第2章 第1節
「やっべえっ! 遅刻だあっ!!」
「毎度思う事だけど、祭典の次の日の一時限位、潰れてくれてもいいじゃねえかよ!?」
「言ったって仕方ねえだろ!? とにかく走れ走れーっ!!」
学園都市の平日の朝――と言うか、祭典の次の日の朝は、ラッシュで始まる。
祭典の準備を行うのも生徒なら、後片付けも生徒の役目であり、学生の本分である勉学に関しては、事故やケガ以外で免除になる事はない。
つまり、大半が疲れを引きずって居ようと、学校はその事を考慮してはくれない。
「……やっべえやっべえ、すっかり寝過ごした」
「こういう所が、この学園都市の辛い所ですね――ふぁあっ……」
「てか、大半居眠りに夢心地で授業にならないって、わかんねえかな?」
「いえ、私に言われても……」
住む住人の大半が学生であるこの都市においては、移動手段は徒歩と通学路面電車(乗車には学生証が必要で、その学生証に登録された住所と学校の範囲限定で無料)となり、車やバイクと言った乗り物の免許を持っている人間が半数以下になる所為か、歩道は広めに設計されている。
その為か、バイク通学の許可は貰ってある光一と、それに便乗してる歩美は、徒歩通学のラッシュを眺めながらの登校となる。
と言っても、疲れを引きずってるのは2人とも同じで、光一は眠気覚ましのガムを噛みながらの運転で、歩美は光一の腰にまわしてる手のもう片方で口元を抑えながら、あくびをかみ殺している有様。
「――けどまあ、参加者に比べりゃまだマシか」
「……そうですね」
そして当然、祭典の参加者も例外ではなく――。
「おーい、ここで寝るなよー?」
「……もーっ、せめて祭典の次の日位休みにしてくれたっていいのに」
「いや、俺に言われても……
そんな会話をしながら、同じくバイク通学の許可を取ってる、用心棒を生業とする朝霧裕樹が、昨日の歌謡祭で準優勝を獲得し、本日の新聞(当然生徒謹製)の一面を飾っている一条宇佐美と二人乗りで、光一達の横にやってきた。
「よう、ユウに宇佐美」
「おはようございます、朝霧先輩に宇佐美さん」
「ん? ああっ、光一に歩美じゃねえか?」
「おはよ」
――現在は赤信号で止まっており、顔見知りでもある為に、それぞれ挨拶を交わす。
「遅くなったけど、準優勝おめでとう」
「今日はお祝いしますので、是非来てください」
「ありがと」
眠気こそ隠せていないが、宇佐美は光一と歩美の称賛に照れくさそうにお礼を言う
「――で、依頼はまだ続いてんのか?」
「当たり前だ。でなけりゃ、二人乗りしてまで送り迎えまでするかよ」
「そう言って、役得はあるくせに」
「……その所為で値引かれたがな」
苦々しいと言わんばかりに、裕樹は顔をしかめた
「――んじゃ、俺は朝倉送らなきゃいけないんで」
「では、失礼します」
そう言って、光一は信号が赤になると裕樹達とは別方向へとバイクを走らせた。
「――さて、と」
「飛ばしてみてくれない? バイクに二人乗りなんて、あたしユウのバイクが初めてだからさ」
「良いけど、眠気はどうしたんだよ?」
「……ちょっと、思い出させないでよ」
「悪い」
教師、大学生以上の運転する車に、高校生以上が運転するバイク。
それらの流れのままに、裕樹もバイクを走らせた。