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僕はどう生きるか 偏差値80からうつ、ニート、無職になるまで  作者: 依澄歌
大学~社会人時代 迷いの日々は続く
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父が倒れる

 よくないことは重なるもので、このころに父が倒れた。精神的なものだった。

 きっかけは、会社での人間関係と、それに伴う人事だった。


 当時父は職場の副所長だったのだが、所長は大層理不尽で評判の悪い人だったらしい。父は所長に意見したりして、部下にも慕われていたようだ。

 次の所長が自分になることはほぼ確約されており、父は所長が定年退職するまで耐えた。


 ところが、ようやく所長が定年になるというとき、所長は自分の腰巾着を所長に指名した。父に問い詰められると、所長は適当にごまかして逃げたという。

 僕は、所長の横暴を訴えられる機関なんかは職場にないのかときいたが、父はそういうもんじゃないと言った。仮にそういう機関があったとしても、相談する気になれないのはわかる。解決も難しかっただろう。


 元所長は定年後も何かと理由をつけて職場に顔を出しているらしい。うまいこと自分のポジションを作って、報酬をもらえるようにしたに違いない。


 冗談を言ったりおかしなことをしたり、普段は底抜けに陽気で、調子の悪い僕を励ましてくれていた父が、まともに動けないほど心を病んでいると知って、僕は驚いた。


 その理由にしても、それくらいのことでそんなひどい状態になってしまうのか、という気持ちはあった。

 しかし、自分にとって何が大きな意味をもつかは人によって違うし、人間はちょっとしたことで大きく変わってしまいうるということは、何より僕が知っている。だから、おかしいとは思わなかった。

 人間関係は特に悩む人が多いし、僕が人のことを言えようはずもない。

 所長になると定年が延びるので、そのぶん働いて僕や母のためにお金を稼げる、という思いも父には少なからずあっただろう。


 父はしばらく調子が悪い中仕事に行っていたらしい。いよいよ父がもう働けない、という段になって母から電話があり、僕ははじめて父の状態を知った。


 様子を見に行った僕は、予想を上回る父のひどい状態にショックを受けた。うつろな目で家じゅうを歩き回り、「もうだめだ」「どうしよう」「どうしようもない」「死にたい」「飛び降りたい」と繰り返した。

 過去の僕を見ているようだった。


 父は不安やパニックで血圧が上がってしまい、「自分は医者だからわかる。このままだと死ぬかもしれない」と言った。僕は電話で救急車を呼んだ。

 どうしてこんなことに。心配だ。大丈夫かな。こんなときこそ冷静ならなくちゃ。意外に落ち着けているぞ、大丈夫だ。

 様々な感情が複雑に絡み合った。


 夜間の病院に運ばれて先生に診てもらった父は、体は大丈夫ということで、一安心した。ただ、精神的にはやはり危ない状態とのことだった。


 僕は血とか血圧とかそういうのがダメ(うまく説明するのが難しいが、大丈夫なのとダメなのがある)で、苦手なシチュエーションにずっと耐えていたことと、別人のようになってしまった父がひたすらネガティブなことを言っている姿を見て、泣いてしまった。

 僕を支えてくれている妻もこんな気持ちだったのだろう。


 母はそんな僕を見て、「息子がこんなに悲しんでるのよ。しっかりして」と父に言った。父の苦しさがわかる僕は、責めることはしないでほしいと複雑な心境だった。


 「おかしなことはしないと約束して」と言う母に、父はなかなか返事ができなかった。

 結局母に押されて、なんとか「そ、それは……だいじょぶ……」と小さく頭を動かしただった。

 母は「息子の前で約束したからね?」と念を押した。


 「二人に申し訳なくて仕方がない」と言う父に、大丈夫だからとにかくしばらくゆっくり休んでほしいと伝えた。これまでずっと頑張って働き続けてきたし、いつも僕たちのことを支えてくれたのだから。こうなったら休むしかないことも、僕は身をもって知っていた。

 母には、大変だと思うけど父を責めずに休ませてあげてほしい、そして、心配しすぎて母が参らないにしてほしい、とお願いした。

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