月間が空いただけで次の仕事が決まった。このタイミングで、僕はL社の派遣社員となった。

 今度の勤務先はP社。新規ソーシャルゲームのリリースにあたり、人員を募集していた。

 ゲームは有名企業のG社がパブリッシャーのファンタジーRPGで、ちょっと面白そうだなと思った。プロデューサーはコンシューマの有名タイトルにも関わっている人だった。


 僕の仕事は主にキャラクターのフレーバーテキストとイラストの発注資料の作成、あとはスキル名やキャラ名、武器名、ジョブの説明など、テキスト関係の細々としたものを考えることだった。


 C社よりはだいぶ楽で、ほとんど定時に帰れた。他の人たちは遅くまで残っていたが……。

 仕事へのダメ出しはそれなりにあったが、特にイラスト発注資料の作成は楽しかった。自分でキャラクターやそのモチーフ、見せ方を考えて、それをイラストにしてもらうというのはわくわくする。


 僕は、プランナーとしてチームに加わっていた。プランナーは、全部で10名程度だった。いくつかの現場を経験し、同じソーシャルゲームでも、企業やタイトルによって規模もやり方も全然違うということがわかったのは興味深かった。チームによって、雰囲気もがらりと変わる。


 ディレクターのTさんは感じのいい人だったが、「つまらない」とか「これじゃダメ」とかははっきり言う人だった。


 Tさんはリリース前や重要なアップデートのときはピリピリしていたし、ミスがあったとき(大きなミスが結構あった)はメンバーに怒ったりしていた。

 僕はそれを見ながら、やっぱり責任ある立場になると気苦労が多いだろうなとか、でも上に立つならもうちょっと落ち着いたほうがいいんじゃないかなとか、勝手なことを偉そうに考えていた。自分が同じ立場になったらすごくテンパりそうだ。


 プランナーの人たちはみんな気さくで、雰囲気はよかった。しかし、僕はメンバーの輪の中に入って行こうとはしなかった。

 それがメンバーや会社、仕事に対して心理的壁を作る要員となって自分にストレスを与えることはわかっているのだが、僕は一人でいたかった。


 昼休みもさっさと食事をすませ、仕事がたまっているなら早く帰れるように仕事をしたかったし、そうでなければ本を読んだり調べ物をしたり考え事をしたりものを書いたり、自分のやりたいことに時間を使いたかった。飲み会も可能な限り回避したかった。


 僕は自分の現状に満足していなかったし、常に将来に対する不安と迷いを抱えていて、他の人とは違うのだという思いがあった。

 P社でも、やはりソーシャルゲームにハマっている人は多く、昼休みはみんなソーシャルゲームで盛り上がっていた。


 P社ではソーシャルゲームのやり込みノルマみたいなものはなかった。最初は仕事のために自分の関わっているゲームを少しやったが、すぐにほとんどやらなくなり、ゲームの話になると適当に話を合わせてごまかした。


 P社にもやたらやかましくて物言いがきついプログラマーの人がいて、僕はC社のMKさんを思い出しながら、どこにでもこういう人はいるのだなと思った。ガラの悪そうな人もいた。


 僕らの運営しているゲームは、ゲーム内容自体はそこそこユーザーに評判がよかった。確かに、僕自身も結構工夫がしてあって面白いなと思った。

 なお、リリースの際に関係者が高評価のレビューを書き込んでいたりメンバーにレビューの要請があったりして、やっぱりそういうことはしているんだなと思った。


 ★5が並ぶと怪しいから~とか、最初のほうのレビューはあとまで残るから内容はこんな感じで~とか小細工をしていてアホらしいなという気もしたが、自分が責任者だったら同じことをするかもしれない。

 最初のレビューで売り上げが何千万と変わったり、ゲームのその後の運命を左右することもあるのだろう。きっと、世間には自演レビューがあふれているんだろうな。それはソーシャルゲームに限ったことではないけど。

