妹と
自室で編入申込書を書いているとノックも無しにドアが開いた。
お風呂から出てそのまま来たのか、パジャマを着た絆は濡れ髪のままベッドにダイブした。
「ちょっと、絆…ベッド濡れる」
「うるさいなぁ、お姉ちゃんは。小姑?」
「小姑じゃないし、それに集中してるんだから静にしてよね」
二重線に訂正印は無しにしたい所だ。
「…お姉ちゃんさー、魔法使えるようになって何したいの?」
「んーいろいろ。キラキラ光る球だしたり、花を咲かせたりして。なんだろ、子供を笑顔に出来るようなそんな事」
「ふーん。けどさその編入資料だっけ?それ見る限りさ、魔法って秘匿なモンでしょ?誰に見せるの?」
「誰って子供に」
「見せちゃいけないのに?」
「…。」
私は、ボールペンを置いた。
絆の方を振り返ると、おちゃらけた絆では無く真剣そのもの。
「お姉ちゃん。アタシさー、ゲーム好きなんだよねー。だからどうしてもお姉ちゃんみたくおとぎ話の魔法は思いつかないの。大きな、人を傷つけるよなモンスターを倒すような、そんな魔法。けど、モンスターなんていないじゃん?なら、その魔法ってなんのために使うの?戦争とかに秘密裏に使ってたりとかしないの?」
絆の言葉に反論する事は出来なかった。
だって、魔法はステキなものだと思ってたからその発想が自分の中になかったのだ。
それに、カリキュラムを見たところで細かくはどんな事を勉強するのか分からなかったから。
「お姉ちゃん。戦争とかの道具にだけはならないでね?アタシやだからね。お姉ちゃんがそんなしょうもないことで死んじゃうの
」
言いたいことを全部言ったのか絆は、それだけ言うとさっさと部屋を出て行ってしまった。
戦争。
けど、これだって世界では起こってるけど魔法が使われたなんて聞いたことない。歴史の中で魔法が出て来たことは無い。せいぜいヨーロッパの魔女狩りぐらいだ。
だから、絆の言ってる事はは考えすぎな筈。筈なのに、私は最後の印を押すことが出来なかった。