第6章 第10節
「だから、どういう事か聞いてんだよ!! この状況でそんなことしたら、間違いなく保安部が――ああっ!!? んなこと聞いてねえよ!!」
「ねえユウ。保安部長官って、こんなに簡単に変えられる物なの?」
「んな訳ないだろ。解任自体、保安部にある総合12部隊の部隊長の半数以上の解任動議と、生徒会執行部の査問委員会の辞退要請――この2つが生じた上で、生徒会執行部最高権威の許諾がないと、最高責任者を解任させる事は出来ないんだよ」
「でも、特例とかなんとかって――」
「……大方、執行部の誰かが勝手に処理したんだろ。保安部の方は、偽情報で誤魔化す事は出来るし、特例項目使ってるって事は――」
光一がD-Phoneに怒鳴ってる間に、裕樹が宇佐美に状況の説明。
ふと見れば、報告に来た生徒会役員の女生徒は、光一の怒鳴る姿におろおろとしていた。
「ちっ!」
「――あの」
「ん? ああっ、すみません――ユウ、悪いけど俺は」
「ああはいはい。保安部に――!?」
ガキンッ!!
「ひゃっ!?」
「……流石は朝霧裕樹、この一撃を受け止めるか」
光一が声を掛け、裕樹が苦笑しながら頷こうとした所で、裕樹が突如D-Phoneから大刀を具現し、振り向きざまに襲い掛かった斬撃を受け止める。
「――! あっ……貴方は!」
「え?」
「鮫島、隊長!!?」
「――久しぶりだな、お前達。役員の護衛として現場に出るとは、立派になった物だ……見た目だけはな」
「鮫島隊長って……まさかお前、鮫島剛か!?」
「へえっ、かの朝霧裕樹に知ってもらえているとは、これは恐縮千万」
その斬撃を放った、歯を剥き出しにした笑みを浮かべ、彫りの深い顔立ちに刈りこまれた短髪の2mはある大男。
その手には、鋸の様な刃を持つ刀身が、更に幾重もの棘状の刃がびっしり重ねられ、刃先はハンマーのような形状となり、そこからさらに鮫の鰭の様な刃が伸びている、奇妙な形状の大刀が握られていて、その大刀で裕樹と鍔迫り合いをしている。
「鮫島剛って……じゃあ、あれが大槌鋸刀“鮫王”か」
「……? ねえ光一、誰なの?」
「鮫島剛――生徒会執行部直属SPの隊長を務めていた男で、半年前に生徒会役員の暴行、、無差別辻斬りを起こして、ブラックリスト認定された途端、行方不明になった筈の奴なんだけど……!」
今度は光一が、D-Phoneから銃を取り出し、2人の鍔迫り合い――主に鮫島と呼ばれた大男の後ろの、バルカン砲を構える男に銃口を向ける。
「――なんだ、気付いたか」
「……九十九! なんで、お前まで!?」
「保安部にちょっかいを出す奴が居て、黙っていると思うか?」
「度を超えた暴力と過激かつ危険すぎる思想で、保安部を追われたお前には、もう関係ない話の筈だがな」
「――北郷正輝を……あの愚か者に天誅を下すのは、この椎名九十九だ」




