ゲームのシナリオを書く
それまでと同様大学も特に感慨のないうちに卒業し、僕は世間でいうところのニートになった。
これがニートか。なるべくしてなったが、まさか自分がなるとは。そんな気持ちだった。父は半笑いしていた。
両親は、僕を責めたりすぐに働けと言ったりするようなことはしなかった。
どうにかしないといけないと思った僕は、自分が何をしたいか、自分に何ができるかを色々と考えたり調べたりした。
世間知らず過ぎてこのままでは社会に出てもお茶くみ一つできないと思って、母にお茶の淹れ方をきいたりもした。母は笑いながら教えてくれた。
そして、僕はネットで某社が新規サービスを開始するゲームのシナリオライターを募集していることを知った。
物語を書くことに興味があった僕は、応募してみることにした。新しくはじまるプロジェクトに参加するということにも、魅力を感じた。
それまでの僕の執筆経験はといえば……
小学生のころ:本が好きで、たまーに自分でもお話を書いたりした。
中学~高校:ゲームや漫画にハマり、文学から遠ざかる。
大学:またちょっと書いてみたくなるも、書けなすぎて挫折。
てな感じで、要するにど素人だった。
特に大学のときは時間もあって進路にも悩んでいたので本格的に書いてみようと思ったのだが、まず何が本当に書きたいのかわからない。書いてみたいことがあっても、そのための知識もなければ、どう書けばいいのかもわからない。細かい言い回しに拘ったり調べ物をしたりしているばっかりで、みじんも筆が進まない。
と、ないないづくしでろくなものが書けなかった。創作の難しさを知った。自分は書きたくて書きたくてたまらないというタイプではないし、向いていないのかなとも思った。
そんなわけで自信はなかったのだが、テストには合格し、面接を経て外注シナリオライターとして採用されることになった。落ちた人はほとんどいなかったと思う。
ゲームは今のブラウザゲーとかソシャゲとは全然違うちょっと変わったゲームで、当時としても珍しい形式のものだった。
僕にとっても新鮮で、とても楽しく活動をはじめた。自宅でマイペースにできるというのもよかった。
僕のシナリオの評判はまあまあといったところだった。題材があるぶんオリジナルより書きやすいとはいえ、やはり執筆速度は致命的に遅く、いつも締め切りギリギリだった。報酬も、とてもじゃないが暮らせるレベルではなかった。
兼業なのに書くのが早くて内容も面白いライターさんたちもいて、自分の実力のなさを常に痛感していた。
それでも、僕の書いたものが好きだと言ってくれる人たちがそこそこいて、それはとても嬉しいことだった。
ユーザーさんや他のクリエーターさんたちと交流するイベントもあり、すごく楽しかった。ここでもずいぶんはしゃいだ。これって天職かもしれないな、なんてことも考えた。
やがて僕はゲームの運営チームの方にお声がけいただき、シナリオ以外の仕事もさせてもらうことになった。そしてその後、アルバイトとしてオフィスで運営業務に携わることになった。
シナリオを書くことは減り、データ作り、問い合わせ対応、企画、イベントの手伝いなどをするようになった。
運営チームのみなさん、特に一番上の人にはかわいがってもらった。僕は喜んでいじられキャラ、おふざけキャラとして振る舞い、楽しく仕事をした。
依然将来の不安はあったが、目の前のことを全力でこなすことにした。ようやく自分の場所を見つけた、と思った。




