散歩と笑顔
兄妹の朝の話しです。
昨日、民子がスカッシュをじいちゃんにもらった。
今日の民子は早起きで「お兄ちゃん!」と俺を起こす。
「…なんだよ、まだ早いぞ?」
「私、目が覚めちゃって…」
「そうか、はじめてのバイクだからなぁ」
「うん!だからお兄ちゃんも散歩いこ!」と笑顔で民子が言った。
ちなみに散歩とはこの場合、朝にバイクに少し乗るコトをゆう。
俺はやっぱ可愛いなぁと思いながら民子に「ああ、分かったよ。俺、着替えるから、出てくれないか?」
「お兄ちゃん?私のコト嫌いなの?」
「なんでそうなる!」
「だって出て行ってって…」
「あのさ、俺の心読めるだろ?」
「うん!可愛いなぁって」
それだけなのかよ…。
「民子、俺がもし、お前が着替えるときに俺が部屋にいたら?」
「う~ん。お兄ちゃんに部屋にいてもらう!」
「民子さぁ…恥ずかしく無いの?」
「うん!だってお兄ちゃんだもん。
私はお兄ちゃんのコトを知ってるから、お兄ちゃんに私を知って欲しいの。だから私はお兄ちゃんの着替えを見ても大丈夫だよ」
つい俺は、民子…俺のコトをそこまで…と思ってしまった。
「民子、お前は大丈夫でも俺が大丈夫じゃないんだ。だから…」
と俺が言うと民子は泣きそうな声で
「お兄ちゃん、私に部屋を出てもらいたいの?
こんなに寒いのに?」確かに寒い…が、
年頃の娘(妹だが)を部屋の外に出すのは…寒いよな。
う~んと俺が考えていると
「お兄ちゃんは優しいんだね。
ごめんね少しイジワルして」と言って民子はテヘっと舌を出して部屋を出て行った。
やっぱ心読めるじゃん!
俺はさっきの民子、可愛いかったなぁと思いながら着替える。
俺は制服にジャンパーを羽織り、
着替え終わると民子の部屋をノックした。
「いいよ~」と民子が言ったので中に入った。
「民子もう行けるか?」
「うん。大丈夫だよ」と言う民子は制服の上にジャンパーを着て、下には防寒ズボンを入っている。
「すごいな」
「だって寒いんだもん」
「そうだなぁ」でも民子は可愛いかった。
そしてガレージに行き二台のバイクを出すと俺と民子は近所を一周回った。
俺は「もう一周回って来る」と言って、今度は全開で走る。
朝は道がすいているので走りやすい。
俺はコンビニに行ってコーヒーを買って全開で家に帰る。
ガレージに帰ると
「お兄ちゃん遅かったね?」
と民子が待っていた。
「中に入ってればいいのに…寒いだろ?」と言って民子にコーヒーを渡す。
「ありがと、でも、何となく外にいたの」
「民子、MRに乗ってみるか?」
「いいの?お兄ちゃん」
「いいよ、乗ってみたかったんだろ?
待っててくれたお礼だよ」
「うん、ありがとうお兄ちゃん!」
と言ってMRに乗ってゆく民子。
俺は民子のあの笑顔が見たかっただけだ、俺にとってもあの笑顔は宝物だ。
民子は帰って来たらどんな笑顔を見せてくれるだろうか…。