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霊媒体質1

もゆら視点

あのちょっとした黒酢事件のその後を一応言っておこう。


その後すぐ帰ってきた水仙が悲惨な状況になっている厨房を発見したらしく、コルティの奴は違う意味で恐ろしい思いをしたらしい。

笑顔って恐いよな。

特に普段温厚な奴ほど。

ま、俺には関係ないけどな。



さ、今日は何して過ごすか・・・


「もゆらさん?」

誰かが俺を呼んだ。

この声、さんづけ、


「カルタナ!」

カルタナだ。


「よ。」

それにレピ。

「おお。

何してんだ?二人とも。」

カルタナとレピは大体一緒にいる。

それはあいつ等がここに来る前から一緒だからの癖らしい。

・・・この二人のデコボココンビは見てて面白い。


「えっと、それはロキシアさんがですね・・・あたっ!!」

「はい、余計なこと喋らないーそれに俺のことロキシアって言わないのー」

いつもこんな感じだ。

今はレピがカルタナの頭を叩いた。

カルタナの髪がぐしゃりと崩れる。

「す、すいませんロキシアさん。・・・あ。」

「はぁー・・・」

「くくく・・・」


俺はその時笑いをかみ殺すのに必死だった。

「で。 手ぶらみたいだが・・・どっか行くのか?」

さっきと質問を変える。

これなら答えられるだろうか。

「ああ、ちょっと森の方にな。

こいつが用があるって言うから。」

そう言うとレピはカルタナの方を見た。


「え、行こうって言ったのはロキシアさんじゃないですか!」

「でも最初にやりたいって言ったのはお前じゃねーか」

「擦り付けないでくださいよー!」

「どうせやるのはお前だろーが」

「むー・・・」

カルタナが微妙にむくれて話が切れる。

「んじゃ、いってら。」

「ん、今日は帰るの遅くなるかもだから、皆に言っといてくれ。」

「覚えてたらな。」

「頼むぞー」

いや、ホントに覚えてたらになるだろう。

「ロキシアさーん! 早くしないと日が暮れちゃいますよー!」

少し先にいるカルタナがレピを呼ぶ。

「分かってるよー

じゃな。」

「じゃ。」

そう挨拶を交わすと、レピはカルタナを追いかけて少し小走りに行ってしまった。

本当にあの二人は仲が良い。


もう二人の姿は見えない森の方を少し見た後、俺は町に戻ることにした。









「・・・もゆら?」

誰かに呼ばれた。

俺は声がしたほうへ振り返る。

「妖見?」

声の主妖見は、なんだか訝しげな表情でそこに立っていた。

「何かあったのか?」

「いや・・・その・・・」


妖見が言いよどむ。

彼女が言いよどむなんて、何か相当なことがあったのだろうか。

「どうした?」

重ねて聞くと、妖見は俺の隣を見ながらこう言った。


「そこに、なんかいる・・・」


「は?」

一瞬意味が分からなかった。

すると、彼女はもう一度言った。

「だから、もゆらの隣に・・・」

「隣?」

そういって隣を見た。


「・・・・・・・・」

何もいない。

見えるのは向こうの景色だけだ。

俺が妖見の方を見ると、今度は気まずいような表情で立っていた。

「またか・・・」

そう呟くと、小さなため息を一つ。

「妖か?」

俺が聞くと妖見はこう答える。

「どうだろ。

今日のは妖ってより人間かなんかの霊みたいなもん・・・だと思う」

妖見がそこまで言った所で、俺はある一つの疑問を思いつく。

「・・・今日のは?」

そういった瞬間、妖見がしまったと言うように目を逸らす。

「まさか、今日が初めてじゃないとか言い出すのか?」

畳み掛けて言うと、妖見はまだあらぬ方を目が向いたまま答える。


「いや、初めてじゃないというか、いつも何かしらいたっていうか、でもいつも一日たったら消えてたっていうか、見えないのはおかしいと思うけどどうやらもゆら霊媒体質みたいなっていうか、まぁとりあえずいいかなー、って思ったんだって!」


なんだかよくわからない文法を使いながら一気に言った妖見の言葉に、聞き流せないことがあった。

「霊媒・・・体質?」

「あれ、しらねぇ?

霊とか妖とか自分で引き寄せちゃう人のことなんだけど・・・」

「それ位知ってる!

じゃなくて、俺が、霊媒体質!!?」

さっき妖見が言っていたことがマジ話なら、いつもいつも俺の傍には足のない何かが漂ってたってことか!?

「うーん、見えたり声が聞こえたりしないのはおかしいと思う。

それに霊媒体質の人は予知能力があるっていうし。

だから確証はないけど、多分・・・」

「そういうことはもっと早く言えよな・・・」

「あはは、まぁいいじゃん!」

「いいも悪いも、今はそれより大事なことがあるだろ阿呆!」

俺はそういうと同時に後ろから妖見の首に勢いよく手を回す。

「うげっ!」

首が絞まる形になり、妖見が変な声を出す。

「くそ、めんどくせえよー!

それに今なんか変なことあるとかそういうんじゃねぇんだったらほっといても別にいいだろー!?」

下から聞こえてくる抗議の声に俺は手の力を変えず、こう答える。

「テメェは馬鹿か!

言われたら気になって眠れねぇだろーが!

とっとと祓え!」

「えー、祓い方わかんねぇよー」

妖見が不服そうな顔をする。

そんな彼女に俺はこう付け足す。

「見えるんなら触れる!

触れるんなら斬れる!

斬って祓え!!」

俺がそういうと、妖見はそうか、と言って納得した顔になる。

「一理あるかもな・・・

よし、やってみるか!」

そう言うと首の手を退ける。

「じゃあもゆら、そこに立て!」

俺を自分の向かい、4,5メートル離れた所に立たせる。

そして刀を一振取り出す。

「動くなよ!」

妖見が言う。

言われなくても。

万が一だけど斬られたくはないし。

「行くぜっ!」

その言葉と同時に突っ込んでくる。

俺は勿論動かない。

一瞬の静寂。

空気が変わる。









「終わったぜー!」

俺の背後から妖見が呼びかけてきた。

「やっぱりもゆらの言う通りだったよ。

ちゃんと斬れた。

まぁ、それが刀だからか、素手で触れるかは分かんねぇけど。」

そう言うと刀をしまう。

刀に変化は何一つないように見えた。

それにしても、どうやらこれで一段落したのだろう。

なんだか体が軽くなったような気がする。

「よし。じゃあ、行くか!」

そういった俺に、妖見がバッと顔を向ける。

「どこへ!?」

「どこへって・・・」

一つしかないだろう。


「酒屋。」


「・・・あたし、帰るよ」

逃げようとした妖見の腕をつかむ。

「連れてくからな?」

「えー!!」

あからさまに嫌そうな顔をする。

「えーじゃねぇ!

ほら行くぞ!」

俺は嫌がる妖見を引っ張っていく。



さっきまで止んでいた風は、思い出したようにまた吹いていた。


まだ続く

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