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僕はどう生きるか 偏差値80からうつ、ニート、無職になるまで  作者: 依澄歌
中学・高校時代 歯車が狂いはじめる
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ニュージーランドへのホームステイ

 中3の春休みには、2週間ニュージーランドにホームステイにも行った。僕の通っていた学校では、希望すれば中3の夏休みにカナダかイギリスに3週間ホームステイをすることができ、こちらに行く生徒のほうが多かった。かなりの割合の生徒が参加したのではないだろうか。僕の友人たちも、軒並み参加していた。


 両親は行きたければ行かせてあげると言ってくれたが、超消極的な性格の僕は、海外になんて絶対行かないと言っていた。小さいころから、将来目立ったり責任があったりする仕事には死んでも就かないと言っていた。そういう子供だった。

 小学生まではそうでもなかったが、中学生からは家族での海外旅行も嫌がったし、両親が毎週ホテルに食事に出かけるのに対し、僕は留守番してレトルトカレーを食べていた。


 ホームステイは単なる旅行とは違うものの、今考えればカナダにせよイギリスにせよ、行きたくて仕方がない。勇気を出して行っておけばよかった。

 家族での外食についてはさすがに毎週となると今でも飽きそうだが、両親との時間はもっととっておけばよかった。もっともっと親孝行しておくべきだったと強く思う。

 そう思うようになった今では時間やお金の問題、そのほか様々なしがらみで海外旅行になんてなかなか行けない。親孝行できるような機会も減ってしまった。皮肉なものである。

 学生のときにもっと色々なことを経験して、色々な場所に行って、たくさん本を読んで、勉強しておけばよかった。多くの人が口にすることだが、身をもって思い知った。

 でもまあ、そのときにはそのときの事情があったのだし、過去を嘆いても仕方がないので、今からでもできることはしようと思っている。

 

 今だったら、まずはイタリアに行ってみたい。友達が全然英語つうじねーって言ってたけど、観光地なら大丈夫なのかな? 世界遺産とかを見ながら、色々な国を回ってみたい。日本国内だって、大半の都道府県には行ったことがない。せっかくこの世界に生まれたのに、広い世界を見ないで死ぬのはもったいない。

 大学卒業後に友人に誘われてノルウェー、デンマーク、スウェーデンに行ったが、本当に素晴らしかった。おいしい食べ物、雄大な自然(フィヨルド観光では爆睡していてさんざん友達にネタにされたが)、とても親切な人々、美しい街並み、圧倒されるほどの文化遺産。すべてが生涯忘れえぬ経験になった。

 僕は環境が変わると体調を崩しやすいし、旅行は前後の準備が面倒だ。それに、妻は体調面に不安がある。けど、いつか妻と色々なところを旅行したい。これは数ある夢の一つだ。


 そういえば、中1のときにはクリスチャンでなくても参加できる巡礼旅行があった。当然のように参加しなかったが、どんな旅行だったのだろう。課題とかが出て、参加者は結構大変そうだった。

 6時間目が終わったあと、聖書研究の時間がある曜日もあった。7時間目の授業はきつそうだが、外国人のクリスチャンの先生に少人数で直接お話をきけるのは、今考えるとなかなかできない経験だ。先生がおかしとジュースをくれたりもした。

 ウィーン少年合唱団がきてくれたこともあった。あれはよかった。保護者向けのキリスト教イベントもあった。

 芸術鑑賞会とかもあったし、周りに語り合える知的な仲間もいて、恵まれた環境だった。しかし、当時の自分はそのことがわかっていなかった。日々自分のことでいっぱいいっぱいだった。


 さて、そんな超消極的だった僕が、半年あまりでがらりと態度を変え、ホームステイに行くことを決意したのだから、並々ならぬ覚悟だったことは想像してもらえると思う。僕なりにもっと見分を広げなければまずいと思ったのだろう。周りもみんな意識が高いし。行くかどうかぎりぎりまで悩んでいて、行く前の僕は楽しみ、って感じではなかったな。


 ニュージーランドに行くのは10人くらいしかいなくて、ほとんどバスケ部の連中だった。彼らはいわゆるリア充的な存在で、僕とはほぼ接点がなかった。普段接している友達とはタイプが違って少し緊張したが、話してみるとやっぱりいいやつらで、結構仲良くなれた。


