新たなる門出
「あーあ、結局お姉ちゃんあの学校に行くのかー…」
「もう、いつまでグチグチ言ってるの」
「だって完全にお姉ちゃんあてにしてたのに急に独り暮らしとか、お姉ちゃん死ぬ前にアタシが餓死するよー」
「死なないから。いざとなったら料理は出来るようになるよ」
私と絆はそれぞれトランクケースを持って最寄駅に居た。両親は仕事で見送りは来ないため私達二人だけ。
私は三葉学園に行くために、そして絆は新しい大学生活を送る為に。
本当だったら同じ大学に通うことになる絆とルームシェアする予定だったが、私が三葉学園に編入するために、ここで暫くお別れだ。
短大も実家から通ってたため、寮とは言え独り暮らしするのは初めてのこと。絆も、今まで高校生だったのだから同じ気持だろう。
少し寂しくて、不安で…けど、わくわくする不思議な気持ち。
キャラメル色の髪を器用に編み込み、ガーリーな服を着たほわほわした我が妹はぶっちゃけ可愛い。きっと、大学ではモテモテだろう。
「絆、サークルも大事だけど勉強するんだよ」
「分かってるよー。お姉ちゃんはちゃんと友達作るんだよ。最低5人だからね」
「うっ、私は深く狭くなの。」
「まぁ、そこがお姉ちゃんの良いところでもあるけどね。友達って認めたら凄い尽くすし。けど、人数制限ふやそーよ」
クスクス笑った絆は、時計を確認する。
電光掲示板を見ると絆が乗る電車がもうすぐ来るらしい。
「じゃあ、お姉ちゃん。また、夏休み帰るからお姉ちゃんも帰ってきてね」
「うん。帰る帰る。」
「約束だよ」
「分かってる。ほら、早く行かないと」
絆がエスカレーターを登り切るまで手を振る。
「あー…なんか、切ないなぁ」
絆の姿がなくなり、一人になった所で寂しさがこみ上げてくる。
「大人なんだから、しっかりしないとね」
絆とは違う電車に乗るために駅の構内を歩き出す。
と、スマホが短く震える。
画面を見ると絆からのメッセージだった。
【お姉ちゃん、どうしよ!充電器持ってくるの忘れた!というか、なんかまだ忘れものしてるかも!だから戻る!お昼一緒に食べよ♪】
【電車乗ったから一人で家戻って】
「絆、大丈夫かな…まったく」