 それも戦略のうちで、マーケティング業務も心を病みそうだ。


 二人組の女性実況者にゲームを紹介してもらうという企画もあったが、実況者の二人が喧嘩してお流れになった。


 ゲーム内容の評価は上々の一方で、僕らのゲームの運営方針には批判が多かった。いわゆる石を最初に配りすぎたという判断ミスもあったようだ。

 ゲームの運営方法はG社の方針に従うので、Tさんたちは大変そうだった。無茶振りも多く、ずいぶんと不満をもらしていた。


 毎週P社でG社と打ち合わせをしていた。僕は打ち合わせに参加していなかったが、G社のプロデューサーは頭を悩ませている、社内での立場も危うい、という話だった。


 そして、リリースから半年、僕らのゲームはサービス終了となった。決定が先延ばしになったり延命措置が検討されたりしたが、売り上げの悪さはいかんともしがたかった。


 ゲームがなくなったことで、僕たちは社内の他のプロジェクトや新規プロジェクトに割り振られることになった。

 僕は、とりあえず既存の別のソーシャルゲームのチームに入れられた。そのチームでは人が抜けて、イラストの発注書を書く人を必要としていた。

 僕はイラストの発注書を書き、ヘルプページを作ったりした。


 このチームは前のチームに比べてゆるゆるで、発注書もほとんどコピペで作る方針だった。

 正直なところ、資料はめちゃくちゃだし、上に立っている人のレベルも相当低く、そもそも企画の立て方がなっていないと感じた。

 P社の平均水準がわからないが、少なくともここに比べて、前のチームはずいぶんしっかりしていたのだなと実感した。


 ゲーム自体もまったく面白みを感じられず、どうしてこっちのゲームのほうが生き残っているのか、なんでこんなゲームをやる人がいるのか、理解できなかった。ゲームを紹介した友人も、同じ感想をもっていた。

 ゲームのプロモーションには、人気グラビアアイドルを起用していた。


 一人、外部からKPI分析(平たく言うと、どうやったら売り上げが上がるか考える)担当の人を招いていて、この人はえらく熱意がある様子だった。

 ゲームをやり込んでいないので、その分析が的を射ているかはわからなかったが。


 彼も含め運営チームのメンバーは、そのゲームにだいぶ課金をしたりそれなりにゲームにハマったりしていたが、僕には自分たちが関わっているゲームだということを差し引いても、信じられなかった。感性が違うのだろうか。


 P社はソーシャルゲームのノウハウがなく、僕がこきおろした上記のゲームは成功しているほうで、社内のほとんどの案件が炎上しているということがだんだんとわかってきた。


 また、多くの社員が会社に対する不満を述べているのも、P社では印象的だった。


 新年の決起集会では社長が延々とくだらない自慢話と趣味の話をしていて、自分の趣味の分野に事業として会社で進出したいなんて言い出し、この会社はダメだなと思った。

 集会後、社員たちは「あんな話どうでもいい」と口々に言っていた。


 年末も酔っぱらったおじさんがテンション高く色々語っていたし、上がこんなんじゃ、ソーシャルゲーム業界に参入しても生き残れないだろうなと感じた。


 さて、チームが変わった後の僕は、回される業務はすぐに終わってしまうし、上の人の言っていることはよくわからなかったり無意味に感じられたりするしで、最初はできることを探していたが、徐々にサボるようになっていった。 

 とにかく、やる気がわかなかった。


 結果、僕はいわゆる社内ニートになった。はじめのうちは、これでいいのかと考えたり仕事がないことに対する不安を抱いたりしていたが、次第にこの会社に貢献するよりも自分のしたいことに時間を使おうと思うようになった。

 そのころ友人たちに誘われてやっていたゲームがあって、そのゲームの攻略ページをよく見ていた。


 そして、年の瀬も迫るころ、L社からP社との契約終了の連絡がきた。最初に担当したゲームがサービス終了になったので、その運営のために入った僕もそのまま契約終了、という話だった。

 裏でこいつ仕事しねーとか言われていたかはわからない。L社からは特にそういう話はなかった。


 僕は、もうこういう状況、業界はうんざりだと思った。次々に職場が変わって、しょっちゅう仕事の心配をする。将来の見通しも立たない。ソーシャルゲーム業界というのも好きになれなかった。

 P社での残りの暇な時間は、将来のことを考えたりするのに使った。


 しかし、嫌だと言っても、僕に今後のあてがあるわけではない。結局、L社に紹介してもらった次の会社の面接を受けることになった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