 ホストファミリーのところには、お父さんとお母さん、それから既に何年も住んでいる僕より年上の中国人が二人いた。裕福そうな家庭で、子供はもう自立しているようだった。

 お母さんだったか親戚だったかが中国系の人だそうで、出してくれる料理はとてもおいしかった。箸も使っていた気がする。遠慮せずにバクバク食べていたら、「You are good eater」と言われた。

 また、ニュージーランドは水不足らしく、あまり水を使いすぎないよう言われた。


 中国人は二人とも英語がぺらぺらで、僕に親切にしてくれた。あのときはあまり意識していなかったけど、中国のエリートだったんだろうな。いちいちホストファミリーのところにいた中国人、と書くのも面倒なので、以後この二人は『先輩』と呼ぶことにする。

 先輩たちはパソコンのゲームが好きで、友達の家にFPS(振り返れば、あれはそうだったんだなと思う)をやりに行ったり、家で『サイキックフォース』(これも、当時その存在を知らなかった)をやったりしていた。僕は「すげー! なんかハイテクなゲームしてる!」と思っていた。

 先輩たちが「トキモキ。ジャパニーズレッドヘアープリティガール」と言っているのを、ときメモの藤崎詩織のことだと解読したのは、今でも自慢していいと思っている数少ない出来事の一つだ。


 お父さんは声が低くて、英語が特に聞き取りづらかった。一度車で二人きりになったことがあって話しかけてくれたのだが、何と言っているかがわからなくて、「オーイエス」と「アーハン」を連発してごまかし、あとは寝たふりをした。

 向こうだってこっちが英語話せないことはわかってるんだし、せっかく勉強しに来てるんだから、もっと聞き取れないこととかゆっくり話してほしいこととか伝えればよかった。もったいない。「おめー英語勉強する気あんのか」的なことを言われたような言われなかったような。


 発音と言えば、ニュージーランドにはネイティブの先生も引率で来ていたのだが、「話す人によってはなまりが強すぎて、俺も聞き取れない」と言っていたのが興味深かった。でも、日本でだって方言はわからないし、当然といえば当然なのかもしれない。国による英語の違いは、文化が表れて面白い。

 先生は僕たちの乗ったバスをレンタカーで追い抜いて行ったり、ニュージーランドを満喫しているようだった。


 おかげさまでホストファミリーにはなじむことができた。ホストファミリーには事前に性格を含めて自分のことを伝えるアンケートや書類を送っていて、僕は『シャイである』の項目に○をつけていたのだが、先輩たちにジャパニーズ電気アンマを食らわせていたら、お母さんに「あなたは『シャイ』に○をつける必要はない」と言われた。「oh...oh...」と悶える先輩の顔が忘れられない。

 あまりよろしくない言葉も色々教えてもらった。代わりに僕は先輩たちに、ここには書けないような日本語を、「挨拶だ」と言って教えてきた。どうかしてる。


 ほかに印象的だったのは、向こうでは『バディ』と呼ばれるパートナーみたいな子に案内をしてもらって学校に通うのだが、僕のバディになった小学生くらいの男の子が先生を指さして「シーイズクレイジー」と言っていたこととか、ポップコーンのLサイズがでかすぎて1メートルくらいあるんじゃないかと思ったこととか、友達が「俺のバディ普通に目の前で万引きしててやばいんだけど」って言ってたこととか……フィッシュアンドチップスも食べた気がする。


 そうそう、羊の毛刈り体験もした。マオリ族の文化にも触れた。サマータイムもあった。一つどうしても食べられない食べ物があって、その味から友達と『土』と命名した。あれの正体はなんだったんだろう。街並みがあまり思い出せないのが悔やまれる。

 こうしてみると、今の今まで忘れていたことがいくつもある。結構忘れてるもんだな。きっと、一生思い出せない楽しかった思い出もいくつもあるんだろう。


 あとは、色々な人種の人がいたと思うけど、すれ違う子すれ違う子が当たり前に金髪碧眼なのは、やっぱり衝撃的だった。年齢のこともあって、あの感覚はもう味わえないんじゃないかな。味わえるような人生を送ってみたいけど。特に小さい女の子は、本当に天使みたいにかわいかった(こう書くと危ない人みたいだな)。


 日本に帰るときには、ファミリーから手紙をもらって涙を流している友達を見た。それを見て僕は、「こういうのっていいな」と思った。

 僕のファミリーのお母さんは、僕が忘れたズボンをきれいに洗濯して、手紙つきで送ってくれた。帰国後もやり取りを続けている友達もいた。

 ニュージーランドへのホームステイは、行ってよかったと思えるものになった。あらゆる人に感謝だ。

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