第2章 第2節
この学園都市の教育課程は、初等部から始まる。
まずは初等部で小学校教育と自立の精神を養い、中等部で中等教育と専攻分野の選択。
そして……
「宇佐美ちゃん、おめでとう!!」
「あのアスカ・ホークアイに二強時代を予感させるだなんて、やっぱりすごいよ!!」
「これ、プレゼント!!」
高等部から、学園都市の本番が始まる。
昨日の歌謡祭での準優勝を飾った一条宇佐美は、既に通う学校の話題の中心となっていた。
「おいうるさいぞお前ら! 周囲を囲うな、一列に並べ! 1人ずつだ!!」
「なんだよ朝霧! 勝手に仕切んじゃねえよ!!」
「ちっとばっか、宇佐美ちゃんの用心棒に雇われたく……光栄を承ったからって良い気になりやがって!!」
「アスカ・ホークアイに雇われた時だって、悔し過ぎる事火山の如だってのに!!」
同じ学校である、その用心棒の依頼を受けた朝霧裕樹もまた、話題――と言うか、ファンになった方々及び、以前から彼の雇い主関連で不満を持つ者たちの、敵意の中心に立たされている。
「そう言えば、なんだか仲良さそうだったよね?」
「仲良さそうって、そりゃ元々人受けの良い性格なんだから、仲悪くなれって方が無理だってわかるだろ!?」
「――スケベ」
「スケベはないだろスケベは!!」
「「「ス・ケ・ベ! ス・ケ・ベ!」」」
「よし、お前ら病院のベッドで眼を覚ます覚悟はできたな?」
宇佐美の時と目でのスケベに便乗する、周囲の男子全員のスケベコールに、裕樹も流石に怒気を隠さず、そう告げ――
「おーい、何やってんだ? もうすぐ時間だぞ」
「げっ! もう時間かよ!? 宇佐美ちゃんと話したかったのに……くっそ!」
「えっと、一時限はどこだっけ?」
「今日は実習だったよな!? どの教室だった!?」
「やべっ、今日発表あったんだ! 草案間に合うかな!?」
突如割り込んできた声に全員が時計を見て、大慌てで校舎の方へ。
「朝っぱらから、大変だな」
「あっ、光一」
「歩美ちゃんはちゃんと送ったの?」
「勿論――ってか、俺達もぼーっと突っ立ってる時間ないぞ?」
「あっ、そうだった! じゃあな宇佐美、また後で!!」
「うっ、うん! 流石に遅刻なんてやだからね!」